Marc のぷーたろー日記 -3ページ目

「ブルータリスト」('24)

 

ホロコーストを生きのびて東欧から米国に渡ったユダヤ人建築家の波乱の運命を描いたドラマ映画です。主演はエイドリアン・ブロディ、共演はフェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、ラフィー・キャシディ、アレッサンドロ・ニヴォラ他。

 

Wikipedia「ブルータリスト (映画)」

 

予備知識なしで観たら、実在の建築家の数奇な半生を描いた伝記映画だと思ってしまうほど、説得力のある重厚な人間ドラマでした。

 

1988年生まれで子役出身の俳優ブラディ・コーベットが映画監督デビューして10年。長編映画としては3作目。1作目から高い評価を得ていましたが、既に「巨匠」の域に達している格調高い演出は見事としか言いようがなく、本作が高い評価を得たのは当然。

 

ただ、自分の好みとしては、主人公をはじめとする主要な登場人物の誰にも共感できなかったのは残念。理解はできるし、おかしいとは全然思わないんですが、多少なりとも好意的に見られる人物がいるにはいても、物語の中心にはいないので、観ていてちょっとしんどいものがありました…。

 

また、終盤の展開はちょっと駆け足で唐突感があり、3時間を超える長尺をこれ以上延ばすことができず、最後だけ仕方なく大幅にカットしたような印象を受けてしまい、後味は微妙な感じに。そこまでが良かっただけに残念。

「ナイトメア・アリー」('21)

 

ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの1946年のノワール小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作とし、読心術を武器にショービジネスの世界でのし上がっていく男の成功と転落を描いた、ギレルモ・デル・トロ監督によるサスペンス映画です。主演はブラッドリー・クーパー、共演はケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、ルーニー・マーラ他。

 

Wikipedia「ナイトメア・アリー」

 

「ダークファンタジーのイメージが強いギレルモ・デル・トロ監督がフィルム・ノワール?」と不思議に思っていたのですが、実際に観てみると、フィルム・ノワールとダークファンタジーの親和性がとても良いことを知りました (^^)v

 

とにかく、デル・トロ監督らしいこだわりの映像はダークな世界観を見事に表現していて、それだけでも充分に観応えがあります。

 

ただ、150分の尺は長過ぎたかなぁ…。

 

物語が本格的に動き始めるまで1時間もかかっていたので、そこは30分くらいでさくっと描いた方が良かったんじゃないかなぁという気も。

 

もちろん、ラストのオチを際立たせるために、序章部分をしっかり描きたかった意図は分かるんですけどね。

 

そんなわけで、ちょっと不満はありますが、充実したキャストと映像美を「じっくりと味わう」映画でした。

「プロジェクト・タイタン」('24)

 

土星の衛星タイタンに向かう宇宙船で次々と苦難に遭遇する乗組員たちの運命を描いたSFサスペンスです。主演はケイシー・アフレック、共演はローレンス・フィッシュバーン、エミリー・ビーチャム、トマー・カポネ、デヴィッド・モリッシー他。

 

ケイシー・アフレックにSFのイメージが全くなかったので「どうなんだろう?」という興味で観てみたのですが、実際に観て納得。

 

作り手が本当に描きたいのは「妄想と現実の区別がつかなくなっていく主人公の姿を描いた不条理心理サスペンス」であり、SF要素は不条理な部分を不条理に見えないように説得力を与えるための設定に過ぎないのです。そう考えれば、ケイシー・アフレックの起用はバッチリグッド!

 

ただ、映画としては物足りない。

 

「妄想と現実の区別がつかなくなっていく」設定は非常に好みの題材なので、僕はそれなりに楽しめましたが、それでも、この手の映画を山のように観ている者にとっては、終盤の展開とオチは完全に予想通りで全く意外性がないダウン

 

もう一捻り、もうちょっとの工夫が欲しかったところです。

「Lazy Eye」('16)

 

突然姿を消したまま15年間音沙汰がなかった元恋人と砂漠の中の別荘で2人きりで過ごすことになったグラフィックデザイナーの男性を描いたロマンティックコメディドラマ映画です。主演はルーカス・ニア=ヴェルブルージュ、共演はアーロン・コスタ・ガニス、ミカエラ・ワトキンス他。

 

Wikipedia「レイジー・アイ」

 

ストーリーそのものは大して面白くない。何か劇的なことが起こりそうで全く起きないし、セリフも陳腐で、結末も見え見え。いわゆる「中年の危機(midlife crisis)」を題材とした映画としては凡庸。

 

それでも、映像の美しさには目を奪われるし、主演2人の説得力のある演技のおかげで、実在しているかのように見える元恋人同士の2人の姿を覗き見しているような不思議な気分になります。ほろ苦さもありつつ、前向きで余韻のあるエンディングは後味もいいし、「いい映画を観たなぁ」という気分に。

 

でも、観る人を選ぶと思うので、万人にお勧めはしないです (^^)

「権利への階段」('17)

 

1980年代の米国の実話をもとに、統合失調症と診断され、投薬の副作用で障がいを負った女性エレノア・リースが病院と闘う姿を、彼女を支援することになった元看護師の弁護士との関係を通じて描いた伝記ドラマ映画です。主演はヘレナ・ボナム=カーター、ヒラリー・スワンク、共演はジェフリー・タンバー、ヨハン・ヘルデンベルグ他。

 

Wikipedia「権利への階段」

 

米国が舞台であり、米国の俳優が出演していますが、製作国はドイツとベルギー、監督はデンマーク人ということもあり、ハリウッド映画ではない、ヨーロッパ映画的な趣。

 

もっといくらでも美化したり、脚色したりできたはずなのに、敢えてそうせず、主人公2人を少々共感しにくいキャラクターにしていたり、米国の精神科医療を改善するきっかけとなった歴史的偉業であるにもかかわらず、その辺りの表現は控えめだったり、ハリウッドの大手映画会社なら絶対にこういう風には作らないだろうなと思います。

 

ただ、そういったヨーロッパ映画的な描き方が功を奏しているかというと微妙ですが、少なくとも、この映画の作り手が描きたかったのは「歴史的偉業」ではなく、2人の女性の友情だったと考えれば、こういう映画になるのは当然なのでしょう。

 

とにかく、この映画では描かれていないエレノア・リースの過去を含め、彼女の人生を想うと、ただただ切ない気持ちになる映画でした。

「サウンド・オブ・フリーダム」('23)

 

実話をもとに、国際的な児童人身売買や性犯罪の闇から少年少女を救うために南米の犯罪組織に潜入した米国土安全保障省の捜査官の活躍を描いたアクション映画です。主演はジム・カヴィーゼル、共演はミラ・ソルヴィノ、ビル・キャンプ、クリスタル・アパリシオ、ハビエル・ゴディーノ他。

 

Wikipedia「サウンド・オブ・フリーダム」

 

啓発の意義は間違いなくあり、その点では作られるべくして作られた映画です。

 

が、分かりやすさを優先するあまり、全てを単純化し過ぎているのはかなり気になります。

 

実話に基づいているとしながら、プロットとしては1930年代から1940年代にハリウッドで作られた勧善懲悪の荒唐無稽な冒険映画と全く同じ。意図的にそういうシンプルなプロットにすることで、普段映画を観ない米国の保守層に受け入れられ、大ヒットしたのでしょう。

 

しかし、問題の深刻さを考えると、そんな荒唐無稽さがあっていいとはとても思えないのです。

 

とにかく、「そんなに簡単にうまく行くわけないだろ」な展開の連続で、観ていてもやもやするばかり。そのため肝心の啓発部分に関しても説得力を欠いているように見えて仕方ありませんでした。

「ヒットマンズ・ボディガード」('17)

 

ボディガードと彼が守る殺し屋のコンビを描いたアクションコメディです。主演はライアン・レイノルズ、共演はサミュエル・L・ジャクソン、ゲイリー・オールドマン、サルマ・ハエック、エロディ・ユン、ヨアキム・デ・アルメイダ他。

 

Wikipedia「ヒットマンズ・ボディガード」

 

本作の4年後を描いた続編「ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」('21) を先に観てしまい、その続編が残念な出来だったのですが、続編が作られるくらいだから、こちらは充分に面白いのだろうと期待して観てみました。

 

間違いなく、こちらの方が段違いで面白い (^^)v

 

ライアン・レイノルズとサミュエル・L・ジャクソンの個性と魅力を活かし切っているし、2人の相性も良く、また他の主要キャストもハマってる。

 

ただ、清々しいほど内容がないのは続編と同じ (^^;;;

 

いくらコメディとは言え、現実離れしているし、支離滅裂 (^^;;;

 

それでも、とにかく勢いだけで突っ走り切ってるのは見事だし、観終わった後に「あぁ、面白かった♪」となりつつも、次の瞬間には内容を忘れちゃって何も残らないっていうのはアクションコメディとしてはむしろグッド!

 

今となって観ると、いろいろと古臭さも感じますが、それも含めて気軽に楽しめる娯楽映画でした (^^)v

 

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「TOUCH/タッチ」('24)

 

50年前に突然姿を消した日本人の恋人の消息を訪ね歩くアイスランド人男性の追憶の旅路を描いたミステリードラマ仕立ての恋愛映画です。主演はエギル・オラフソン、パルミ・コルマウクル、共演はKōki,さん、本木雅弘さん、奈良橋陽子さん、中村雅俊さん他。

 

Wikipedia「TOUCH/タッチ (映画)」

 

美しい愛の物語ではあります。

 

日本の描き方も日本人の描き方も美しい。

 

欧米人から見た「異世界」としての日本。

 

その異世界に住む「エルフ」のような日本人。

 

欧米人が好む「ファンタジーとしての日本」が美しく描かれていて、海外の批評家からの評価が高いのは大いに納得。

 

ただ、あまりに美化し過ぎて現実味が全くないのは日本人として観ると違和感しかなく、その終始「ふわふわ」した雰囲気のせいでイマイチ心に響かないのです。

 

特に「被爆者に対する差別」という現実のシビアな問題の描き方があまりにあっさりしていて、物語を盛り上げるための単なる「道具」でしかないのはダウン

 

とにかく、今の時代の欧米人が日本や日本人に期待している「ファンタジー」がどういうものなのかはよく分かりました。

「Cubby」('19)

 

人付き合いの苦手なイラストレーター志望の青年が中西部の実家からニューヨークに移り住み、ベビーシッターをすることになった6歳の少年との友情や、幻覚作用のあるカップケーキを食べることで目の前に現れるアダルトなスーパーヒーロー「レザーマン」を通じて、希望と自己規律を見出そうとする姿を描いた青春ドラマコメディ映画です。監督・主演はマーク・ブレイン、共演はパトリシア・リチャードソン、ジャニーン・セラレス、ピーター・Y・キム、ロドニー・リチャードソン、ジョセフ・スーファート他。

 

Wikipedia「Cubby (film)」

 

これは観る人を思いっきり選ぶなぁ…。

 

発達障害気味の主人公を「困った人ではあるけれど愛すべき人物」と思えれば、可愛らしくハートウォーミングな物語として楽しめるでしょうが、そうでない人にとってはおそらく苦痛でしかないでしょう。

 

自分はそのどちらの感覚も分かるなぁと思いながら観ていました。

「バレット・ヘッド」('17)

 

警察に追われて人けのない倉庫に逃げ込んだものの、さらなる窮地に追い込まれた窃盗団のメンバー3人を描いたクライムアクションです。主演はエイドリアン・ブロディ、共演はジョン・マルコヴィッチ、アントニオ・バンデラス、ロリー・カルキン、アレクサンドラ・ディヌ他。

 

闘犬撲滅のための啓発が目的なのは分かりますが、中学生男子が厨二病全開で書いたとしか思えない、幼稚で陳腐な内容にただただ呆れるばかり。必要以上に感傷的で観ていて恥ずかしくなるレベル。

 

また、「もう1人の主人公」とも言える犬が対象を認識するのに嗅覚を使わないのは、脚本家も監督も犬のことを全く知らないアホってことだし、その時点で、この映画を作る資格などありません。

 

この脚本で、エイドリアン・ブロディ、ジョン・マルコヴィッチ、アントニオ・バンデラスといったスターがよく出演をOKしたなぁと思いますが、おそらく闘犬撲滅への賛同の意思表明ということだったのでしょう。

 

とにかく、闘犬撲滅を訴えるのはいいんですが、それならもっとマシな脚本にしてくれとしか思えませんでした。