ゴルフ直線打法 -18ページ目

最大のポイント:クラブを引き下ろす動き

「改訂実用版「核心打法」」(08-04-14)では、脚腰背骨の動きで腕の動きを引き出す仕組みが明確になれば、「クラブを引き上げ、引き下ろす」という感覚でクラブが振れる、としています。これは、脚腰の動きで地球に働き掛け、その反作用を利用してクラブを振るというスイングの動きの仕組みが体感的に納得できると、ごく自然に納得できます。

バックでクラブを引き上げる動きは、腕の動きで体の動きを主導する感覚で簡単に理解できます。ところが、「深いトップ」への動きでダウンの体勢に入った所から一気にクラブを引き下ろす動きは、極めて強力で迅速な動きのためにその仕組みは誤解を招きやすいのです。

このダウンの動きについては、これまでもくり返し議論して来ていますが、それでも誤解の恐れが気になる程に分かり難いものです。

「マジック・グリップ」で両肘を固めて腕を伸ばせば、クラブが脚腰の動きに緩みなく直結します。この体勢が確保できれば、基本的にはクラブを引き下ろす腕の動きも決まります。ただし、これを効果的に利用するには、ダウンの脚腰背骨の動きを体感的に確認しておく必要があります。

このためには、左手の親指を右手の平で握って「マジック・グリップ」の体勢を固め、これを「深いトップ」まで引き上げます。ここから、固めたグリップを右脇前に一気に押し切ってみます。脚腰の踏ん張りを利用してこの動き一気に実行すると、両腕が伸び切る所で、これもまた一気に固めたグリップを左に引き抜くように両腕が引かれます。

この時、アドレスで固めたグリップの形が崩れないように注意して下さい。胸を左に回す動きがあると、左グリップが内側に引き込まれて、グリップの背中が丸くなるように動いてしまいます。これではなく、胸が右に引かれる形の動きで腕が伸びる必要があります。これで、アドレスのグリップの体勢のままボールを打ち抜くことができます。

この場合、腕でグリップを引くのではなく、腕が強力に左に振られ、その動きがグリップを引くのです。脚腰の強力な踏ん張りの動きに対する地球の反作用が、脚腰背骨の動きを通じてここに現れるわけです。背骨がしっかり安定していない限り、この動きは利用できません。体の正面(背骨の正面)を固定して腕を振り抜く必要があるわけです。

とにかく脚腰背骨の仕組みの不要な動きを排除して、「深いトップ」から固めたグリップを一気に右脇前に向けて押し切ってみれば、この辺りの様子が体感的に納得できます。これに対して、ヘッドをボールに向けて振ろうという意識でダウンに入ると、全てが逆の動きになってしまいます。清水の舞台から飛び降りる感覚で一気にクラブを引き下ろしてみて下さい。

微小版「核心打法」でパッティング

パットを「核心打法」の要領で打つことは以前のブログに書いてあります(「パッティングと転がしの極意」(07-05-14))。ところが、当時は「マジック・グリップ」の意識が不十分で、面倒な説明になっています。これを修正するとパッティングは簡単になります。

まずアドレスの体勢でパターのヘッドを地面に置き、普通のクラブのように「マジック・グリップ」でパターを握ります。ただしパターの構造から、両手がパターのハンドル(柄)を下から支える形に深く握ることになります。これで両肘が外側に引かれる形で腕とグリップが固まって肩に繋がります。この場合、左の人差し指が右手の小指外側を押さえる形になります。

これで通常のクラブでアドレスの構えに入る時のように脚腰に緊張が生まれ、パターが脚腰の動きに繋がります。安定なパッティングの動きをするにはこの脚腰の構えを確保する必要があります。

この体勢が固まると体の動きに緩みがなくなり、通常の「核心打法」の場合と同様に、頭を安定に保ってパターを振ることができます。この体勢でホールに向かうヘッドの向きを確認し、次いで頭を正面向きに固定したまま、微小な「魔法の動き」でバック、微小な方向転換の動きが生む脚腰の踏ん張りでヒット、を実行します。目標方向を見る意識はボールを打ち終わるまで厳禁です。

目標方向を見る頭の動きが現れると、体の体勢が崩れます。頭の安定保持の仕組みが体の動きを引き出すからです。脚腰の安定な動きを確保するには、頭を安定に保持する両膝の構えに十分な注意が必要です。

結局、微小版「核心打法」でパッティングを実行すれば、腕がしっかり目標方向に向けてヘッドを振ることが確認できます。これで極めて簡単に安定な動きができます。試してみて下さい。

さて、これで「核心打法」の実用化はほぼ完成です。自身でその有効性を確認してみて下さい。

動きを作る動き

前回の話で、「脚が「螺旋」の動きを通じて地球に働き掛ける動きを原動力として、緩みのない腕の動きを引き出せば、良いスイングの動きが得られる」という見方に到達しました(「良いスイング=無駄な動きの排除」(08-04-16))。ここで次の疑問が生まれます。これは結局「犬が尻尾を振る」ということではないか、というものです。

これは、スイングの原因になる動きは肩と腕の「魔法の動き」か、それとも両足の「螺旋」の動きかを問う問題になります。この問題に対する答えの手懸かりは、スイングの動きの転換点で「魔法の動き」が働くという事実にあります。これについては、「「核心打法」開眼特集」(08-01-21)の中に次の説明があります。

「右腕を内側に回す「魔法の動き」を実行してみると、テーク・バック、引き上げ、「深いトップ」、ダウン、インパクト、のそれぞれの動きの開始時点で、腕の内側回転の動きが現れます。これらの動きの間は体の動きで腕が振られます。左腕にも対応する動きがあり、これらの転換点の間は、固まったグリップを体の力強い動きが引きます」

この記述の内容を詳しく検討すると、バックスイングの過程では「魔法の動き」がリードして「深いトップ」への動きが生み出され、この動きで生み出された背骨の変形を一気に打ち消すように引き戻す脚腰の動きでダウンスイングが実現する、というスイングの動きの構造が明らかになります。

静止状態からの動きを生み出す動きとしては、バックのスタートの「魔法の動き」があり、ダウンのスタートの両脚腰の動きがあることが分かります。ダウンからインパクトへの切り替えは、この強烈なダウンの動きによる体のバランスの崩れを引き戻す、神経系の働きが生み出すと考えればすべてが納得できます。

バックのスタートの「魔法の動き」が静から動への動きを生み出し、ダウンの脚腰の踏ん張りも、「深いトップ」の方向転換の動きの終期に一瞬生まれる静止から、急激なダウンの動きを生み出すと捉えればすべてが明瞭になります。もちろんこれらの動きの全てを脳の働きが制御します。しかし実際には、その内容を追求しなくても自分の意志で実現できる動きを使うわけです。

こうして「頭が犬を動かす」というのが実態であり、その効果的な実現には、バックは「魔法の動き」で尻尾がリードし、ダウンは脚腰の踏ん張りで犬がリードする形の動きが使われることになります。このように捉えれば、犬が先か尻尾が先かの議論は無意味であることが分かります。

何れにしても、今回の検討で長く問題であった「動きを作る動き」という難しい課題に対する実用的な解答が得られたわけです。これで、二重振り子のような物理的モデルでは解決できない、初期条件の設定の問題が初めて明確に処理できることになりました。

良いスイング=無駄な動きの排除

脚腰の動きと肩の動きとの繋がりに注目することで、改訂実用版「核心打法」(08-04-14)が登場しました。ここまで来ると体の動きの構造が単純化され、スイングの動きの見方も変わります。これで見えて来たのは、脚の動きの生み出すエネルギーを効果的にインパクト時の目的方向へのヘッドの動きに転換するのが、腰と背骨の動きの役割であることです。

この見方からは、体重移動や腰の回転の動きでクラブを振るという考えは誤りで、体の重心の動きを最小限に止めて、脚の動きの効果を腕の動きに変換する必要があることが分かります。要するに、外から見える体の動きは最小限に抑えてクラブを振ることが大切なわけです。

ここで、肩と腕の「魔法の動き」を忠実に実行するスイングを使って、初めて真っ当なショットを経験した時の体の動きの感覚を思い出します。コースでの実戦ラウンドで、ドライバーもウッドも真っ直ぐ高い弾道の意図した通りの飛びを経験したのですが、この時は足が地面を左右に押す動きの感覚と共に、強く地面を下向きに押す動きの感覚が印象的でした。

その後の詳しい検討で明らかになった両足の「螺旋」の動きは、まさしくこの左右上下の動きを示します。この動きを生み出すのは、両方の脛を左回りに回し続ける両脚の動きです。これらの動きの効果が腰と背骨の動きを通じて肩の動きを引き出し、肩と腕の「魔法の動き」を通じてクラブを振ります。

このように見ると、意識的に腰を回したり、右に左にと体重を移動させたりする動きはどこにも無いことが分かります。巧妙に体のバランスを保つ仕組みが働いているわけです。

このバランスを保つ仕組みは神経系の働きが支えています。内容を詳しく調べる余裕はありませんが、J. Baker Supraspinal Descending Control: The Medial “Postural” System, Chapter 32 FUNDAMENTAL NEUROSCIENCE M. J. Zigmond, F. E. Bloom, S. C. Landis J. L. Roberts, L. R. Squire, editors, ACADEMIC PPRESS, 1999には参考になると思われる記述があります。

神経の働きとなれば、これは外から見るだけでは何も分かりません。しかし、その働きに干渉しなければ、不要で不確実な動きは避けられる筈だとは考えられます。逆に考えれば、体の不要な動きが減るほど安定なショットが期待できるということになります。

こうして、脚が「螺旋」の動きを通じて地球に働き掛ける動きを原動力として、緩みのない腕の動きを引き出せば、良いスイングの動きが得られるという見方が成立します。「核心打法」はこれを実現するものです。マスターズのブラント・スネデカーのスイングを見ると、この見方によく合う動きに見えるのです。

マスターズの新星達

今年(2008年)のマスターズには、トレバー・イメルマンとブラント・スネデカーという二人の新星が登場しました。一位になったイメルマンは1979年生まれ、三位タイに終わったスネデカーは1980年生まれということです。偶然ながら1975年生まれのタイガー・ウッズともども12月生まれというのも面白いことです。

この二人のスイングの特徴は、何れも極めて単純な動きであることです。特にスネデカーのスイングには全く余計な動きがなく、手前味噌になりますが殆ど「核心打法」の動きのように見えます。パワーの雰囲気よりは機械のような動きでボールを打つ感覚に見えます。新しい時代の幕開けのように感じます。

今回は予定を変更して、偶然テレビで見る機会のあったマスターズの三日目と四日目の後半の模様からその印象を書きました。「目が人を騙す」危険はありますが、機会があればこれらのプレーヤーのスイングを観察してみて下さい。参考になると思います。

改訂実用版「核心打法」

「実用版「核心打法」」(08-02-01)では、
 「マジック・グリップ」で両腕を固めて伸ばすアドレスの構えを作り、
  腕を固めたまま確実に「深いトップ」に入れ、
  脚腰の踏ん張りで一気に体の右側で振り抜く」
となっています。最近の検討結果から、これを更に実用的に改訂することができます。

前々回(08-04-12)の「左手の握りの仕組み」の議論から、「マジック・グリップ」を採用すると、両脚腰の動きに注目するだけで緩みの残らないスイングの動きが実現できることが分かります。この動きの仕組みを明確にすることが大切で、このためには、これから書く動きの一つ一つを確認する必要があります。一つでも間違うと全体の動きが怪しくなります。

まず「マジック・グリップ」でアドレスの構えを作る動きです。これには「マジック・グリップ」の固め方の再確認が必要です。通常のグリップとの違いは、指でクラブを握るのではなく、両手の平の先端部分でクラブを握り、後ろ三本の指を固く巻き込むことです。左人差し指を右小指と薬指の間の窪みに置き、この動作でグリップを固めてから肘を伸ばします。

この動きで脇が空くように両肘が外に張り出して伸び、両グリップが背側に反って腕が固まり、グリップが肩に繋がります。始めに両脚でしっかり地面を押す構えを作って置けば、この腕の両肘の動きと共に両膝の踏ん張りが現れ、腕の動きが地球に繋がります。この脚腰の動きで、両肩と両腰の間の距離が大きくなるように背骨が踏ん張ります。

こうして腕を強力に動かす広背筋(腕の前面上端部を腰に繋ぐ)が引き伸ばされ、背中に緊張が生まれます。この緊張を増し続ける、すなわち腰と肩の間の距離を増し続けるように、バック、「深いトップ」、ダウン、インパクトの動きを実行すれば、緩みのない強力な腕の動きでボールを打ち抜くことができます。こうして次のような改訂実用版「核心打法」が得られます。

 「マジック・グリップ」で両腕を固めて伸ばすアドレスの構えを作り、
  クラブを引き上げ
  「深いトップ」で方向転換
  クラブを引き下ろしてインパクト、
  一貫して肩と腰の間の距離を増すようにしてこの動きを実行。

「深いトップ」の動きで荷重が左脚に掛かり、一気に体の右側での引き下ろしに入れます。「言葉で動きを表現する難しさ」(08-03-29)では、危険のない表現は「グリップを押し上げ、押し下げる」になるとしていますが、脚腰背骨の動きで腕の動きを引き出す仕組みが明確になると、「クラブを引き上げ、引き下ろす」という感覚でクラブが振れるのです。

クラブと共にスイングの見方も変わる

「核心打法」の動きの仕組みは強力な腕の動きを引き出し、これがインパクトでヘッドの直線的な動きを引き出します。したがって固くて重いシャフトのクラブでも振れます(「核心打法」開眼特集(08-01-21))。これに対し、ヒッコリー・シャフトの時代にはシャフトの撓り(しなり)が大きく、円周状にヘッドを振り回してボールに当てる以外に方法が無かったのです。

スチール・シャフトの時代になり、バイロン・ネルソンやベン・ホーガンが新しい打法を考案したわけですが、カーボン・シャフトの時代になると、長いクラブでも撓りの少ないものができるようになり、このようなシャフトの特性に合わせてスイングも変化して来ています。

これに関連する面白い記事を読んだことがあります。これはThe Birth of IRON BYRON: The human story behind golf’s famous hitting machine (試訳:鉄のバイロンの誕生:ゴルフの有名な打球機械の裏にある人間的な話)(PETERSEN’S Golfing vol.3, no.11, November 1996 pp.47-49)で、回転する腕の先にクラブを繋いで振るロボット風の機械の話です。

この機械は、バイロン・ネルソンのスイングの動きを真似るものということで「鉄のネルソン」と呼ばれたわけですが、1964年の誕生当時、開発者のBob Bushはトゥルーテンパー社のために働いていたとのことで、この機械がシャフトの開発に使われたことが分かります。

これに関連してGOLF DIGEST October 1999には、新しいドライバーのテストの結果が報告されています。その記事の中にキャロウェイ社の人の話があり、ロボットはドライバーの機械的特性の試験に使い、飛距離や方向性の試験には実際のプレーヤーが使われると書かれています。

Biggest Big Berthaのような先進的なクラブを開発したキャロウェイ社が、このような見方を採用していることから、現在の主導的なスイングは、腕とクラブの回転的な動きの単純な合成では近似できないことが分かります。回転イメージは現代風のスイングの理解には役に立たないことを示しているのではないでしょうか。

さて、われわれにとっての関心事は、「核心打法」の強力な腕の動きを生み出す仕組みです。これが明確になれば、強くて方向性の良い打球を楽に実現できることになります。実はこの仕組みの働きは簡単で、これを確保するように脚腰と体の動きを作ればよいのです。これについては次回に説明します。

左手の握りの仕組み

左の中指を緩めたまま、人差し指と小指を内側に巻き込んでグリップの形を作ってみます。この状態ではリスト(手首)は自由に左右に回り、回外と回内の動きができます。次ぎに中指だけに力を入れてグリップの形を作ってみます。すると手の平が背側に反ります。この時は、リストは自由に回せません。しかし手首を内側に曲げたり外側に曲げたりの掌屈背屈の動きはできます。

そこでこれら後ろ三本の指を一斉に強く巻き込んでグリップの形を作ってみます。今度はリストの回転も内外に曲げる動きも殆どできません。これが「マジック・グリップ」の左手の握り方です。

伝統的な左手の平でクラブのハンドル(柄)を上から押さえる形で握ると、人差し指と小指を強く内側に巻き込むことが難しくなります。このため左前腕の回外と回内、掌屈と背屈の動きが可能になります。これで前腕の勝手な動きが可能になり、この左腕の動きの過剰な自由度がスイングの動きを難しくして来たと考えられます。

「マジック・グリップ」では中指と共に小指と薬指にも力が入り、前腕が固まります。これが「核心打法」の完成を可能にしたとも言えます。左手のグリップの選択は大問題だったのです。

始めに後ろ三本の指が強くハンドルを握る形で右手のグリップを固めると、これに後ろ三本指で強く握る左手を加えて固める両手のグリップは、逆オーバーラップ型の握り方で可能になります。バードン・グリップやインターロッキング・グリップでは小指が離れてしまいます。

逆オーバーラッピング・グリップで両手の後ろ三本指の握りを固める「マジック・グリップ」を使うことで両前腕とクラブの繋がりが固まり、ここで両肘を伸ばすと腕全体が固まります。アドレスの構えでこの動きを実行すると、脚腰に緊張が生まれて両足が地面を掴みます。

これで肩と上腕の動きでクラブを振る仕組みが確立されることが分かります。後はこれで目的の動きが実現するような脚腰の動きの感覚で動きを作るだけとなります。すべてが単純で、実際にボールを打ってみればその効果が明瞭に体感できます。

左手のグリップが問題

「核心打法」で問題になるのは、左手のグリップです。これまで支配的であったスイング理論は、バックで右脚に体重移動をし、そこで腰の右回転でクラブを引き上げ、ダウンで左脚に体重移動し、そこでの腰の左回転でインパクトを振り抜くというものでした。

この形の回転打法では、体が左腕を引く動きの中でボールを打ちます。左上腕は胸に引き着けられ、前腕が回外してボールを打つ形になります。したがって、左手のグリップはこの動きに適した形が要求されます。ところが「核心打法」では、左腕はダウンで右脇前方向に伸びてからインパクトに入ります。

この動きの違いから、従来支配的な回転打法のために発展して来た伝統的な左手のグリップの形は「核心打法」には適さないことになります。

左手の平でクラブのハンドル(柄)を上から押さえる形の左手のグリップを克明に議論したホーガンの「モダン・ゴルフ」でも、後日左手の親指を手前に引きつけ、更にハンドルの右側に掛かっていた親指を真上に移したと書いています。これは自分のフック防止のための変更で、自分のような動きをするゴルファーにはお勧めできるものとしています。

実は「核心打法」の「マジック・グリップ」の左手の握り方はこの形に近いものです。しかし決定的な違いは、「マジック・グリップ」ではまず右手の握りを固め、これを外側から握る形で左手の握りを固めることです。これで、左手の人差し指が右手の小指と薬指の間の窪みに載る形の逆オーバーラップ型のグリップになります。

この握り方のために、左手も右手と同じようにクラブのハンドルを指の根元で握る形になります。既に「マジック・グリップ」の説明にあったように、この握り方で両肘を伸ばすように構えると、両手の後ろ三本の指が強力にクラブを握る体勢が出来上がります。これで腕の固い体勢作りが出来上がり、対応する脚の硬い体勢が生まれ、グリップと地球を結び付ける仕組みが出来上がります。

後は肩と腕の「魔法の動き」でグリップの押し上げと押し下げを実行するだけで、左腕の格別の動きを考える必要がなくなります。これに対し、左手の平でクラブを上から押さえる形のグリップでは、ジャック・ニクラウスやタイガー・ウッヅのようなインターロッキング・グリップも含めて左の前腕は自由に内外に回り、ここに不確定性が残ります。

以上の話の要点は、グリップのあり方を確認し、このグリップと脚の動きの繋がりを拠り所に「特徴的な左腕の動きを固める」(08-01-17)の内容をより明確に描き出したものです。これで重要性が明らかになった左手の働きを確保する、複雑な腕の筋群の動きを次回に更により詳しく検討します。

「自然落下」はナンセンス?

まず始めに、ゴルフのスイングに自然落下などあり得ないことを確認します。そもそも、何が自然落下するのでしょうか。ダウン直前の体勢から腕とクラブが自然に落下するには、腕とグリップの力を抜いてクラブの動きに任せる必要があります。明らかにこれではボールは打てません。「言葉で動きを表現する難しさ」(08-03-29)がここにもあるのです。

政木博士の「ゴルフ300ヤード打法」では、自然落下打法とは、「ダウンスイングに入るとき、少しも力を入れずに手首も腕もやわらかくしておいて、上体のねじれを元に戻すように回せばクラブヘッドは自然的に落下することを意味している」(27頁)と書かれています。上体の捻れを元に戻すという、複雑な体の動きに引かれてヘッドが「落下」しているのです。

体の動きで腕とクラブが引き下ろされると考えると、「自然落下」にいくつかの型があることが分かります。まず、ダウンの動きの検討には開始時の条件、すなわち初期条件の明確化が必要です。バックスイングの腕の動きには、右腕を内側、左腕を外側に捻る「魔法型」と、右腕を外側、左腕を内側に捻る「反魔法型」の二種類があり、したがってダウンの初期条件も二種類になります。

更に面倒なことには、トップで絞り上げられている腕を体に繋ぐ肩の緊張を解放しないと、上体の捻れは解放できないのです。これは両手をグリップの形に握り合わせてトップに上げて見れば分かります。そこでトップから肩の緊張を緩めてみます。ところが、ここでもまた問題が生じます。

両肩を同時に緩めると、腕と体の繋がりが切れ、両腕がだらんと下がってしまいます。文字通りの自然落下で、これではクラブは振れません。そこで、まず右肩を緩めてみると、クラブが右水平の位置に来る形に腕が動きます。この時腰が左に引かれます。一方左肩を緩めると、クラブが右脇前方向に下がる形に腕が動き、左腰が後ろに引かれて踏ん張ります。

こうして見ると、体の捻れの解放ではなく、実は肩の動きでダウンが始まること、その動きの型で腕の振り下ろされ方が変わることが分かります。右肩甲骨を下に引き左肩甲骨を引き上げれば「反魔法型」、左右の肩甲骨の動きを逆にすれば「魔法型」の腕の動きが現れます。これらの肩の動きが、肩に繋がる筋群の新しい緊張を引き出し、結局体全体のダウンの動きが始まります。

これらのバックとダウンの腕の動きの組み合わせで、四種類のスイングの動きの型が可能になることが分かります。これは「スイング動作を構成要素で捉える」(08-01-14)や「足の「螺旋」と「回転」の動きの利用」(08-02-05)などでの検討結果に対応する結果です。

「魔法型」と「反魔法型」では、体の捻れの構造が異なり、当然「自然落下」の動きも異なります。しかも、スイングの実行中、体中の筋群は強力に活動し続けています。一箇所が緩めばどこかが緊張します。これがなくては立っていることもできません。このことを無視して「事前落下」の議論をしても、ナンセンス(無意味)な結果にしか到達しないでしょう。