安定の志ん輔落語
池袋演芸場は私にとってオアシスだ。7月中席の昼の部トリは古今亭志ん輔。ちなみに夜のトリが菊之丞なので、通して聴くと恐ろしくお得な娯楽である。私は古今亭が好きである。単なる印象だが、芸の受け継ぎがきちんとしてるようだし、浮ついた感じがない。売れたいという欲が少なめなところも趣味に合っている。人間国宝の五街道雲助は古今亭志ん生の長男十代目馬生の弟子だし、志ん朝の高座は憧れそのものだった。その弟子が志ん輔で二つ目時代は朝太。志ん朝も名乗っていた喜ばしい名前だ。おそらく期待もされていたであろうし、立派な噺家になったといえる。しかし私が望むほどには今ひとつ人気がない。私は彼が司会していたラジオ番組(NHKFMのクラシック音楽をライブで聴かせるやつ)に出演したこともあるし、それより彼が「おかあさんといっしょ」でヘビくんとブタくんのパペット相手に落語口調で話していたのを幼い娘と熱心に見ていた世代だ。だから同時代を過ごした噺家として親近感がある。芸はしっかりしているし、独演会に力を入れて熱心にネタを増やしていったのも見てきた。志ん輔節ともいえる独特の口調も認知されて味となっている。これからも寄席で聴き続けるだろう。今日の客席は結構入っていたが、それでも8割くらい。補助席はみな空いていた。小三治と比べることもないが、いつも並んで入場し立ち見がいっぱいだった光景とは違う。10日間ほぼ客席を埋めるだけでも凄いことだとは思うが、多少悔しくもある。本人がそれでよしとしているのなら、むしろ粋なのかもしれないが…さて「お若伊之助」と「佐々木政談」を聴いたが、いずれもよかった。もう1日くらい行くかもしれないが、その時は記録として追記しよう。話変わって、女流落語家の台頭が嬉しい。今や落語は男だけの芸(あるいは男が有利な芸)とは思わなくなってきた。時代のせいなのか、レヴェルが上がったせいなのか、男を演じている口調が気にならなくなってきたのである。要は上手いか下手かの違いだけで、噺によっては、また演出次第では女性の方が説得力を持つこともしばしばだ。今回は菊之丞の弟子雛菊の「権助魚」がすごくよかった。ときおり表情に菊之丞がダブって見える。芸の伝承を見た感じ。祐輔の「加賀の千代」「つる」も何度目かだが、主人公が可愛い。しかし祐輔には女を演じた時の円生に迫るくらいのえぐい圓朝噺を期待している。画像は音曲漫才の「おしどり」針金パフォーマーのケンと横山ホットブラザースの弟子で師のアコーディオンを見事に操るマコ。夫婦漫才の系譜にありながら政治的メッセージを隠さない面白い存在。立場に関係なく必聴だ。