NGSでPOFの原因遺伝子検索 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

自然発生のPOF(早発卵巣不全、早発閉経)はおよそ1%の方にみられます(2015.5.13「☆POF(早発卵巣不全、早発閉経)の発生率」の記事を参照してください)。POFの原因は不明ですが、最新の遺伝子検索技術であるNGSを用いると、短時間に膨大な遺伝子を検索することが可能です。本論文はNGSをPOFの遺伝子検索に初めて用い、3つの新たなPOFの原因遺伝子を明らかにしました(2015.1.4「着床前診断(PGS)はCGHからNGSへ」の記事を参照してください)。

Fertil Steril 2015; 104: 154(コロンビア)
要約:POF12名、閉経女性176名、一般集団345名から遺伝子を抽出し、70種類のPOF候補遺伝子についてNGS法を用い遺伝子変異の有無を検索しました。その結果、新たに、ADAMTS19遺伝子とBMPR2遺伝子がPOF原因遺伝子として、LHCGR遺伝子がPOF関連遺伝子として明らかになりました。

解説:これまでに、卵巣予備能低下(AMH低下)の原因については、BRCA1/2遺伝子変異(BReast CAncer 1/2)、FMR1遺伝子変異(Fragile X Mental Retardation、脆弱X精神発達障害)、SF1遺伝子変異(Steroidgenic Factor 1)、GDF9遺伝子変異(growth differenciation factor-9)の関与が示されています。本論文で新たに明らかにされた遺伝子変異は下記のものです。

ADAMTS19(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs 19 precursor)
BMPR2(bone morphogenetic protein receptor type 2 precursor)
LHCGR(lutropin choriogonadotropic hormone receptor precursor)

この他、FSHR、NR5A1、NOBOX、FOXL2、FIGLA、BMP15、NANOS3、STAG3などの遺伝子も候補に上がっています。

下記の記事を参照してください。
2013.8.29「BRCA遺伝子変異があるとなぜ早発閉経になるか」
2012.10.26「AMHは人種によって違う」
2013.10.23「☆GDF9遺伝子変異でAMHが減少します」