◆小説◆「Elephant Signs(エレファント・サインズ)」第二十四話
「じ、じつはね?父さんは・・・うう・・」
ケルマーンは泣きじゃくりながら、前田の胸で、今つけている首飾りを遺して、父親が誰かに殺されてしまった過去を、前田に打ち明けた。
そして、家に置いてきた祖父が心配だということも・・・。
そのまっすぐで、ストレートな悲しみは・・・前田のこころに突き刺さるように伝わってきた。
ひしひし、ひしひしと。
「いいよ、俺がお前の兄貴になってやる。・・・あ、兄貴って年でもないか。俺、今43なんだ。実は俺もな・・・。その恐怖は・・・よくわかるんだよ。」
気づくと前田も涙をこぼしていた。こころの氷が溶けだしたかのように・・・。
前田も涙を忘れていたひとりだったのだ。
「俺には、・・・娘がいた。妻も。」
前田は重い口を開いた。
ケルマーンは、前田の胸に顔を押し付けたまま、彼の話をしっかり聞いている。
「あれは、22年前のことだ。俺は20だった。まだ大学生だったよ。妻は、大学の研究員だったんだ。12歳年上だった。
考古学の研究以外にも何かひみつのプロジェクトに参加していたようだけど、それは教えてもらえなかったなぁ。聞きたがるんだけどさ、俺は。
彼女は「言えば俺と居られなくなる」って・・・言ってたっけ。
で、さ。恥ずかしながら、俺は妻を師匠にして、大学で共同研究をさせてもらっていたんだが、・・・いつの間にか・・・、恋におちてしまったていたんだ。
彼女は学校側の人間だから、表ざたにはしにくかった。でも俺たちは、隠れた恋でも、幸せだったんだ。
でもって・・・さらに、その年の冬、彼女が俺の子供を妊娠したってことが分かったんだ。こんな話、君にしていいのかなぁ・・・」
少年の頭を撫でつつ、前田は笑ってみせる。
「それで。俺たちすぐに、結婚したんだ。向こうの親には反対されたけど、なんとかね。結婚させてもらえたよ。」
ケルマーンは未だ、顔を前田の胸に押しつけたままではあるが、「うんうん」と頷いて見せた。
前田は話を続けた。