Marc のぷーたろー日記 -4ページ目

「あの歌を憶えている」('23)

 

過去の忌まわしい記憶に苛まれているシングルマザーと若年性認知症による記憶障害がある中年男性が次第に惹かれ合っていくさまを描いたドラマ映画です。主演はジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード、共演はメリット・ウェヴァー、ブルック・ティンバー、エルシー・フィッシャー他。

 

記憶に苛まれる女と記憶に難のある男の組み合わせは「なるほど」とは思います。

 

が、現実に存在する問題の都合のいい部分だけを取り出し、美化して描いていることに強い違和感。

 

中でも、記憶障害の男の描き方があまりに都合が良すぎ。一緒に暮らす家族の苦労や苦悩をほとんど全く描かないのも不誠実だし、特に弟を悪役のように描くセンスは最悪。

 

僕はこの映画を完全に否定します。

「僕はキャプテン」('23)

 

アフリカのセネガルに暮らす10代の青年2人が、豊かな生活を求めてヨーロッパ目指して旅に出るさまを描いたドラマ映画です。主演はセイドゥ・サール、共演はムスタファ・ファル、イシェーム・ヤクビ他。

 

マッテオ・ガローネ監督の作品だけあって観応えは充分。現実の厳しさを描きつつも、冒険映画的娯楽性もしっかりあり、第80回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞したのも大いに納得。

 

ただ、果たして今の時代に作るべき映画なのだろうかという疑問も。

 

ここで描かれている問題は昔からある話であり、それを世の中に知らしめようという目的なら、10年以上前に作るべきだったと思うのです。

 

そして、不法移民の問題によって大きな分断が生まれている現在の世界情勢の中で「これだけ苦労してやって来たのだから、不法移民でも歓待すべき」と訴えているように見えてしまう映画を作って本当に良かったんでしょうか? あまりに naive だし、分かっていて敢えてやっているのだとしたら、この映画の「その後」までしっかり描かなければ不充分ですし、不誠実でしょう。

「ヴェルミリオ」('24)

 

第2次世界大戦末期、アルプス高地にある北イタリアの山間の村ヴェルミリオを舞台に、そこで暮らす学校教師の大家族が織り成す人間模様を描いたドラマ映画です。出演はトンマーゾ・ラーニョ、ジュゼッペ・デ・ドメニコ、ロベルタ・ロヴェッリ、マルティナ・スクリンツィ、カルロッタ・ガンバ他。

 

1940年代から1950年代のイタリアの「ネオレアリズモ」を思わせる、「イタリア映画らしいイタリア映画」を観た気分。

 

とんでもなく劇的なことが起きているにもかかわらず、感情表現にしろ、その見せ方にしろ、極めて抑制的で現実的。その控えめさが一段と心に響きます。

 

お勧め。

「What Happens Next」('11)

 

結婚とも恋愛とも無縁のまま仕事一筋に生きてきた55歳の男性が、自ら創業した会社を売却して引退した後、予想外の恋に落ちて戸惑うさまを描いたロマンティックコメディです。主演はジョン・リンドストローム、共演はクリス・マーラー、ウェンディ・マリック、ナタリア・シグリウティ、キンバリー・S・フェアバンクス、アリエル・シャフィアー他。

 

題材もプロットも悪くない。

 

が、脚本の細かい部分があまりに雑なために、登場人物たちのキャラクター造形が記号的で、プロットに合わせて都合よく動かされてるだけにしか見えず…。

 

多様性か何かの教材動画みたいで、これじゃあ感情移入のしようがない…。

 

プロの役者を使いながら、脚本・演出はもちろん、照明や編集など、スタッフがことごとく素人としか思えませんでした。

「ホームメイト!」('17)

 

人妻の不倫相手と夫が同居することになったことから巻き起こる騒動を描いたコメディです。主演はドーナル・グリーソン、トーマス・ヘイデン・チャーチ、クリスティナ・アップルゲイト、ニーナ・ドブレフ他。

 

Wikipedia「ホームメイト!」

 

年齢を含め、全てが真逆の2人の男が互いに影響し合いながら、「成長」する物語として悪くはないんだけど、どこを取っても凡庸。

 

トーマス・ヘイデン・チャーチ演じる中年男を魅力的なキャラクターに見せるためだけの映画で、その目的はそれなりに達成していましたし、ドーナル・グリーソンが引き立て役として頑張ってはいましたが、あまりに作為的なキャラクターで、演じる彼が気の毒でなりませんでした。

「ベスト・フレンズ・ウェディング イン・トルコ」('18)

 

元恋人の親友の結婚を何とか阻止しようとする女性を描いたラブコメディ「ベスト・フレンズ・ウェディング」('97) のトルコ版リメイクです。主演はブルジュ・ビリジク、共演はマート・フィラット、ハザール・エルグチュル、イルケル・アクスム他。

 

元の作品から20年を過ぎてのリメイク、しかもトルコでのリメイクなので、何か大きな脚色があるのかと思いきや、驚くほど「そのまま」。

 

1990年代のハリウッド映画のノリをそのまま2018年を舞台に再現しているので、いくら舞台がトルコに変わっているとは言え、違和感は拭えず。

 

それでも、まぁ、気楽に観られることは確かなので、これはこれでアリなのかも。

 

関連記事

「世界一不幸せなボクの初恋」('19)

 

実話をもとに、喜びなどの強い感情が生じると失神してしまう珍しい症状を抱えた男性の恋の行方を描いたロマンティックコメディです。主演はマーティン・フリーマン、共演はモリーナ・バッカリン、ジェイク・レイシー、メリッサ・ラウシュ、ジェーン・カーティン他。

 

Wikipedia「世界一不幸せなボクの初恋」

 

マーティン・フリーマンの個性と魅力(愛嬌)でなんとなく、可愛らしいロマコメに見えてしまうけれど、主人公のやってることはかなり酷い (^^;;;

 

いくら奇病を抱えているとは言え、やっていいことと悪いことはあるし、そんな酷いことをしている主人公が特に強く責められるわけでもなく、さらっと流されてしまっているのが気になってしまい、イマイチ入り込めず…。

 

モデルになっている本人や関係者たちが納得してるならいいんでしょうけど、もうちょっと何とかできなかったのかなぁと思えてなりません。

「死からの目覚め」('24)

 

事故による脳死状態から奇跡的に生き返った娘が邪悪な何かによって別人のように変わってしまったことに恐怖する母親を描いたオカルトホラードラマ映画です。主演はコニー・ブリットン、共演はフレイヤ・ハンナン・ミルズ、ジョヴァンニ・チルフィエラ、トンマーゾ・バジリ、アレッサンドロ・リチェチ、アンドレア・ブルスキ、バベティダ・サジオ他。

 

母親の贖罪の物語としては陳腐だけれど、それをオカルトホラーのテイストで描くのは悪くない。特に主人公の終盤の行動も(かなり無理があるけれど)アイデアとしては面白い。

 

が、テンポがとにかく悪く、オカルトホラー的スリリングさが全くないのは致命的。そのせいでドラマ部分の陳腐さが際立っちゃってダウン

 

主人公の精神的な支えとなるはずのイケメンの医師が活躍しそうで何もしないとか、プール仲間の友人も物語上ほとんど必要性がないなど、登場人物が無駄に多いのものテンポを悪くしている原因。

 

もうちょっと工夫すれば、面白くなったんじゃないかなぁと思えて仕方ありませんでした。

「Padres」('24)

 

双子の姉に卵子、パートナーから精子を提供してもらい、代理母出産で息子をもうけた男性を描いたプエルトリコのドラマコメディ映画です。主演はルチアーノ・ダレッサンドロ、共演はロドルフォ・サラス、ダヤナラ・トーレス、マルコス・カルロス・シントロン、ミミ・ラゾ、カロラ・ガルシア他。

 

あまりに古臭い内容で10年以上前の映画かと思ったら、2024年の映画。

 

確かに、日本よりははるかに進んでいますが、プエルトリコは欧米と比べると、ちょっと遅れてるんだなぁという印象。

 

それはともかく、主人公とそのパートナーの、親となるにあたっての覚悟の甘さ、もっと言ってしまうと準備不足の「無責任さ」が最後まで気になってしまい、「自分たちの甘さを棚に上げて権利だけ主張するってのはどうよ?」という気分に。

 

「終わりよければ全てよし」ってことなんでしょうけど、登場人物のキャラクター造形の薄っぺらさを含め、ただただ「雑な映画」としか思えませんでした。

「フランケンシュタイン」('94)

 

メアリー・シェリーのゴシック小説「フランケンシュタイン」を、フランシス・フォード・コッポラ製作、ケネス・ブラナー監督・主演で映画化したホラー映画です。共演はロバート・デ・ニーロ、ヘレナ・ボナム=カーター、トム・ハルス、エイダン・クイン、イアン・ホルム、ジョン・クリーズ他。

 

Wikipedia「フランケンシュタイン (1994年の映画)」

 

原作に忠実な映画化を目指したという割にはかなり脚色しているし、それが映像作品としての面白さにつながっているかは微妙…。

 

ケネス・ブラナーの演出は「文芸作品」の趣があって、それ自体は悪くないのですが、とにかく「面白くない」。この一言に尽きます。

 

ホラー映画ではなく、最初から「怪物」の悲哀を丁寧に描いた「人間ドラマ」だと思って観れば、これはこれでアリかもしれませんが、グロテスクで残酷なシーンが多い割に、ホラー映画として求められる「怖さ」が全く描かれておらず、ハラハラドキドキするようなスリリングなシーンが全くないのは致命的。

 

要は文芸作品としても娯楽ホラー作品としても中途半端。