『教育再生実行本部の活動』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第28回 

 自由民主党・教育再生実行本部は8月5日、「教育投資・財源特別部会 中間取りまとめ」を発表し、財源を確保する必要性が特に高い施策に関し、今後の議論に向けた基本的考え方及び来年度予算に向けた提言を示しました。

今回はこの中間取りまとめの内容について説明します。

● 自民党・教育再生実行本部の活動

 安倍総裁は、就任直後から、経済再生と教育再生を日本再生の要として位置付け、総裁の直属機関として「教育再生実行本部」(本部長 遠藤利明衆議院議員、平成24年10月)を発足させました。そして、実行本部は、政権奪還後の平成25年1月から、政権与党として責任を持って教育再生を実行するため、主要な課題について逐次検討し、次の提言を公表してきました。

① 英語教育、理数教育、ICT教育を中心としたグローバル人材育成に関する提言(平成25年4月)

② 幼児教育無償化、学制大改革、大学等への支援強化、教師の養成・採用の抜本改革などを盛り込んだ第二次提言(平成25年5月)

③ 教育再生推進法(仮称)の制定に向けて、その骨格を示した第三次提言(平成26年4月)

 これらの提言に盛り込まれた項目のなかには、例えば幼児教育無償化や大学等への支援強化など、多額の財政措置を必要とするものもあり、こうしたものを実現するために、「財源」問題を避けて通ることはできません。そこで、本年6月、実行本部のなかに教育投資・財源特別部会(主査 塩谷立衆議院議員)を設置し、教育施策にかかる財源のあり方についても議論を始めたのです。

● 教育投資・財源特別部会の中間取りまとめ

 中間取りまとめは、年内目途にとりまとめる最終提言に向け、議論をさらに深めていくための基本的考え方を示したものです。注目すべき点は、以下のとおりです。

 第一は、2060年に生産年齢人口が半減してしまう、という危機的な状況を踏まえ、「早急な対策を講じなければ、十分な改革効果が期待できない」と緊急性を強調していることです。

 第二は、「教育投資は成長戦略の柱となる」という考え方を打ち出したことです。これは、将来の教育財源の確保にむけて、国民理解を得るための布石ともいえます。「教育は国家百年の計」といわれるように、教育はなかなかプライスで表現するのが難しいところ、教育投資の経済的・社会的効果、つまり、教育投資が国の経済成長や少子化対策に与える効果、を“数字でみえる”かたちで表そうとする意欲がうかがえます。

 第三は、資源配分の重点を、子ども・若者のために大胆に移す、としていることです。少子化・学校統廃合等により生じる財源は「教育の質の向上」に確実に充てられなければならず、教育予算の「縮小再生産」ではわが国の未来はない、と訴えています。

 第四は、従来の延長線上ではない、これからの社会経済情勢に対応した制度のあり方とそれに必要な財源のあり方を野心的に求めていることです。

● 平成27年度予算等に向けた提言

 ところで、中間取りまとめは平成27年度予算等に向けた提言も行っており、「教育の質の向上」や「教育費負担の軽減」、「民間資金の活用」等について、各種取り組みの実施を提言しています。なかでも、国民の家計に直接影響する教育費負担の軽減については、以下の内容が盛り込まれています。

〔幼児教育の無償化〕

① 2020年(平成32年)までに、全ての3~5歳児の幼児教育について無償化を実現することを目指し、平成27年度はまず5歳児、とりわけ教育費負担の重い低所得者世帯(*)への支援を拡大すること。これに必要な財源は、予算編成過程のなかで確実に手当すること。
(*)・・・試算によると、年収270万円未満世帯の5歳児を対象とする場合、必要予算は年約45億円。年収360万円未満なら約2割が対象となり年244億円が必要。所得制限なしだと約2,800億円必要。

② 幼児教育の完全な無償化を実現するためには、安定的な財源確保が不可欠であることから、今後、新たな財源確保に向けて、本特別部会において議論を進めること。

③ なお、平成27年度から「子ども・子育て支援新制度」が実施される予定であるが、「幼児教育の無償化」と「子ども・子育て支援新制度」は、幼児教育の充実を図るクルマの両輪として実施すべきである。子ども・子育て支援新制度について、幼児教育の質の充実等のために消費税で確保される
財源7,000億円程度を含めた合計1兆円超の財源確保に、政府・与党一体となって取り組むこと。

〔初等中等教育段階、高等教育段階における教育費負担の軽減〕
 意欲と能力のある全ての生徒達が、経済的理由により進学を断念することがないよう、各学校段階に応じて軽減措置を講じる。

① 高等学校就学支援金に所得制限を設けた際の理念に沿って、低所得者世帯への「奨学のための給付金」等を拡充すること。

② 高等教育段階における奨学金制度について、奨学金は「有利子から無利子へ」の流れを加速化すること。また、いわゆるマイナンバー制度(社会保障・税番号制度;平成24年度から限定的に導入された)の本格実施にあわせて、卒業後の所得に応じ返還額が変動するより柔軟な「所得連動返還型奨学金制度」の導入に向けて準備すること。

③ 私立学校に対する私学助成等基盤的経費の充実を図ること。

④ 専門学校生の授業料等負担軽減のための補助制度を創設すること。

● 教育投資のマクロ経済効果

 先ほどの中間取りまとめの基本的考え方のところで、「教育投資は成長戦略の柱となる」ことを示す必要性に触れましたが、文部科学省も同じ問題意識を持っているようです。本年5月16日の第21回教育再生実行会議で、下村博文・文科大臣兼教育再生担当大臣は、国の将来の課題を解決し、成長し続けるためには、いかに教育への投資の充実が重要かということを、資料を用いて力説しています。
「2020年 教育再生を通じた日本再生の実現に向けて」と題した資料では、OECD、米国等海外の統計・研究成果や国内有識者の試算等を多角的に紹介しつつ、教育投資の経済的・社会的効果が以下のとおり挙げられています。

① 少子化の克服
教育費負担に対する不安が取り除かれると、1夫婦当たりの出生数が増加し、対策を講じない場合と比べて、2060年には生産年齢人口が約500万人増加する

② 格差の改善
経済的負担軽減策の充実により、4万人程度が新たに高等教育機関に進学できる

③ 経済成長・雇用の確保
各教育段階における教育の効果として、教育を受けた者の生産性の向上に加え、波及効果による生産性の向上により、GDPの拡大につながる

④ 将来の公的支出抑制
大学卒業者の割合が上昇し、将来の生活保護費、医療費、失業給付等が抑制される

また、粗い試算とした上で、2020年から年4~5兆円規模の教育投資を続けると、2060年段階で50~70兆円程度のGDP拡大効果があると見込んでいます。

 政府の長期的な試算は甘めになりがちですので、上記試算の当否はともかくとしても、教育投資が多方面にプラスの効果を及ぼすことに異論はないと思います。もっとも、大学等高等教育機関のガバナンスのあり方等、教育サービスの供給体制に課題があることも確かで、真正面から向き合う必要があります。そして、教育投資を継続するには安定的な財源が不可欠なことも議論の余地は少ないと思います。むしろ、この財源問題への取り組みは遅きに失したと批判されるかもしれません。しかし、本当に深刻になるのが約30年後とすれば、今ならまだラストチャンスとして間に合うと思います。私は次代を担う子ども達のために、財源問題を含め教育投資のあり方について、これからも現場の実情を学びながら、知恵を絞り積極的に取り組んでいきたいと思います。