梅田ではじめたギャラリーカフェ まそほのつぶやき -5ページ目

まそほ繁盛記

「わははは!ついにやりましたでっ!」
Bは、Gの顔をみるなり言った。
「なんだす?何をまた、そないに嬉しそうに…」
「うちは、ついに素手で鳩を捕獲することに成功しましたんやっ!」
「ええーっ!何てことしますんや!平和の象徴でっせ、鳩て。で?どないして捕食…」
「捕獲ですわ!ほ、か、くあのな、鯉にパンをやってましたんや。そしたら、すぐ横で、物欲しげにしてましたから、試しに手からやってみたんですわ。そしたら食べにきましたさかい、後ろからガバチョと!いっひっひっ!」
「鳩、ものすごびっくりしてましたやろなあ。」
「そらもう…え?え?今、何が起こりましたんや?みたいな顔で、大慌てですわ豆鉄砲どころの騒ぎやおまへんで!ポーポー言うてましたわ!鳩、素手で捕獲するコツ、教えたげまひょか?」
「そんなん、聞きとないけど、一応、耳をかたむけたげますわ。コツてありますのか?」
「躊躇したらあきまへんのやっ!捕まえられるやろか、とか、人目が、とか、色々考えたら失敗しますわ!一気に素早く!あ、これは鳩以外の生き物にも言えますけどな。」
「あんさん、そないに色々捕まえてますのか?次は、割り箸で蝿でも捕まえなはれっ!」
はしし

まそほ繁盛記

Bは、さっきからせっせと針を動かしていた。
「ああ~、お針仕事は肩がこりますわ。」
「さっきから何を作ってはりますのや。」
「へえ、趣味の縫いぐるみ作りですわ。」
「いつの間に、そんな、かいらし趣味、持ちはったんでっか?うち、ちいとも気付かんかったわ!どうせ、また…あっ、馬のようなもんですな?それは。」
「んふふふ…ケンタウルスですわ。まあ、出来上がりを楽しみにしといておくれやす!」
「ふぅん…うちも、何か…そや!ペンギン、もひとつ作りますわ!」
「あのペンギン、ようでけてましたもんなあ!」
「お母はんに、あげますさかいに。」
「きっと、喜びますわ。ああ見えて、けっこう可愛いもんが好きですのや!あと十匹作って欲しいて言うたら怒りますか?並べたら…さぞかし…」
「い、や、だ、す!もっかい言いますけど、絶対いやだす!自分で作んなはれ!これ、大変ですのやっ!だんだん飽きてくるし!」
「やっぱり、あきまへんか!……さあ、出来上がりましたで、ケンタウルス!」「どれどれ…うっ…な、なんだす、この顔。」
「よく出来てますやろ?」「うちは、てっきり、もっとこう…中性的な…もっと…美しいもんを…想像してましたんや。それが、なんで…」
「なんで?ええですやろ?大滝しゅうじ、に、そっくりですやろ?な?」
「そうきたか!っちゅう感じですわ!これをお母はんにあげなはれ!」
「嫌がりますがな!」
づんづん

まそほ繁盛記

「あのなあ…」
Bは、食べかけのパンを見つめながら口を開いた。
「へぇ、なんだす?」
「お母はんの入院してる病院の前にな、池がおますのや!そこに、ぎょうさんの鯉がおりましてなあ。」
「錦鯉でっか?」
「きちゃない色の、ただの鯉ですわ。けど、そんなかに金に輝く鯉がおりましてな…」
「へぇぇ…」
「うちな、毎日、かえりしなに、母親の食べ残したパンをやるんやけど、ちょっとした占いをするんですわ。」
「どんな?」
「金の鯉が上手くパンを食べられたら、お母はんの病気は、きっと良くなる、て」
「あほですか?あほですやろ?なあ?大事なお母はんの命運を鯉なんかに託しなはんなっ!それやったら、あんさんの大好物、断ちなはれっ!そのほうが、ききめありますわ!」
「えぇ~…それやったら、うち、外壁に蔦の葉っぱを描いたほうが…」
「オーヘンリーでっか?
描くんやったら、本物そっくりに描かんとあきまへんで。絵、下手くそなくせによう、そないな事言いますなあ!病気のおっかさんも気の毒ですなあ!」
「あ、あの池に、一匹だけ白い亀が…」
「もうよろし」
びびひ

まそほ繁盛記

女将達は、頭を抱えていた。
「うーん…って、よく漫画のふきだしに書いてありますけど、実際、考えるときうーん、なんか言いまへんやろ?」
「ひとりでは言いまへんな。なんか聞かれたら、うーんて、言うかもしれまへんけどなあ。うーん談義をしてても始まりまへんわ!11月三日のイベントのアーチスト、探さんと…せっかく、又、お隣りさんとやるんやから、気合い入れて探しまひょ!」
「あっ!なあGはん!こないだ道でみかけた人に、声かけてみまひょ!ちらっと聞いただけやけど、ええ声してはりましたがな!」
「あの人、どこの国の人やろ!ラテンな感じでしたけどな。ほな、さっそく、今日の帰りしな、いてはったら声かけてみますか?」
………………………………いきなりだが、6時間後。「ペルーの人やったんや。ま、とにかく、明日店に来てくれるみたいやし、詳しい話を聞かせてもらいまひょ!」
「しっとりした、ええ声してはりますわ!スペイン語うまいし!」
「あたりまえやっ!日本語も上手かったやないですか。ところで、ペルーて、どこにありますのや?細長い国でしたな、確か。」
「それは、チリやっ!インカ帝国のあったとこですやろ。」
「コンドルが飛んでんのやろか。ナスカの地上絵の上を。」
「うちらのイメージも貧しいですなあ。」
づづき

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「二胡の演奏、よかったですなあ。」
「最初のほう、ものすごく緊張してはったみたいやけど、心のこもった演奏でしたわ。」
「楽器、演奏出来たらええですなあ…。」
Bは、しみじみ呟いた。
「しみじみしなはんな。気色悪い。あんさんは、ほらでも吹いときなはれっ!」「ほな、うちのほらに合わせて、あんさんは大風呂敷でも広げてくれますか?」「あほなこと言うてんと、エコバッグ展の作品、仕上げんとあきまへんがな!」「そやなっ!いつ何時でも全力でせえへんことには!」
「まあ、今回は、いつもより小ぶりですしな!」
「うちは、売る気まんまんやでっ!」
Gは、呆れた表情でBを見た。
「あんさん、本気で言うてはりますのか?まあ、勝手に値段付けたらよろしいけどなっ。はっきり言うて、売れまへんで、こんな代物!もし売れたら、うち、手術して、耳を頭のてっぺんにつけたげますわ!」
「そんなん、わかりまへんで!バッグとして持ち歩くのはあかんかも知れんけど、部屋のインテリアとして又は御贈答用品として…もしくは…」
「もしくは、粗大ごみとしてっ!うひゃひゃひゃ!エコとは、ほど遠くなってますがな!」
たたた

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「ああー、疲れましたわあー」
Gが店に着いたのは、1時半だった。
「ほんまに、JRのせいで…家出てから三時間は、かかりましたわっ!」
「長旅、お疲れさんですなあ。お昼ご飯、食べまひょか!」
「その前に、コーヒー飲みますわ!あんさんの方は、どないでっか?お母はん。」
「まあ…なあ…相変わらずですわ!」
「救急車にも、なれましたやろ?」
「ほんまですわ!うちと妹のフォーメーションは、もはや『美』と言っても過言やおまへんで!入院セットもバッチリですわぁ~!ふはははは…」
「夜、寝てますか?」
「電話がなるたびに、ドキドキして、頭が、白髪になりそうでっせ!こらあかん思て、今日、鳥、丸々一羽買うてきましたんや!蓮の葉に包んで蒸して食べまひょなっ!ビールで乾杯しまひょなっ!」
「なんで、乾杯?」
「昔、読んだ本に書いてありましたんや!苦しい出来事が起こった時は、『ああ、これで自分に起こる悪い事は全て起こったから、これからは良くなるに違いない』と、思って、祝ってしもたらええて!その本、読んで、うちは、赤飯炊きましたんやで!昔の、あの、つらかった時に!」
「そうでしたんか…そしたら、シャンパンでも、スポーンと開けますか!」
「いや…シャンパンまでは…まっ、明日の二胡の演奏で楽しいひとときを過ごしますわ!」
るりり

まそほ繁盛記

「すんません、Gはん、今日は休ませてもらいますわ。」
受話器から聞こえるBの声は、焦っていた。
「お母はん、どないかしはりましたんか?」
「朝、トイレに行こうとしましたんや。そしたら、もう左足が動きまへんのや。妹夫婦と三人がかりで、やっと連れていきましたんやけど、もう歩いて病院いけまへんから、救急車よびましたんや。とりあえず、詳しい事は、また連絡いれますさかいに、店のほう頼んますわ!」
「へえ、わかりました!心配せんと、お母はんについときなはれ!」
「おおきに…あっピーポーピーポー聞こえてきましたわ!ほな!」
Gは、Bの母親の事をよく知っていた。
それだけに、気掛かりだったが、店で連絡を待っているしかなかった。
2時頃、電話がなった。
「びくうっ!ああ、びっくりした!思わず声に出して言うてしまいましたがな!はい、まそほでございます!ふんふん、どないでっか?」
「検査、終わりましてな、入院ですわ!腦梗塞ですわ!もう~、うち、ぐったりですわ!意識はありますさかい、今日明日、どうこういうんやないやろけど…」「少し安心ですなあ、けどお母はん、悪いとこだらけでリスク高い身体やから…」
「ほんまやっ!うち二日ほど寝てまへんのやで!今やったら御飯十杯でも食べられそうや!あはははは!もう笑うしかおまへんわ!」「笑いが出るんやったら、まだ大丈夫ですわ!踏ん張りなはれ!」
「明日は行きますわ!ケケケケケ!」
「…少しねなはれ。」
つづかす

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「ああ…Gはん!おはようさんだす。どないですか?身体の具合は。」
「へぇ、昨日はすんませんでしたなあ、休んでしまいまして。もぅ、ずーと寝たきりですわ。熱はさがりましたけど身体の節々が痛うて…ぎくしゃくしますのや!歩いてる姿は、木の人形みたいですわ。」
「ぷっ!でくのぼう、ですな。」
「なんとでも、どうとでもいいなはれ。うちは、元気おまへんわ。」
「まあ、お茶でも飲みなはれ。」
Bは、グラスに冷たいお茶を注いだ。
「あ、聞いとくなはれっ!Gはんが早退しはった日なあ、うち、家に帰ってから母親と喋ってましたんや。内容はまあ、しょうもないことですけど、そんなん、どうでもええんですわ。喋ってたら頭の後ろがムズムズしましたんや!何やろ、と思て、手で触ってみたら明らかに髪の毛と違う感触がな…」
「ふんふん、それで?」
「母親に、見てくれ、言うたんですわ。そしたら、母親が、ひゃあ、て叫びましてな、うち、あわてて手で払いましたら、なんとカナブンが三匹も落ちてきましたんや!」
「あははははっ!三匹もでっか?」
「三匹も!母親なんか、フンコロガシや、て言うんでっせ!基本の知識がなってませんやろ?スカラベもカナブンもいっしょくたですわ。」
「けど、三匹もひっつくのは腑に落ちまへんなあ。うちは、こう考えます。」
「どう考えるんだすか?」「カナブンはあんさんの頭ん中からわいてきたんですわ!間違いおまへん!」
「あんさん病み上がりやなかったら、その口にカナブン詰めてるとこやでっ!」ぶぶぶ

まそほ繁盛記

「うぅ…おはようさんだすぅ…」
Gが、へろへろになりながらやってきた。
「どないしはりましたんや?顔色、悪いでっせ!」
「電車降りたとたんに、ものすご、しんどなりましてな…あかん…うち…今日は…」
そう言うなり、Gは、ぐったりとテーブルの上に突っ伏した。
「大変や!ねときなはれ!ねときなはれ!ああっ!こんな時に、お客さんですわ!え?ナシゴレンですか?わかりました。あっ、Gはん、大丈夫でっか?」
「ぅぅ…」
その客が帰ったあと、とうとうGは寝たきりになってしまった。
どこに寝たきりかというと、椅子を三つよせあつめて作った簡易ベッドにである。
「さあ、これっ!枕にしなはれっ!」
「ぅ…ぅ…」
Gはガタガタ震えはじめた。
「寒い…頭が熱いし…」
「いま、いま、頭冷やしたげますわっ!なんか…ないやろか…適当なもん…ああこれやっ!」
Gは冷蔵庫からとりだしたものをタオルにくるんだ。「さあ、Gはん!頭に乗せたげまひょ!」
「こ、れ、は…うちが持ってきた鯖やおまへんかあ…やめ…ぅ…ぅ…」
「あああ…ますます…具合が悪く…え?何言うてはるんでっか?」
「空蝉の…」
「いややあっ!Gはんっ!まるで、辞世の句!Gはんっ!しっかりしなはれっ!」
夜になり、Gは迎えに来た家族の車で帰っていった。明日はどうなる!
つづくう

まそほ繁盛記

「はあぁ~…おはようさんだすぅ~」
Gが、ぐったりとした顔で入ってきた。
「おはようさんです!暑いですやろ?外は。」
「へぇ、そらもぉ、尋常やおまへんで。…あ、そうやうち、休みにちょっと出かけましたんやけど…これ、お土産ですわ!」
「なんだす?魚の一夜干しみたいですけど。」
「うつぼですわ!珍しいさかいに、買うてきましたんや!」
「おおきに!あっそやっ!うちもお土産がありますのや!ほらっ!」
Bは長細い物を差し出した。
「麸やないですか!長いですなあ。おいしん棒てかいてありまっせ!また、てきとうな名前…」
「長いから、棒て、つけましたんやろ。からまん棒とおんなじ発送ですわな。まだ、うまい棒のほうがオリジナリティとセンスが感じられますわ。おいしい棒て…しょせん、麸のくせに。」
「あんさんが買うてきたくせに、ぼろかす言いますなあ。」
「あまりにも長いさかいに思わず買うたんですわ。」「ほな、あんさんやったらこの麸に、どんな商品名をつけますか?購買意欲をそそられるような名前を考えてみなはれ!」
「えぇ~、力はいりまへんなあ。麸やし。あっ、これはどないだす?麸ぅ、あー、湯ぅー。へっへっ」
「しょうもなあ!なんか汁物にしか使われへん感じしてますがな!おいしい棒の勝ちや!」
ふふふ