この記事では、不登校やひきこもり状態にあるお子さんとのより良い対話に向けての「傾聴」の基本についてお伝えしています。

 

傾聴について悩まれている方は今日から実践できる方法を身につけていただけたら嬉しいです。

 

この記事でわかること

▶︎どうして傾聴が必要か

▶︎傾聴のポイント

▶︎今日からできる傾聴のコツ

 

この記事を書いた人
▫️不登校・ひきこもり専門公認心理師なかがわひろか
▫️学校・PTA・自治体での不登校・ひきこもり講演多数
▫️12年以上に渡り親子のサポートを行う

 

▶︎どうして傾聴が必要だろうか

 

傾聴とは「相手の話を共感し、受容しながら聴くこと」を指します。簡単にいうと「しっかりと話を聴く」ことです。

 

ただ「しっかり」というのがどのような状態かのイメージが難しいかもしれません。傾聴をより詳しくお伝えすると以下のような要素を含みます。

 

1. 安心して話せる場所がある

 

2.   話したいことを邪魔せず聴いてくれる

 

3.   共感や受容される場所がある

 

4.   話すことで頭の中が整理される

 

5.   整理されることでなにをすべきかが見える

 

これらがなされている状態が「傾聴されている状態」だと言えます。

 

これらの状態の背景にあるのはお子さんの「安心感」です。安心があることで、心の中に「余白」を生み出すことができます。この余白があることで心に余裕が生まれ「何かチャレンジしてみよう」という気持ちを生み出すことができるのです。

 

つまり傾聴ができることは、お子さんが自分の力で動き出す大きなきっかけになるのです。

▶︎親にとっての傾聴の重要性

 

傾聴の効果はお子さんだけに表れるのではありません。話を聴く親御さんにとっても必要なものになります。

 

お子さんの思いに耳を傾けることで、これまで聴くことのできなかったお子さんの「深い思い」を知ることになります。

 

これまでいくら考えてもピンと来なかったことが、ありありと感じ取れるようになります。お子さんの深い思いを聴くことでお子さんがどんな不安を抱えているのか、今のお子さんの葛藤を知ることになります。

 

お子さんが学校に行きづらくなると親御さんは「学校の重要性をよく理解していないのではないか」と思われます。そのため学校の必要性を説きます。

 

しかしお子さんの思いを傾聴することで、お子さんが学校のことを想像している以上によく考えていることがわかります。ひきこもりの場合は、仕事をすること、自立することを毎日悩みながら生きていることがわかります。

 

傾聴することによって、それまで見えてこなかった本当のお子さんの姿が浮かび上がるようになります。

 

それではここからは傾聴の具体的な方法について見ていきましょう。

 

▶︎傾聴のポイント

 

 

1.  聴く体制を作る

2. 相槌を打つ

3. 共感する

4. 受容する

5. 要約と確認

6. 沈黙に対応する

7. 質問する

8. 率直力を活かす

9. 対話を繰り返す

 

1. 聴く体制を作る

 

テレビを観ながら、スマホを使いながら話を聴かれても真剣に聴いてもらえているとは思えません。

 

まず「これからあなたの話を聴きます」という姿勢を見せることが重要です。テレビを消し、スマホも遠ざけます。途中で横槍が入らないように、他の家族にもしばらく話しかけないようにお願いしておきます。

 

とはいえ、かしこまった感じにすると緊張感が生まれます。向かい合うのではなく斜めに座るようにし、真正面を向かない体制を作ります。

 

親子の対話はカウンセリングではありません。そのためお茶やお茶菓子を用意して話すも雰囲気を柔らかくする効果があります。

 

あまり堅苦しくならないように、しかし邪魔が入らないような場所を用意するようにします。

 

2. 相槌をうるさくならないように打つ

 

全く無反応で話を聴かれてもお子さんは話しづらくなります。かといって「うんうん、そうか、なるほどなるほど」と矢継ぎ早に相槌を打たれると話を急がされているような気になります。

 

基本的に相槌は声に出さなくても構いません。態度で「うんうん」と頷くだけでも効果的です。緊張しやすいお子さんの場合「なるほどね」と口を挟むことで話を止めてしまうこともあります。

 

相槌については、普段から自分が話を聴いてもらう時に意識するようにしてみましょう。どんな風に聴かれたらゆったりと話すことができるでしょうか。

 

「そうかそうか、それでそれで?」と聴かれると結構プレッシャーを感じますよね。優しい目つきでうんうんと頷いてくれるだけでも十分だったりします。

 

一点気をつけたいのは目線です。お子さんの目を真正面からじっと見ると威圧感を抱かれることになります。

 

ちょっと目線をずらすイメージです。お子さんの鼻あたりを見る感じがちょうどいいです。目線は時折クロスする程度で十分です。

 

3. 感情の言葉に注意する〜共感の重要性〜

 

 

お子さんから「学校に行かないと、って思ったらしんどくなるんだよ」という発言が出たとします。

 

「しんどい」というのはお子さんの気持ちが出ている言葉です。この感情の言葉が出てきたら必ず掴み取ることが必要です。

 

どうやったら掴み取ったかと言うとその言葉を「繰り返す」状態です。「そっか、しんどいんだね」というようにです。

 

私たちは人に何かを話したいとき、必ず「気持ちが揺れている」状態です。嬉しいことであっても悲しいことであっても、何かしら心が揺れている状態です。

 

その気持ちを誰かに受け止めてほしい。だから話すのです。

 

だからこそこの感情の言葉には注意が必要になります。感情の言葉は「一語で表せるもの」です。

 

「嬉しい」「悲しい」「寂しい」「辛い」「楽しい」というものです。この言葉はカウンセリングにおいても一回の面談で一度出るかどうかというほど登場の頻度が少ないものです。

 

だからこそ着目することに意義が生まれてきます。

 

感情の言葉をちゃんと受け止めてくれたとお子さんが感じられたとき、そこには「共感」が生まれた状態だと言えます。

 

 

共感のポイント

共感という言葉が出てきたので整理しておきましょう。共感とは「あたかも自分も感じているように感じること」になります。

 

「そうか、しんどいよね」と感情の言葉に反応することでお子さんは「共感してくれた」と感じやすくなります。

 

共感は聴き手が「共感していますよ」と伝えることが大事なのではありません。あくまでお子さん本人が「共感してもらっている」と感じられることが大事になります。

それを感じやすくしてもらうのが「感情の言葉に反応すること」なのです。

 

チャンスはそう何度もあるものではありません。だからこお子さんの方に意識を向けて話を聴くことが必要になります。

 

そのときの姿勢はまさにお子さんの方に「傾いて」いると思います。だから「傾聴」と言うのです。傾聴は姿勢も重要になるのです。

 

 

【不登校の子どもの心理については👇もご覧ください】

 

4. 受容することの意義

 

しかしお子さんの話にいつも共感できるとも限りません。「学校に行きたくない」と言ったときに親は行ってほしいと思っているのに「そうだね行きたくないよね」というのは「嘘」になります。

 

共感がうまくできないと思ったときは「受容」を大事にします。受容とはお子さんの思いをそのままに受け止めることです。

 

「学校に行きたくないんだ」と言われたら「そうか、行きたくない気持ちがあるんだね」と返します。

 

受容は親子のコミュニケーションにおいて最も重要なものです。もしうまく対話ができていないときは受容を見直すだけでも効果があります。

 

コミュニケーションは「キャッチボール」に例えられます。受容がないコミュニケーションはお互いの投げたボールを受け取らず、自分の投げたいボールをお互いにぶつけ合っている状態です。

 

お子さんのどんな思いでもまず「受ける」ことを意識してみましょう。今お子さんとのコミュニケーションがうまくいっていない場合は、まずはここだけでも意識すると大きく変わってくる可能性があります。

 

 

【不登校の親の5つの心理段階について👇もご覧ください】

 

5. 要約して確認する

 

 

お子さんの話は取り留めなく、あっちに行ったりこっちに来たりを繰り返しながら話されます。

 

ひとしきりお子さんが話し切れたと思ったら、ここまでの話を要約し「この理解でいいかな?」と確認するようにします。

 

要約することでお子さんは自分が何を言いたかったかを整理することができます。そして確認があることで認識の間違いを正すことができます。

 

もし認識が間違っていたとしても、確認することで「いやそうじゃなくて」と言い直してくれます。こうすることで認識のずれをなくすことができます。

 

要約と確認はお互いの意識のずれをなくし、お子さん自身が思いを整理するためにも重要なものになります。

 

6. 沈黙に対応する

 

お子さんと話をしていると沈黙が生まれることもあります。沈黙にはいくつかの意味があると言われます。

 

【沈黙の意味】

▫️何を話そうかと考えている

▫️自分の中でこれまでの話を整理している

▫️話をしたくないと不満な思いがある

▫️何を話せばいいか困っている

▫️十分に話せてスッキリしている

 

話をしたくない場合は比較的わかりやすいです。お子さんの態度を見て明らかに不満そうである場合は「今不満を感じているかな?」と聴いてましょう。そこから対話が始まることもあります。

 

しかし不満ではなく頭の中を整理している様子であれば、しばらく待つようにしてみまっす。ゆっくり10秒を数えることを意識してみましょう。場合によっては数十分待つこともあると思います。

 

待てる限り待つことができることが理想です。

 

ただお子さんが困っている様子があったら、これまでの話を要約し、質問をするようにしてみましょう。

 

質問されることで話しやすくなることもあります。

 

7. 質問を遠慮しない

 

質問をしていいのかと迷われる方も多いです。話を聴いてからというのが前提ですが、気になることは尋ねた方がいいというのが私の考えです。

 

質問を行うことで、より知りたい情報を知ることもできますし、お子さんも質問されることで初めて気づくこともあるのです。

 

お子さんが話してくれそうであれば「どうしてそう思ったかな?」「何がそう思わせているかな」とはい、いいえでは答えられないような質問を投げかけてみます。これを「オープン・クエスチョン(開かれた質問)」と言います。

 

お子さんが話しづらそうにしているときは「はい、いいえ」で答えられる質問を行います。これをクローズド・クエスチョン(閉じられた質問)」と言います。

 

できるだけオープンクエスチョンができるのが理想です。かなり話しづらそうにしていない限りは積極的にオープンクエスチョンを意識するようにしてみましょう。

 

8. 率直力を大事にする

 

私は対話には「共感力」「受容力」そして「率直力」の3つが不可欠だと考えています。率直力とは「自分の思いをありのままに話す力」です。

 

率直力は質問の際にも生きます。例えばお子さんが不満そうにしていたら「今不満な気持ちがあるかな?」と率直に尋ねるようにします。この方が話は進みやすくなります。

 

率直力には3つのポイントがあります。

 

 

1. 人格否定はしない

これは大原則ですが、いくら率直だからと言っても何でもかんでも思ったまま言っていいことにはなりません。人格否定はやめ、お子さんが受け取りやすい言葉で話すようにします。

 

自分だったらどう言われたら素直に受け止められるだろうか。この視点での発言を意識しましょう。

 
2. 本当に伝えたい思いを掘り下げる

親として伝えたい思いがある場合、まずはご自身で掘り下げるようにします。どうしてそう思うのか?という問いを自分に投げかけてみましょう。

 

掘り下げた先にあるものが率直な思いです。その思いを伝えるのが率直力なのです。

 

 

3. アイメッセージで伝える

アイメッセージとは「自分を主語にして伝えるメッセージ」を指します。アイメッセージの「アイ」は英語の「I」です。

 

「私はこのように思うよ」と自分を主語について伝えるようにします。そしてその後に「あなたはどう思う?」と意見を尋ねるようにします。

 

こうすることで親としての意見を伝えてくれた上で自分の意見も聴こうとしてくれているとお子さんは感じられるようになります。

 

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9. 対話を繰り返す

 

 

ここまでが傾聴の基本になります。基本と言いますがこれができるだけでも相当に対話力はアップしているはずです。

 

あとはこれを繰り返します。お子さんと話をする機会を定期的に作り、ここまで述べた方法をもとに話を続けていきます。

 

傾聴は一回できたらそれで終わりではありません。お子さんと話をするたびに意識するものになります。

 

そう簡単にできるものではありませんが、日々の対話で意識することで必ず上手くなっていきます。時間をかけて取り組みながら、身につけていきましょう。

 

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今日からできること〜まずは3分を大事にする〜

 

傾聴は一朝一夕にできるものではありませんが、まず一歩を踏み出してみることが大切です。まずは3分でいいので、人を話すときにここに書かれていることを意識してみましょう。

 

お子さんとの対話においてはもちろんですが、職場の同僚やパートナーの方と話をする際にも意識するようにします。

 

短い時間から取り組み、少しずつ時間を長くしていきます。今日が3分なら明日は4分にチャレンジします。

 

こうやって続けることでより長い時間集中して話を聴くことができるようになります。

 

マラソンと同じでいきなりフルマラソンを走れるわけではありません。まずは1kmウォーキングから始まります。そこから少しずつ距離を伸ばし、最終的に42.195kmを走り切れるようになるのです。

 

傾聴ができることは、親子関係だけでなく、職場においても、地域においても、夫婦生活においても大きな影響を及ぼします。ぜひここに書かれていることを一つ一つ実践してみましょう。

 

きっと数ヶ月後にはお子さんとの関係性は激変することになります。

 

【不登校の関わり方についてはこちらもご覧ください】

 

どうしても難しいときは、一度ご相談ください

 

傾聴はトレーニングを行うことで格段にレベルアップしていきます。しかし「このやり方でいいのかな?」「聴いてるつもりだけど本当にできているのかな?」と悩まれる方も多いと思います。

 

当事業所ではお子さんとの対話に悩むお母さん、お父さんのお手伝いもしております。お子さんとの対話に悩まれる方は、一度無料相談をご利用ください。

 

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より良いお子さんとのコミュニケーションに向けて、一緒に取り組んでいきましょう。きっと今よりもお子さんも親御さんも率直な思いを話し合えるようになります。

 

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■-Profile-■
プロフィール写真

■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。

 

あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。

 

ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。

 

初めまして、不登校・ひきこもりカウンセラー(公認心理師)なかがわひろかです。

 

今このブログをお読みいただいている方は、お子さんの不登校のことで日々悩んでいらっしゃると思います。

 

私はあるひきこもりの青年と出会ったことをきっかけに「心の問題で悩む人たちの助けになりたい」と思い心理相談室OFFICE NAKAGAWAを2011年に立ち上げました。これまで12年以上にわたって親子のサポートや8050問題にも取り組んでいます。

 

学校に行けなくなったとき、お子さんも親御さんもどうしていいかわからなくなると思います。

 

私が得意としている分野は次の3つです。

1. 不登校やひきこもり、またそのご家族のケア

2. 心理療法を応用した学習サポート

3. 親子の関わり方

今が一番辛い時期だと思います。でもきっと脱け出すことができます。どうやったらいいのかという「具体的な方法」について一緒に考えていきましょう。

 

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