『一億総活躍社会の実現について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第51回

 皆様、新年明けましておめでとうございます。昨年も大変お世話になり誠にありがとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 安倍首相は年頭にあたり、「本年、新たな挑戦が始まります。少子高齢化という構造的な課題に真正面から立ち向かう。“一億総活躍・元年”の幕開けです」と決意表明しました。

 今回はまず一億総活躍社会実現に向けた政府の取組の全体像を示すとともに、H27年度補正予算及びH28年度当初予算における一億総活躍関連予算の概要を説明し、後半では地方創生との関係についても説明します。

● 新3本の矢で「一億総活躍社会の実現」へ

 安倍首相は昨年9月、自民党の総裁に再選されると、アベノミクスが第二ステージに入ったと述べ、従来の三本の矢を強化して強い経済を実現するとともに、わが国の構造的な課題である少子高齢化に正面から取り組み、「一億総活躍社会の実現」を図ることを宣言しました。一億総活躍社会とは、国民一人ひとりが、若者も高齢者も、女性も男性も、難病や障害のある方々も、失敗を経験した人も、誰もが、家庭で、職場で、地域で、それぞれの希望が叶い、それぞれの能力を発揮でき、それぞれが生きがいを感じることができる社会のことです。国全体としては、①将来に対する不安や悲観を払拭して少子高齢化に歯止めをかけ、②多様な個人の能力の発揮による労働参加率向上やイノベーションの創出を通じ、③持続的成長と分配の好循環を実現し、50年後も人口1億人を維持する社会のことを意味しています。

 その一億総活躍社会の実現に向けて新しく3つの明確な「的」が掲げられ、新しい「3本の矢」が放たれます。内容は以下のとおりです。

第一の矢『希望を生み出す強い経済』
 標的:名目国内総生産(GDP)を現在の500兆円から戦後最大の600兆円へ
 手段:成長戦略を含む従来の三本の矢を強化、地方創生の本格化

第二の矢『夢をつむぐ子育て支援』
 標的:結婚や出産等の希望が満たされ、希望出生率1.8がかなう社会の実現
 手段:待機児童解消、幼児教育の無償化の拡大(多子世帯への重点的な支援)等

第三の矢『安心につながる社会保障』
 標的:介護離職者数をゼロに
 手段:多様な介護基盤の整備、介護休業等を取得しやすい職場環境整備、「生涯現役社会」の構築 等

 政府は昨年10月、この「新三本の矢」の実現に向けたプランの策定等を審議するため、安倍首相を議長とする一億総活躍国民会議(以下、国民会議と略す)を創設し、国民会議は11月に『一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策 -成長と分配の好循環の形成に向けて- 』を取りまとめています。国民会議は本年春頃を目途に、『ニッポン一億総活躍プラン』を策定する予定ですが、H27補正及びH28当初予算には国民会議の緊急実施対策の内容が先取りされています。

 なお、一億総活躍国民会議は内閣官房に事務局を置き、13名の関係閣僚と15名の有識者から構成され、加藤勝信・一億総活躍担当大臣が議長代理として司令塔の役割を果たします。

● H27補正では、一億総活躍関連 約1.2兆円

 H27補正(総額3兆3,213億円)は、「一億総活躍社会の実現」に向けた対策やTPP大筋合意を踏まえた農業対策が柱となっています。一億総活躍関連では、緊急に実施すべき対策等として1兆1,646億円が確保され、「希望出生率1.8」及び「介護離職ゼロ」に直結する緊急対策等に3,951億円が当てられます。具体的には、以下のような事業です。

[希望出生率1.8]
・保育所等の整備 511億円
・保育士修学資金貸付等事業 566億円
・ひとり親家庭への支援 117億円
・三世代の近居や同居の促進 161億円
・児童虐待防止対策の強化 91億円
・地域における結婚にむけた活動の支援 36億円

[介護離職ゼロ]
・介護基盤の整備加速化事業 922億円
・介護人材の育成・確保・生産性向上 444億円
・サービス付き高齢者向け住宅の整備 189億円

 また、アベノミクスの果実の均てんによる個人消費の底上げを図るため、低所得の年金受給者に1人3万円の臨時給付金を支給する事業(「年金生活者等支援臨時福祉給付金」総額3,390億円+別途事務費234億円)も盛り込まれました。

 なお、第一の矢「名目GDP600兆円」に直結する施策にも、投資促進・生産性革命2,401億円及び地方創生の本格展開等1,670億円が計上され、主要な事業は以下のとおりです。

*ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金 1,021億円
*中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進補助金 442億円
*地方創生加速化交付金 1,000億円

● H28当初予算では2.4兆円

 一方、H28予算では国費ベースで対前年度+0.5兆円の2.4兆円が「新三本の矢」の実現に向けて確保され、以下のような事業が充実(つまり前年度比増額)されています。

(1)「希望出生率1.8」に直結する施策
*保育の受け皿の拡大(H29年度末までの整備目標を40万人から50万人へ)
・子ども・子育て支援新制度における保育サービス量の拡大(+45万人程度) 充実額 356億円
・新たな企業主導型保育施設の整備等(+5万人程度) 充実額 835億円

*保育人材の確保
・保育士等の待遇の改善(人事院勧告に連動した給与水準の引上げ+1.9%) 充実額 177億円
・保育補助者の配置に必要な費用の支援 充実額 118億円
・勤続年数が長い施設に、保育士1人分を加配するチーム保育推進加算の創設 充実額 43億円

*ひとり親家庭や多子世帯への支援(幼児教育無償化を含む)
・2人以上の子どもがいる低所得者世帯を対象に、第1子の年齢にかかわらず第2子は保育料を半額、第3子以降は無料にする。 充実額 126億円
・児童扶養手当は第2子の月額支給額を5千円から最大1万円に、第3子以降は3千円から6千円にする(第1子分は据置き)。 充実額 28億円

*教育費の負担軽減
・大学生等むけ無利子奨学金の充実(新規貸与枠6,000人増、37億円)など教育に係る負担の軽減 充実額 197億円

*三世代同居の推進
・祖父母が子育てを手伝えるように、建築費やリフォーム代を補助し、三世代同居を推進する 充実額150億円の内数
  
 なお、この「第二の矢」の一環として、低所得の障害・遺族基礎年金受給者約150万人に1人3万円を配る(総額450億円+別途事務費)ことになります。

(2)「介護離職ゼロ」に直結する施策
*介護サービス基盤の確保
・介護施設・在宅サービスの整備の加速化(2020年代初頭までに50万人以上の受け皿確保) 前年度と同額(423億円)

*介護人材の確保
・賃金制度の整備を行った介護事業主を支援 充実額 12億円
・夜勤等が多い介護職員に対するベビーシッター派遣等利用料負担の軽減 充実額 20億円

*仕事と介護の両立支援
・介護休業中に支払われる介護休業給付金を賃金の40%から67%へ引き上げ。介護休業の分割取得(3回まで)を可能とする制度改正 充実額 23億円

(3)「名目GDP600兆円」に直結する施策
〈投資促進・生産性革命〉
*次世代人工知能やロボットの技術開発や実証等の支援
・中小企業などのロボットの導入実証 (新規) 23億円
・I o T (Internet of Things)を活用した様々なビジネスモデルの実証 (新規) 20億円
・次世代人工知能・ロボットの技術開発の拡充 充実額 21億円

*先端的な省エネ設備や省エネ住宅等の導入支援
・工場や事業場等における先端的な省エネ設備の導入支援の強化 充実額 105億円
・ゼロ・エネルギー住宅の普及やゼロ・エネルギービルの開発促進 充実額 102億円

〈地方創生の本格展開等〉
*「地方創生推進交付金」
・地方の自主的かつ先駆的な取組を支援する「新型交付金」(新規) 1,000億円
*観光立国の推進
・受入環境整備や地方への誘客を加速し、訪日外国人数の更なる増加を図るため、観光庁予算を倍増 充実額 101億円

● 地方創生と一億総活躍との関係について

 ところで、アベノミクス第1ステージの目玉政策だった「地方創生」や成長戦略は、一億総活躍社会の実現に向けてどのような位置づけになっているのでしょうか。結論を先取りすると、私には、地方の人口減少に歯止めをかけようとする、これまでの地方創生の取組と政策の方向が異なる、大都市圏サラリーマン層向けの取組が優先されており、地方創生の優先順位が後退したように思えます。

 確かに、地方創生は第一の矢「希望を生み出す強い経済」のなかで、企業の生産性革命を促す成長戦略とともに重要な施策として位置づけられています。しかし一億総活躍関連の全体像からみると、出生率向上や介護離職問題に重点が置かれているのは明らかです。そもそもこの二つの問題は、地方創生の主要な課題であり、内閣府のまち・ひと・しごと推進本部で推進されていたものです。

 全国の自治体は本年3月末までに地方版総合戦略を策定し、28年度から実行段階に移ります。これからが本当の正念場です。政府は春頃を目途に、「ニッポン一億総活躍プラン」を策定する予定ですが、私は地方の現場で盛り上がってきた地方創生の取組に一段と弾みがつくよう、両者の取組が相乗効果を発揮できる形でのプランの策定を働きかけて参ります。本年も「経済再生なくして財政再建なし。地方創生なくして日本の未来なし。」との想いで微力を尽くして参りますので、変わらぬご支持、ご支援を賜りますよう何卒よろしくお願い致します。