☆母子の健康状態に及ぼす父親の健康状態の影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、出産時の母子の健康状態に父親の健康状態の影響があることを示しています。

 

Fertil Steril 2020; 113: 947(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.12.026

Fertil Steril 2020; 113: 925(米穀)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.01.032

要約:2009〜2016年に米国IBMマーケットスキャン社の健康保険に登録された785,809名の出産データ(女性年齢:20〜45歳)を基に、父親の健康状態について後方視的に検討しました。6.6%が早産しました。父親の疾病がある場合に、早産、低体重児、NICU入院が有意に高くなりました。母親の因子を補正したところ、父親のメタボリック症候群で早産が1.19倍、低体重児が1.23倍、NICU入院が1.28倍有意に高くなりました。また、父親の健康状態は、母体合併症(妊娠糖尿病、重症妊娠高血圧症など)に有意に関与しました。

 

解説:父親の遺伝子は受精卵の半分を担っていますので、父親の要因は侮れません。動物では父親や祖父の健康状態の影響が報告されていますが、ヒトでは父親の健康状態に関する周産期予後(母体と赤ちゃん)の検討はほとんどなされていませんでした。本論文は、出産時の母子の健康状態に父親の健康状態の影響があることを示しています。

 

コメントでは、父親の要因の関与はそれほど大きくないこと(最大1.5倍未満)、環境因子はじめ様々な交絡因子を考慮していないこと、民間の健康保険機関による調査のため書類上の病名である可能性が否定できないことを挙げています。

 

日本では、妊娠治療への男性の参加があまりにも少な過ぎると思います。受精卵は精子と卵子の両方からの遺伝子を受け継ぎますので、男女双方の健康状態が重要なのは納得できます。