この記事では、「不登校の状態とその要因」についてお伝えしています。不登校のことをまだよく理解できていないという方にとって入門編としてご活用いただけます。
この記事でわかること
▶︎不登校の定義
▶︎不登校の要因
▶︎不登校の5つのステップ
▶︎不登校とは?
文部科学省は毎年学校基本調査を行い、不登校の統計を発表しています。そこで言われる「不登校」とは以下の状態を指します。
長期欠席者(年間30日以上 の欠席者)のうち『何らかの心理的,情緒的,身体的あるいは社会的要因・背景により, 登校しないあるいはしたくともできない状況にある者』ただし,病気や経済的な理由に よる者を除いた者
「なるほど、30日以上休むと不登校になるのだな」「うちの子は通知表を見ると欠席日数が少ないから不登校ではないのかな?でも放課後しか行っていないのにどういうことだろう?」と思われた方もいらっしゃると思います。
例えば「校門タッチ」と言われるような校門まで行き、先生にプリントをもらう、という場合も「学校には登校した」と見なされます。また保健室や別室で1時間自習をした、という状態も同様です。
文部科学省の統計では、あくまで「まったく学校の敷地内に足を踏み入れていない状態もしくはオンライン授業も出ていない状態」を欠席として、その状態が30日以上ある児童生徒のことを「不登校」と定義しているということです。
つまり以下のような場合は欠席とはなりません。
・校門タッチや、放課後登校、別室や保健室登校
・オンラインによる授業参加
・イベント(運動会や音楽会、文化祭など)を見学した
・適応教室や学校と提携しているフリースクールへの出席
そのため、通知表を見ると欠席日数が思っている以上に少ない、ということが起こります。その代わり早退や遅刻の数が多くなっていると思います。
【不登校の数(2024年度:調査年は2023年度)文部科学省】
この定義を持って算出された、小中学校の不登校数(2023年度)は415,252人となっています。
この数字だけではピンと来ない方もいると思いますので、もう少し身近な数字に置き換えてみます。
【不登校の人数】
小学校:130,370人(2.14%) 47人に1人
中学校:216,112人 (6.71%) 15人に1人
高校 : 68,770人(2.35%) 43人に1人
いかがでしょうか。中学校の場合15人に1人が不登校状態にあると考えると、クラスに2人以上いる計算になります。
そして冒頭にお伝えしたように、この数はあくまで「30日以上まったく学校の敷地内に足を踏み入れていない」、「オンラインでも授業を受けていない」かつ「適応教室にもフリースクールにも行っていない」数になります。
しかし別室教室だけに行ってすぐに帰ってくる、放課後だけ先生に会ってすぐ帰る、というお子さんを心配されない親御さんはいません。
校門タッチや別室登校などを含めると、この数は少なくとも1.5倍以上になると考えます。つまり今の日本には60万人以上の不登校、もしくはそれに準ずる子どもたちがいるということになります。
▶︎学校に来させる、から「休んでいい」時代に
以前は不登校になると「学校にどうやったら行かせられるか」に主眼が置かれていました。そのため朝学校の先生が家まで迎えに来て、部屋まで入り連行するかのように生徒を連れていくということも行われていました。
しかしながら、2018年の文部科学省の通達により、大きな変革を迎えたのです。その通達にはこのように書かれています。
「不登校児童生徒への支援は、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること。」(文部科学省)
この言葉が大きな転換点となりました。この文言が通達されたことで「学校に来させる」から「それだけがゴールではない」という認識に大きく変化したのです。
2014年時点に比べて不登校の数が2.4倍に増えているのはこのことが大きな要因になっていると考えられています。
私自身は、無理やり学校に行かせることには反対の立場を取っています。その意味で「登校する」という結果「のみ」を目標にしないという方針には大いに賛同しています。
ただ、危惧しているのは「タイミングによっては、登校を提案することも大切ではないか」という点です。
休息を取ることで、お子さんの気持ちもだんだんと落ち着いてきます。家庭内では規則正しく過ごすことができ、そしてだんだんと「暇」を感じるようになります。
そのタイミングにおいては「ちょっと行ってみる?」と提案することは有効なことが多いのです。
あくまでここで言われていることは「登校するという結果のみ」に固執しないということです。登校することの意義までが否定されているわけではないという点には注意が必要です。
ちなみにこの通達はこのように続きます。
「また、児童生徒によっては、不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。(下線は著者)」(文部科学省)
不登校の時期を経験することで、児童生徒が自分とじっくり向き合う時間である一方で、勉強の遅れなどが生じることもリスクも存在します。
学校に通うこと「だけ」がすべてとは考えません。ただ学校と「うまく付き合えるようにしていくこと」までが否定されるものではないということです。
お子さんの状態によって、「ちょっと刺激があってもいいかな」というタイミングが訪れます。再登校という視点はなくすのではなく、選択肢に常に置いた上で対応することが重要です。
\不登校の関わり方は👇もご覧ください/
▶︎不登校の要因にはどのようなものがあるだろう?
「どうして不登校になるのか?」と疑問に思われる方も多いと思います。特に学校に通えていた親御さんは「どうして行けないのか本当にわからない」という気持ちを抱かれることが多いです。
文部科学省の調査によると、不登校の要因は以下のものが挙げられています。
▫️小中学校の不登校の要因(上位5つ):文部科学省(2024)
①学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった(32.2%)
②不安・抑うつの相談があった(23.1%)
③生活リズムの不調に関する相談があった(23.0%)
④学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた(15.2%)
⑤いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった(13.3%)
「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」「不安・抑うつの相談があった」「生活リズムの不調に関する相談があった」が上位3つを占めます。
ただこれでもまだ「どうしてやる気が出なくなったのか」「どうして不安・抑うつになったのか」「どうして生活リズムが不調になったのか」についてはわからない状態のままです。
この図の上部分の「表面化」の部分が、文部科学省が挙げている「不登校の要因」と考えると、その背景にはさまざまな思いが隠されています。
1. 心理面
勉強へのやる気がなくなったり、趣味を楽しむことができなくなったりなどの心の要因です。
特に好きなことに取り組むことができなくなるのは大きなサインになります。心が疲弊している状態となります。
心理面の背景には、ここに挙げているような他の要因が関わっていることが考えられます。
2. 身体面
起立性調節障害と呼ばれる、朝起きたら貧血のような状態になり、起きることができなくなるものや、過敏性腸症候群のように緊張したりストレスを感じるとお腹を下しやすくなってしまうものなどがあります。
不登校というと心理面の要因が強調されがちですが、実は背景には身体的な病気が隠れていることがあります。
そのため、まずは小児科など病院に相談に行くことが重要です。そこで原因がはっきりしないときに「心理面の影響が大きい」と考えることになります。
3. 社会面
主に人間関係を指します。クラスメイトとの関係性はもちろん、そこから発生するいじめや、学校の先生との関係性も関わってきます。
クラスメイトとの関わりは一番のストレス要因になります。問題がないように見えても、気を遣いながら関わるため、疲れている場合があります。
また学校の先生との関係性というものも、念頭に置く必要があります。いい先生ではあるけれど熱血さがストレスになったり、他の生徒さんを大声で叱りつけるのが強い負担になることもあります。
特に思春期の場合、不登校には何かしらの人間関係が関わっていると考えておくことが必要になります。
4. 個人面
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(LD)などの発達障がいや、非常に繊細な性格傾向であるHSP(Highly Sensitve Person)が背景にある場合もあります。
また誰にも相談していないけれど、LGBTQ+αを抱えているケースもあります。
個人面の特性が、社会面に影響を与えて、身体面、心理面に影響を与えることも十分に考えられるものとなります。
5. 家庭環境
親子関係に不具合があったり、夫婦関係が悪かったり(離婚したり)、また虐待が背景にある場合もあります。
親に相談したいけれど、話を聴いてくれない、夫婦がしょっちゅう喧嘩をしている、また暴力や暴言など身体的や心理的な虐待、一切関わろうとしないネグレクトなどが虐待の種類となります。
ただ家庭環境に影響がある場合、家庭から避難するために学校に行く場合もあります。不登校にならないこともあるため、実は見過ごされやすい要因の一つでもあります。
誤解のないようにいただきたいのは、不登校を親の責任だけに押し付けてしまうのは間違いであるという点です。
明らかな虐待がある場合を除いて、親だけに原因がある考え方は私は賛同していません。要因は学校にもあるし、人間関係にもあるし、当人の特性にもあります。
家庭環境が要因の一つだからといって、家族だけに責任を押し付けることはあってはならないことなのです。
【不登校のお子さんとの向き合い方はこちらもご覧ください】
▶︎要因は一つに絞られない
ここに挙げた要因は、一つだけが影響しているわけではありません。お子さんの特性によって虐待が起こることもありますし、コミュニケーションがうまく取れず孤立し、心理的に負担を感じるということも十分に考えられます。
犯人探しをすることが大事なのではありません。いろんな要因を考えながら、改善を加え続けることが重要な対応になります。
学校と家庭が対立することには意味はありません。それよりもお互いに情報を共有しながら、お子さんのタイミングによって今は休ませるべきなのか、それとも提案をしてみた方がいいのかを一緒に考えていくことが最もお子さんのためになることです。
▶︎不登校の5つのステップ
お子さんが学校に行きづらくなったとき、今後どのように進んでいくのか不安を感じられると思います。不登校の5つのステップについてお伝えします。
食欲が落ち、うまく寝付けなかったり、朝起きづらくなったり、趣味を楽しむことができなくなることをサインとして、行きしぶりが起こる時期です。
家の中で笑うこともなく、反応が鈍くなります。かと思うとイライラしやすくなったり、急に泣き出すこともあります。
【この時期のサイン】
◻︎お腹が痛い・頭痛がすると言う
◻︎眠れない、熟睡感がない
◻︎朝が起きづらい(夕方には元気になる)
◻︎ゲームやネットなど趣味の時間が減る
◻︎イライラし、感情的になりやすい
◻︎会話が減る
これらのサインの中で特に重要なことが「食欲・睡眠・趣味」の3つです。これらの状態が悪くなってくると、身体・行動・気分・考え方も悲観的になりやすくなります。
この時期に必要なことは、まずサインが出ていないかを確認することです。不登校が始まり出す頃には必ずサインが出ています。今のお子さんが置かれている状況を知ることを第一に考えます。
抑うつ期の状態を見て、学校に行ける状態ではないと判断できる場合は、無理をさせないことです。
まずは遅刻早退などで様子を見つつ、どうしても辛そうであれば、休息を取ることを考えていきます。
最初は一週間休んでみて、そこから一週間ごとに様子を確認し、その間に先生やスクールカウンセラー(民間のカウンセラーも活用できます)に相談しながら状態を共有するようにします。
「学校に行かせた方がいいのではないか」という思いが湧いてくるかと思います。その場合は、親御さんがこれまでお会いされてきた「メンタルダウンをした人」を思い起こしてみましょう。
例えばうつ病で休職した方に、「ちょっとでも出社したら?」とは言わないと思います。まずはしっかりとした休息を取り、状態が良くなってからお試し出社をし、徐々に勤務時間を増やしていくことになります。
子どもたちも同じです。まずは十分に休息を取ります。要因が何であれ、お子さんが日々の生活や学校に疲れているのは事実です。昼夜逆転してもいいので、寝たいだけ寝て、心と体をしっかりと休めます。
ただずるずると進むことは避けたいので、最低でも週に1回は今の状態を話す機会を作ります。話す相手はまずは先生です。その後専門家というように広げていきましょう。
休息が十分に取れるようになると、家庭での生活が落ち着いてくるようになります。この時期には昼夜逆転をしている場合は生活リズムを整えるようにします。
また家事など家の中でできることを増やしていきます。勉強への焦りも出てくると思いますが、勉強はもう少し後です。朝起きて、ご飯を食べて、夜眠るという生活ができるようにしていきます。
勉強を始めるとしたこの時期になります。家庭での生活が十分落ち着いてきたら勉強のことを一度話し合ってみましょう。
お子さんも学校のことを再び考える時期になります。勉強のことも当然に気にしていますので、まずは一緒にやってみることから始めてみましょう。
最初から継続的に勉強することはできませんが、続けることで徐々に時間も増えるようになります。
親子だけで勉強のフォローが難しい場合は、家庭教師や塾なども検討してみましょう。
最初は部活だけ、放課後だけというように学校に行き出す時期が再登校期です。別室や保健室登校、体育祭などのイベントに出席するようになります。
お子さんが学校に行き出すとつい「毎日行ってほしい」と思いがちですが、それはもう少し辛抱しましょう。
週に1回から始め、少しずつ時間を増やしていきます。大人の場合のお試し出勤です。目標としては一週間のうち6~8割が行ければ十分という思いを持っておきましょう。
あえて「週に1日には休んで買い物に行こう!」と決めても構いません。最初はその休みを活用しますが、徐々にそれをやめ、学校に行く頻度が増えていくようになります。
再登校した場合は、学校の先生にもしばらくの間は様子を伝えてもらうようにしておきます。不登校は行きつ戻りつを繰り返しながら、だんだんと慣れていくようになります。
毎日行ったと思ったら、しばらく休むということもあります。しかし俯瞰してみると、お子さんなりに考えながら通えるようになります。
▶︎3歩進んで2歩下がる、でも1歩進んでいる
不登校対応はどれだけ良い対応を取ったとしても、右肩上がりに順調に進むわけではありません。
調子がいいときもあれば、ガクッと落ち込むこともあります。しかし、これは覚えておいてください。
不登校を経験したからと言ってお子さんの成長が止まっているわけではないのです。
お子さんなりにストレスの向き合い方や、気持ちの折り合いというものをつけられるようにお子さんも成長しています。
一年前のお子さんと、今のお子さんはやはり違うのです。学校に行けない=成長しない、ということにはなりません。
むしろ行けなかった経験を積むことで、これからの人生にとって大事なこと(心のケアの方法や、力を抜いて生きること)を学びます。そしてそれは親御さんも同じです。このことは忘れないでくださいね。
【不登校の親の心理については👇をご覧ください】
▶︎今、ここからできることを考えよう
もし誰にも相談することができないと思われたら、そんなときはぜひお声がけください。いい相談相手がいないときのために私が存在します。
「でもどんな人がカウンセラーか不安だなあ」と思われる方も多いと思います。まずは無料相談(30分)をご活用ください。そこで私の人となりを見ていただいてからじっくりと今後のご相談をお考えいただけたら嬉しいです。
お子さんの不登校が始まったとき、親御さんも真っ暗闇の中に落とされたような気持ちになります。
しかしどんな方でもそこから脱け出すことができます。はじめはみなさんどうしたらいいかわからない状態でご相談にお越しいただきました。
不登校だからと言って何も諦めないでください。「今、ここから」できることを考えていきましょう。
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中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。
1. 不登校やひきこもり、またそのご家族のケア
2. 心理療法を応用した学習サポート
3. 親子の関わり方今が一番辛い時期だと思います。でもきっと脱け出すことができます。どうやったらいいのかという「具体的な方法」について一緒に考えていきましょう。
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