もうすぐって…いつ? -4ページ目

◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十五話


「で・・・さ。色々大変だったけど、女の子が生まれたんだ。」

ケルマーンはそっと、前田の顔を窺うようにして、自らの顔をあげた。
前田は微笑んでみせる。

「俺もまだ学生だけど、学校辞めてでも働こうって決めてたよ。結婚したかったんだ。」

「しなかったの?」

ケルマーンは興味深そうに尋ねてくる。

「したよ・・・・。籍は入れた。けどさ、式はあげられなかったんだ。」

前田の瞳は、遠くを眺めていた。まるで、22年前をながめているかのように。


「同じさ。君の親父と・・・。」

前田の声は、もう既に涙声であった。

殺されちまった・・・妻は、何者かに。
犯人もまだわかっちゃいねぇ。変な殺され方だったよ。
秘密プロジェクトの研究にいかなきゃってことである夜彼女は出かけたんだ。
そしたらさ、警察に見つかった時には・・・もう・・・・
ある岩場で、冷たくなってたそうなんだ。
それを聞いて俺は、駆け付けたよ、その現場に。それがなぜか、日本じゃなくって・・・ここイランだったんだ。
なぜ彼女がこんなところにいたのかは、未だにわからない。
でも、それが事実だったんだ。」

「娘さんは?」


ケルマーンは前田の話に入り込んでいるようであった。
もの凄く真剣なまなざしで、彼の話を聞いている。

「娘はね・・・いや、娘も・・・。日本において来て、帰国したときにさ・・・」

そこまでいうと、前田は声を詰まらせた。

「いいよ、無理してしゃべらなくて。」


ケルマーンの心遣いに、前田は微笑んでみせる。

「ちょっと待ってな。一服したら、話すから。
もう自分の中にためておくのは、嫌なんだ。」




前田は葉巻を取り出すと、ふぅーっと深く吸い始めた。霧のように白い、煙を立てながら・・・。






◆ 願い。 TO ばあちゃん ◆

TBS系「余命1ヶ月の花嫁~千恵さんが残したもの~」放映から一ヶ月・・・

・・・Cancer。


そう、『 癌 』 

細胞、どこにできてもおかしくないこの病気。
遺伝もあるし、いろんな要因があって。。。
家系的なものとか・・・もね。そう。
だれがいつこの病気になっても、おかしくない。
ホントにそう思う。

放送されて話題になった、「余命1か月の花嫁」
ご存知の方も少なくはない、と思う。

イノチについて、しかも癌について。
つい最近、ある出来事があったので・・・このエントリをした。



わたし自身は、余命一か月のきもち。
幸いにも、味わったことはない。

けれど・・・
わたし自身にとってだいじな。
生まれたときから、身近で感じてきた「イノチ」の最期のとき。
そう。
ばあちゃんの、「余命一週間」を・・・覚悟していたのは、
つい昨日
のことだったりする・・・。


それも、「癌」で。。。


じつはうちの、ばあちゃん。
2人とも、癌におかされている。闘っている。

ひとりは胃がほとんどないけれど日々頑張って生きぬいている。
そして・・・ひとりは今、入院中。2回目の癌。
こないだお見舞いに行って来たところなのだ。


「 あと1週間・・・、覚悟してください。 」 


医者にはそう言われていた。
親戚も駆け付けた。  ・・・みな、表情が、曇っていた。

わたしは「その空気だけはのまれまい、むしろ希望を持ちたい」と思い
いつもどおり、なにも変化もなく。
すべてのひとに、笑顔で接した。周りも希望に包まれるように、願って・・・。

イノチの花が咲く期間は、わたしたちには変えられない。
なるようになるもの。
ときはいつかはやってくる。

恐れても仕方ないのだ。


それより。
ばあちゃんがおなじ世界に居るあいだに、話したいことや、やりたいこと。
したいと思った。


ただ、来年あげる挙式。 そう、わたしの花嫁姿・・・
海外永住権の関係、諸々で、できないのかなと思うと・・・それがつらかった。
孫の花嫁姿、見たいだろうに・・・
くやしかった。


だけど。
傍に行って、手を握って。

「いまね、旦那さんになる人は、一生懸命なんだよ。私も頑張って働くんだ!
だから、早くよくなってね。」

って。
声かけして。抱きよせて。
今できること。してきたんだ。  
「故郷に帰って、会うこと。わたし自身の健康な姿を見せること」 
それが一番だから・・・。

涙ぐんでいる、ばあちゃんの顔。
まだ焼きついてるよ。


奇跡的なことが起こった。
きのうのことだ。



なんと、ばあちゃん。
癌を体にもちつつも、抗がん剤との相性がすごくよくって。

リハビリテーションをこなせば、「退院」できるというのだ。
つまり、通院治療のレベルまでよくなったということ。

医者も驚く結果となったそうで・・・。

もちろん大喜びのわたし。

先週見舞いに行った時、「またね」ってことば。交わしたんだ。


それが・・・まさに・・・・。

かなうんだって、涙が出そうだった。

今現在、癌を抱えている人は、年齢にに関係なく・・・山ほどいる。
わたしだって。いつなったって、おかしくないのだ。
細胞は、日々分裂を繰り返しているのだから・・・。

けれど忘れないでほしい。

命は。 医者でも分からない。

希望の輝きは。 
どんなことがあろうとも。 けっして、けっして、無くさないでほしい。

できること。やりたいこと。

一度きりの人生、ベストでやろう!

そんな風に今、つよく感じている。

昨日の電話が鳴って。奇跡的な知らせを聞いて。
まるでお見舞いのハグの想いが通じた気がしたんだ。


「 ばあちゃんへ。
あんまお菓子食べて・・・太りすぎちゃ、だめだよ。
できるだけ、元気に、長生きしてほしいもん。
わたしの花嫁姿。 見てもらうんだから! ね!  
 
                 あなたの、孫より 」




TBS系「余命1ヶ月の花嫁~千恵さんが残したもの~」放映から一ヶ月・・・

◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十四話


「じ、じつはね?父さんは・・・うう・・」

ケルマーンは泣きじゃくりながら、前田の胸で、今つけている首飾りを遺して、父親が誰かに殺されてしまった過去を、前田に打ち明けた。
そして、家に置いてきた祖父が心配だということも・・・。


そのまっすぐで、ストレートな悲しみは・・・前田のこころに突き刺さるように伝わってきた。
ひしひし、ひしひしと。


「いいよ、俺がお前の兄貴になってやる。・・・あ、兄貴って年でもないか。俺、今43なんだ。実は俺もな・・・。その恐怖は・・・よくわかるんだよ。」

気づくと前田も涙をこぼしていた。こころの氷が溶けだしたかのように・・・。
前田も涙を忘れていたひとりだったのだ。


「俺には、・・・娘がいた。妻も。」


前田は重い口を開いた。

ケルマーンは、前田の胸に顔を押し付けたまま、彼の話をしっかり聞いている。


「あれは、22年前のことだ。俺は20だった。まだ大学生だったよ。妻は、大学の研究員だったんだ。12歳年上だった。
考古学の研究以外にも何かひみつのプロジェクトに参加していたようだけど、それは教えてもらえなかったなぁ。聞きたがるんだけどさ、俺は。
彼女は「言えば俺と居られなくなる」って・・・言ってたっけ。
で、さ。恥ずかしながら、俺は妻を師匠にして、大学で共同研究をさせてもらっていたんだが、・・・いつの間にか・・・、恋におちてしまったていたんだ。
彼女は学校側の人間だから、表ざたにはしにくかった。でも俺たちは、隠れた恋でも、幸せだったんだ。
でもって・・・さらに、その年の冬、彼女が俺の子供を妊娠したってことが分かったんだ。こんな話、君にしていいのかなぁ・・・」


少年の頭を撫でつつ、前田は笑ってみせる。


「それで。俺たちすぐに、結婚したんだ。向こうの親には反対されたけど、なんとかね。結婚させてもらえたよ。」


ケルマーンは未だ、顔を前田の胸に押しつけたままではあるが、「うんうん」と頷いて見せた。


前田は話を続けた。






COLOR

  い ま。 


 なに いろ?



  いま。

 

 なにいろ?



                 BY:made-it

 グレーから、墨汁。・・・否。

雲泥にしずむような。 カラーが。

 ちゃっぷん ちゃっぷん

       音を 立てている。


ちゃっぷん。


色を変えようともがく、と。
ただ はまる。 底なし沼。


風を待とう。
沼は、こころのなかの 景色であると。


うけとめて。



そっとながめたら。 てまねきしてる。


渦に呼ばれた。


NO.


NO.....




◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十三話


「それでいいんだ。さっさと準備しな。」

ボスの指先は、いつの間にやら元通りになっている。


(この男、いったい何者なのだろうか・・・)

リナを含め、この組織の何パーセントの者が、ボスの実態を知っているのであろう。
そして、どれだけの者が、好きでここに居るのだろう・・・。


この組織は謎に包まれている。
ただ皆が知っているのは、ボスの周りに「重役」とされる人物が存在していることだけであった。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


「・・・。間違い・・・ないよ。ジッグラドと、アリーだ。」

研究室でむごい姿になってしまったアリーと弟を目にしても、ケルマーンの声のトーンは冷静だった。


(平気なのか?こいつ・・・。俺が飼い象をこんなにしちまったってのに。。。)


自分に少年が逆上するか、または泣きつくのではないか・・・とおもっていた前田は、意表を突かれたような気分であった。
しかし・・・
そっとケルマーンの表情を覗きこんで、ハッとした。

ケルマーンは、しゃくることもなく、あくまで冷静なままでままではあるが・・・
泣いていたのだ。


真っすぐな少年の瞳からは、頬をつたって雫がこぼれていた。少年は涙をふくことさえ忘れているのだ。

「あ、あれ。なんか泣いてるや、僕。
父さんが死んだとき・・・そう言えばワンワンないてたっけな・・・
あっはは・・・。」


やっとケルマーンは自分の涙に気づいたようだ。無理やり笑って、涙を隠そうとする。


前田はいてもたってもいられなくなって、彼を強く抱きしめた。


「恥ずかしいことじゃない。泣けばいい。
そっか。オヤジがいないんだな・・・」



胸に抱かれたケルマーンは、これまでの冷静さの糸が切れたかのように、ワァワァと声を上げて泣き出した。

こころの氷が解けたかのように・・・。







◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十二話


ボスには、リナのガタガタ・・・とした震えが読めたのだろう。
彼はニヤリと笑い、愉しげに言う。


「で、だ。肝心なお前の任務。
‘ここに捕まって、逃げ出した’と、演技してこい。
あいつの父親を殺したのもここのモンだと言っていい。ジジイが捕まってることも知らせるんだ。
・・・まぁ、いわゆる釣りだ。命は取ってはならん。時空の鍵が使えなくなるからな。
そして・・・最終的に。
少年の情を掴み、連れて来い。ここへ。

ここに少年が来たら、あとは簡単。お前への情を利用して、この基地がすべての時空を行き来できるように、パワーを発揮させるんだ。もともと備わった力、「気」みたいなものがあるはずだ。ジジイのためなら力もでるだろう。」




「釣り・・・?!私が、その子をだますのですか?!」

(しまった・・・だますだなんて・・・。)

ハッと口を手でふさいだリナを見て、ボスは指先をこちらに向けた。
・・・するとどうだろう。いつの間にか、指先は象牙のように白く鋭利な武器と化していたのだ。



象牙の指先はリナの首筋をつたう。うっすらと赤い筋が、彼女の首筋についた。


「は・・・あぁあああ・・・。」

リナの口からは、恐怖におびえた声が漏れる。

そして、じんわりとした痛みと恐怖で、彼女は・・・泣き出してしまった。
ボスは冷酷な眼差しを彼女に向けて言った。

「逃げるなどと、本気で考えるなよ?
勘違いするな。貴様は、俺の持ち物なのだ。
この組織の中で、POLICEという重要なポジションにおいてやったのだ。
遊楽用のおもちゃにされなかっただけでも感謝しろよ・・・。」




「あ・・・りがとうございます・・・。」


なぜ心にもない礼を言わねばならないのだろうか。
そんな自分が、リナは情けなくて、仕方なかった。





◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十一話

リナの動揺を知ってか、知らずか・・・。ボスは話を続ける。

「で、だ。時空の鍵はな。あの少年じゃないと、
・・・いや、あの一族のなかの‘第一子’でないと、あやつることができないのだよ。
なぜかは謎だが、あの一族の第一子には、代々その力が受け継がれるようなんだ。・・・まぁ、最近発覚したことだよ。」


「なぜ・・・知ったのですか?!しかも最近?!」

リナははじめて聞かされる話に圧倒されっぱなしであった。
2008年という時代。・・・自分のいるべき時代。
ここをうまく切り抜けて行かせてもらえれば、この機会こそ逃げ出すチャンスになるかもしれない。
どうしてもここは行かせてもらわねば・・・。できれば、少人数で。

ボスはリナの問いに機嫌よく答える。

「あの一族、・・・年寄りが一人いたもんだから、そいつをいけにえにとっ捕まえて来たんだがな。もう認知症がはじまってんだ、俺を自分の子と勘違いして、簡単に口を割りやがった。とっくに息子は死んでるってのになぁ。
‘ワシは4男だから時空の鍵は長男のお前に預けた’とかなんとか言ってたな。ハッハ(笑)
バカ者よ。自分を助けるために、自分の孫が犠牲になるとも知らずに!!
ぶわっはっは!!」


実はケルマーンが姿を消した時、ボスは彼を呼び寄せるため、彼の家に手下を向かわせたのであった。リナたちと同時期に派遣され、控えとして待機していたもう一部隊である。

ケルマーンの家。
そこにはケルマーンの祖父がすやすやと眠っていた。

「家族はこいつだけみてぇだな。」

POLICE集団は、眠る翁を抱えると、ボスの待つ基地へと、帰って行った。
太陽系から10億光年先の、この基地へ。
時空のプレートが閉じかけているぎりぎりの隙間に入り込んで・・・。



それを聞いたリナは再び、そして今度は血の気が引くような強烈な震えに襲われた。






◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十話


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リナは震えているのが悟られないよう、できるだけ冷静を装った。


「いえ、なんでもありません。時空の鍵の話というのは・・・なんでしょうか?」


ボスは不気味な笑みを浮かべたまま、リナに話しはじめた。

「時空の鍵、例の少年が持っているのは、聞いたよな。あの少年の行き先を調べたんだ。
私は時空のプレートのズレが生じたとき、その隙間がどの時代につながっているかを探知する、機械を作らせたからな。


「機械?!そんな、作れるんですか?!」

思わず驚きの台詞が、リナの口からこぼれた。

(しまった・・・、ボスの話を遮ってしまった・・・)

リナは冷や汗をかいたが、ボスは機嫌がよかったのか、全く気に留めている様子はない。
彼女はほっと胸をなでおろし、ボスの話の続きを聞き始めた。


「あの少年は、確かに父親から受け継いだ、「時空の鍵」を握っている。
しかしね、もともと私は、何を隠そう・・・あの少年の祖先と、深いつながりがあるのでね。時空の鍵のパワーに被爆されていたんだよ、脳も、身体も。
治療も兼ねて、部下の研究員や医師に、そのパワーを抽出させてみたら、時空のプレートの時代予知ができる機械のエネルギーが作れたわけだよ。
あの少年は今、2008年にいる。」



「2008年・・・。」


リナはごくりと、唾を飲んだ。
今年で彼女は、22歳。リナは1986年に赤ん坊のまま、ここへ連れてこられた。赤ん坊だったはずなのに、うっすらとその時の記憶がある。
・・・遠くで、男の人が泣き叫んでいる声を、聞いた気がするのだ。



そう、まさに2008年は今、自分がそこで生活していた「はず」の、時代なのである。




~詩&MUSIC~「おほしさまの コンペイトウ 」

スガシカオ 夜空ノムコウ (Video Clip) Suga-Shikao "Yozora No Mukou"


お月さまの、すべり台。
おほしさまの、コンペイトウ。

太陽のねむった空を。 およいで。
銀河鉄道の夜を駆けて、 みたい。

宮沢賢治も、やってみたかったんだ。
きっときっと、ね。 そう思う。 そう思う。


見える世界は ときにスモッグもくもく。 ゲホゲホゲッホ・・・
視野のカーテン。下ろしたくなる時も ある。 ・・・けれど。


うーん・・・でもさ。
結局はさ。
やっぱ見たいんだ。
スモッグで目をやられないようにすればいい。よね。


迫りくる風をも、うけいれよう。
なびくのであらば、なびいてみよう。

それでも ワタシは 倒れない。

信じる想いは 真っすぐだから。



おほしさまのコンペイトウ。
キチョウさが増す、梅雨のきせつ。