『ウェズリー・スナイプス ザ・シューター』ネタバレレビュー|サイモン・フェニックスから14年
映画『ウェズリー・スナイプス ザ・シューター』を観ました。
原題は『The Contractor』。2007年に製作されたアクション映画で、ウェズリー・スナイプスが元CIAの凄腕スナイパー、ジェームズ・ダイアルを演じています。
最初にこの映画を知ったとき、個人的にかなり気になったのが「ウェズリー・スナイプス」という名前でした。
なぜなら、ウェズリー・スナイプスといえば、私の中では1993年の映画『デモリションマン』で演じたサイモン・フェニックスの印象が非常に強かったからです。
『デモリションマン』のサイモン・フェニックスといえば、残忍で凶暴、暴力的なのに、どこかコミカルでユニークな悪役でした。
ところが本作で登場するジェームズ・ダイアルは、そのイメージとはまるで違います。
寡黙で、冷静で、無駄なことを話さない。
同じウェズリー・スナイプスが演じているのに、まるで別人です。
しかも『デモリションマン』が1993年、本作が2007年なので、その間には14年もの時間があります。
その年月を考えながら観ると、本作のウェズリー・スナイプスには、若い頃とはまた違った渋さが感じられます。
特に印象に残ったのが、冒頭の牧場のシーンです。

ダイアルはかつてCIAの秘密工作員として暗殺を請け負っていた男ですが、現在はその世界から離れ、牧場で静かに暮らしています。
このときのダイアルが、とにかく渋い。
都会的なスパイというより、むしろ西部劇に登場する無骨なガンマンのような雰囲気があります。
過去に何人もの人間を殺してきた男が、銃を置いて牧場で暮らしている。
その姿には「もう昔の世界には戻りたくない」というような哀愁さえ感じられます。
サイモン・フェニックスなら、同じ牧場にいても何かと騒ぎを起こしそうですが、ダイアルは正反対。
静かで、落ち着いていて、必要なことしか話さない。
このキャラクターの違いを見ただけでも、ウェズリー・スナイプスの演技の幅を感じます。
そんなダイアルのもとへ、かつての上司コリンズから仕事の依頼が舞い込みます。
ターゲットは、以前取り逃がしたテロリストのアリ・マフムード・ジャハール。
ダイアルは過去の失敗を清算するため、再び銃を手にします。
そして狙撃。
見事にターゲットを仕留めます。
ここまでは、まさに「元凄腕スナイパーが最後の仕事に挑む」という王道の展開です。
ところが、仕事を終えたダイアルを待っていたのは、平穏な引退生活ではありませんでした。
逃走中に相棒が殺され、ダイアル自身も負傷。
さらに、殺人事件の犯人として警察から追われることになります。
そして、この映画の本当の恐ろしさはここからです。
ダイアルは、自分が最初から罠にはめられていたことに気づきます。
依頼人であるコリンズは、自分たちの秘密工作を隠すため、ダイアルを事件の犯人に仕立て上げようとしていたのです。
さらに警察高官ウィンザーの殺害までダイアルの仕業に見せかけられます。
つまりダイアルは、テロリストを暗殺するために利用されたうえ、任務が終わった後には、その罪まで押しつけられてしまったわけです。
しかもウィンザーを追っているのは、彼の娘でもある女性刑事バラード。
彼女は父親を殺した犯人がダイアルだと思っているため、執拗に彼を追跡します。
ダイアルからすれば「自分はやっていない」と言いたいところですが、証拠は彼に不利なものばかり。
警察からも追われ、元仲間からも命を狙われるという、完全な孤立状態に陥ります。
そんな逃亡中のダイアルを助けるのが、少女エミリーです。
このエミリーとの出会いが、本作に単なる銃撃戦だけではない部分を与えています。
ダイアルは負傷しているところをエミリーに助けられます。
殺人を仕事にしてきた男と、普通の生活を送る少女。
二人の組み合わせはかなり対照的です。
エミリーとの交流を通して、ダイアルの人間らしい部分が少しずつ見えてきます。
普段は無表情でクールなダイアルですが、エミリーに対しては単なる「任務」ではない感情を持つようになります。
この部分があるからこそ、最後の展開にも意味が出てきます。
そして事件の黒幕は、やはりコリンズ。
自分自身の秘密を守るためにウィンザーを殺し、その罪をダイアルに着せていたのです。
最終的にダイアルはコリンズと対決。
銃撃戦の末、コリンズを倒します。
一方、バラードも捜査を通じて事件の真相を知り、ダイアルが父親殺しの犯人ではなかったことを理解します。
ここでようやくダイアルは、長かった逃亡から解放されます。

そして印象的なのがラストです。
ダイアルはエミリーとの関係をそのまま終わらせません。
エミリーと祖母に手紙を送り、自分のいるモンタナの牧場へ来るよう誘います。
そして最後には、牧場でエミリーと一緒に過ごしているダイアルの姿が描かれます。
冒頭では、過去の世界から離れて一人で暮らしていた男。
しかしラストでは、少女との交流を通じて、人とのつながりを取り戻しています。
自由に走る馬の姿も含めて、ダイアルが「組織のために人を殺す男」から、「自分自身の人生を生きる男」へ変わっていくことを感じさせるラストでした。
本作は、派手な銃撃戦や狙撃シーンがある一方で、実は主人公の再生を描いた物語でもあると思います。
そして、個人的にかなり面白かったのが、やはりウェズリー・スナイプスの変化です。
『デモリションマン』は1993年の作品。
そこでスナイプスが演じたサイモン・フェニックスは、残忍で凶暴なのに、コミカルでユニーク。
画面に登場するだけで、何かとんでもないことをやらかしそうな危険な魅力を持ったキャラクターでした。
それから14年。
2007年の『ザ・シューター』では、同じスナイプスが、寡黙でクールな元CIAスナイパーを演じています。
若い頃のフェニックスのような派手さはありません。
むしろダイアルは、ほとんど感情を表に出さない。
しかし、その静けさがかえって格好いい。
特に牧場でのダイアルは、西部劇のガンマンを思わせる無骨さとダンディーさがあります。
「この男、昔は相当なことをやっていたんだろうな」と、説明されなくても雰囲気から伝わってくるのです。
サイモン・フェニックスとダイアル。
同じ俳優が演じているとは思えないほど対照的ですが、どちらもウェズリー・スナイプスだからこそ成立するキャラクターなのかもしれません。
フェニックスは暴力と混沌を楽しむような男。
ダイアルは、暴力の世界から抜け出したい男。
この違いを意識して観ると、『ザ・シューター』はまた違った面白さがあります。


















