7-12巻・前編 水原千鶴の恋物語 満足度②
水原千鶴の視点で「彼女、お借りします」を振り返るレビュー「水原千鶴の恋物語」です。
■【導入】水原千鶴の恋物語 千鶴は和也が好きなの?いつから?
7-12巻 千鶴から見た和也
❤信頼70% 応援したい存在から応援してくれる存在へ
これまで千鶴はレンタル彼女として和也を応援する立場でしたが、逆に応援される立場にもなります。千鶴は女優になって「映画に出ている姿を小百合おばあちゃんに見せたい」という夢をもっており、諦めそうなとき励ましてくれたのが和也でした。「フェアなお隣さん」宣言をし、プライベートでの付き合いを許します。レンタル彼女としてだけでなく、プライベートでも(主に女優一ノ瀬ちづるとして)和也は千鶴にとって欠かせない存在へと変わり始めます。
❤恋心50% フェアなお隣さん そして好きな男の子へ
「君がいいっ」と言われた瞬間、千鶴自身の恋人として和也を見てしまいました。その後、和也に元気付けられたことによって、千鶴の和也への接し方や見方も変化し始めます。体調を気遣ってもらったり、飲み会で庇ってもらい、不器用ながらもその優しさに惹かれていきます。お試し彼女の瑠夏に嫉妬してしまう場面も現れます。それまでレンタル彼女として彼を応援しているんだと考えていた千鶴ですが、その気持ちが和也への恋だったと自覚します。
7-12巻 ハイライトと解説
なによ さっきの ばーかっ
◆なによ さっきの バーカ 6巻50話
千鶴にとって和也は応援したい存在。彼とはレンタル彼女として付き合っているつもりでした。しかし「君がいいっ」と告白され、一瞬、自分の本当の彼氏として和也を見てしまいます。すぐに、レンタル彼女として頼りにしているという意味だと分かりますが、その告白にものすごく動揺してしまいました。
◆ぷく顔 7巻50話
和也の告白まがいの言葉にほほを膨らませ、戸惑いを隠しきれない千鶴。和也に『レンタル彼女として』と訂正され、どうしてか残念な気持ちになってしまった自分がいたのかもしれません。
諦めるなんて言うな!
◆諦めるなんて言うな! 7巻53話
レンタル彼女を辞めて女優に専念しようと考えていた千鶴。千鶴の夢は「映画に出ている姿を小百合おばあちゃんに見せること」でした。残された時間は多くはありません。だからこそ、後悔のないよう自分に鞭を打って進んできました。しかし、期待していた舞台出演が映画出演へと繋がらず、泣いてしまうほど落ち込みます。そんなとき、味方になってくれたのが和也でした。
諦めるなんて 言うな!
和也は女優としての千鶴(一ノ瀬ちづる)を応援したいと、毎週千鶴をレンタルすると言います。
◆多すぎよ バカ 7巻53話
いつも現実的でひとりで気を張って生きてきた千鶴は、ときに夢を見る力を失いかけるときがあります。そんなとき、たとえ根拠がなくても、千鶴を本気で応援し、夢を見る力を与えてくれたのが和也でした。和也が予約を入れてくれたことに、嬉しさのあまり涙を流します。
レンタル彼女として応援する側だった千鶴ですが、はじめて応援される側にになります。ここから、和也の接し方も大きく変わってきます。
フェアなお隣さん宣言
◆理想なんだ 7巻56話
千鶴はこれまで和也の前で清楚系彼女を演じてきましたが、和也からオーダーされたのは『いつも通りの水原』でした。ほとんど告白のような言葉。「恥ずかしいこと言わないでよ」と言ってサラッと流しますが、このときまた自分の恋人として彼を見てしまったかもしれませんね。
『私はレンタル彼女、彼はお客』、そう考えていた千鶴は、和也の本心には気づけません。お客のオーダーだと捉えてしまいました。
◆これからはフェアなお隣さん 7巻57話
レンタルデート終了後、和也をバッティングセンターに誘います。和也に元気付けられたことが本当に嬉しかったんです。
これからは対等
”フェアなお隣さん”で居ましょうっ
フェアなお隣さん宣言をして、プライベートでも付き合いたいと伝えます。お客さんとのプライベートな付き合いはNGと和也に伝えていたため、ずっと避けられてしまう状況でした。千鶴はそれが不満だったんですね。たとえばベランダで舞台の話をしたり、朝「おはよ」とあいさつを交わすことさえ、今の千鶴には大切な時間なのかもしれません。千鶴にとって和也は、一緒にいたら元気をもらえる存在なのかもしれませんね。
【補足】千鶴自身は、5巻40話以降お隣さんとして接し始めています。ただ、そのときに瑠夏の下着の一件のせいで和也に伝えそびれていたのでした。
◆ハイタッチ! 7巻57話
レンタル彼女と客の関係なので何か理由がないと会うことはできませんが、千鶴の和也と仲良くしたいという気持ちが溢れます。小百合おばあちゃんに会うまでの時間つぶしだというものの、自分からハイタッチを求めます。
このときには千鶴自身には自覚がないものの、すでに「和也が好き」という気持ちが走り始めたのは間違いないでしょう。
◆私の彼氏に ベタベタしないでよね 7巻57話
ちょっと おばあちゃん 私の彼氏に
ベタベタしないでよね
そのあと訪れた病院では、おばあちゃんに和也を取られてしまい不満が漏れます。
この晩、千鶴は和也に自分の夢を語ります、小百合ばあちゃんに自分が映画に出ている姿を見せたいという夢を。こんな子供っぽい夢も、この人ならちゃんと聞いてくれると思ったんでしょう。
◆俺…見たいんだよ 君が夢を叶える姿を 心の底から 7巻61話
やっぱ水原見てると 格好良くてさっ
俺…見たいんだよ 君が夢を叶える姿を
心の底から
だから 傍にいたい…
ずっと…君の傍に…
ダメ…かな…?
和也は、千鶴が女優として夢を叶える姿を見たい、だから傍にいたいと言ってくれます。褒められることが大好きな千鶴には、和也の言葉はとても嬉しかったでしょう。味方でいてくれる人に傍にいたいと言ってもらえて、心強かったはずです。
◆馬鹿っ 傍にいて欲しいって言われて 断れるわけないでしょ?
ずっと…?
馬鹿っ
傍にいて欲しいって言われて 断れるわけないでしょ?
それが ”レンタル彼女”なんだから
傍にいたいという和也に、”彼女”として傍にいてあげると千鶴は答えます。
あくまでレンタル彼女として和也と付き合っていると千鶴は思っています。だから、こういう言い方でしか、自分の気持ちを表現することができません。でも
私も 和也に傍にいて欲しい
これが千鶴の本心です。
◆学内で挨拶 8巻61話
学内では赤の他人の約束で、一切の関わりを持たない約束でしたが、それを千鶴から解消します。本当はレンタル彼女はお客とのプライベートな関係を避けなければいけません。千鶴もそれをよく分かっています。レンタル彼女として間違っていることをしてでも、どうしても和也と一緒の時間が欲しいんですね。
和也の傍にいたいというい気持ちがどこから来るのか、千鶴は気づくことができるのでしょうか。
嫉妬
◆集中!集中! 8巻66話
千鶴にとって和也は、自分の味方でいてくれる大切な存在へ変わり始めました。昨晩瑠夏が和也の部屋に泊まったことを知り、二人が深い仲になったと考えてしまいます。
和也と瑠夏はもう…
そのことが気になり、セリフを覚えることに集中できません。初めて「嫉妬」してしまいます。
レンタル彼女である千鶴は、和也に恋人ができるのであれば応援すべき立場です。以前はそうしていましたし、瑠夏を和也の彼女にしたのも自分自身。なのに今は瑠夏と和也が本当に付き合うかと思うと、不安になってしまう。自分自身の未来の恋人として和也を見てしまっています。
◆すっぱ! はーあっ ごはん炊こうっ 9巻69話
疲れて帰ってくるとベランダに和也からの誕生日プレゼントが。なんと梅干し。女優を目指している私の身体を気遣ってのプレゼントだったようです。千鶴は思わず笑ってしまいます。
PS るかちゃんとは まじでヤってないから!
信じてあげるわよ うるさいなぁ
私のことを考えてくれたプレゼントに誠意を感じ、和也を信じることにします。ぶっきらぼうな答え方ですが、内心ホッとしたことでしょう。
◆一ノ瀬だけは死んでも守んなきゃって 9巻73話
飲み会で和也は千鶴をかばい、飲みすぎて潰れてしまいます。バカで不器用でカッコつけてばかりだけど、とてもやさしい人。改めて自分の味方でいてくれるんだと感じます。
庇ってくれて ありがとう 嬉しかった
和也には、ヨッパライ!と突っ込みを入れつつ「ウコンの恋人」を送っておきました。
制服デート?!
◆遠慮しないでっ 79話
一ノ瀬ちづる応援デート。和也の要望で制服で臨むことに。
別に デートプラン考えてくれるのは 悪いことじゃないしっ
遠慮なんかしないでっ 今日はとことん付き合うからっ
やりたいことを口にできない和也を見て、遠慮しないようにと促します。レンタル彼女としてこういう言い方をしますが
このデート一緒に楽しみましょっ
本音では千鶴の方もこのデートを楽しみたいはず。チュロスの分け合いっこやプリクラ撮影、「観覧車に乗ろう」と言うなど、ふたりのデートをリードしていきます。
◆前ハグにドキドキ 10巻80話
プリクラでは、まさかの前ハグ撮影!
千鶴にとって和也は、自分の味方でいてくれる大切な存在へ変わり始めました。オーダー通り『いつも通りの水原』を演じていますが、ドキドキしてしまいます。顔を赤くしてしまっているのがバレなくてよかったですね。ここまで距離が近いと千鶴も意識せざるを得ません。自覚はありませんが、これはもう…。
◆レンタル彼女継続 10巻82話
帰りがけ、自分の夢を応援してくれている和也に、新しい舞台が決まったことを報告します。和也が自分の手をぎゅっと握るので、彼は自分がレンタル彼女の仕事を辞めるのではないかと心配していると思い、
安心してよ
そんなに不安がらなくても
すぐに消えていなくなったりなんか…
そう言って千鶴はレンタル彼女は続ける気だから安心してと伝えます。ところが、
…違うんだ
水原すげー 頑張ってたから…
なんかめっちゃ 嬉しくて…!!
和也からの返事は予想外のものでした。彼は新しい舞台が決まったことが嬉しいようです。本音では、「『彼女』でいてくれて安心した」と言ってほしかったんでしょうね。千鶴は、和也の言葉に嬉しいような寂しいような複雑な表情を浮かべます。
応援してくれるのは嬉しいけれど
やっぱり 和也の傍にいられなくなるのは 嫌
もうしばらく和也の『彼女』でいられそうです。
(続きは満足度③へ)