『平成27年度予算の概算要求基準について』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第27回 

 政府は7月25日、来年度予算の概算要求基準を閣議了解しました。予算編成にあたっては経費の抑制に努めたうえで、各省庁から最大で約4兆円の要求を別枠で受け付け、成長戦略や地域活性化につながる政策を重点的に進めるとしています。

 今回は、来年度予算の概算要求基準の概要、注目点、そして、来年10月に予定されている消費税の10%への引き上げ等について説明します。

● 概算要求基準とは

 概算要求基準とは、国の予算編成にあたって、財務省が各省庁に示す予算方針のことです。昭和36年(1961年)の「予算概算要求枠」から始まった制度で、途中、一度名称変更されましたが、平成10年(1998年)から「○○年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」という名称に変わり、現在に至っています。

要求額の無制限な増大を抑え込む趣旨から、上限額や天井を意味する「シーリング」という言葉が使われることがあります。シーリングは、各省庁やいわゆる族議員の要求を抑えて予算の膨張を防ぐ効果がある一方で、これを盾にする財務省への権力集中を批判する声もあるところです。

 民主党へ政権交代した平成21年夏、鳩山政権は概算要求基準を廃止したことがあります。しかし、予算要求額の膨張にうまく対処できず、翌年、菅政権は概算要求基準をすぐ復活させました。どの党が政権を取ろうと、理想論はどうであれ、予算要求の無秩序な増大を抑制する仕組みは実務上、必要不可欠な制度といえるでしょう。

● 概算要求に当たっての基本的な方針

 来年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針は、本文のところに各省が予算要求する際の基準を具体的な数値で示していますので、どうしてもその部分に目を奪われてしまいますが、前文のところにさらっと書かれていることも非常に重要です。まず、前文で述べられている重要なポイントを挙げると、以下のとおりです。

1.「中期財政計画」に沿って、平成27年度は基礎的財政収支(注)の赤字の対GDP比率を平成22年度比で半減させる目標の達成を目指す。
(注)基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、①税収・税外収入と②国債費を除く歳出との収支(①-②)のこと。その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標のこと。

2.要求・要望の方式は、平成26年度と同じ方式を採用する。

3.経済成長と財政健全化の二つの目標の達成を目指す。

 つまり、①我が国はまだ財政健全化の途上にあり、その前途は楽観できず、施策・制度の抜本的見直しや施策間の優先順位の洗い直し等厳しい査定を行う、それと同時に、②民需主導の経済成長も目指し、アベノミクスを実現する、という“二兎を追う”作戦を遂行することを宣言しています。

 それでは、本文のところの要求・要望基準について、骨子を説明します。
今年度と同じ方式が採用されていますので、26年度予算額(72.6兆円)を基準として、「年金・医療等(26年度予算額29.3兆円)」「裁量的経費(同14.7兆円)」「地方交付税交付金等(同16.1兆円)」「義務的経費(同12.4兆円)」の区分ごとに、以下の基準が示されています。

1.年金や医療など社会保障にかかる費用は、今年度と比べて8,300億円の、いわゆる自然増は加算するものの、合理化と効率化に最大限取り組む。
2.公共事業など政策に充てる費用である裁量的経費の要求を今年度と比べ10%低く抑える(「要望基礎額」といいます。いわゆるマイナス10%シーリングです。)。
3.その上で、骨太方針や成長戦略に盛り込まれた諸課題に対し「新しい日本のための優先課題推進枠」を設け、各省庁は上記「要望基礎額」の30%の範囲内で要望する。
4.地方交付税交付金等は、国の中期財政計画との整合性に留意しつつ要求する。
5.義務的経費については、今年度予算額と同額を要求。国勢調査経費の増などの特殊要因については加減算する。
6.要求期限は、8月末日とする。

 なお、歳出総額の上限は、昨年に続いて設けられていません。来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げは年内に判断するとされているため、現時点では税収の総額がはっきりしないためです。また、税制抜本改革に伴う社会保障の充実については、予算編成過程において検討するとされています。

● 概算要求基準の注目点

 概算要求基準について注目すべき点が三つあります。

 第一は、「新しい日本のための優先課題推進枠」(以下、特別枠と略す)の内容です。特別枠は各省庁から最大4兆円規模の要求を受け付ける枠で、成長戦略の実施や地域活性化、人口減対策等に係る経費の要求が見込まれます。成長戦略は主に「『日本再興戦略』改訂2014」を踏まえた諸課題への要求、地域活性化は9月にも発足する政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が所管することになる事業への要求が盛り込まれるものと思われますが、各省庁からこれらにこじつけた“便乗要望”も出てくるおそれもあります。特別枠が、真に国と地方の将来の発展に繋がるものとなるよう、適切に見極めながら必要な予算の確保に努めてまいります。

 第二は、外交や防衛といった、国家にとって不可欠な機能でありながら長年放置されてきた分野の扱いです。「骨太の方針2014」には、自民党外交再生戦略会議(議長は高村正彦党副総裁)が5月22日にまとめた提言の内容が幅広く含まれており、例えば、日本の「正しい姿」の発信強化、外交実施体制(外務省定員の増強、在外公館の強化、防衛駐在官の増員等)の拡充など、具体的に予算増額が必要なものもあります。こうした分野について、特別枠で対応するのか、通常の裁量的経費のなかで優先順位を引き上げて対応するのか等々、国としてしっかりと対応できるかどうか注目したいと思います。なお、私としては、まずはしっかりと裁量的経費の中で優先度を上げていくべきかと思います。

 最後は、年金・医療等の社会保障経費の中の子ども・子育て支援予算についてです。社会保障経費の自然増は、今年度予算の要求時に比べて1,600億円少なく見積もられ、生活保護の給付等の適切な管理や先発医薬品より安い後発薬の普及など合理化や効率化を進めるとされています。超高齢化時代に医療・介護等の社会保障費の膨張に歯止めをかけるのは必要ですが、この膨張圧力のもとでも、深刻な人口減少社会を見据え、子ども・子育て支援予算は増額確保し、社会保障経費のうち子育て世代むけの割合は大幅に拡大する必要があると考えています。

消費税の10%への引上げが決まれば、来年4月からスタートする「子ども・子育て支援新制度」の必要額7,000億円などの上積みが期待されます。しかし、保育の質を充実させるためには、さらに約4,000億円が必要ともいわれます。高齢者の声を代弁する議員は多くいますが、子育て世代の切実な悩みや不安を共有する議員は、あまり多いとはいえません。数少ない子育て真っ最中の議員の一人として、予算編成過程を通じて、子ども・子育て支援予算の拡充を訴え続けてまいります。

● 消費増税や補正予算について

 最後に、消費増税について触れます。政府は7-9月期の経済指標が出揃う12月初旬には消費増税の可否を判断すると思われます。私見ですが、現状と今後の景気予測等を考えると、10%への引き上げはなされると思います。

 安倍総理は、巨額の政府債務を懸念する国際機関や海外機関投資家に対して、経済成長と財政健全化(社会保障費の増こうにかかる安定した財源の確保)の二兎を追うことが日本の国益に沿っていると説明し、「この道しかない」と訴え続けています。消費税の10%への引き上げは、“約束”を果たすことになります。また、「中期財政計画」で国際公約していた、「平成27年度は基礎的財政収支の赤字の対GDP比率を平成22年度比で半減させる」という目標もなんとか達成できます。こうした実績は日本政府の財政運営に対する信認を高め、外国資本の日本流入を加速化し、経済成長にもプラスとなるでしょう。

 一方、補正予算が編成される可能性はどうでしょうか。概算要求基準が示された段階で話題にするのは時期尚早かもしれませんが、可能性はあると思います。自民党政調全体会議で、補正予算の可能性が話題になった時、実務的にやれないことはない、2年前ほどきつくはないだろうとの発言がありました。2年前とは、2012年12月のことです。総選挙があり、年末に安倍政権が誕生したときです。暮れから1月にかけて10兆円の補正予算と本予算が編成されました。また、昨年は10月に消費増税を決め、12月に5兆円の補正予算と本予算を組んでいます。

地方では、景気回復の恩恵が行き届いてない地域も未だ少なくありません。公共による事業量が少なく、また消費も増えない中で、秋枯れしている、或いは秋枯れが見込まれる地域も少なからず見られる中、私としては、地方の景気回復を確実にしていくためにも、補正予算の編成は必要だと考えています。

 いずれにしても、夏以降の景気動向に関して、マクロの視点だけではなく、各県単位、県内のブロック単位等ミクロの視点も適切に注視しつつ、デフレ脱却及び地方再生に向けた取組が確実になされるよう、微力を尽くしてまいります。