夜回り先生、それは夜間高校教諭だった水谷修氏の通称です。皆様もおそらくどこかでその名を一度は聞いたことがあるかと存じます。非行に走ってしまった(あるいは走ろうとしている)中学生・高校生の側に立ち、彼らを更生させ、彼らがまっとうな人生を歩めるように尽力している元教師です。
私が夜回り先生の名前を初めて耳にしたのがいつだったか、残念ながらよく覚えていません。水谷氏の夜回り歴は10年以上ですが、その活動を知ったのは2003年以降です。こんな話をするのは、一昨日に久しぶりに図書館に行き、氏の著書を3冊借りたからです。今日までに3冊読みきってしまいました。
内容は3冊とも、関わった子供達についてはあまり変わりません。実際、今回借りた3冊全部に出てきた子供が何人かいます。氏にとって辛いながら、他人に伝えるために必要不可欠でかつ、当事者である子供達が書くことを認めてくれた(もう亡くなってしまったが許してくれると氏が信じているのも含む)ケースを厳選した結果でもあります。そんな子供達を通じて、覚せい剤や麻薬といったドラッグの危険性を解説したのが『さらば、哀しみのドラッグ』です。『さらば、哀しみの青春』では、ドラッグやいわゆる売春(氏の著書では「買春される」と表現している)にどっぷりはまり、抜け出そうにも抜け出せない子供達と、そうなった理由、少年犯罪の歴史、今の自分達にできることなどを語っています。タイトルもずばり『夜回り先生』は、先の2冊とは少し趣が異なります。氏が関わった子供達の話はもちろん出てきますが、氏の自伝的な章もあるのです。自らの子供時代や学生時代の話、教師や学校が嫌いだったのに教師になった理由、自分の人生を変えた人物のことなどが綴られています。
子供達についての記述は、子供達がいじめや虐待に遭っていたことを詳細に書かれていたため、読んでいる間は子供達の加害者に腹が立って仕方ありませんでした。こんな加害者、みんな死ねばいいのに、などと何度考えたことか。それと同時に切なくもありました。人がいじめや虐待などを耐え忍ぶ種のドラマが生理的に嫌いな私には、とても辛い3冊でした。それでも読破したのは、水谷修氏にとても興味があったからに他なりませんし、多分これからも別の著書を何冊かは読むでしょう。
何週間か前、夜回り先生のドキュメンタリー番組の再放送を少し見ました。水谷氏はガンに侵されているそうです。ガンを患って本当は苦しいながらも、子供たちの前ではその様子を微塵も見せまいと振舞う氏が印象的でした。もしも氏が亡くなってしまったらと考えると、気持ちが沈みます。これからの日本はますます悪くなる一方だと考えもします。氏の思いを受け継ぎ、先生に代わって夜回りをする人が現れることをただただ願うのみです。