『国土交通省関係予算の概算要求』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第50回

 今回は国土交通省関係予算の概算要求の概要について説明します。

● 2年連続で6兆円超の要求

 国土交通省がまとめたH28年度予算の概算要求は、前年度当初予算比15%増の6兆6,791億円で、このうち公共事業関係費は16%増の6兆93億円です。予算編成の方針が昨年度と同様のため、いずれもH27年度要求額とほぼ同じ規模で、2年連続で6兆円を超える要求となっています。

 概算要求に際し国土交通省は、重点政策として次の4つの柱を立てています。即ち、

1 東日本大震災からの復興の加速
2 国民の安全・安心の確保
3 成長戦略を通じた日本経済の再生
4 豊かで利便性の高い地域社会の実現


 また、一般会計のうち来年度予算の特別枠となる「新しい日本のための優先課題推進枠」では、限度一杯の1兆4,187億円を要求し、一般会計とは別枠の東日本大震災復興特別会計予算(復興庁扱い)には13%増の7,398億円を要求しています。

● 国民の安全・安心の確保

 安全・安心に関する主な項目は、国交省の目玉政策となった防災・減災対策やインフラの老朽化対策の推進です。

 防災・減災対策では、頻発する水害・土砂災害や火山災害に備えるため、既存施設を賢く使う取組と選択と集中による対策5,984億円(H27当初比24%増)が推進されます。そのうち、ダム再生や河川堤防の整備といった治水対策に5,039億円が計上されました。桜島や箱根山で噴火の懸念が高まるなど、注目を集める火山災害対策では、噴火に起因する土石流等への対策を強化するため、「火山噴火緊急減災対策事業」を創設し、噴火に備えて、火山周辺に緊急用の土木資材などを予め配備しておく事業を始めます。また、南海トラフ巨大地震や首都直下地震対策は2,028億円です。

 インフラの老朽化対策には、インフラ長寿命化計画に基づき、将来にわたって必要なインフラの機能を発揮し続けるための取組を推進するために、道路の2,053億円を始め4,769億円(H27当初比21%増)が要求されています。社会資本総合整備のうち、防災・安全交付金はH27当初比17%増の1兆2,853億円計上されました。同交付金は自治体が実施するインフラの点検や土砂災害対策などを支援するものですが、道路施設の定期点検の義務化を受けて本格化する橋梁やトンネルの点検を後押しします。

● 成長戦略を通じた日本経済の再生

 経済再生に関しては、成長を支える基盤整備として、以下のような事業が要求されており、主に東京圏を中心とした大都市圏における物流の効率化や民間投資の誘発を通じて、持続的な経済成長を実現しようという狙いが窺えます。

・三大都市圏の環状道路、空港や港湾へのアクセス道路の整備などによる物流ネットワークの強化 3,779億円
・羽田国際空港における国際線と国内線の両地区を結ぶトンネルの整備、C滑走路などの耐震化 498億円
・都市鉄道ネットワークの充実 190億円
・国際コンテナ戦略港湾の機能強化 912億円


 人口の東京一極集中や東京圏と地方との格差是正が大きな問題であるといわれながらも、投資対効果の観点だけからみると、インフラ整備の「ストック効果」は膨大なインフラが既にある大都市圏ほど有利です。その有利な状況をさらに発展させるのもよいですが、不利な地域の開発を後回しにするのでは、これまでの政策と変わらず、東京一極集中を止めることはできません。故に、開発の遅れた地域こそ整備を優先させ、経済成長を確かなものとする視点が重要です。この点、鉄道と航空では地方へのネットワークの拡充が要求されているのは、わずかながらも一歩前進といえます。

*整備新幹線の着実な整備   755億円
*地方航空ネットワーク活性化 387億円


● 豊かで利便性の高い地域社会の実現

 日本経済の再生と並ぶ政府の最重要課題は「地方創生」です。この「地方創生」を国土交通行政の観点から意訳したのが、「コンパクト+ネットワーク」の考え方です。この考え方は、2月に閣議決定された国土交通政策基本計画や国土形成計画で今後の国土交通行政の指針として示されており、以下のような具体的な施策が要求されています。

◆ 地域の公共交通ネットワークの再構築 349億円(H27当初比20%増)
鉄道とバスを中心に交通全モードを統合する広範な用途に充当される。例えば、バス高速輸送システム(BRT)や次世代路面電車(LRT)の導入、駅のホームドアやエレベーター設置、安全性向上のための設備更新など。地域公共交通ネットワーク形成に向けた計画策定の後押しやネットワークの再編も支援

◆ 沿線市町村と鉄道事業者の連携によるコンパクトシティーの推進 7億9,000万円
同じ鉄道沿線のまちが機能分担する考え方。医療を例にすると、A市に妊娠・出産、B町にリハビリ、C市にがん医療と機能を分け合い、人口減少下でも必要な医療が受けられるようにする事業

● 観光分野は43%増の142億円を要求

 観光庁予算はH27当初比43%増の142億円を要求しています。訪日外国人客年間2,000万人時代を見据え、①受け入れ環境整備23億円や②訪日プロモーションの戦略的拡大・強化とMICE(広義の国際会議)誘致115億円を打ち出しています。とくにクルーズ振興のために4,600万円(H27当初比15%増)が要求され、ASEAN(東南アジア諸国連合)市場に焦点をあてた訪日クルーズ旅行商品のセミナー開催等の取組みが盛り込まれています。

● H27当初比16%増の道路直轄事業と港湾整備事業

 道路の直轄事業は1兆8,169億円、港湾整備事業は3,088億円で、いずれもH27当初比16%増の要求です。このうち、高速道路のミッシングリンク(未開通区間)解消に関連する事業は、『新しい日本のための優先課題推進枠』要求として「道路ネットワークによる地域・拠点の連携確保」2,217億円が要求されています。
鳥取県内には高速道路が繋がっていない区間が以下のとおりありますが、年度末の個所付けに向けて、県とともに必要額の確保を働きかけてまいります。

* 山陰道鳥取西道路の2017年度一体開通
吉岡温泉インターチェンジ(IC)-青谷IC間(5.9km)(17年度開通が決定)と鳥取西IC-吉岡温泉IC間(5.2km)(開通時期未公表)の同時供用開始

* 北条道路の事業再開
はわいIC-大栄東伯IC間(13.5km)都市計画決定が円滑に進み調査費が計上されれば、最短で17年度着工の見通し

* 通称・南北線の計画段階評価
鳥取西道路と駟馳山パイパスの福部ICをつなぐ高速道路(約12km)

* 追い越し車線の整備
鳥取道、山陰道日野川東IC-米子南IC間

 また港湾関係では、境港竹内南地区の貨客船ターミナル事業のことを忘れてはなりません。同事業はH27年度に新規事業として採択されており、H28年度に本体工事に着手できるよう、しっかりと働きかけてまいります。

● 新規事業「空き家対策」に注力

 新規事業のなかで最も注目されるのは、「空き家対策」の推進で、以下の二つの事業が新設されます。

(1) 空き家対策総合支援事業 20億円
(2) 先駆的空き家対策モデル事業 1億5,000万円


 空き家対策事業は、過去最多の820万戸(2013年10月時点)に上った空き家の対策を充実させるために、今年5月に施行された「空き家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、市町村の取組みを支援する事業です。(1)は市町村と民間事業者が連携して空き家の再生や除却、跡地の活用などに取り組むのを支援するものです。(2)は、「特定空き家」に対して、市町村が指導・勧告・命令・代執行の措置を講じる際に、市町村が弁護士などの専門家と連携して取り組むモデル事業を支援するものです。なお「特定空き家」とは、上記特措法で規定されている“適切な管理がなされず周囲に悪影響を及ぼしている”空き家のことで、以下のいずれかの状態にあるものをいいます。

① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態(いわゆるゴミ屋敷)
③ 適切に管理されないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態


 このほか、建設・土木では、建設業の人手不足に対応するための①技能者の現場経験や技能のデータを集積する「就労履歴管理システム」構築事業(4,000万円)、②担い手確保の観点から建設現場の事故防止策をさらに強化する安全対策支援事業(1,500万円)が新しく要求されています。また、新規事業ではありませんが、建設業で働く女性を5年以内に倍増させるために、『もっと女性が活躍できる建設業』推進パッケージとして8,000万円が要求されています。