まず、大前提に戦争孤児の塚尾桜雅くんが見事に頑張ってくれました。

この子の目力は何なのでしょうか?

本当に虐待でもされてるんじゃないのかと思うほど目で語ってくれてました。

将来が楽しみです^^

 

この映画は戦後の闇市が賑わってる中で、生きるために身売りをする

主人公の女(趣里)と盗みをする孤児(塚尾桜雅)との出会いと別れまでの

物語です

 

女はカウンターだけの小さな酒場に二間の部屋があるボロ家で

仲介人(利重剛)のような男が連れて来る客に身を売ります。

1日1客方式みたいで、お酒がコップ半分と情事と粗末な朝食が込み込みです。

 

その日の客は復員兵の男(河野宏紀)

外地から戻ったら家も両親も消えていて生死も不明なのですが

恐らくは...

 

翌朝、「お金は作りますので今夜も来ます」

といなくなります。

 

静かになったところに闇市で商売してるおじさんがけたたましく

店内に入り込みますが、どうも商品を盗まれたようで犯人を追いかけて

店に入ったものの、そこには女しかいなかったので出ていきました。

 

ところがふと気付くと子どもが隠れていて、生のかぼちゃを貪ってるじゃないですか!

 

夜になり、お金は作れなかったがまた泊めて欲しいと復員兵が来ました。

3人の共同生活の始まりです。

 

女には夫と子どもがいましたが戦争で失いました。

ひとりぼっちの3人が少しの間、生活を共にするのですが、

3人共に家族を失い、復員兵は戦地の悪夢もあり

それぞれが夢でうなされるのです。

 

その悪夢でパニックになった復員兵の男が大暴れして、子どもは窓ガラスから

外に投げ飛ばされ、女はボコボコにされます。

子どもは女に馬乗りになってる男の頭をどこかで拾った瓶でたたき割り、

拳銃を後頭部に突きつけました。

そして、おとなしくなった男を子どもがどこかへ連れて行きました。

 

子どもが大事に隠し持ってたのは拳銃だったのです。

死んだ人が手に持ってた拳銃を盗んだのです。

拳銃は空缶にしまいました。

 

今度はふたりの暮らしになりました。

「坊や、盗みはダメよ」

「私も昼間働くから、坊やも昼間働いて夜はここで過ごしましょう」

 

そして坊やは働きに出るのですが、ある日ボロボロで帰ってきます。

危ない仕事でお金を取られてボコられてるところを助けてくれた

おじちゃん(森山未來)がいて、今度はそのおじちゃんが仕事をくれると。

 

反対する女ですが、坊やは女のためにもお金が欲しかったんでしょう、

「1週間」の仕事へ拳銃を持っていきます。

 

おじちゃんは右手が不自由ですが、左手で器用にこなしてます。

山で魚を獲ったりしながら過ごしますが、おじちゃんもおじちゃんで

夜は悪夢にうなされます。

 

誰もが戦争で闇を抱えているのです・・・

 

そして、おじちゃんがいよいよ行動を決意します。

坊やの拳銃の弾は4発ありました。

「神よありがとう」

 

実はその場所は女のところからそう遠くはないのですが、

決意するために山で過ごしてたそうです。

 

あるお屋敷から、坊やを使って屋敷の主を連れ出してもらうと

その主は元軍隊長でした。

おじちゃんは仲間の復讐にきたのです。

この元軍隊長の命令で殺したくもない相手を殺し、おじちゃんは親友を射殺しました。

仲間3人の分で3発を、急所を外し撃ち、

トドメは額に「俺の分だ」

 

・・・トドメは止めました・・・

「その痛みを一生抱えて生きろ」

「地獄で会った時は真っ先にぶっ殺すからな」

 

そして、坊やに「ここに人が倒れてることを伝えに行け」

坊やに拳銃を返し、財布のお金を全部出しますが、坊やは汽車賃だけもらい

屋敷に向かって走り出しますが、振り返っておじちゃんを見ると

おじちゃんは左手を天にかざして

「俺の戦争は終わった・・・」

呟くのです。

 

天国の仲間たちに向けてるんでしょうね。

 

坊やが女のところへ戻ると、女は、

「病気だからこっちに来ないで!」

「面倒みてくれる人がいるから大丈夫よ」

「盗みはしちゃダメよ!ちゃんと働くのよ!」

「拳銃は危ないからしまって!」

 

実は坊やが出かけたあとに唇のデキモノに気付き鏡を見ます。

そこからほぼ顔は出ませんが、売春の斡旋の男が女を見てひるんでたので

梅毒だと思います。

 

物語のスタートから女は体調不良な感じでした。

 

坊やは拳銃を空缶にしまって闇市に行きます。

以前かぼちゃを盗んだおじさんが出してる、味噌うどんのアルマイトのお椀を

無言で洗い出します。

おじさんはまた盗人かと坊やを投げ飛ばします。

坊やは立ち上がってまた洗い物をします。

おじさんはまた投げ飛ばします。

坊やもまた立ち上がって洗い物をします。

おじさんがまた投げ飛ばします。

坊やもまた立ち上がって洗い物をします。

鼻血が出てます。

 

根負けしておじさんはついに洗い物をさせます。

(おじさん・・・)

そして、黙々と洗い物をする坊やの前にうどんを置きます。

(おじさん・・・)

そして、黙々と洗い物をする坊やの前に丸めた紙幣を置きます。

(おじさーーーーーーーーん!!!)

 

働いたお金で坊やは薬を買おうとしますが足りな過ぎて買えません。

じゃあ暖かそうな服なら?

服を選びだした時に銃声が響きます!!!

 

坊やは全てを察しました・・・

 

もう、薬も服も必要ないということを・・・

 

坊やは手に取った服を戻して、人混みの中に消えていきました。。。

 

 

ザックリと書きましたが、この映画、趣里さんが最初から凄い怖いんです

私の感想ですが、この映画のベースは「怒り」です

戦争で家族を失った「怒り」仲間を失った「怒り」人生を失った「怒り」

それが大きく「戦争というものに対する怒り」かと

 

趣里さん、ちょっと突いたら爆発しそうなほどに怒りを抱えているように

見えました

「私の夫を奪った戦争が憎い」

「私の子どもを奪った戦争が憎い」

「身を売ってる自分が憎い」

言葉には出さないけど、全身から滲み出てました

 

趣里さんと未來さんが一切交わらず、坊やを通してふたりの人生を見るって

こういう手法にも驚きましたし、登場人物が少ないのも意外でした

 

最後の銃声で坊やが悟る、あの目!あの目ですよ!

 

女は恐らく、自分が生きてる限り、坊やは助けようと頑張ると思ったのでしょう

坊やには未来に向けて歩いて欲しかった

そして、坊やは人混みの中を未来に向けて歩いていくんです

 

消えた命(趣里さん)消えゆく命(恐らく未來さん)

未来に繋がる命(桜雅くん)

 

 

                深い映画でした

                 感動をありがとう