キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩
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第2次世界大戦下のウクライナ(当時はポーランド領)を舞台に、同じ屋根の下に暮らす互いに民族や文化の異なる3家族が離散の運命をたどるさまを描いたドラマ映画です。出演はヤナ・コロリョーヴァ、アンドレイ・モストレンコ、ポリナ・グロモヴァ、ヨアンナ・オポズダ、ミロスワフ・ハニシェフスキ他。
ウクライナ人の「ロシア憎し」の気持ちの表現がストレートすぎるのはちょっと気になりましたが、実際にこういうこともあったんだろうなと思える説得力はありました。
ただ、尺があまりに足りない…。
終盤は駆け足で、様々なことが放置されたまま、ぶつ切りのように終了…。
もうちょっと丁寧に描いて欲しかったなぁ…。
最も過酷で残酷な部分を敢えて描かない意図は分かりますけど…。
好みの題材だっただけに生煮え感でいっぱい。
重度の肥満症の引きこもり男性の魂の再生を描いたドラマ映画です。主演はブレンダン・フレイザー、共演はホン・チャウ、セイディー・シンク、サマンサ・モートン、タイ・シンプキンス他。主演のブレンダン・フレイザーが第95回アカデミー賞で主演男優賞を受賞しています。
複雑な気分になる映画でした。
いくらでも「御涙頂戴の感動ドラマ」にできる題材を敢えてそうせず、むしろ自己中心的で不愉快な登場人物たちが繰り広げる醜い物語として描きながら、それでも最後にはちょっとした感動があるという不思議な作品。
が、その感動はわかりやすものではないし、スッキリはしないので、もやもやした不快感は残ります。
また、主人公のキャラクター造形としても、そのダメなところも含めて理解はできるし、共感できるところもあるのですが、結局は自己満足でしかないので、この点でも観終わった後にはしこりが残ります。
とにかく、自分にとって観て良かったと素直に思えたのは、キリスト教徒の傲慢さを醜く描き、キリスト教を全否定しているところくらいでしょうか…。ここは本当に痛快でした![]()
中国出身の移民で夫とコインランドリーを営む平凡な主婦が全宇宙を守るための戦いに挑む姿を描いたSFファンタジーコメディです。主演はミシェル・ヨー、共演はキー・ホイ・クァン、ジェイミー・リー・カーティス、ステファニー・スー、ジェームズ・ホン、ハリー・シャム・ジュニア他。
→ Wikipedia「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
観ていてただただ自分の「老い」を感じる映画でした。
パラレルワールドを題材にした作品は古今東西これまでにもいくらでもあり、過去のそれらの作品と基本的に変わらない話であるにもかかわらず、見せ方を工夫するなど、アイデアはとても面白い。
また、当事者にとっては大きな問題でも、世界全体から見れば些細な問題を「世界の危機」といった大きな問題に直接繋げて描くという、いわゆる「セカイ系」の物語を平凡な中年女性を主人公にして描くのもいい。
が、ディテールや演出、テンポの全てが自分の生理に全く合わず、最後まで不快感しかなく…。
もともと「セカイ系」の話が苦手なのもありますが、自分がもうちょっと若ければ、感じ方は相当に違っていたんじゃないかと思うと、「この映画を楽しむには自分は年を取りすぎた…」としか思えず…。
とにかく「not for me」な映画でした。
ちなみに、役者の演技の点では主演のミシェル・ヨーも良かったですが、それ以上にキー・ホイ・クァンの「演じ分け」が印象的でした。
フランスのSF作家ステファン・ウルの長編小説「オム族がいっぱい」を、漫画家ローラン・トポールの絵でアニメ化した、フランス・チェコスロヴァキア合作のファンタジー映画です。声の出演はジャン・ヴァルモン、ジェニファー・ドレイク、エリク・ボージャン、ジャン・トパール、イヴ・バルサク、ジェラルド・ヘルナンデス他。
ストーリーは、原作を読んでいるとか解説を読まないとよくわからないのですが、そもそもこの映画の作り手はストーリーを理解させようという意図はなさそう。
とにかくストーリーよりも、グロテスクで猛烈に気持ち悪いシュールレアリスティックな「絵画」がそのまま動いている映像の見事さにただただ感服。
イラストレーターで漫画家のローラン・トポールの世界を堪能するアート作品としては充分な出来。
観る前の予想よりも気に入りました (^^)v
連れ去られた婚約者を奪い返すために強盗団を追い詰めていく男を描いたラオール・ウォルシュ監督による西部劇です。 主演はロック・ハドソン、共演はドナ・リード、フィリップ・ケイリー、リー・マービン他。
ここまで何一つ褒められるところがない映画を、ラオール・ウォルシュ監督が撮り、ロック・ハドソンが主演していることに、ただ驚くしかない。
異世界を舞台に、2つの大国の間で起きた戦争に巻き込まれた2組の若い男女の運命を描いたファンタジー映画です。声の出演は古谷徹さん、神田和佳さん、井上和彦さん、松井菜桜子さん、斉藤昌さん、若本紀昭さん、柴田秀勝さん、吉田理保子さん他。
公開当時に観て、その後も何度か観ていますが、30数年ぶりに全編通しで観てみました。
今観ても、その作画レベルの高さには惚れ惚れするばかり。
作画監督も務めたいのまたむつみさんのキャラクターデザインはとにかく美麗だし、その魅力をあますところなく見せてくれる「いのまたむつみの映画」という感じ。
ただ、ストーリーは童話や民話を想定しているので仕方ない部分もあるものの、ツッコミどころ満載 (^^;;;
また、メインのキャラクターに限らず、ほぼ全ての登場人物がことごとく「思慮の足りない」キャラクターなのには![]()
「雨月物語」の「浅茅が宿」をモチーフにしているのなら、村の若夫婦の話だけにして、王女と王子の「ロミオとジュリエット」風の悲恋物語はなくしてしまい、もっとファンタジー色を強めた方がよかったんじゃないかなと思ったり。戦争部分だけ妙にリアルなのもアンバランスで違和感。
とにかく、当時のトップレベルの作画を楽しめばOKの映画です。
「源氏物語」全五十四帖のうち、夕顔との出会いから須磨に向かう前夜までを描いたアニメーション映画です。声の出演は風間杜夫さん、大原麗子さん、梶三和子さん、田島令子さん、風吹ジュンさん、萩尾みどりさん、横山めぐみさん、常田富士男さん他。
劇場公開時に観て、その後も何回かは観ているのですが、全編をちゃんと観るのは30数年ぶり。改めてその映像美にうっとり。
林静一さんの原案をもとに、作画監督でもある名倉靖博さんがデザインしたキャラクターのビジュアルは、時代考証からすると現実離れしているのですが、そんなことなどどうでもいいと思えてしまうほど美しく、作品の世界観にぴったり。細野晴臣さんの音楽も、杉井ギサブローの演出も全てがとにかく美しい…。
劇場公開当時も思ったのですが、同じスタッフ&キャストで、その後を含め、全五十四帖を映像化して欲しかった…。
オードリー・ヘプバーン主演、ビリー・ワイルダー監督の映画「麗しのサブリナ」('54) のリメイクとなるロマンティックコメディです。主演はハリソン・フォード、ジュリア・オーモンド、共演はグレッグ・キニア、ジョン・ウッド、ナンシー・マーシャン、アンジー・ディキンソン他。
この映画の存在は公開当時から知っていましたが、「麗しのサブリナ」があまりに好きすぎて、とても観るに気になれなかったのです。
どう考えても、1950年代という舞台設定とオードリー・ヘプバーンの存在があって初めて成立する「おとぎ話」を1990年代を舞台にリメイクするなんて無理がありますから。
実際に観てみると、大まかなストーリーの流れは同じですが、細かいところで「頑張って」1990年代らしくアレンジしていて、そのアレンジの仕方には「なるほど」と思えるところもあります。それでも、やはり予想通りに無理矢理な不自然さは否めず。
イギリス出身のジュリア・オーモンドはヨーロッパの女優らしいエレガンスがあるのはいいのですが、当時既に20代後半で実年齢相応のルックスの彼女では、サブリナの最大の魅力である「大人の女性になりかけの純粋な女の子」を演じるのには無理があります。
ハリソン・フォードは![]()
また、コメディが得意なグレッグ・キニアも本来のルックスの良さを活かしていてかなり好演しています。
ただ、洒落たコメディを得意としていたビリー・ワイルダー監督と比べると、シドニー・ポラック監督の演出はテンポが悪くて全く笑えず。
映画全体としては決して悪い出来だとは思わないのですが、やはり「麗しのサブリナ」には遠く及びませんでした。
元警察官ヨルン・リーエル・ホルストによる小説「ヴィスティング」シリーズを原作とし、ノルウェーの首都オスロ南西部の海辺にある小さな町ラルヴィクを舞台に、殺人事件の謎に挑む刑事ヴィスティングを描いたサスペンスドラマシリーズ全10話です。主演はスヴェーン・ノルディン、共演はキャリー=アン・モス、テア・グリーン・ルンドバーグ、マッツ・オウスダル、ヒャシュティ・サンダル、ラーシュ・バルゲ、ウルリッケ・ハンセン・ドーヴィゲン、イリーナ・アイツヴォル・トゥイエン他。
元警察官が書いた小説が原作のせいか、事件の過激さに比べて捜査の描き方はかなり地味。
主人公は屈強そうな見た目ながら、刑事としては取り立てて腕っ節が強いわけでもなく、鋭い観察力や推理力があるわけでもなく、真面目に精力的に動き回っている中で何となく重要な情報を手に入れて事件解決に至る…。ある意味でリアルではあるのですが、活躍しているようで実は大して活躍していない主人公というのはちょっと新鮮な感じ (^^;;;
好みで言えば、取り立てて魅力的な登場人物がいないのが難点ですが、刑事ドラマとしては充分に楽しめました (^^)v
エレガンス・ブラットン監督が自身の実体験をもとに、自らの居場所を求めて海兵隊に志願入隊したゲイの青年の運命を描いたドラマ映画です。主演はジェレミー・ポープ、共演はガブリエル・ユニオン、ラウル・カスティーヨ、マコール・ロンバルディ、アーロン・ドミンゲス他。
1979年生まれのエレガンス・ブラットン監督が自らの実体験をもとにしているだけあって、2000年代半ば、今から20年ほど前の海兵隊の訓練の描き方はとてもリアルに感じました。もちろん、実際の訓練を知っているわけではないので、あくまで「イメージ」ですけどね。
入隊前の訓練を描いた映画はこれまでにも無数にあり、多くは一貫して厳しく過酷な訓練、場合によっては「いじめ」の様子を描いていますが、本作の場合はそれに加えて、2000年代半ばという時代背景もあり、教官の中には寛容で心優しく公正な人物もいたり、その教官にゲイの主人公が恋心を抱いてしまったりするのは新鮮。
主人公にそれまで散々嫌がらせをしていた連中が最終的に主人公を丸ごと受け入れる流れはちょっと陳腐でしたけどね (^^;;;
しかし、最も印象に残ったのは、主人公に深い愛情を持ちつつも、信仰のために主人公をどうしても受け入れることができない母親の姿。そして、そんな母親との関係を断ち切ろうとはせず、まっすぐに母親を愛し続ける主人公の姿。
主人公の姿勢を「間違っている」とまでは思いませんが、こういう母親に対しては、母親の方が考えを改めるまでは縁を切った方がいいと思うんですよね。主人公も、そのモデルとなったエレガンス・ブラットン監督も、16歳から10年もホームレス生活を送るくらい母親とは実質的に絶縁状態だったわけですし。
母親をひたすら愛し続ける主人公の姿は切なくも美しいですが、同じように「自分の居場所に悩んでいる若者」に対して、ちょっと「間違ったメッセージ」を送っているというか、「何があっても親を捨ててはいけない」との圧力をかけているように見えてしまったのです。その点はかなり気になってしまいました。