『小規模事業者振興政策について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第26回

 安倍総理は、7月18日の閣僚懇談会で、人口減対策や地域活性化に取り組む「まち・ひと・しごと創生本部」(本部長・安倍総理。全閣僚参加。)の準備室の月内発足を指示しました。この創生本部に、地方創生に関する各省の企画立案機能を集中させ、有識者も交え本格的な議論を始めることとされています。そして、内閣改造の際には地方創生の担当大臣を置く意向も示されています。

 「まち・ひと・しごと創生本部」の詳細はまだ不明ですが、地方の人口減少に歯止めをかけるためには、雇用の場の創出・確保が必要不可欠であることは明らかです。魅力ある職場などの土壌があってこそ、地方に人が根付きます。地方では行政・教育機関や金融機関を除くと、雇用のほとんどは小規模零細企業(以下、「小規模事業者」と略す。)で生み出されていますので、いかに小規模事業者を振興・発展させていくかが重要です。

 今回は、先の通常国会の最終日に成立した「小規模企業振興基本法」(以下、「小規模基本法」と略す。)を中心に、小規模事業者向けの振興策について説明します。

● 小規模基本法が必要とされる背景

 「小規模基本法」は、経済産業省が所管する基本法としては、中小企業基本法(昭和38年制定、平成25年改正。)に次いで、二つ目となります。実に半世紀ぶりの基本法の誕生といえます。

 中小企業基本法は制定当時の1960年代、大企業と中小企業の格差の是正を目的としていましたが、90年代後半以降になると、中小企業を我が国の活力の源泉としてとらえ、創業やイノベーションを後押しする流れに変わりました。

その後、我が国が直面する課題が一段と複雑化・困難化するなかで、現在では、“しなやかで強い”小規模事業者の重要性が見つめ直されています。実際、全国385万もある中小企業の9割は小規模事業者が占めています。小規模ならではの強みを生かし、ニッチできめ細かい商品・サービスを提供している事業者は、地域の経済や雇用を支える極めて重要な存在です。経済の好循環を全国津々浦々まで届けていくためには、その活力を最大限に発揮させることが欠かせません。

一方で、小規模事業者は、人口減少、高齢化、海外との競争の激化、地域経済の低迷といった様々な構造の変化に直面しており、多くの事業者は、売り上げの減少や経営者の高齢化等の難しい課題を抱えているのが実情です。

「小規模基本法」は、こうした厳しい状況下にある小規模事業者が、国の経済の中心としてしっかりと活躍できるよう、今後長期にわたって適切な環境を整備していくために作成された法律です。中小企業庁としても、この法律について、「地域を支え、しなやかで強い小規模事業者に光をあてる『小規模基本法』」と、HP等で積極的に周知・紹介しているところです。

● 小規模基本法の概要

 小規模基本法は、①概ね従業員5人以下の小企業を含む小規模企業を対象に、②小規模企業が技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持等の「事業の持続的発展」を図れるように、③国・地方公共団体・支援機関等関係者が相互に連携・協力して適切に支援することを規定しています。そして、④政策の継続性・一貫性を担保すべく小規模企業施策の体系を示す5年間の基本計画を策定し、国会に報告することを義務付けています。

我流の大まかな理解ですが、中小企業基本法がどちらかというと、中規模な企業、とくに製造業の“成長”を後押しして大企業を目指すことを支援するのが主な特徴であるのに対して、小規模基本法は、主としてサービス分野の小企業が、事業の“持続性”を維持し、その活力の向上を支援することが主な特徴としてあるように見受けられます。

小規模企業向けの基本的施策は以下のとおり4つあります。

1.小規模ならではのきめ細かい商品・サービスを提供する事業者が活躍できる環境の整備
事業者が地域の様々な需要に応えることができるように、環境や生活の変化に合わせたビジネスモデルの再構築支援や販路開拓支援等を実施

2.女性、若者、シニア等多様な人材の活用や人材育成の環境づくり
一人一人の人材がより重要となる小規模事業者が、事業を支える人材を適切に確保できるように、事業承継・第二創業支援のほか、女性や青年等の人材マッチングの強化等を推進

3.地域活性化に貢献する事業の推進
小規模事業者を地域経済の“担い手”ととらえ、小規模事業者と地域の多様な関係者との連携を促進し、地域需要対応型事業を推進

4.上記3つの施策が実現できるよう、具体的な支援ネットワークを整備

● 「小規模支援法」による支援体制の整備

 さて、上記の4(支援ネットワークの整備)については、小規模基本法と同時に成立した、「小規模支援法」で適切な支援体制の整備が講じられることとなります。小規模支援法とは、正式な法律名を「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律」(「小規模支援法」)といいます。

 小規模支援法は、50年以上にわたり小規模事業者の経営相談に応じてきた商工会及び商工会議所を“事業者に寄り添ってビジネスモデルの再構築を全面的に支援できる伴走者”と評価し、支援ネットワークの中心に位置づけています。商工会及び商工会議所は、市町村や地域の金融機関等と連携し、小規模事業者の意欲ある取り組みを強力に支援する体制を整備することになります。また、商工会及び商工会議所に対して、独立行政法人中小企業基盤整備機構が、先進事例や高度な経営支援のノウハウの情報提供等を行うことも追加されており、バックアップ体制も強化されています。

 小規模基本法は、基本原則と方針を示す基本法なので、具体的な補助金制度等の施策は盛り込まれていません。現在ある施策の中で、小規模基本法の方針に沿っている施策としては、例えば「小規模事業者持続化補助金」や「小規模事業者経営改善資金融資制度(マル経融資)」があります。また、地域経済の担い手として活躍できるように支援する仕組みとしては、商店街への支援策もあります。
小規模基本法の成立を機に、今後、法に規定された方針に沿って、新たな施策や補助金制度の検討とともに、既存施策の見直し、拡充等も検討されることになると思いますので、来年度予算の概算要求の内容や秋の国会審議等を注意深く見守り、必要な対策が打ち出せるよう微力を尽くしたいと思います。

● 地方の人口減少・流出に歯止めをかける政策の“合わせ技”

 とはいえ、2040年に900弱もの多くの市町村が消滅の危機にある今日において、東京一極集中の是正や、地方の人口減少・人口流出に歯止めをかけるのは並大抵のことではありません。小規模事業者への振興策のみならず、効果が見込まれる他の様々な政策との“合わせ技”も非常に重要となります。 

 この点、地域に根付く小規模事業者の方々が、着実かつ継続的に事業を営んでいけるようにするためにも、やはり東京一極集中の是正を行い、地方に人・モノ・金の流れを逆流させていく政策を最重要課題として行わなければなりません。第22回と第23回の活動報告で〔ストップ!「少子化」、ストップ!「東京一極集中」〕をタイトルとして、増田寛也元総務大臣の取組を紹介しましたが、これを基にさらに踏み込んでいく必要があると思います。

 例えば、国の機関で東京になくても支障のない機関(研究機関等の独立行政法人等)のほか、施設の更新時期を迎える(迎えた)大学や企業等を、太平洋ベルト地帯以外に分散することが必要と考えます。国の機関は、国の意思決定次第で移転は可能だと思いますが、大学や企業等に対しては、それ相応の支援が必要になります。そこで、支援にあたっては、今後介護需要のパンクなど、高齢化が最も深刻な課題になる東京都等の大都市圏と連携し、国とセットで移転のための必要な財政支援を行い、大都市圏で空いた土地に医療・介護関係施設を整備していくこと等により、大都市や地方の双方にとってメリットのある施策を大胆に行うことも一考に値すると思います。

 このほか、「コンパクトシティの実現+駅前商店街の再活性化」など、地方のある程度人口の多い地域(中枢拠点都市)で人口を留め置く政策も必要でしょう。小規模基本法などの小規模事業者振興策は、商店街の小企業の意欲ある取り組みに直接プラスに作用しますが、コンパクトシティ化や規制緩和など他の施策を通じて住民・顧客密度を高めることによっても、商店街は間接的にプラスの恩恵を受けることができます。こうした視点からみると、先の通常国会では以下の“使えそうな”法律も成立しており、地域の実情に応じて活用を検討してみることも大事だと思います。

○ 中心市街地の活性化に関する法律の一部を改正する法律(概要)
「日本再興戦略」で定められた「コンパクトシティの実現」に向け、民間投資の喚起を軸とした中心市街地の活性化を図るため、以下の措置を講じる。
1 中心市街地への来訪者等の増加による経済活力の向上を目指して行う事業を認定し、重点支援する制度(中小企業基盤整備機構の貸付け、大規模小売店舗立地法の立地手続の簡素化等)を創設する
2 中心市街地の商業の活性化に資する事業の認定制度並びにこれに係る支援措置、道路占用の許可の特例等(オープンカフェ設置の特例、中心市街地に限って活動が認められる特例通訳案内士制度の創設)を創設する

○ 都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(概要)
都市全体の構造を見渡しながら、住宅及び医療施設、福祉施設、商業施設その他の居住に関連する施設の誘導施策(当該施設の容積率及び用途制限の緩和等)を講じることにより、市町村によるコンパクトなまちづくりを支援する。

○ 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律(概要)
地域公共交通網形成計画の作成を通じて、地方公共団体が中心となり、コンパクトシティの実現に向けたまちづくりと連携し、地域全体を見渡した面的な公共交通ネットワークを再構築できるようにする。

 しかしながら、上記の法律は、残念なことに省ごとの縦割りで作成されており、政府一丸となった取り組みとまではまだまだ言えず、使い勝手を向上させる余地はまだまだあると思います。その意味でも、今後、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が総合調整機能を円滑に発揮できるよう注視し、地方の現場の皆さんがやる気を持って積極的に人口減少対策等の地域活性化の取組を推進できるよう努めてまいりたいと思います。