13-18巻・後半 水原千鶴の恋物語 満足度⑤
■【導入】水原千鶴の恋物語 千鶴は和也が好きなの?いつから?
好きじゃなくもない
今日はクラファン最終日。千鶴と和也の夢が叶うのかの瀬戸際です。
千鶴は和也たちとビラ配りをする予定したかったのですが、役者仲間の海に誘われ観劇に行きます。ツイッターのRTをお願いした手前、断りずらかったのです。舞台が終わったら、すぐに和也の元へ向かう予定でした。
◆でも 「できる」って言ってくれる人がいるのは大事だと思える そんな人 15巻125話
和也周辺のコミュニティから外れてる海には、和也のことを素直に話せます。千鶴は楽しそうに和也の話を続けます。
でも 「できる」って言ってくれる人がいるのは大事だと思える そんな人
舞台を見終わったので、千鶴は和也の元へ向かおうとしますが…
ここで予想外の事態が!
海くんからのアプローチ…
彼女とは もう別れたんだ
千鶴もまさかとは思いますが、「ご飯に行かない」と誘われて確信します、海が私と恋人になりたいと考えていることを。
◆今日は…その…”大切な日”で… 15巻126話
今日は…その…”大切な日”で…
今でも…ずっと…この日のために…
今もこうしている間も 私のために 頑張ってくれてて…
だから…折角だけど…
私もう行かなきゃ!
千鶴にとって、このクラファンの成功は、そして自分の夢のために協力してくれる和也の想いは、何よりも大切なものでした。今すぐにでも和也の元へ向かってビラ配りをしたい。だから、断ろうとします。しかし
◆好きなの?その”彼”のこと 15巻127話
好きなの?その”彼”のこと
ちづるちゃんの好きな人なの?
こう海に呼び止められてしまいます。
好きみたいだよ
ちづるちゃんを見てると…
好きなんでしょ?と問い詰める海。海には、もう完全に和也が好きなことを気づかれてしまいました。
本心を話さなければ離してもらえなくなった千鶴。戸惑いながらも、好きだと答えるべきか必死に考えます。
本音ではこの人がいいと決めています。でも、このとき千鶴は和也への恋に悩んでいました。和也と自分はレンタル彼女と客という関係で、彼が自分を好きだなんて思えなかったからです。レンタル彼女がお客を本気で好きになるなんて良くない事だし、お客がそんな彼女になり得ない存在を好きになるはずがない。もしかしたら諦めそうになっていたかもしれません。「好きじゃない」「別に何とも思ってない」と答えることだってできました。
しかし、そのとき脳裏によぎったのは、八重森の言葉でした。
師匠は水原さんのこと 女として好きなんス!
お客さんの中に 水原さんを一生幸せにする人が
いるかもしれないっス
借り物から始まる恋も あるハズっス
千鶴は口元をきゅっと結びます。
◆やってやる! 何があっても! 127話
夢を諦めそうなとき和也は駆けつけてくれました。クラファンの立ち上げから準備まで、すべて進めてくれました。たくさんの小説を読み当たって脚本になるものを探し、映研の監督には頭を下げてくれました。夢か叶うか叶わないかが懸かっている今、私がこんなところで遊んでいるわけには行かない。彼の想いに答えたい千鶴は、本心を話す決断をします。
◆好きじゃない でも 好きじゃなくもない 15巻127話
好きじゃない でも 好きじゃなくもない
和也の恋を応援する立場の千鶴には、こういう言い方しかできません。本心を見せるのが苦手な彼女には、これが精いっぱい。でもこれが、千鶴の言える精一杯の「好き」でした。
きっと彼は振り向いてくれない 今は好きだなんて言えない
それでも私は和也がいい いつか嘘を真実に変えられる日を信じていたい
◆和也を見つめる千鶴 15巻126話
自分を好きなってはくれないと恋に悩みながら、それでも和也が好きだと言った千鶴。クラファン成功のためにビラを配る和也を千鶴は見つめます、いつかこの嘘が本物になる日を信じて。
詳しい解説はこちら 【解説】好きじゃない でも 好きじゃなくもない
後悔したことなんて一度もない
◆あなたと出会ったことに後悔したことなんて一度もない 16巻131話
映画の撮影中、演技をする自分に和也は劣等感を感じてしまったようで、それが原因で避けられてしまいます。千鶴は「馬鹿じゃないの?コンビニ店長だから何?」と一喝。千鶴にとって恩人である和也が、自分を悪くいうのが許せないし、そう言ってしまう和也を励ましたかったんですよね。
あなたと出会ったことに後悔したことなんて一度もない
殴りたいと思ったことは いっぱいあったけどね
レンタル彼女を通して人生が輝き始めたのは、和也だけではありません。和也と出会って、千鶴もまた人生を変えることができたのです。クズでマヌケで情けなくても、それも含めて千鶴にとって和也は大切な人です。出会った日の嫌な思いでさえ、きっと大切なんでしょう。
すれ違うふたりの恋
◆さくっと撮って帰っちゃいましょ 八重森さんがポカンとするほどに 16巻133話
さくっと撮って帰っちゃいましょ 八重森さんがポカンとするほどに
撮影旅行はまさか和也と2人っきり!和也と千鶴を恋人にしようとする八重森さんの企てでした。
◆…はぁ まじ…っ? 16巻133話
和也の前では平静を装いっていましたが、緊張で冷静ではありませんでした。ひとりになると、自分を落ち着かせるように火照った頬を冷やします。
好きじゃなくもない
あの日「好きじゃなくもない」と言った自分を思い出してしまい、「…はぁ、まじ…っ?」と大きなため息が漏れてしまいます。
映画製作のパートナーとして時間を共にすることで、千鶴はさらに和也に惹かれていきました。ずっと二人っきりの緊張する中で、平静を装い、撮影を終えなければいけません。
◆あなたが映画撮ろうって言ってくれたとき 私 嬉しかった 16巻136話
千鶴は女優になった姿を見せると約束した祖父のことを和也に話します。おじいちゃんは3年前亡くなるまでずっと、バカみたいに千鶴を応援してくれていたんです。だから、千鶴は女優になるという夢を見続けることができた。
あなたが映画撮ろうって言ってくれたとき 私 嬉しかった
和也が映画を撮ろうと言ってくれたことがどれだけ嬉しかったか、千鶴は言葉にします。
そして、その晩
おじいちゃんの言っていた自分を支えてくれる人は あいつなの?
◆和也を見つめる千鶴 16巻137話
寝てしまった和也を見つめ、そんなことを考えます。
千鶴が女優になる夢を持ち始めたころ、おじいちゃんは自分が前を向いて頑張っていれば、自分を支えてくれる人が必ず現れると話していたんです。
このときにはもう、自分を支えてくれる人が誰なのか、誰であって欲しいのか、千鶴は分かっているはずです。
、
◆もう最悪っなんで私が寝られないのよっ 16巻137話
和也の前では平静を装っていても、内心は好きな人と二人っきりでドキドキです。案の定、寝られません。
◆どうなの?るかちゃんとは 16巻138話
帰り道、千鶴は今和也が瑠夏と麻美をどう思ってるのか聞きます。実は、行きの新幹線を待っているとき、最近瑠夏と楽しく電話していると言う話を彼から聞いていたんです(133話)。もしかしたら瑠夏と和也の関係が進展しているのかもしれないと不安でした。
千鶴は、レンタル彼女として和也の力になってあげたいと思っています。和也が彼女を作るために協力してあげたいし、彼の気持ちを第一に考えるべきだと思っています。でも、心の底では、他の女の子を選んで欲しくはないし、自分が彼女になりたいんですね(だから和也の恋の行方を見守るだけで、瑠夏との関係が上手く行くように取り持ったりはしません。嘘ではあっても、和也の『彼女』であり続けようとしています)。
どうなの?るかちゃんとは
◆心から好きだって思える人にしようって 16巻138話
めっちゃいいコだよ でも 次紹介する人は 心から好きだって思える人にしようって
そう答える和也。まだ好きな人はいないと聞いて、千鶴は安心したことでしょう。
和也はこの言葉を、千鶴を意識して言っています。「心から好きな人」は千鶴のことで、本当の彼女だったらどんなに良いだろうと思っているんです。しかし、千鶴はその真意には気づきません。
千鶴は、いつ和也の本心に気づけるんでしょうか。
愛
◆ふたりの力 17巻143話
映画撮影はクランクアップ。小百合おばあちゃんのお見舞いに来ると、後輩レンカノの桜沢墨ちゃんを見つけます。そこで墨ちゃんが自分の知らないところで和也に協力してたことを知ります。そして墨ちゃんは教えてくれます。
和也君 凄く頑張ってた
ずっと悩んでた ちづるちゃんとおばあちゃんの為に何かできないかって
クラウドファンディングやるって決めてからも 何度もくじけそうになって…
それでも ちづるちゃんの為にまた立ち上がって
きっと2人の力 ちづるちゃんの想いと 和也くんの支え
おめでとうっ
和也は、千鶴と小百合おばあちゃんのために、悩んで悩んで何度もくじけそうになりながら、立ち上がってくれたのです。
◆ちづる 人に愛が芽生える瞬間はいつか知ってる? 17巻143話
千鶴は、和也が自分のために一生懸命頑張ってくれたことや、墨ちゃんもそんな和也を見ていてくれたこと、そして映画の完成を祝ってくれたことが、嬉しくて嬉しくて誰かに聞いて欲しくてたまりません。
それは知らないからよ!
だってあの人 初めはカメラの使い方も知らなかったんだよ!
脚本だって 影も形も無かったし
それなのに 絶対作れるとか言って
クラファンだって 初めは担当の人の許可が下りなくて
途中で根詰めすぎて ごはんだって ほとんど食べてなかったんだから
モンエナばっかり飲んで!
あれじゃあ いつ倒れてもおかしくなかったわね!
小百合おばあちゃんに和也のことばかり話してしまう千鶴。そのときとびっきりの笑顔を見せます。
◆その人のことを 楽しそうに語った時よ 143話
すると小百合おばあちゃんに、その人のことを楽しそうに話すのは、「愛の芽生え」だと教えられます。
ふたりの間では恋愛なし。相手の本当の気持ち気づくこともできない、気持ちを伝えることすらできない、きっと相手は振り向いてはくれない。たとえそんな相手であっても、支え合い、手を取り合い、和也と千鶴のふたりは夢を成し遂げました。
きっと2人の力
ちづるちゃんの想いと 和也くんの支え
千鶴と和也の絆は、 『愛』と呼んだ方が相応しいのかもしれませんね。
小百合おばあちゃんの死と孤独
上映会場を下見した際に小百合おばあちゃんが倒れます。その時がいつか来ると分かっていても戸惑いの色を隠せません。
◆神様はやっぱりイジワルね 18巻147話
神様はやっぱりイジワルね
自分たちはやるべきことをやった。だから、神様が与えたこの現実は受け入れないといけない。そう言って強がる千鶴。あと一歩のところで、夢の実現が離れていきます。
◆一ノ瀬ちづる主演「群青の星座」 18巻149話
しかし、和也が病室にプロジェクタを担ぎこみ、おばあちゃんに映画に出ている姿をみせるという千鶴の夢を繋ぎ止めてくれます。たった10分間でしたが、おばあちゃんは千鶴の姿をスクリーンで見ることができました。
小百合さんとのお別れのとき、和也との関係が嘘だったと話すべきか、千鶴は最後の最後まで悩みます。
■もう 何も… 分からないの…っ! 18巻150話
もう…っ 分からない…っ!
もう 何も…分からないの…っ!
「もう分からない」と泣き叫ぶ千鶴。
嘘だと言って謝りたい。その恋は千鶴がひとり想っているだけで、彼は何とも思っていない、全て嘘の恋人関係。きっと小百合おばあちゃんが期待しているような素敵な未来は訪れない。もしここで真実を打ち明けられなければ、二度と謝ることはできません。一生、大好きなおばあちゃんを騙し続けることになる。
千鶴は、小百合おばあちゃんが目を覚ましたことに気づくと、真実を打ち明けようとします。
◆ごめんね おばあちゃん…っ 私… ずっと ”嘘”を… ”嘘”を…っ! 18巻151話
ごめんね おばあちゃん…っ
私… ずっと ”嘘”を…
”嘘”を…っ!
しかし、
◆ダメ… 18巻151話
彼ほどあなたに相応しい人はいないわ
その人のことを 楽しそうに語った時よ
しかし、小百合おばあちゃんの嬉しそうな顔を思いだすと、嘘だと明かすことができません。和也のことが大好きで、自分に素敵な恋人ができたことを心から喜んでくれた。和也との恋を真剣に考え、自分には彼が必要だよと言ってくれた。嘘だと明かせば、悲しませてしまう、心配させてしまう。
苦しむ千鶴を見て、小百合おばあちゃんはどちらでもいいと言ってくれます。
◆あなたが選んだ答えなら どちらでも…いいわ… 151話
…知りたいとも 思うし… 知りたくないとも…思う…
あなたが選んだ答えなら どちらでも…いいわ…
正しい答えがあることの方が少ない。それでも考える続けることが自分の人生への誠実さ。そういう生き方ができる人に育ってくれただけ幸せ。そう言って本当のことを言えない千鶴を許してくれます。
◆おばあちゃん 大好き 18巻151話
素敵な映画を ありがとう…
和也君にも お礼を伝えておいて
愛してるわ ちづる あなたは私の宝物
夢を叶えた千鶴と和也に感謝の言葉を残し、小百合おばあちゃんは息を引き取ります。千鶴は結局、嘘だと言いそびれてしまいました。
◆へいきっ 152話
唯一の肉親で、世界で一番大切な人を失った千鶴は、深い孤独と悲しみを抱えます。
和也は「平気か?」と気遣ってくれます。しかし
へいきっ
そう千鶴は笑って返します。千鶴はいつも通り、強い自分を演じ続けるのでした。
おじいちゃんとおばあちゃん
千鶴は3年前におじいちゃんを、そしてとうとうおばあちゃんを亡くします。千鶴にとって、おばあちゃんとおじいちゃんは、自分の一部であると言っていいほど大切な存在でした。
おばあちゃんは自分を育ててくれた母親であり、理解者であり、憧れであり、自分に女優になる夢を与えてくれた人です。そして本当は弱さを持つ自分を、唯一さらけ出せる人です。
おじいちゃんは、自分の夢を一番に応援してくれる人でした、いつもバカみたいに味方になってくれる人でした。おじいちゃんとの約束(女優になって映画に出ている姿を見せるという約束)を、絶対叶えたいと頑張るほど大切な存在だったのです。
そんな2人を亡くした千鶴は、深い悲しみと寂しさを抱えることになります。自分の弱さを見せるのが苦手な千鶴は、誰かに辛い思いを吐き出したり、人前で泣いたりできないのです。和也が自分を心配してくれたときも『へいき』だと言って強がってしまいます。今の千鶴には、心から頼れる人がひとりもいないのです。
(続きは満足度⑥へ)
■【導入】水原千鶴の恋物語 千鶴は和也が好きなの?いつから?
13-18巻 感想
前後編の、長い長いレビュー解説に付き合っていただき、本当にありがとうございます。映画製作とおばあちゃんの死という超シリアス展開に入ってしまった「かのかり」。当初の下らなさはどこへやら。和也のクズさはどこへやら。
嘘を伝えるか伝えないか葛藤する千鶴。小百合おばあちゃんとの別れ。それでも強がる千鶴。何もできない和也。見てるだけで、マジでしんどいですね。レビューしながら何度も泣きました。
シリアス展開のクラファン開始後、それと並行してレンタル彼女と客の関係に「葛藤」する千鶴が描かれていました。『片思い』のまま、好きな人と誰かの恋を応援しないといけないって、切ない、切なすぎる。千鶴、早く和也の気持ちに気づいて。
千鶴にとってこの映画製作は、和也が『私を支えてくれる人』だと気づくきっかけになりました。ふたりは恋人にはなれませんでしたが、千鶴の恋は大きく進展しましたね。内容が充実している分、レビューで伝えたいことがたくさんありましたね。読でいても一番面白いのが13-18巻です。