2020年 イギリス・ベルギー ドラマ映画
出演: ノア・シュナップ トーマス・クレッチマン フレデリック・シュミット
この映画はフランス映画かと思ったほど
フランス人の気高さが良く表現されています
1940年代、ナチスドイツはフランスまでも侵略してました
フランスにとってもドイツは敵です
占領下となった南仏はスペイン国境が近く、何百人ものフランス人がユダヤ人の国境越えに協力し、7500人以上の命を救いました
これらを踏まえて観ると、ユダヤ人の逃避行にフランス人が協力的なことに違和感はないと思います
~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~*〜〜*
1942年 夏
フランスのパリと北部はドイツ軍の支配下におかれ
ユダヤ人の強制退去が始まった
収容所行きの貨物列車には沢山のユダヤ人が座るスペースもなく
押し込まれていく
その貨物列車に乗せられる列にベンジャミンと幼い娘のアーニャもいる
家族も恋人も容赦なく引き裂かれ、貨車には男と女で分けて詰め込まれている
父親と離されたら幼いアーニャなどすぐに圧死してしまう
何とかしなければ・・・
列車から大量の蒸気が湧き出した瞬間ベンジャミンは行動した
列車の連結部分に紛れ込み反対側へ移動
すぐに反対ホームのフランス人の乗客や駅員に見つかってしまうが
黙っててと人差し指を口元に立てるベンジャミン
フランス人たちは見ない振りをしてくれた
反対ホームに列車が到着すると窓を叩いて
「おばあちゃんのところで会おう」
フランス人女性にアーニャを託し、自分も別行動で駅から逃げ出した
幼いアーニャひとりなら窓から渡せるし、ユダヤの星のマークさえ隠せば
一緒に行動するよりアーニャの生存率は高まると判断したのでしょう
ドイツが憎いのはフランス人も同じ
誰ひとり騒ぐ者はいなかった
ベンジャミンは娘のアーニャや他のユダヤの子どもたちにも約束してた
何かあった時はピレネー山脈のレスカン村のアリスおばあちゃんを尋ねろと
ここはまだナチスが侵攻してない南仏地方で安全であったし
スペインとの国境近くだったからだ
ーレスカン村ー
この村の産業は羊である
村全体で500頭余りの羊を飼育してる
ジョーの家もそのひとつで、少年ながら羊飼いとして20頭ほどの羊を
愛犬ルーフと共に放牧してたが、突然事件は起きた
激しく吠えるルーフの方を見ると、大きなクマがすぐそこにいた
クマはジョーに向かってきたが、ルーフが立ち向かってくれた隙に逃げ出し
一目散に山を降りて
「クマが出た!」
と村人たちに叫んだ
村の男たちが猟銃を持って山に行く
遠くで猟銃の音がした
クマの死体が運ばれて祝いの酒が振る舞われた
クマ肉は大きな収穫だ
ルーフのことを聞いても男たちは酒盛りに夢中
クマはもういない
山に戻りルーフを探すジョー
雨が降ってきても探すのを止めない
ようやく瀕死のルーフを見つけると、そこには見知らぬ男ベンジャミンがいた
もう血は止まったから大丈夫だと言う
止血してくれたらしい
驚いたことにベンジャミンは子グマにミルクを与えてた
あの母グマは子グマを守るためのワザと囮になって撃たれたと知る
1匹では生きていけないと子グマを抱いて去るベンジャミン
だが、ジョーはコッソリとベンジャミンの後をつけた
ベンジャミンは村外れのアリス婆さんちの納屋に子グマを入れると
アリス婆さんの家の中に入っていった
窓からアリス婆さんとベンジャミンの会話を立ち聞きすると
ベンジャミンはアリス婆さんの死んだひとり娘の夫だと分かった
勝手に外出して村人のジョーと出会ったことにカンカンのアリス婆さんだが
「ジョーは誰にも言わない」
秘密は守ると決意して家に帰るジョーだった
暫くして、学校が終わったジョーは
自分ちの羊小屋からミルクをくすねてアリス婆さんちの納屋に入る
ワラの山にミルクをかけると、出てきたのは子グマではなく小さな女の子
驚いて納屋から飛び出るとアリス婆さんが立ちはだかっていた
アリス婆さんの家に連れていかれ
ジョーに全てを話すベンジャミンとアリス婆さん
ベンジャミンはユダヤ人であること
ユダヤの子どもたちがスペインへの国境を越えるために
アリス婆さんちを目的地として集まってくること
この小さな女の子、レアもワルシャワから来たこと
誰にも言わない約束を再び交わすジョー
だが、平和だったレスカン村にもついにナチスがやってきて
村は占領下におかれた
広場の掲示板には隣村の3人を処刑したと貼り紙がされた
集まった村人にナチス中尉が
夜9時半以降の外出禁止
身分証の携帯
スペインとの国境警備の強化を告げる
そんな緊張感の中で、幼馴染で知的障碍のユベールがおかまいなしに
棒切れを猟銃に見立てて中尉を撃つ「フリ」をしてる
ヒヤヒヤするユベールと村人たち
案の定、中尉が銃を取り出しユベールに向かって
「バンッ!」
と口で言って撃つ「フリ」でその場は落ち着いた
ジョーは急いでアリス婆さんちに軍のことを伝えに行く
ベンジャミンとレアは山頂の山小屋に隠れていると聞いて
慌てて山頂に向かう
山は軍がパトロールを強化すると言ってた通り
既に軍が先方を歩いていた
見付らないように後方を着いて行くが、ジョーにはどうすることもできない
だが、幸いにも雨足が強くなり軍は山頂を断念して引き返してくれた
山小屋に着くと、足首を捻挫してるベンジャミンを支え
アリス婆さんちまでふたりを届けると急いで帰宅した
ジョーの中でベンジャミンたちを救いたい気持ちが膨らむ
翌日は軍が村人たちの猟銃の没収を始める
危険な武器は早めに没収だ
ジョーの祖父のアンリは古い猟銃を渡して、新しい猟銃は
ジョーとユベールを連れて墓地の墓石に隠した
帰宅途中で買い物帰りのアリス婆さんと会うが
どうもアリス婆さんとアンリ爺さんはただならぬ仲を感じる
普段の癇癪婆さんとは打って変わってニコニコである
そして、買い物も難儀な歳のアリス婆さんに代わって
ジョーが買い物係として雇われることをアンリ爺さんは了解した
報酬はハチミツだ
これでコソコソせずにアリス婆さんちに通える
アリス婆さんちには避難してきたユダヤの子たちが増えて行き
買い物の量は増えていったが
ベンジャミンの足が完治しないのと軍のパトロールもあり
国境越えが出来ないまま冬がやってきた
ジョーはどんな天気でも買い物の日はちゃんと守った
そんなある日、間の悪いことに店にタバコを買いに来た
ナチスのホフマン伍長と会ってしまった
ジョーの買い物の量に
「大家族か?」
青ざめるジョーに店主はペラペラと
「アリス婆さんの使いよ」
「お客でもいるのかね」
余計なことを言ってくれた
大荷物を抱えて足早に逃げるジョーをホフマンが追いかけてきた
ホフマンはフレンドリーに荷物を持って一緒に運んでやると言うが
怪しんでるのかも知れない
色々言い訳をするが、半ば強引に荷物を取られてしまった
幸い軍の呼び出しの放送が鳴って、ホフマンは去ってくれた
アリス婆さんちがバレずに済んでホッとするジョー
ある日、突然ジョーの家に軍が上がり込んできた
不安になるジョーと母親
兵士が引き出しからジョーの父親からの手紙を見つける
「お父さんからの手紙なの!?」
ジョーの父親は捕虜として収容所に入れられてるが
そこからの手紙を母親はジョーに隠してたのだ
兵士から手紙を奪おうと取り合いになったら手紙は破れてしまい
そのまま家を飛び出すジョーだが、他の家にも軍は一斉捜索をしてて
急いでアリス婆さんちに向かう
早く知らせてベンジャミンたちを非難させないと!
アリス婆さんちにはなぜかアンリ爺さんもいた
軍が来る!
「アンリは出て行って!」
「ジョーはパンを食べて!」
迅速に指示するアリス婆さん
ジョーはパンを食べ、アリス婆さんは編み物をしてるところに
軍が入ってきた
ありがちな日常を演出したのだ
「なぜ捜索するの?」
ジョーの質問に頭を叩くアリス婆さんだが中尉は答えた
「兵舎から武器と弾薬が盗まれた」
「さっさと犯人を処刑したい」
室内の捜索は何もなく、次は「納谷を探せ」に落ち着かないジョー
見つかってしまう・・・
だが、納谷は空っぽだった
みんなはどこ???
実はアンリ爺さんの父親が密輸をやってた時の、密輸品を隠す洞窟に
1ヶ月前から移動してたと知る
アンリ爺さんもジョーも、個々に秘密を守ってたのだ
お互いの秘密をこの時ようやく共有するふたり
数日後、ジョーとユベールが遊んでいるとホフマン伍長がやってきて
ふたりをバードウォッチングに誘う
敵と仲良く遊びに行くはずもなく、ジョーは
「ユベールと行って」
と自分は断る
だが後日、ユベールとワシの巣を見つけたと聞き
「卵はあった!?」
好奇心に負けて今度は一緒に行ってしまった
そして大変なものをふたりで目撃してしまうのだ
陸橋が爆破する瞬間に遭遇したのだ
爆破から逃げるひとりの男
遠くて顔までは分らないが、村の中に手引きした者がいるはずだ
これまでは村に対して友好的な態度を示してきた軍だったが
(ホフマン伍長の意向で)
元々そんな気はなかった中尉は、陸橋が爆破され食料調達が困難に
なったことを理由に村の店や家から食料の略奪を始める
そんな中、ジョーの父親が収容所から生還して帰ってきたのだ
手に障害を負って役に立たなくなったかららしいが
殺されずに済んだのはフランス人だからか
父親の帰還を最初こそ喜んだ家族だが、4年の過酷な環境のせいか
元々なのか、この男は問題行動ばかり起こしてくれて
挙句に息子ジョーがホフマン伍長とバードウォッチングに行った
ことを知ると
「ナチスの協力者」
と罵り、ジョーを激しく傷つけた
堪忍袋もついに切れたアンリ爺さんが
「全てを話してやる!」
それに対しても「話さないで!」
本当に口の堅い子だ
ジョーの名誉の為に真実を話すアンリ爺さん
ユダヤ人のベンジャミンと7人に増えた子どもたちを匿ってること
国境を越えられずに2年も経ったこと
国境越えが警備の強化で現状無理なこと
父親どころか母親も知らない秘密だったが
国境越えの作戦が閃く
父親はこれを機に問題行動を止めた
作戦はこうだ
夏の間、村の羊たち約500頭は高地で過ごす
男たちはその3ヶ月を高地で過ごす
教会で前夜祭があるので、その祭に軍を招待するのだ
国境警備の兵士も全員
その間にベンジャミンたちは村に降りてきて一晩隠れる
翌朝、羊飼いに扮装したベンジャミンと子どもたちが
男たちと羊の群れに紛れて山へ登り、そのまま国境を越える
この作戦には村人全員の協力が必要で
誰かひとりでも密告したら収容所送りだ
反対するアリス婆さん
誰も密告しないなんてあり得るのか?
そして、村人全員によるユダヤ人の国境越えの作戦は開始される
教会での前夜祭に軍は全員で来てくれた
その間に村に降りてきて隠れる8人
翌朝、村中の羊500頭と羊飼いとその家族で村はごった返し
その中にレアを抱いたベンジャミンと他の子どもたちもいる
兵士たちもいるが気付いてないのは作戦通りだ
巧いこと山頂の小屋に着いたジョー父子とユベールとベンジャミンたち
だったが、すぐにホフマン伍長が兵士を連れてやってきた
緊張が走る
小屋の中にはベンジャミンたち8人がいる
中を見られたらおしまいだ
突然の突風で小屋の窓が開いた
ホフマンが開いた窓を閉じて
「直した方がいい」
そう言って去った
窓から小屋内は覗かずに去ったのだ
翌日の授業中、ユベールが興奮しながらジョーを呼びにきた
不安いっぱいで外に出ると
ベンジャミンとレアが捕えられていた
涙を堪え切れずに号泣するジョー
ホフマン伍長先導で連れて行かれるベンジャミンとレア
急いで帰宅して父親を問い詰めるジョー
「何があったのパパ!?」
子どもたちは無事に国境を越えたが、ベンジャミンは娘のアーニャを
待つ為に戻るのだが、ベンジャミンと別れるのを激しく泣いて
嫌がるレアがいて、レアを連れて戻る途中で兵士に捕まったと知る
父親は羊の世話があるから山へ戻らなければならない
「僕が行くよ」
移牧は一人前の証
大切な人を守れなかった子どもの自分と決別し
大人になることを決意するジョー
村ではベンジャミンとレアが連れて行かれてから
村人は軍を無視してた
ナチスドイツ敗戦の兆しも見えてたので軍も弱気だ
山小屋にホフマン伍長がジョーに別れの挨拶にきた
あの時、ホフマンは小屋に何かを隠してることに気付いていたが
知らない振りをしてくれたこと知るジョー
だがベンジャミンとレアがどこに行ったかまでは知らない言う
伍長は指定された場所まで連れていくことが仕事で
そこから先は知る由もないのだ
村へ戻ると村人たちはドイツ軍撤退のお祝いで盛り上がっていた
その中にユベールがいない
ユベールを探すジョー
ドイツ軍の撤退の列に向かうと
馬に乗った中尉に向かってユベールが猟銃を向けていた
墓場に隠してた猟銃だ
中尉は何の躊躇もなくユベールの胸を、今度は本当に撃った
「ユベール!」
「ユベール起きて!」
1年後
村には平和が訪れていた
母の使いでアリス婆さんちに行くジョー
そこにはアンリ爺さんもいる
ふたりは結婚したのだ
使いの電報をアリス婆さんに渡したいが
ふたりとも何やら作ってて両手が塞がってるのでジョーが読む
「イマカラムカウ」
誰?ベンジャミン!?
「アーニャ」
アーニャ!?
アーニャだ!!!
ジョーが外に飛び出すと、こちらに向かうひとりの少女
「おじいちゃん!おばあちゃん!」
~アーニャ!!!~
ーーーーーーー完ーーーーーーー
~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~~
ナチスはフランスまで侵略してたのですね
あの列車でアーニャを預かった女性が育ててくれたのでしょうか
善良なフランス人のおかげで沢山のユダヤ人が救われたことを知りました
物語はフィクションなので、実際にジョーやベンジャミンは存在しませんが
ジョーやベンジャミンのような人は存在してたことでしょう
命懸けで国境越えに協力した村人たちは存在し
成功した人がいればベンジャミンのように失敗した人もいたと思います
主役のジョー役のノア・シュナップくんは現在19歳で、この映画の時は
15~16歳、素晴らしい演技でした
繊細な感情表現がお見事でした