『平成28年度予算の概要について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第52回

 1月4日から第190回通常国会が始まり、同日国会に提出された平成27年度補正予算(総額3.3兆円:経済対策は3.5兆円)は1月14日に衆議院を通過、20日に参議院で可決、成立しました。28年度当初予算は1月22日に国会へ提出され、安倍首相の施政方針演説等が行われました。今回は、来年度当初予算の概要を説明します。

● 経済再生を優先した平成28年度当初予算

 H28年度当初予算の歳出総額は96兆7,218億円(対前年度当初予算比3,799億円増、0.4%増)と4年連続で過去最高を更新しました。政府は本予算を「経済再生と財政健全化を両立する予算」と強調していますが、安倍首相が掲げる「一億総活躍社会の実現」や「積極的平和主義」、「地方創生の本格展開」といった政権の主要方針を色濃く反映し、やはり重点は経済再生にあります。

 アベノミクスは4年目に入り、デフレ脱却まであともう一息の段階まできましたが、未だ、地方まで景気回復の実感が行き渡らない状況が続いています。今夏の参議院選挙、そしてH29年4月からの消費増税を見通すと、今年はなんとしても景気の底上げ、日本経済の成長軌道への復帰を早期に達成しなければなりません。

 主な項目は以下で説明しますが、その前に歳入歳出全体を数字で確認しておきましょう。
ポイントは次のとおりです。

*歳出総額は過去最大の96兆7,218億円
*税収は57兆6,040億円で、25年ぶりの高水準
*地方交付税交付金は地方税収増の関係で15.3兆円へ減額
*社会保障費は32兆円弱へ拡大
*防衛費は5兆541億円で、初めて5兆円を突破
*政府開発援助(ODA)は17年ぶりの増額で、5519億円
*公共事業は微増ながら4年連続増加で6兆円弱
*新規国債発行額は34.4兆円で、前年度から2.4兆円減額


●「新しい日本のための優先課題推進枠」を活用した重点施策

 前回の活動報告(「一億総活躍社会の実現について」)で、地方創生の本格展開を含む一億総活躍社会関連施策の概要はすでに説明しましたので、今回は「新しい日本のための優先課題推進枠」に盛り込まれた重点施策の中から主なものを取り上げます。数字はH28年度予算額で、カッコ内は対前年度増減です。

・農業農村整備事業等 3,085億円(+232億円)
「攻めの農林水産業」に向けた施策を推進するもので、農地中間管理機構と連携しつつ高収益作物への転換を図る農地整備等や、集中豪雨等により甚大な被害の発生のおそれのある地域の防災・減災対策を推進

・国際コンテナ戦略港湾の機能強化 747億円(+60億円)
京浜及び阪神の国際コンテナ戦略港湾において国際水準の大水深ターミナルの整備等を実施

・首都圏空港の機能強化 145億円(+5億円)
羽田空港において旅客や航空会社の利便性を一層向上させるため、国際線・国内線地区を結ぶトンネル整備等を実施

・無償資金協力・技術協力 3,120億円(+50億円)
伊勢志摩サミットの議長国として、充実した外交予算により「地球儀を俯瞰する外交」を推進
難民対策などグローバルな課題に対応すべく、JICA(国際協力機構)の運営費交付金を増額

・防衛省の調達改革等のもとで実施する装備品取得 1,117億円(+583億円)
装備品のまとめ買い、長期契約の活用等による合理化・効率化を推進。防衛力の着実な整備

 装備品の調達改革という特殊要因による増加を除くと、農業農村整備事業等の増加(+232億円)が際立ちますが、いまだ民主党政権前の水準を回復していないことを忘れてはなりません。

 また、大学教育の質向上に向けた取組(国立大学運営費交付金1兆945億円)や科学技術の基盤強化の推進(科学研究費助成事業2,273億円)も、前年度と同額ながら、推進枠に含まれています。前者は運営費交付金の適正化・再配分ルールを導入し、国立大学の機能強化を図るもので、後者は異部門の審査員による多角的審査を導入することにより、新たな学問領域の創成や異分野融合につながる「挑戦的な研究」への支援を強化するものです。

● 微増となった公共事業と農林水産予算

 公共事業関係費は5兆9,737億円とH27当初比26億円増になり、かろうじて6兆円弱の規模を保持しています。局地的豪雨等を踏まえた事前防災・減災対策を充実するとともに、インフラの老朽化対策など国土強靱化を推進します。また、民間投資を誘発し、経済活性化につながる物流ネットワークの整備等も重点が置かれています。

 農林水産予算は2兆3,091億円(H27当初比1億円増)で、公共事業費と同様、なんとか当初も予算増を達成しました。優先課題推進枠で盛り込まれた農業農村整備事業を除くと、将来のTPP発効を見据えた「攻めの農林水産業」に向けた施策が重点的に措置されます。例えば、①各産地における円滑な輸出検疫手続きの構築等を図る輸出促進策、②経済界の技術・人材の導入等を通じた農業経営の高度化支援です。

 なお、ご周知のとおり、H27補正ではTPP関連政策大綱に基づく体質強化策(3,122億円)が措置されています。

● 財政健全化の取組

 それでは、H28年度当初予算における財政健全化の取組について説明します。「経済再生なくして財政再建なし、地方創生なくして国と地方の未来なし」が現在の日本の置かれている状況でありますが、財政再建についても下記のとおり、一定の評価ができると思います。歳出改革等が踏み込み不足等の厳しい指摘をする財政原理主義者やエコノミストも存在しますが、経済再生を最優先する中で、税収増や国債発行額減少等の財政指標も確実に改善してきており、経済成長の上昇軌道が一進一退のこのタイミングで景気に水を差すような財政再建の更なるアクセルは必要ありません。かねてより私は、財政健全化計画は歳出改革だけではなく、資産の流動化等による歳入改革、成長につながる規制改革も一体的に議論し、デフレ脱却、地方の景気回復、地方創生に配意しながら策定することが重要と主張しておりますが、さらに国際金融市場の動向も踏まえて、若い世代が明るい将来展望を開けるよう適切に対応してまいります。

① 一般歳出の伸びを4,700億円に抑え、政府が策定した「経済・財政再生計画」の範囲内(3年間で1.5兆円程度の伸びに収める)であること。

② 国債発行額を2.4兆円減額し、34.4兆円に圧縮。この結果、公債依存度(35.6%)は、リーマン・ショック以前(H20年度当初以来)の水準まで改善したこと。

③ 国税税収(57.6兆円)は、消費税8%引上げ分の6.3兆円を除いても、H19年度決算(51.0兆円)を上回る水準まで回復。

④ 地方税収(41.8兆円、H19年度決算40.2兆円)の増加を反映し、H21年度以降措置してきた地方交付税の経済危機対応の別枠加算(0.2兆円)の廃止や臨時財政対策債(地方交付税の代替財源)の圧縮(0.7兆円)とともに、地方交付税等の総額も0.25兆円圧縮し、15.3兆円の水準に抑えることができたこと。


 改めて本年は、中国の景気減速のほか、湾岸地域における日本の重要な原油輸入国であるサウジアラビアとイランの対立、北朝鮮の4回目の核実験や長距離弾道ミサイルの発射等、海外に多くの不安要素がある中で、デフレ脱却が軌道に乗るか、来年4月の消費税率10%引上げに耐えうる経済社会環境になれるか、各地方団体で作成した地方創生計画を円滑に実施できるか等、今後の国と地方の将来を左右する正念場を迎えます。重要課題を着実に解決しながら政治を前に進め、明るい未来を切り拓いていけるよう引き続き微力を尽くして参ります。