「もしもし、りえちゃん(仮名)、今晩は。今から今週の作文の説明をするよ。メモの用意はいいかな。」

「先生、ちょっと待ってください。」

あれ?いつもと違って電話が遠い。しかも、いつもなら、「言葉の森 」の日本語作文の電話指導が始まる前にはメモの用意ができているのに、今からがさごそ探し出すなんて今日は一体どうしたのかな。

「用意、できましたぁ。」

「はい、じゃ、始めるよ。よく聞いてね。」



「じゃ、お母さんにも簡単に説明するから電話を代わってね。」

「もしもし、先生、今晩は。実はね、今、親子3人とも車の中なんですよ。これからいとこの結婚式に出席するために移動中なんです。家の電話をこの携帯に転送させてね、この子に作文の電話指導を受けさせたんですよ。」

どうもいつもとは違うはずです。メモの紙と鉛筆を旅行かばんの中から探し、しかももう外は暗いから車内灯をつけて懸命にメモをとるその子の姿が思い浮かびました。



私は「言葉の森」のカナダ在住講師として北米に住む生徒に日本語作文を指導しています。私の生徒の所在地はアメリカのニュージャージ州、ユタ州、カリフォルニア州、以前は南米のベネズエラも、と多岐にわたります。「言葉の森」は電話(家庭電話でも携帯電話でも可)とインターネットが接続できる環境ならどこでも受講でき、現在、生徒の所在国 は日本はもちろん世界13カ国にも及びます。生徒は自宅で先生からの電話により作文の指導を受けますが、りえちゃん(仮名)のように転送電話で車内で指導を受けることもできてとても便利です。欠席した場合は、別の日に振り替え授業を受けることもできます。こうして世界中いつでもどこでも日本語作文の書き方を学ぶ生徒と絆が築けるのは正にテクノロジーのめざましい発達のおかげだな、とつくづく感じます。



さて、2011年も残りわずかとなりました。日本漢字能力検定協会が発表した今年の漢字は「絆」。日本国内の東日本大震災や海外のタイ洪水等の大規模な災害から改めて知らされた人との「絆」はソーシャルメディアを通じて世界中に広まり、なでしこジャパン・チームをワールドカップ優勝に導き日本中を勇気づけました。また、1225日、浅田真央選手は亡くなられたお母様との絆を胸に、みごと逆転優勝でニースでの2012年フィギュアスケート世界選手権出場を手にしました。みなさんも今年1年を振り返って様々な状況で絆のすばらしさを感じられたのではないでしょうか。私は今年ブログを始めたばかりですが、記事を読んでくださったみなさんとの絆を楽しませていただきました。来年も海外生活、外国語習得、日本語力維持向上に役立つ情報をカナダから発信したいと思います。それではみなさん、良いお年をお迎えください。