【解説】好きじゃない でも 好きじゃなくもない | 恋心、お借りします

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(自称)水原千鶴を応援する会の会長。
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【解説】 好きじゃない でも 好きじゃなくもない

 

はいどーも。かのかり楽しんでますか?

 

今日はこの言葉

 

好きじゃない でも 好きじゃなくもない

 

を解説していこうと思います!

 

いやー。かのかりの中でも難問中の難問。海くんに、和也のことが好きなのか聞かれた千鶴が、答えた言葉ですね。

 

好きじゃなくもない=好き?と頭を悩ませた読者も多いんではないでしょうか。

 

178話、この言葉を和也から聞いて顔を真っ赤にした千鶴を見て、この言葉の意味はやっぱり”好き”だったんだと、伏線回収お疲れさまと思った読者も多かったと思います。

 

そういう方は、僕の解説記事「水原千鶴の恋物語」を読んでいただいて、7-13巻を読み直し!ちゃんと読んでくれ!と僕は叫びたい。

 

もうこのときには、とっくに千鶴は和也に恋をしていることを自覚してますし、叶うなら恋人になりたいと願っていますよ!彼女が和也を好きだなんて、とっくに答えは出ています(7-12巻・後編 水原千鶴の恋物語 理解度③)。

 

じゃぁ、この言葉、どういう意味なのか。結論から参りましょう。

 

…やっぱり和也が好き

ごめん 行かせて

彼の想いを裏切れないのっ

 

ま、こんな感じですね。

 

そこには、”好き”の一言では到底語ることができない、千鶴の和也への想いと、葛藤がありました。そんなステキ解説をお楽しみください。

 

 

 

  裏切れなかった和也の想い

 

かのかりではよくあることですが、セリフだけ切り取ってあれこれ考えても、答えは出てきません。このとき千鶴がどういう状況で、何をしたかったのか、整理してみましょう。

 

千鶴はこの日、海くんに誘われて観劇に行きます。千鶴は舞台が大好きなので、すごく楽しそうです。でも、本当は行く気ではなかったんですね。クラファンの最終日なので、和也たちとビラ配りをしたかったんです。ツイッターのRTを海くんにお願いしたため、断りづらく、仕方がなしに観劇に付き合っていたわけです。観劇が終わったら、真っ先に和也たちのところへ行く予定でした

 

ところが、ここで予想外の事態が!

 

海くんのアプローチです…。

 

彼女とは もう分かれたんだ

それに最近は思うんだ… 僕はもっと

演技に一生懸命なコが好きなんじゃないかって…

 

千鶴もまさかとは思いますが、「ご飯に行かない」と誘われて、確信します、海くんが私と恋人になろうと考えていることを…。

 

当然千鶴にその気はありません。本音では和也がいいと決めていますから。このときは和也が自分を好きでいてくれるとは思っていません、和也への恋は不安ばかりです【解説】ずっと深刻だった水原千鶴の葛藤。でも、”借り物から始まる恋だってある”と八重森さんの言った通り、本音ではふたりの嘘を本物に変えたいと願っています。小百合おばあちゃんに祝福してもらった日から(112話)、きっと和也が私を一生幸せにしてくれる人だと思い始めているし、ふたりの未来を願っているんですね(13-18巻・前編 水原千鶴の恋物語 理解度④)。

 

これはまずい。何とか断りたい。

 

なにより、今は、早く和也たちのところへ行ってビラ配りをしたいんです。ご飯なんて行っている余裕ありません。断りたい。

 

しかし、海くんも引きません。ワインが絶品だとか、有名な役者さんがいるだとか、舞台の感想を聞きたいだとか言って千鶴を引き止めようとします。

 

 

◆今日は…その…”大切な日で”… 126話

 

今日は…その…”大切な日”で…

今でも…ずっと…この日のために…

今もこうしている間も 私のために 頑張ってくれてて…

だから…折角だけど…

私もう行かなきゃ!

 

千鶴にとって、このクラファンの成功は、そして自分の夢のために協力してくれる和也の想いは、何よりも大切なものでした。今すぐにでも和也の元へ向かってビラ配りをしたかったんです。だからそう言って断ろうとします。しかし

 

 

◆好きなの? その彼の事 127話

 

好きなの?その”彼”のこと

ちづるちゃんの好きな人なの?

 

こう海くんに呼び止められてしまいます。和也が好きなのかと聞かれた千鶴は、一度は、胡麻化しますが。

 

 

◆好きみたいだよ ちづるちゃんを見ていると… 127話

 

好きみたいだよ

ちづるちゃんを見てると…

一時期は…何をするのにも落ち込んでたのに

今考えれば 映画を作り出したあたりから

まるで 元気を取り戻したみたいに…

おばあちゃんの具合が 良いのかなと思ってた…

でも ”前向きに”なれたからだったんだね…

 

こう言って、好きなんでしょ?と問い詰める海くん。海くんには、もう完全に和也が好きなことを気づかれてしまいました。

 

こう言われる前にも、千鶴は和也のこと楽しそうに話していました。「”できる”と言ってくれる人がいるのは大事だと思える そんな人」とも話していたんです。誰か好きな子いるのかなとセンサを張ってたらそりゃ分かりますわ。

 

ここでまた胡麻化しても、正直に話してよと、じゃぁご飯行こうよと言われて時間を取られるだけです。また海くんにアプローチされても困ります。もう真剣に答えるしかない状況なんですね。

 

なら、好きだと言ってしまえば簡単です。しかし、今の彼女には難しい事情がありました。千鶴は恥ずかしがり屋で不器用で、好きを表現するのがとても苦手なヒロインです。そして何よりも、このときは千鶴は和也への恋に悩んでいました。本音では、この人がいいと決まっている。でも、この嘘を本物に変えようと思ったとき、和也が自分を好きだなんて思えなかったんです(122話)【解説】ずっと深刻だった水原千鶴の葛藤。千鶴の視点で見たら、片思いの相手である和也はこれから本物の恋人を作って、そのときに私は用済みになってしまうって状況です。そのとき彼女になるのはレンタル彼女の千鶴ではありません。めっちゃ難しい恋です。もしかしたら諦めそうになっていたのかもしれません。それならば「好きじゃない」「別になんとも思ってないよ」と答えることもできたんです

 

千鶴は突然のことに動揺しながらも、必死に考えます。

 

本心を語るのか

 

語るとすれば、好きだと言うのか、和也への恋を諦めて「なんとも思っていない」と言うのか。

 

 

◆師匠は水原さんのこと 女として好きなんス! 127話

 

そのとき千鶴の脳裏によぎったのは、この言葉でした。

 

師匠は水原さんのこと 女として好きなんス!

お客さんの中に 水原さんを一生幸せにする人が

いるかもしれないっス!

借り物から始まる恋も あるハズっス

 

千鶴は口元をきゅっと結びます。

 

 

◆やってやる!何があっても! 127話

 

これは…俺の夢なんだよ…

一緒に映画作るんだよ!

やってやる! 何があっても!

 

「諦めるなんて言うな!」「才能ある!」と励ましてくれた

いつも「できる」と褒めてくれた

女優一ノ瀬ちづるが夢を諦めそうなとき いつも駆けつけてくれた

映画製作を提案してくれた

クラファン立ち上げのために一生懸命調べてくれた 準備をしてくれた

脚本探しにたくさん小説を読んでくれた

映画監督に頭を下げてくれた

今日も私のためにビラを配ってくれている

 

クラファン最終日、そんな彼の想いを、千鶴は絶対に裏切りたくなかった。こんなところで自分が遊んでいるわけには行かなかった。だから千鶴は、できるだけの言葉で本心を言う決断をします!

 

そこで千鶴が言った言葉が


◆好きじゃない でも 好きじゃなくもない 127話

 

好きじゃない でも 好きじゃなくもない

 

レンタル彼女である千鶴が言える、ギリギリの「好き」の言葉でした(後々説明します)。八重森さんが言ったような”借り物から始まる恋”があるかなんて分からない、和也が自分を好きだなんて思ってない、それでも二人が恋人になれる未来を願った。だから、恋に迷っていた彼女も”好き”だと言ったんですね。

 

好きじゃなくもない

 

この”好きじゃなくもない”という二重否定の”好き”には、和也の想いを裏切りたくない、和也が自分を見てくれていなくても、やっぱり和也がいいっていう、千鶴の想いと願いがこもっているんです!

 

…やっぱり和也が好き

ごめん 行かせて

彼の想いを裏切れないのっ

 

なので、まとめるとこんな意味です。

 

 

 

   「好き」とは言えないレンタル彼女の葛藤

 

好きじゃない でも 好きじゃなくもない

 

千鶴は、こういう言い方で、好きだと言います。海くんは「好きじゃなくもない」ってどういう意味?と思ったかもしれませんが、千鶴の中では「好き」と言ったのと等しいでしょう。それは178話の赤面した様子からも明らか。

 

◆かぁ…っ 178話

 

でも、なぜ「好きじゃない」と言ったのか、なぜ素直に「好き」と言わなかったのか、それを考えるとまた違うシーンに見えるんですね。

 

水原千鶴というヒロインは、「好き」と言えない不器用な子です。それは、和也の本当の気持ちを知った後(174話)、何度も好き避けをして「好き」と言えないことを見ても分かりますね。そんな彼女が、素直に言えなかったと言ってしまえば、そうです。

 

しかしそれよりも、このときの和也との関係性を考えたら、絶対に「好き」とは言えないんですよね

 

ふたりの間では恋愛なし

私は和也の恋を応援する立場

 

このころの千鶴は、あの日ふたりで決めた約束通り(32話)、和也は”本物の彼女”を作ろうとしてるし、レンタル彼女の私に振り向いてくれるはずもないって思っています。和也との恋人関係は嘘。彼にとって私はただの協力者で、恋人でも何でもないんだと感じています(【解説】ずっと深刻だった水原千鶴の葛藤)。和也がこんなに自分のために尽くしてくれるのも、すべて女優一ノ瀬ちづるを慕ってのことで、それは恋心じゃないと思ってるんです。和也との恋に未来が見えないなら、千鶴はレンタル彼女の立場をとるしかありません。

 

この和也との関係性は、頭で理解しているというより、もう心に刻まれてしまっているという感じですね。和也は自分に振り向いてはくれないと思ってしまうほどですから。だから、たとえ和也との関係を知らない海くん相手でも、千鶴は和也が好きだなんて言えなかったんだと思います。

 

さらに、この”呪い”とも表現できる和也との関係性は、このシーンが描かれる直前に八重森さんとの口論で改めて説明されました(122話)。作者の意図も考えれば、このとき千鶴が和也との関係性を意識することなく”好きじゃなくもない”と言うはずがないんです。

 

海くんに問われたとき、私が和也を好きであってはダメだと感じながら、ぎりぎり言えたのが

 

好きじゃない でも 好きじゃなくもない

 

ということですね。

 

彼が私を好きじゃないなら 好きだなんて言えない

でも 好きと言う気持ちは 否定できない

 

そういう切り口でこのシーンを見ると、今彼女の置かれている立場を、好きなのに好きだとは言えない水原千鶴の葛藤を表現したシーンでもあるんですね。

 

 

 

  それでも私は和也がいい

 

このシーンの意義、宮島さんが伝えたかったことについて考えてみます。水原千鶴の恋物語は、シーンの意味が明確で、それが奇麗につながってるんです。

 

一瞬自分の恋人として和也を見てしまった 君がいいっ君が! 50話

 

和也に励まされ 無自覚に走り出した恋心 フェアなお隣さん宣言 57話。

 

和也の傍にいたいと感じた 馬鹿っ 傍にいて欲しいって言われて断るわけないでしょ? 61話

 

嘘の恋人を続けたいという思いが 恋だと気づいた誕生日会 86話

 

おばあちゃんに応援してもらい 嘘を本物に変えたいと願い始めた 彼ほどあなたに相応しい人はいないわ 112話

 

しかし 和也は私を好きになってはくれないと この恋の難しさを感じた八重森との口論 122話

 

そして、好きじゃない でも すきじゃなくもない 127話

 

このシーンで、宮島さんはいったい何を見せたかったのか、僕はずっとしっくりこなかったんですね。

 

ちょうどこの15巻では八重森さんに「師匠は水原さんのことを女として好きなんス」と言われて、それが信じられなくて「あーもうっ」って悩んじゃったところなんです。

 

だからこの流れを受けて、当初僕は好きだとは言えない水原千鶴の葛藤を表現したかったのかなと思っていました。

 

でも、改めて千鶴の気持ちの流れを整理してみると、そうではなかった。

 

和也はきっと振り向いてくれない、そう思ってしまっている状況で、千鶴は和也が好きだと言ったんです。この恋を諦めて「好きじゃない」と言おうとしてもおかしくなかった、でも

 

借り物から始まる恋もあるハズっす

お客さんの中に 水原さんを一生幸せにする人が いるかもしれないっス! 

 

八重森さんの言った言葉を信じたい、やっぱり和也が好き、諦めたくないと思った。それを伝えたっかったシーンなんだと今は思っています。八重森さんが諦めそうな千鶴を引き止めてくれたってことです。恋のキューピットだったわけですね。

 

めちゃステキ

 

 

と言う感じでこのシーンを解説してみました!

では、また次の記事で

 

水原千鶴の恋物語もよろしくお願いします。