19巻 水原千鶴の恋物語 満足度⑥
水原千鶴の視点で「彼女、お借りします」を振り返るレビュー「水原千鶴の恋物語」です。
19巻以降 千鶴から見た和也
❤自分の弱さを受け止めてくれるたったひとりの存在へ
❤傍にいて欲しい存在へ 信頼120%
自分を応援してくれ、夢を叶えてくれた和也。彼への感謝は計り知れません。小百合おばあちゃんの死後、その悲しみを受け止め、寂しさを満たしてくれたのが和也でした。千鶴が本当は弱い自分を見せられるのは和也だけ。千鶴は和也を絶対に手放せないはずです。今の千鶴にとって和也は、「できる」と言ってくれる大切な人、夢を叶えてくれた恩人、そして私を支えてくれる人です。彼女が女優になる夢を追いかけられるのも、強く正しくあれるのも、和也が傍にいてくれるからと言ってもいいでしょう。『私を一生幸せにしてくれる人』だと、きっと信じているはずです(【水原千鶴の恋物語】私を一生幸せにしてくれる人)。
❤好きで好きでたまらない 恋心120%
これまで和也への恋心を押さえ込み、隠し続けてきた千鶴。しかし、励ましデートで和也に支えてもらったことをきっかけに、恋心が抑えられなくなります。これまで『協定』のために踏み出せませんでしたが、あの夜和也が言った「俺の理想の彼女はさ」という言葉が、レンタル彼女と客の関係を乗り越える希望を千鶴に与えます。
■【導入】水原千鶴の恋物語 千鶴は和也が好きなの?いつから?
19巻 ハイライトと解説
励ましデート
世界で一番大切な人を失ってしまった千鶴。今の千鶴には心から頼れる人が誰一人いません。強がりな彼女は、きっと学内の友達にも仕事場の同僚にも役者仲間にも、「へいきっ」と答えていたはずです。
しかし、彼女の心は、大切な人を失った悲しみを誰かに受け止めて欲しいと叫んでいました。
今千鶴が、一番頼りたいと思える人が和也でした。夢をあきらめかけたとき、いつも駆けつけれくれたからです。いつも味方でいてくれて、千鶴を支えてくれたからです。
◆ははっ ビビりすぎでしょ? 19巻158話
そんな彼が、一緒にいようとデートを予約してくれました。10時間、総額67000円、どれくらいバイトしたんでしょうか。気を遣わせてしまうのも悪いと思いながら、ずっと孤独の淵に沈んでいた千鶴にとって和也とのデートは唯一の楽しみだったはずです。
ははっ ビビりすぎでしょう?
デート当日、そう言って笑顔で和也に声をかける千鶴。
◆じゃどこ行こっか 和也君 19巻158話
和也には久しぶりだからとはぐらかされますが、やっぱり気を遣ってくれてるようです。和也に「なんだよ その”彼女モード”」と言われてしまい、「ははっ」と笑って誤魔化します。
ひさしぶりの和也とのデート。千鶴がこんなに楽しそうなのは、カラ元気なんでしょう。その笑顔の裏で、辛い気持ちを押し殺している。でも、本気の恋をして、今唯一頼りたいと思える男の子が隣りにいてくれる。元気が出ないワケがありません。寂しい気持ちも、ずいぶん楽になったはずです。
◆彼氏と彼女 19巻158-162話
あくまでレンタル彼女としてデートをする千鶴。和也は、プレゼントだったり、千鶴の好みに合わせた映画だったり、いつもより贅沢なランチだったり、ボルダリングだったり、とても楽しい時間を作ってくれます。
レンタル彼女と客の関係だから、決して好きと言う気持ちを顔に出したりできません。でも今だけは彼氏と彼女です、近づいたって良いはず。和也が手を握ってくれる間は、寂しさも悲しさも忘れられたのかもしれません。
水原は付いてきてくれれば それでいい
◆これ以上は 悪いって 160話
だからねっ あなたにはもう十分してもらったと思ってるの
あなたがいなきゃ 映画は作れなかったし
これ以上は 悪いって
千鶴は和也に夢をかなえてもらいました。彼はただのお客さんで、お隣さん。これ以上負担をかけられません。強がりで頼ることが苦手な千鶴は、和也に気を使わないで欲しい欲しいと伝えます。
しかし、
◆水原は付いてきてくれれば それでいい…っ
だっ だとしても!
俺がそうしたいんだ…っ
水原は付いてきてくれれば それでいい…っ
それでも和也は、気を遣わずにデートを楽しんでほしいと言ってくれます。
◆OK 楽しむ 160話
まっ彼氏にそう言われたら仕方ないかな!OK!楽しむ!
そう言って千鶴は、『彼女』と『彼氏』でいる時間だけは、彼の優しさに甘えることに決めます。
千鶴はただのレンタル彼女です。どうして和也がこんなに自分を大切に思ってくれるのか分からなかったでしょう。和也がとても優しい人だからと考えていたのかもしれません。
ただ、和也の傍なら笑顔でいられる自分がいました。
俺の理想の彼女はさ
◆線香花火 19巻162話
和也とのデートの最後は花火。和也は水を汲みに行ってしまいました。
ひとり線香花火をしていると、あの日おじいちゃんとおばあちゃんと過ごした日々を思い出します。
幼い時からずっと傍にいてくれたんおじいちゃんとおばあちゃん。いつも傍で千鶴の夢を応援し、その幸せを願っていてくれた。しかし、もう二人は傍にいてくれません。寂しさが抑えきれず、千鶴の目にははっきり涙が浮かびます。がたがたと身体が震え始めます。
これ以上和也を頼ることはできません。そんな自分は見せられない。今は『理想の彼女』でいなくちゃいけない。彼が戻ってくると千鶴は必死に涙を隠そうとします。
◆これなら”本当の彼女”ができる日も 近いかもっ 19巻163話
相手の気持ちを考えてくれてるっていうか
うん きっと女子なら皆嬉しいよ
これなら”本当の彼女”ができる日も 近いかもっ
和也とのデートも終わりというとき、千鶴は笑顔で感謝を伝えます。彼の恋を応援する立場の千鶴には、こういう言い方しか思いを伝えることができません。でも
私の気持ちを考えてくれたことが何より嬉しかった
ステキな彼氏だと思う
そう感謝を伝えます。
『彼女』でいられる時間はもう終わり。私は和也の本当の彼女じゃない。これ以上は甘えられない。今日もひとり、寂しくて寂しくて仕方がない夜を過ごすんだと思ったとき
俺の理想の彼女はさ
和也は千鶴が泣いてしまっていることを、ちゃんと見ていてくれました。
俺の理想の彼女はさ
キレイで オシャレで 優しくて
でも俺が情けねーときは いつもちゃんと叱ってくれてさ
たまに怖え時もあるけど 基本明るくて
笑顔がすげー可愛くてさ
たまに ちょっと泣くんだ
普段はすげー強くてさ
どんなに辛い事があっても 悲しい顔ひとつ見せずに
”できることはやった”って 前向いて
いつだって精一杯に 生きてさ
ホント俺なんか励まされてばっかりで
そばにいるだけで 勇気貰えて
内心めちゃくちゃしんどくても 周りに迷惑かけねーようにって
俺の前じゃいっつも 笑顔でいてくれるのに
本当に悲しい時だけは ほんのちょっとだけ 泣くんだ
本当に悲しいときは泣いて欲しい。心配をかけまいと、強い私であろうとするあまり、なかなか甘えられなかった千鶴。そんな千鶴を、和也はずっと見てくれていました。本当に辛いときはいつも駆けつけてくれました。今日もこうやって一生懸命に励ましてくれます。
小さなころ小百合おばあちゃんにぎゅっと抱きしめてもらって安心できた、あのときと同じ優しさが和也の傍にはありました。
涙があふれ、千鶴は思わず、和也の胸に飛び込みます。
おじいちゃん!おばあちゃん!
千鶴は和也の隣で泣いて泣いて泣いて、やっと大切な人を失った悲しみを吐き出すことができました。
弱さを受け止めてくれる場所
3年前おじいちゃんを亡くしたときにも千鶴は泣いていました。きっと悲しくて寂しく仕方がなかったはず。でも、そのときも小百合おばあちゃんはぎゅっと抱きしめてくれたはずです。
◆聞いた?俺の理想の彼女は―――だって 19巻166話
小百合あばあちゃんも、もう千鶴の傍にはいれくれません。でも今は
聞いた?俺の理想の彼女は―――だって
だいたい いっつも芝居がかってるのよっ
初めて会った時だって 「本当の自分は」とか言って
すぐカッコつけるんだから
おじいちゃんとおばあちゃんの前で、千鶴はそう言って口元を緩めます。思わず口から溢れるのは、和也のことばかり。
◆なんだか人前で泣いたら すっきりしちゃった 19巻166話
でも 不思議ね
それまでは 寂しくて寂しくて 死んじゃうかと思ってたのに
なんだか人前で泣いたら すっきりしちゃった
そう言って晴れやかな顔を見せる千鶴。不思議なほど寂しさはありません。
千鶴はあの夜、自分の弱さを受け止めてくれる場所が、自分の寂しさを満たしてくれる場所が、どこにあるのかよく分かったはずです。和也のことをおじいちゃんとおばあちゃんに話す千鶴はとても楽しそう。
好きで好きで すっと傍にいたい
そう感じた夜でした。
(続きは満足度⑦へ)