『平成27年度農林水産予算の概算要求(その1)』 | まいたち昇冶オフィシャルブログ Powered by Ameba

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『まいたち昇治の活動報告』第29回 

 平成27年度一般会計当初予算編成における各省庁から財務省への概算要求が8月末で締め切られました。各省庁からの概算要求の総額は102兆円に迫る規模で、26年度の要求額(99兆2,500億円)を大きく上回りました。

これから、いくつかの省の要求の概要を説明していきます。今回は農林水産関係予算のうち、主として農業と畜産・酪農の分野を取り上げます。

なお、予算要求が過大で無駄が多く含まれているのではないかと思う方もいらっしゃると思いますので、一言申し添えます。

確かに、無駄がないとは言い切れません。しかしながら、現在の国の予算は、年金、医療、介護の3経費を除くその他の予算は、OECD先進34カ国の中で、GDP比率で最低の水準にあります。平成13年の小泉政権から民主党政権まで、一貫して効率化の名の下に予算の削減に努めてきた結果です。故に、歳出改革も不断の取組が必要ですが、もう一度日本の、そして地方の再生を図っていくためには、必要な予算は確実に措置していかなければならない状況にあることをご理解頂ければ幸いです。

● 要求総額は2兆6,500億円超、対前年度14.1%増

 農林水産予算の概算要求額は、2兆6,541億円で、前年度の2兆3,267億円を3,000億円以上上回り、伸び率は対前年度比14.1%増となりました。公共事業と非公共事業の別でみると、公共事業費は8,038億円(対前年度比22.2%増)、非公共事業費は1兆8,503億円(同10.9%増)となり、公共事業費の増加要求が目立ちます。

 公共事業費は一般公共事業費と災害復旧等に大きく分かれ、一般公共事業費は、①農業農村整備、②林野公共、③水産基盤整備、④海岸、⑤農山漁村地域整備交付金と分類されます。そのなかで増加要求が大きいのが、①の農業農村整備(3,371億円、25.4%増)と②の林野公共(2,233億円、23.2%増)です。

①の農業農村整備と⑤の農山漁村地域整備交付金を合計したものを「農業農村整備事業関係予算(27年度要求は4,246億円)」と呼びます。この予算額の推移をみると、麻生政権時(H21年度)に5,772億円だったのが、民主党政権下で3,500億円余り削減され、H24年度には2,187億円まで落ち込みました。今回の要求額は、このボトム時の約2倍の水準まで戻っていますが、民主党政権以前の水準にはまだ回復していない状況です。未だ地方からの要求に十分応えられない状況が続く中、最低でも4,000億円台を確保できるよう努めてまいります。

 農林水産省は、今回の概算要求に際し、昨年12月に決定された「農林水産業・地域の活力創造プラン」に基づき、農林水産業を成長産業化して、農業・農村の所得倍増を目指すとともに、美しい伝統ある農山漁村の継承と食糧自給率・自給力の維持向上に向けた施策を展開する、との考え方を示しています。つまり、今年度と同様、産業政策と地域政策をクルマの両輪として、農政改革を実行する方向に変わりはありません。昨秋以降、次々と農政改革の法制化が進みましたが、H27年度はいよいよ新制度が本格的に動き出しますので、現場で着実に実行されるように、その裏付けとなる予算が要求されています。以下、主な重点分野について説明します

● 農地中間管理機構による担い手への農地集積・集約化の推進

 成長政策として第一に優先される事業は、構造改革の推進役となる農地中間管理機構を本格稼働させることです。概算要求では、担い手への農地集積・集約化等を加速するため、農地中間管理機構の事業運営、農地の出し手に対する協力金の交付等を支援するためにH26年度当初予算額の約1.9倍に当たる576億円が計上されています。また、農地中間管理機構による農地の借り受け・貸付けとの連携等により、農地の大区画化等を推進するための予算も前年度の約1.4倍の1,429億円が、前述した農業農村整備事業の一つとして要求されています。

 一方、担い手の育成・確保については、①就農前後の青年就農者や経営継承者への給付金の給付、②雇用就農を促進するための農業法人での実践研修等への支援、③地域農業のリーダー人材の層を厚くする農業経営者教育の強化に使われる、「新規就農・経営継承総合支援事業」に今年度より67億円多い285億円が要求されました。このうち、①の青年就農給付金が31億円増の178億円を占めています。

 なお、この青年就農給付金は就農前後の青年就農者に年間150万円を5年間給付する仕組みで、立ち上がり期の経営を支援するためのものですが、従来は前年の年収が250万円を超えると給付が全額打ち切られ、かえって経営の安定、所得の向上が損なわれるおそれもありました。そこで農林水産省は、就農者の年収合計(年収+給付金)が400~500万円になるまで、前年の年収に応じて給付を段階的に減額する方式に改善することを検討中であり、私としてもできる限りやる気が持てて新規就農が増えるよう、制度の改善に努めてまいります。

● 新たな経営所得安定対策の着実な実施

 成長政策のもう一つの柱は、新経営所得安定対策の着実な実施です。そのため、①麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょ等の畑作物の直接支払交付金2,093億円、②飼料用米、麦・大豆等の戦略作物の本作化や魅力的な産地を創造するための取組を支援する、水田フル活用直接支払交付金2,770億円が、前年度同額で要求されています。

 水田フル活用の推進では、とくに飼料用米の生産拡大が奨励されますが、その関連で、以下の新規事業が計上されています。

* 飼料用米の利用拡大に向けた畜産機械リース事業 59億円
飼料用米の円滑な生産推進のため、利用・保管に係る機械等のリース導入を支援
* 配合飼料供給体制整備促進事業 4億円
飼料用米を活用した配合飼料の供給・利用促進のため、供給体制の整備を支援

 また、農家の安定した経営を確保するための収入保険制度の創設に向けた検討に伴う事業化調査費等として6億円が要求されていることも見逃せません。農林水産省は今秋、27年度産のモデル事業を募集し、28年秋まで1年間の事業試行を経て、29年の通常国会に法案提出を予定しています。現在の農業共済に係る8割補填の仕組みは、安心して農業を継続していく上では不十分であり、9割補填にすべき等のご意見を多数伺っていますので、農業所得倍増の目標とともに、持続的な農業経営の実現の観点から、しっかりと検討を深めてまいります。

● 畜産・酪農の競争力強化

 成長戦略で緊急性が高いのは畜産・酪農の競争力強化です。わが国の畜産・酪農業は、輸入飼料の高騰や、高い設備更新費等が原因で、畜産・酪農家数は減少傾向にあるほか、日豪経済連携協定(EPA)の発効も来年に控えています。そこで、畜産・酪農分野の概算要求には、以下のような新規事業を中心に今年度よりも約440億円多い約2,226億円が盛り込まれています。

〔畜産・酪農の成長産業化〕
* 畜産・酪農収益力強化策 160億円
自動搾乳機械など収益性向上に必要な機械のリース補助や牛舎の整備など、地域の中心的な畜産・酪農経営体が行う施設整備を支援。

* 地域畜産・酪農環境総合対策 61億円
堆肥の広域的利用の推進や、悪臭問題等に対応するための機器・設備の整備、農場移転等に必要な畜産・酪農環境施設等の整備を支援。

〔畜産・酪農の生産力強化〕
* 畜産・酪農生産力強化緊急対策事業 30億円
生乳の増産を図るため、メスの牛が多く生まれるように和牛受精卵移植・性判別精液の活用や関連機器の整備により、産み分けの取組を支援。
肉が高値で売れる和牛の生産拡大のため、肉用牛の繁殖向上のための取組を支援。

* 和牛の生産拡大を支える研究開発 3億円
受胎率の向上に向けて、性判別精液の評価精度の向上や繁殖機能の改善等の研究開発を推進。

● その他の新規事業等

 地域政策に係る施策の説明に移る前に、その他の注目すべき事業も挙げておきます。

* 青果物流通システム高度化事業 5億円(新規)
運転手不足や燃油高騰の問題を抱えるトラック輸送から鉄道やフェリーへ輸送手段の代替を検討。青果物流通の合理化・効率化のため、物流業界との連携による新輸送システム(大型低温設備、多段階温度管理が可能なコンテナ等)の導入実証を支援。

* 先端ロボットなど革新的技術の開発・普及 52億円(新規)
ロボット技術など革新的技術の導入により生産性の飛躍的な向上を実現するため、ロボット産業等と連携した研究開発、現場普及のための導入実証等を支援。

* 国産花きの生産・供給対策 7億円(対前年度2億円増)
今年6月に議員立法で成立した花き振興法に基づき、国産花きの国内シェア奪還に向けた、花きの日持ち性向上対策・新需要の創出にむけた取組を実施。また、2020年東京オリンピック・パラリンピックでのビクトリーブーケの供給体制づくり等を支援。

● 人口減少社会における農山漁村の活性化

 今回の概算要求には4兆円規模の「新しい日本のための優先課題推進枠」(以下、特別枠と略す。)が設けられ、約1兆円は少子化・人口減少対策と地域活性化に充てられる予定です。例えば、地域政策である「人口減少社会における農山漁村の活性化」(1,098億円)は、農林水産省の特別枠向けの政策と言い換えてもおかしくありません。

 また、他省庁(国土交通省、総務省等)と連携した集落のネットワーク化や定住促進の施策も特別枠に位置づけられ、そのひとつは、「農村集落活性化支援事業」(新規、10億円)で、地域の将来ビジョンづくり、集落間のネットワーク化による地域の維持・活性化を図る取組を支援する事業で、もうひとつは、「山村振興交付金」(新規、15億円)で、薪炭・山菜など山村の未利用資源の活用、山村景観などを活かした地域の魅力づくり等の取組を支援するものがあります。

 さらに、農地を維持することなどにきちんと報いるために今年度から創設された日本型直接支払の実施では、多面的機能支払交付金(483億円)と環境保全型直接支払交付金(26億円)は前年度と同額が要求される一方、中山間地域で農業が継続できるよう、平場と中山間の生産条件の不利を補正する中山間地域等直接支払交付金は“超急傾斜地”への加算給付を設けるため、15億円増の300億円の要求となっています。

 その他、都市と農山漁村の共生・対流等の分野では、「都市農村共生・対流総合対策交付金」(5億円増の26億円)や「農山漁村活性化プロジェクト支援交付金」(15億円増の80億円)が増額要求されるとともに、「都市農業機能発揮対策事業」が新規事業として3億円盛り込まれています。この新規事業は、都市農業の多様な機能の発揮を促進するため、国土交通省と連携し、都市農業の振興に向けた検討等を行うものです。都市農業の振興は、農山漁村の振興なくして成功しないと思いますので、都市と農山漁村の共生の観点から検討が進められるよう働きかけてまいりたいと思います。

 次回は、引き続き林業と水産業の概算要求の概要を説明します。