我が身に起きたことではない。文枝の落語の演目。落語協会百年記念興行の7日目。連日立ち見が出る盛況だ。権太楼は「こんなに客来るなら来年もやろう」と笑わせる。もちろん文枝が東京の寄席に10日も出るなんて異例のことで大阪でもないことらしい。というわけで前回と違う噺を聴くために並んだけど今日は暑かった。ドンキホーテでキャップ買ったくらい。「別れ話は突然に」は「ラブストーリーは突然に」のパロディーみたいな題だが、前回聴いた「誕生日」のように家族の話。70代の主人公が奥さんの誕生日に離婚届を出すと、息子に電話するところから始まる。いかに奥さんに虐げられてるかをソウルに妻子と一緒に住んでいる息子に訴えるのだが、退職して家にいるだけの無趣味な亭主の悲哀がいかにもな内容で客の共感を呼ぶ。飼い犬のジョンは二人の板挟みのストレスで3日前に死んでしまった。それを話すお父さんは本当に悲しそう。驚いた息子は結婚して北海道に住む妹に電話する。妹は両親が離婚することに驚き母親に電話で事情を聴くが、母の言い分は父の言ったことと違っていた。あまりに口うるさくて好きな韓流ドラマも落ち着いて観られないと嘆く母は我慢の限界のようだ。もし離婚したらどちらかと一緒に住むことになる。結局息子と娘はそれぞれの家族を連れて離婚回避の説得のために里帰りする約束をする。ここからネタバレ

実はこれ老夫婦が長く会ってない子供や孫たちを母の誕生日に呼び寄せる作戦だった。ジョンも生きている。オチは「お父さんのアイデア上手く行ったけど二度は使えないわね」


他に出演者で2日目と偶然ネタが同じだったのは三三の「筍」(今のところ4回連続で記録更新中)、権太楼の「代書屋」でやはり何度聴いても可笑しい。

二つ目の美馬の「てんしき」はおそらく今まで聴いた中で最高の「てんしき」珍念が可愛いし、工夫があった。例えば和尚の嘘に気付いたあと、和尚を試すことに葛藤するあたり。ダメならキリスト教に変わろうとか笑ってしまった。

この日得した気分は小朝の「千両みかん」焦がれたみかんを口にした若旦那の表情が最高で、やはりこの人は上手いんだなあと再確認。近年多少疑ってたことを反省した。思えば二つ目のころ江古田の銭湯の小さな落語会で聴いて以来ずっと注目している同世代のスターなのだから。

正蔵は「一眼国」彦いちは「熱血!怪談部」どちらも奇想天外な噺で、面白ければ古典も新作もないのが落語の良さだ。桃花は「湯屋番」たけ平は「死ぬなら今」木久扇は椅子に座って談志の選挙運動のことなど話したが、馬風も前回似たような話してたっけ。しかし国民的人気者なのは登場した時の沸き具合でわかる。笑点辞めても元気でいて欲しい。