Q&A752 採卵7回、移植9回、稽留流産1回、化学流産5回 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2014.3.19「Q&A285 良好胚盤胞移植で結果が出ません」で質問した者です。質問後も結果がでないものの、少々状況が変わりましたので、再度質問させてもらいます。
あの質問後、5回の採卵(IVF1回、ICSI3回、IMSI1回)と5回の移植(新鮮初期胚1回、凍結胚盤胞4回)をしました。新鮮初期胚は陰性、次の凍結胚盤胞移植で妊娠したものの心拍を確認できず、8週目で稽留流産となりました。その後の凍結胚盤胞移植では化学流産を2回しています。累計では採卵7回、移植9回で、稽留流産1回、化学流産5回という結果です。2個移植やSEET法なども試みましたが結果がでません。最近は、男性不妊だけではなく、着床障害も見過ごしてはいけないと感じています。
①以前より、主人は男性不妊専門クリニックを受診し治療をしてきました。服薬で効果がなかったので、服薬をやめ、サプリを飲んでいます。他に何か治療の手立てはないか調べましたら、射出精液中に精子がいたとしても、反復不成功の場合、精巣内精子を使用すれば解決することもあると知りました。無精子症でなくても、TESEする場合はあるのですか。また、TESEをすると精子のDNA損傷の割合が減るものなのですか。私たち夫婦は採卵するたび複数個の胚盤胞ができています。その場合は精子のDNA損傷は少ないとみていいのでしょうか。
②不育専門医を受診し、プロテインS活性54%、IgM(+)、子宮動脈血管抵抗PI右2.99、左2.80ということが分かりました。バイアスピリン1日1錠、ユベラ1日6錠を移植周期に飲むよう指示されました。ただ、以前バイアスピリン1日1錠とユベラ1日3錠を飲んだ周期があり、その度化学流産をしています。ユベラの量を変えるだけで、どの程度血流に変化が出るものですか。
③以前ヘパリンを使用したことがあり、副作用のことやヘパリン使用の場合とバイアスピリン・ユベラの場合の成功率があまりかわらないこと等を知り、できるならばヘパリンを使用せずとも結果を出したいと思うようになりました。ですがいよいよ行き詰まったときに恐らくヘパリンも使用することになると思うので、着床障害におけるヘパリンの有用性を知りたいです。

A 
①精巣内精子は射出精子よりDNA損傷が少ないことが知られています。このような観点から、射出精子が採れる方にもTESEを行なうことがあります。ただ、良好胚盤胞ができている方では、精子のDNA損傷は少ないと思います。
②ユベラ1日3錠と6錠の違いはそれほどないと思います。実際に血流がどの程度改善したかを見てみるのがよいでしょう。もしかすると、全く改善していないかもしれません。また、IgM(+)というのは、どの抗体のIgMなのか知りたいところです。
③ヘパリンは血液凝固抑制作用以外に、胎盤形成促進作用があります。すなわち着床促進作用ということになります。2015.6.4「☆ヘパリンの胎盤形成促進作用」の記事を参照してください。

この他に慢性子宮内膜炎の検査も行なってみたいところです。