Marc のぷーたろー日記 -63ページ目

「ロストケア」('23)

 

葉真中顕さんの小説「ロスト・ケア」を原作とし、42人の老人を殺した男性介護士と、女性検事の対峙を描いた社会派映画です。主演は松山ケンイチさん、長澤まさみさん、共演は鈴鹿央士さん、坂井真紀さん、戸田菜穂さん、藤田弓子さん、柄本明さん他。

 

Wikipedia「ロスト・ケア」

 

観る前からわかってはいましたが、ただただ辛い映画でした…。

 

主人公の行なった犯罪自体は到底許されるものではないですが、その一方で介護に疲れた家族による心中や殺人は当たり前のように起きているのも事実。そういった悲惨な事件が起きて大きく報道された時は世の中も介護の深刻さに目を向けますが、それも一瞬。すぐに「忘れられる」、というよりも「見たくないものから目を背ける」のが世の中というもの。

 

「老い」を意識せざるを得なくなった今の自分には本当に身につまされる話でした。

 

ただ、新米介護士の若い女性の「その後」はあまりに陳腐で薄っぺらいのでわざわざ描く必要はなかったように思います。そこだけが残念。

「ビーチホテル2」('23)

 

ビーチホテルでの祝賀会で起きた事故の裏に隠された陰謀渦巻く秘密を描いたスウェーデンのソープオペラ風サスペンスドラマ「ビーチホテル」('23) の続編全8話です。主演はソフィーア・カーレミール、共演はフィリップ・ウルフ・スンネソン、サムエル・フルーレル、イリーナ・アイツヴォル・トゥイエン、イェニー・ウルヴィング・マッケイブ、ロジャン・テロ他。

 

前のシリーズが全8話もありながら、ダラダラと全く話が進まないという心底つまらない内容だったのに比べて、今回は「完結編」だけあって話がちゃんと進んだだけだいぶマシな出来。

 

それでも、真犯人は最初から見え見えだし、あれだけ身近な人が殺されても、すぐに立ち直っちゃう登場人物たちの呑気さを含め、人物描写がことごとくテキトーで薄っぺらいのには呆れます。

 

そして何より、主人公と元恋人の2人が最後の最後まで「悲劇の主人公としての自分に酔いしれてるだけの人間のクズ」のままというのも、敢えてなんでしょうけど、ヒドいストーリー。

 

関連記事

「ジュラシック・サバイブ」('18)

 

凶暴な恐竜たちが支配する原始の惑星に墜落した宇宙船の生存者たちのサバイバルを描いたSFアクションです。主演はエリック・ポール・エリクソン、マディソン・ウエスト、共演はジョナサン・ネイション、タマラ・ステイヤー、ドグ・バーチ、フランキー・レイ他。

 

B級どころか、C級以下の映画であることは観る前からわかっていたので、そのあまりにしょぼい映像も雑なストーリーも全く気にならないし、むしろそのダメさは笑えるレベル (^^)

 

それよりも、低予算であることを補うために、ものすごく頑張っている「手作り感」には感心。

 

本来は必要なシーンでも、金のかかるシーンは、カメラワークや編集などを工夫して、観ている側が気にならないようにうまく省いています。

 

とにかく、映画としての出来は学園祭の出し物レベルではありますが、その工夫と頑張りには賛辞を送りたいです (^^)v

「空気殺人〜TOXIC〜」('22)

 

加湿器殺菌剤が原因で多くの人が命を落とした韓国の事件を題材にした社会派サスペンスです。主演はキム・サンギョンさん、共演はイ・ソンビンさん、ユン・ギョンホさん、チャン・グァンさん、ソン・ヨンギュさん、ソ・ヨンヒさん他。

 

輝国山人の韓国映画「空気殺人 TOXIC」

 

この映画が完全なフィクション、もしくは実話から着想を得ただけのフィクションであるとあらかじめ明言してくれていたなら納得が行きます。

 

終盤のどんでん返しも、最終的に美味しいところを全てかっさらっていく「悪役」のキャラクターも娯楽映画なら「あり」だと思います。

 

しかし、監督自らが

単純な社会告発映画ではなく、この悲劇が二度と起こらないように忠実に記録し、親近感を与える映画にしたいと思いました。

と述べているとなると話は別。いくらなんでも無理があります。

 

実際に亡くなった方が大勢いて、今もまだ進行中の社会問題を描くにあたって、どうしてここまで「娯楽映画」的な表現にしてしまったのか、少なくとも自分は全く納得が行きませんでした。

「高速道路家族」('22)

 

高速道路のサービスエリアで、ドライバー相手に少額の詐欺を重ねながら暮らすホームレス一家の行く末を描いたサスペンスドラマ映画です。主演はチョン・イルさん、ラ・ミランさん、共演はキム・スルギさん、ペク・ヒョンジンさん、ソ・イースさん、パク・タオンさん他。

 

輝国山人の韓国映画「高速道路家族」

 

予想していた内容とは「ニュアンス」が違い、それが映画として「ダメ」とは思わないまでも、最後まで違和感として残ってしまい、観終わった後にもやもやしたものが残る映画でした。

 

観る前は、貧困や福祉といった社会的な問題を扱った「社会派映画」を予想していて、確かに題材としては「社会派」なのですが、そういった要素は「感動的な物語」を描くための道具でしかなく、深刻な社会問題について「間違ったメッセージ」を送っているようにしか見えなかったのです。

 

とにかく「感動的な物語」として描こうとするあまり、ホームレス一家の「家族愛」を必要以上に美化して「可哀想な家族」として描き、実際には親の身勝手による子供たちに対する深刻な虐待でしかないことを曖昧に誤魔化しているように見えてしまうのです。また、警察の無能ぶりなど、ところどころに挟み込まれるコミカルな要素が自分にはただただ不快でしかありませんでした。

 

単なる娯楽映画というか、一種の「ファンタジー」と割り切れば、それもありなのかもしれませんが、題材の深刻さに対して不謹慎に見えてしまったのです。

「告白、あるいは完璧な弁護」('22)

 

「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」('16) の韓国版リメイクで、不倫相手の女性の密室殺人の容疑者となった実業家を無罪にするために、彼に雇われた敏腕弁護士の女性が事件の真相に迫るさまを描いたサスペンススリラーです。主演はソ・ジソブさん、キム・ユンジンさん、共演はナナさん、チェ・グァンイルさん、ソ・ヨンジュさん他。

 

輝国山人の韓国映画「告白、あるいは完璧な弁護」

 

原作となるスペイン映画「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」('16) も、そのイタリア版リメイク「インビジブル・ウィットネス 見えない目撃者」('18) も、どちらも観たことがない、特に韓国の観客には、この韓国版リメイクで追加された終盤のシーンは違和感なく受け入れられるのかもしれません。しかし、前の2作を観た者としては「蛇足」というか、普通の韓国のサスペンス映画になっちゃったなという感じ。韓国映画らしい決着の付け方でダメというわけではないですけどね…。

 

それに主演のソ・ジソブさんの本来の持ち味とも言える「常に悲しそうな顔で可哀想な雰囲気」からは、主人公の成り上がり者としての傲慢さが感じられず、役の設定として違和感が拭えず…。演技自体は悪くないんですけどね…。

 

改めて「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」の主演マリオ・カサスの善人にも悪人にも見える容姿が如何にこの役に合っているかを確認した気分。

 

関連記事

「ワース 命の値段」('20)

 

アメリカ同時多発テロ事件の被害者救済のための国家的補償事業に取り組む弁護士団が直面した難題を、実話に基づいて描いたドラマ映画です。主演はマイケル・キートン、共演はスタンリー・トゥッチ、エイミー・ライアン、テイト・ドノヴァン、ローラ・ベナンティ他。

 

Wikipedia「ワース 命の値段」

 

予想していた内容とはちょっと違いました。

 

主人公であるケネス(ケン)・ファインバーグ本人の回想録をもとにしているので、主人公を好感の持てるキャラクターとして描いていると思っていたのですが、絵に描いたような「米国の白人男性エリート」らしい傲慢な人物として描いているのは意外でした。もちろん「悪役」とまでは言えませんし、むしろ本来は善良な人物なのだと思うのですが、マイケル・キートンが演じていることもあって、かなり悪役度が高く見えました。もちろん、これは作り手の狙い通りで、そういった人物が最終的に人間味のある信頼できる人物に変わっていく姿こそがこの映画の最も描きたいところなのでしょう。

 

普通なら、スタンリー・トゥッチ扮する被害者遺族グループのリーダー格の男性を主人公にすると思うのですが、敢えて「悪役」の位置にいる人物を主人公にしているのは確かに新鮮。でも、本当にそれで良かったのかなぁ…と観終わった後には、もやもやしたものが残りました。もちろん、映画自体は胸に迫るシーンが多々あり、「良い映画」だとは思います。

「死刑にいたる病」('22)

 

24人の少年少女を殺害した罪で死刑判決を受けた連続殺人犯が無実を主張する「最後の事件」の真相を探ることになった大学生を描いたサイコスリラーです。主演は阿部サダヲさん、岡田健史(現:水上恒司)さん、共演は岩田剛典さん、宮崎優さん、鈴木卓爾さん、佐藤玲さん、中山美穂さん他。

 

Wikipedia「死刑にいたる病」

 

この手のサイコパスを題材にしたサスペンスを観慣れた目には特に新鮮味のある内容ではないですし、事件の真相も結末にも意外性は全くありませんでした。

 

それでも、阿部サダヲさんの個性を活かしたハマりぶりだけで充分に楽しめましたし、心象風景と現実を混在させた演出も(特に目新しいわけではないですが)舞台劇っぽくて印象的でした。

「銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー」('98)

 

松本零士さんの人気SF漫画「銀河鉄道999」の劇場版第3作です。声の出演は野沢雅子さん、池田昌子さん、肝付兼太さん、榊原良子さん、戸田恵子さん、日高のり子さん、たてかべ和也さん、皆口裕子さん他。

 

Wikipedia「銀河鉄道999 (アニメ)」

 

劇場版は第1作も第2作も観ていますが、この3作目は存在自体も知りませんでした (^^;;;

 

公開当時に大コケしたらしく、そのため翌年に公開予定だった完結編の製作が中止になったそうですが、実際に観てみて大いに納得。

 

確かに松本零士さんの絵のタッチをそのまま活かした作画は美麗だし、映像面では文句なしなのですが、「序章」にもなっていない、ただのプロローグだけで1本の映画として公開しちゃう商魂逞しい厚顔無恥ぶりには呆れます。これじゃファンもソッポを向きますよ。

 

こんな馬鹿馬鹿しいやり方のせいで、原作の「エターナル編」の映像化が潰えてしまったのは本当に残念でなりません。本当にそれだけです。

 

関連記事

「アダマン号に乗って」('23)

 

パリのセーヌ川に浮かぶユニークなデイケア施設の船で、個性豊かな人々が交歓するさまを描いたドキュメンタリー映画です。

 

ナレーションは全くなく、無料のデイケア施設に集まった精神疾患のある人々の姿や彼らへのインタビューを淡々と見せるだけ。物語的抑揚は全くないにもかかわらず、最後まで飽きることなく観ることができたのは、それこそが作り手の手腕なのでしょう。

 

ただ、感想をどのように述べるべきか大いに悩む内容でした…。

 

同じ題材でも日本なら精神疾患のある人の姿にモザイクをかけ、声も変えるのではないかと思うのですが、この映画ではそういった「加工」なしにそのまま見せているのです。

 

もちろん、精神疾患のある人たちに対する世の中の偏見をなくしたいとの意図があるのでしょうが、フランスでも現実には偏見が根強くあることは映画の中でも当事者から語られていますし、見せ方として本当にこれでよかったのだろうかという思いに。

 

こういう「素晴らしい」施設が存在することを広く知らしめるのが目的であれば、その意図は間違いなく果たしているとは思いますけど…。