『永遠の門 ゴッホの見た未来』 | 日々是(ひびこれ)デス・ロード

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自分の好きなものについて垂れ流していくブログです。基本ネタバレ全開なんでそこんところ注意。

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※ちょこっと追記。

〜彼は、一体何を見ていたのか……?〜

その昔、画家として全く評価されない一人の男がいた。
彼の名は、フィンセント・ファン・ゴッホ。
ある日、ゴッホは明朗快活な画家・ゴーギャンと出会う。
そして、ゴーギャンの助言に従ってゴッホはパリから南仏のアルルへと向かった。
だが、対人関係が不得手なゴッホは地元の人々には受け入れられずにトラブルが続く。
そんな中、弟・テオの助けもあってゴッホはゴーギャンと共同生活をはじめ、ゴーギャンと切磋琢磨しながら創作活動にのめりこんでいく。
しかし、その日々も長くは続かないのであった――。




数ある画家の中で、数ある画家の作品の中で、誰が一番好きか――。
儂、間違いなくゴッホです。

まるっきり芸術の才能はないワタスですが、音楽や美術といった芸術好きのうちの母の影響で、テレ東の『美の巨人たち』は番組名が変わるまで子供の頃から母と一緒に楽しみに観てました。

本物ではなく写真とかテレビでですが、ゴッホの絵に出会ったのは小学生の時。
その眩い色彩と、絵が放つ圧倒的なパワー(生命力や魂の雄叫び)に心底ド肝を抜かれまして、生来病弱な俺は、ゴッホの絵から生きる力を貰ったのでした。
以来、非常ににわかなのですがゴッホの描いた絵が大好きになりました。

ゴッホの作品で特に好きなのは、「星月夜」、「ローヌ河の星月夜」、「夜のカフェテラス」。
個人的に特にゴッホが描く夜の情景は写実的かつファンタジック、それと同時に例に漏れず感情的であり、作品によっては不安になったり、不思議と本当に心が落ち着いたりします。

数年前、そんなゴッホのモノホンの作品が東京に来たわけですが、残念ながら個人的な多忙故に見に行けず…。
そして、好きな俳優さんの一人であるウィレム・デフォーがゴッホを演じた映画『永遠の門 ゴッホが見た未来』も残念ながら観に行けず…。
で、大分前にそのDVDを購入して観ました。
今更ながら、その感想です。


画家のサークルからハブられまくっていた在りし日のゴッホ。
周りの奴らは分かってねぇッ!!と言いつつも、やっぱ友だちが欲しいのであった。

そんな陰キャなゴッホは、ある日、ド陽キャな画家のゴーギャンと意気投合。
ゴーギャンは先進的な物の見方でもって旧態依然とした絵画の世界や社会に猛烈に中指を立てていた。

そんなゴーギャンにノリで薦められるままにゴッホは南仏アルルへとお引越し。
が、やたらと自己主張が強い陰キャなゴッホは見事に地元住民の方々と対立。果てはショタコン呼ばわりまでされてしまうのであった。

それでもめげない我らがゴッホ先生。
そして、弟・テオのバックアップによってゴーギャンとの夢のルームシェア生活が幕を開ける!

ゴーギャンとのシゲキ的な日々はゴッホに無限の創作意欲を引き出した。
が、それも大喧嘩とゴーギャンの旅立ちによって儚くも終わりを告げる……。

そして、ゴッホは「片耳を切り取って友だちのゴーギャンにプレゼントとして無理矢理贈りつけた件」を発生させたため、精神病院へとインされてしまうわけです。
ここで、聖職者役でマッツ・ミケルセンが登場!
今回のマッツは非常に保守的な感じで、ゴッホに「君の絵はワケワカラン下手くそな絵だね」とかなんとか言う超ドSな役です。
が、キリスト教に通じているゴッホに価値観ごとごっそりと根底から論破されてしまうのでした!
ここのマッツとの禅問答みたいなシーンが本当に良いです。
何のために絵を描くのか?という一人の画家としての根本思想についてゴッホが独自の考えを、一切の迷いもなくマッツに話すのです。
もはやそれは神事である、とまでに昇華しているゴッホの意志にコテンパンにやられてしまったマッツ。
その退場の仕方が本当に論破されて一切反論できなくなった人のそれでマッツの演技はやっぱ凄えですよ。

そして、本作は「ゴッホがどの様にしてどんな世界を見ているか」に頑張って挑戦しています。
語彙力皆無で申し訳ないんですが、これが本当に美しい。
ゴッホの心情を色で見事に現しているその映像には圧巻でした。
本作を観た後にゴッホの作品を見たら、あぁなるほどな~ってしみじみ。

そして、ゴッホの報われなかったその短い芸術家生命に涙なみだですよ…(´;ω;`)
ウィレム・デフォーの、本当に難しい役を見事に演じきった感がもうビンビンと伝わってきましたよ。
ウィレム・デフォー演じるゴッホの繊細過ぎるガラスハートっぷりが凄まじいです。
中でも、個人的には引っ越しが決まったゴーギャンに対するあの衝撃的な演技が凄いですね。
視界が暗い青一色となった完全お通夜モードのあそこが本作で一番好きなシーンです。

で、理解者も得られてボク頑張れるかも!なんて人生の新たなスタートを切った矢先に、まさかの地元の少年たちによる銃殺オチというね…。
む、報われねーー!!(´;ω;`)

でも、今こうしてフィンセント・ファン・ゴッホという人の生み出した素晴らしい人類の遺産を我々現代人がごく当たり前のように目にできるのは、テオさん達によるアフターケアがしっかりしていたからなんですよね。


「絵を描く」って、一体どういうことなんだろう…。
本作は、本当に美しかったです。
ゴッホがマッツに芸術家哲学を語るシーンは本当に凄いです。
ゴッホは天国から今の世界を見て何を思っているのでしょうかね…。


で、一点だけ。
劇中、ゴッホの作品が評論家達に一斉に評価されるのですが、彼らの高評価に対して「こいつらなんも分かってねーよ!!(`Д´#)バーカ!!」と当のゴッホがブチギレるんです。
「いや、一応その評価ぐらい受け取っときなさいよ…(´・ω・`)」と思うのは俺が間違っているのでしょうかね…。