微笑シリーズ。米印でなんと読む。あな…
『お前さ、米をどう思ってる?』
「米を、か?」
『どう思ってる、どう認識してる?』
「米を、か?」
『どう思ってるんだよ!』
「なにも怒らなくてもいいだろ」
『おいどう思ってるんだよ!』
「なんだよその自白をせまる刑事みたいな口調は。お前がやったんだろ的な」
『お前がやったんだろ!』
「話変わっちゃったよ」
『お前がやったんだろお前が!』
「なんもやってねえよ。何の容疑がかかってんだおれは」
『ストーカーしてるだろお前!』
「よりにもよってストーカーかよ」
『やったんだろお前!やってるんだろお前!』
「やってねえよ!ストーカーしてない!」
『どうせやってるんだろお前は』
「どうせ、とか言うなよ」
『どうせいつの日かストーカーで捕まるんだろお前は』
「また話が変わってるよ!」
『どうせ近い将来ストーカーで捕まって、泣きじゃくんだろ?』
「わかんねえよ」
『わかんねえってなんだよ!』
「仮にストーカーで捕まっても泣きじゃくるかどうかはわかんねえよ!」
『そんなとこに引っかかって食い下がってくんじゃねえよ』
「それは、そうだな」
『ストーカー野郎が』
「はい、もうストーカーしないように気をつけますとしか言えないよ」
『お前、あの娘のことどう思ってんだよ』
「なんなんだよもう、誰のことだよ」
『あの、居酒屋のカヨちゃんのことだよ』
「誰だよ。知らねえよ。居酒屋のカヨちゃんなんかまったく知らねえよ」
『あのあばずれ女のことだよ』
「だから誰なんだよ。あばずれ女のカヨちゃんなんか知らねえよおれ」
『どう思ってんだよ。あばずれで、つきあう男つきあう男みんな中古のクラウンに乗ってるカヨちゃんのことを』
「タチわりいなおい」
『どう思ってんだよ!』
「ああもう、お体に気をつけて、お体に気をつけて、だよ!」
『なんだそれ』
「知るか」
『じゃあ、米のことどう思ってんだよ』
「また米」
『米のことどう思ってんだよどう認識してるんだよ!』
「わかったよ!、米だろ、えっと、コシヒカリ、コシヒカリ的な」
『はあ!?』
「あれだろお前、米はコシヒカリ的な…存在感だろ」
『ああ!?』
「コシヒカリ的な存在感だろ!」
『はっ』
「なんだよ鼻で笑いやがって」
『てんで、てんでお話になりゃしませんぜ』
「なんだその口調」
『てんでお話になりゃしやせんぜ!』
「なんなんだよ」
『米のこと訊かれて、コシヒカリ的な存在感だと答えられた日にゃ、はっ』
「鼻で笑うなよ」
『てんでお話になりゃしやせんぜ』
「うぜえよもう」
『お笑いぐさだあ』
「うるせえな」
『そもそもコシヒカリ的な存在感って一体全体、どういう意味だっつうお話ですよ』
「そりゃお前、今日はコシヒカリの銀シャリだ的な」
『なんだそれ、戦後の話じゃねえんだから』
「でもあるだろ、なんか存在感が米には」
『はっ』
「いちいち鼻で笑いやがる。鼻持ちならねえ奴だよ」
『うわうわうわ、やめてくれるかなそういうの』
「そうやっていっつもお前は人を鼻にかけた態度とりやがって、鼻につくんだよお前の態度」
『あ、鼻で思い出したけど、おれ一時期本気で絵本作家になりたくてな』
「ふざけてたら変な導線ふんだ!」
『絵本っつっても色々あるけど、赤ちゃんに毛が生えた程度の幼児向けの絵本ってあるだろ?』
「あれだろ?、ストーリー性があまりないやつだろ?」
『そんな言い方ないだろ。イラストに、まず目で楽しませながら、ページめくると、キリンさんを見つけたよ、ってかかれてるみたいなやつ』
「ああ」
『でさ、まずは考えてみたわけ、こういう絵本はどうだろうってさ』
「うん」
『それがさ、
どうしてゾウさんのお鼻は長いの?
』
「ああ、そういう、Q&A方式のあるな」
『そう、でさ、まさか進化論をぶつわけにはいかないだろ、幼児向けの本でさ。だから、本を作るにあたってその禅問答めいた問いかけから考えついちゃったんだけど、どうしてもさ、どうしてもよ、そのおれからの答えがさ、
どうしてゾウさんのお鼻は長いの?
の答えがさ、
それはね、ゾウさんはちんちんも大きいからだよ
になっちゃうんだよ』
「最低だな」
『もう、それ以外思いつかなくてな』
「なんでだよ」
『おれの背負ったカルマ、だな』
「カルマだなんて答えられても」
『それで、絵本作家になるのはあきらめた』
「あきらめれて良かったな」
『おれ思うんだけどさ』
「なに?」
『やっぱり鼻がでかいやつはあそこもでかいのかな?』
「知らねえよ」
『マリエ、とか』
「女じゃねえかよ早速かよ」
『あいつ絶対エグいちんこ持ってるだろ』
「なに言ってんだよお前は。でかいもなにも」
『いやいや、エグいちんこだよ』
「でかいんじゃなくて?」
『大きさは普通ですよ。ただ聞きしに勝るエグさのちんこ』
「もう鼻とか関係ねえのかよ」
『絶対持ってるだろ』
「持ってるわけねえだろ」
『絶対ふところに忍ばせてるだろ』
「携帯してるの意味の持つだったのかよ!、マリエとはいえ、普段からふところにエグいちんこ忍ばせてるわけないだろ」
『ストラップに付けてるでしょ?』
「エグいちんこのストラップなんか付けてるわけないだろ。そもそもエグいちんこってどんなちんこだよ」
『ええ?付けてないの?』
「付けてねえよ」
『3つ付いてるストラップの内2つはエグいちんこでしょ?』
「んなわけあるかって。ていうかじゃあ残りの一個なんだよ」
『残りの?、そりゃエビのストラップだろ』
「は?」
『寿司のエビよ。あれが一貫付いてるでしょ?』
「なんでそんなもんマリエはチョイスしたんだよ。エビって」
『エビ一貫とエグいちんこ二本ぶら下げてるでしょ?』
「だからぶら下げてるわけないだろ」
『ぶら下げてないの?』
「おれに聞くなよ。聞くまでもないだろ」
『二本のエグいちんこしゃぶって、お口直しにエビ食べるでしょ?』
「食べるってそのエビ、プラスチックじゃなくて本物の寿司なのか!?」
『本物の寿司でしょ?』
「おれは知らねえけど」
『二本のエグいちんこしゃぶって、エビ食って、しまいにはマナーモードの携帯電話いれちゃうでしょ?』
「そこはエグいちんこいれればいいんじゃないか?」
『それで収録に臨んでるでしょ?』
「そんなわけあるか」
『ええ?、マリエならやりかねないでしょ?』
「お前の願望の話になってるよな」
『絶対やってるでしょ?』
「やってねえだろ」
『お前はやってるでしょ?』
「おれ!?」
『お前は絶対やって、お前、お前がやったんだろお前!』
「やってねえよ!なんだよ!久しぶりの微笑シリーズだからって話の展開自由過ぎるだろ!」
『某勝間女史は』
「なんなんだよ」
『あいつさ、おれあいつのことまったくと言っていいほど知らないんだけど、おれさ、あいつのこと“デカちん”って呼んでんだ』
「そろそろやめろとけよ。いい加減にしないと大人の制裁が下されるぞ」
『絶対デカいだろあいつ』
「デカくねえよ!、まず、持ってねえもん」
『絶対デカいだろ』
「だから、なんか過密スケジュールで怒られるぞ。朝に三分置きにに怒られるぞ」
『やれやれだぜ』
「どんな言いぐさだよ!」
『えっと、米の話でしたね』
「うわ、あんだけ米の話に執着してたのに投げやりに」
『お前は米を存在感のあるもの、まあ主食イコール米だと捉えてるってことだよな?』
「まあ、まあな」
『わたしは、わたくしは、ああうん、うんうん』
「いちいち長いんだよ。喉なんか整えやがって。お前この情報媒体が文字だけだって知ってるだろうが」
『わたくしは米を野菜だと思っています』
「…は?」
『わたくしは米を野菜だと思っています。野菜だと認識している所存でございます』
「所存でございますってお前」
『わたくし、米を野菜だという認識で日々楽しく生活を送る所存でございます』
「いやまあ、勝手に送れよ」
『わたくし米を野菜という』
「しつこいよ!しつこいな!」
『米は野菜だろ』
「いやいや、主食だろ」
『主食の野菜だろ?』
「いやまあ、野菜っつうか、主食だろ」
『お前が主食と認識している野菜が米だろ?』
「うーん、いや、やっぱり米は主食であって野菜にカテゴライズされないだろ」
『米は野菜だよ』
「米は主食だよ」
『主食って野菜だろ?』
「そもそも、お前が言う野菜って、おれはサラダ的感覚として認識しているわけだけど、それでいいの?」
『うん』
「じゃあやっぱり米は野菜じゃないだろ」
『米は野菜だろ?』
「いやいや、サラダは主食にならないだろ?」
『でも米は肉じゃないだろ?』
「うん、肉ではない」
『じゃあ一体主食って、なに?』
「わかんない。以上、平行線ボケでした。さて」
『うん』
「米は野菜と認識しないだろ」
『米は野菜だろ?』
「米は主食だろって二回目の非建設的議論ボケでした」
『勝手に名称変えるなよ』
「まあ、でも米は主食だよ」
『いや、米は野菜だよってめんどくさい!』
「まさかの、まさかのボケがボケをめんどくさがる事態に!」
『うぜえ』
「…はい」
『あのさ、なんでレストランではライスをフォークで食うか知ってる?』
「知らない」
『あれは、米を主食としていない西洋人は米を野菜のひとつだと認識しているからサラダフォークで食うんだよ』
「お前は西洋かぶれか!」
『かぶれてねえよ!』
「かぶれてんじゃねえかよ!」
『まあ聞けよ』
「うん」
『素直!、っとまあ、おれはそのことをなんかで見聞きして、なるほどって思ったわけ』
「西洋かぶれか!」
『まあ聞けよ』
「うん」
『素直!、でさ、日本人は米に特別な感情抱いてるっつうか、ある意味米の食い方に無頓着だよな。こんな身近にある米なのに、炊いて茶碗についで食うってことしか発展しなかった。主食だからって、ずっとそのままにしてきてよ。かくあるべしってやつよ。日本人ってのはさ、なんつうかなあ、一度なんとかなったものに対して、そのままにしておく癖があるよな。なんとかやっていけてるものはそのままでいいじゃないっつうかさ』
「ああ、保守的というか」
『全然違う。まったく違う』
「あっそう」
『手持ちの箱にあわせて収まるタイプなんだよ日本人は。箱の中のもんでなんとかなってるんならそのままでいいみたいなさ。あれだよ、飛脚だよ』
「飛脚だって!?」
『どんなリアクションだよ。よく言うだろ、情報の伝達を早くするのに日本は必死こいて飛脚を速く走らせようと鍛えたのに対し西洋では自動車が発明されたって話を』
「自動車を!?」
『………あれみたいにさ、日本人こそ米を知らないんだよ。主食として扱われちゃってるから』
「西洋かぶれか!」
『かぶれてねえよ!まあ聞けよ』
「いやだ!」
『反抗!、とまあ何が言いたいかと言うと、米を野菜だと認識すると、おかずの概念が変わってくるんだよ』
「へえ、すごいや博士!」
『適当か!』
「まあ、例えばどういうことよ」
『そうだな、それこそ、サラダをおかずにメシを食うことに抵抗がなくなる』
「気持ち悪いメシ食ってんなお前」
『サラダとサラダを食ってるわけだから気持ち悪くなんかない。だから、おれも今までマヨネーズご飯っつうものに激しく抵抗感があったんだけど、サラダだからマヨネーズつけて食うのも普通になった』
「はあ」
『それにあれだよ。よくいう炭水化物同士の取り合わせね』
「お好み焼き定食とかな」
『あれも米はただの野菜だと認識すれば、まったく違和感がない。お好み焼きとサラダを食ってるわけだからね』
「ほう」
『あと甘いものとの食い合わせな。中に米がごっそり入った変なケーキが西洋にはあんだろ?、ああいうのもまったく違和感がなくなった。ミルクの中に米入れるのも違和感がない。だって米は一野菜だから』
「なるほどねえ」
『要は、おれはなんでもおかずにしてメシを食えるようになったってわけさ』
「ちゃんちゃん、だな」
『ちゃんちゃん、だな』
終わり。ケータイから一度に送れる文字数限界に焦った結末。編集はしない。なぜなら暇なときに書き足していく方式だから。
「米を、か?」
『どう思ってる、どう認識してる?』
「米を、か?」
『どう思ってるんだよ!』
「なにも怒らなくてもいいだろ」
『おいどう思ってるんだよ!』
「なんだよその自白をせまる刑事みたいな口調は。お前がやったんだろ的な」
『お前がやったんだろ!』
「話変わっちゃったよ」
『お前がやったんだろお前が!』
「なんもやってねえよ。何の容疑がかかってんだおれは」
『ストーカーしてるだろお前!』
「よりにもよってストーカーかよ」
『やったんだろお前!やってるんだろお前!』
「やってねえよ!ストーカーしてない!」
『どうせやってるんだろお前は』
「どうせ、とか言うなよ」
『どうせいつの日かストーカーで捕まるんだろお前は』
「また話が変わってるよ!」
『どうせ近い将来ストーカーで捕まって、泣きじゃくんだろ?』
「わかんねえよ」
『わかんねえってなんだよ!』
「仮にストーカーで捕まっても泣きじゃくるかどうかはわかんねえよ!」
『そんなとこに引っかかって食い下がってくんじゃねえよ』
「それは、そうだな」
『ストーカー野郎が』
「はい、もうストーカーしないように気をつけますとしか言えないよ」
『お前、あの娘のことどう思ってんだよ』
「なんなんだよもう、誰のことだよ」
『あの、居酒屋のカヨちゃんのことだよ』
「誰だよ。知らねえよ。居酒屋のカヨちゃんなんかまったく知らねえよ」
『あのあばずれ女のことだよ』
「だから誰なんだよ。あばずれ女のカヨちゃんなんか知らねえよおれ」
『どう思ってんだよ。あばずれで、つきあう男つきあう男みんな中古のクラウンに乗ってるカヨちゃんのことを』
「タチわりいなおい」
『どう思ってんだよ!』
「ああもう、お体に気をつけて、お体に気をつけて、だよ!」
『なんだそれ』
「知るか」
『じゃあ、米のことどう思ってんだよ』
「また米」
『米のことどう思ってんだよどう認識してるんだよ!』
「わかったよ!、米だろ、えっと、コシヒカリ、コシヒカリ的な」
『はあ!?』
「あれだろお前、米はコシヒカリ的な…存在感だろ」
『ああ!?』
「コシヒカリ的な存在感だろ!」
『はっ』
「なんだよ鼻で笑いやがって」
『てんで、てんでお話になりゃしませんぜ』
「なんだその口調」
『てんでお話になりゃしやせんぜ!』
「なんなんだよ」
『米のこと訊かれて、コシヒカリ的な存在感だと答えられた日にゃ、はっ』
「鼻で笑うなよ」
『てんでお話になりゃしやせんぜ』
「うぜえよもう」
『お笑いぐさだあ』
「うるせえな」
『そもそもコシヒカリ的な存在感って一体全体、どういう意味だっつうお話ですよ』
「そりゃお前、今日はコシヒカリの銀シャリだ的な」
『なんだそれ、戦後の話じゃねえんだから』
「でもあるだろ、なんか存在感が米には」
『はっ』
「いちいち鼻で笑いやがる。鼻持ちならねえ奴だよ」
『うわうわうわ、やめてくれるかなそういうの』
「そうやっていっつもお前は人を鼻にかけた態度とりやがって、鼻につくんだよお前の態度」
『あ、鼻で思い出したけど、おれ一時期本気で絵本作家になりたくてな』
「ふざけてたら変な導線ふんだ!」
『絵本っつっても色々あるけど、赤ちゃんに毛が生えた程度の幼児向けの絵本ってあるだろ?』
「あれだろ?、ストーリー性があまりないやつだろ?」
『そんな言い方ないだろ。イラストに、まず目で楽しませながら、ページめくると、キリンさんを見つけたよ、ってかかれてるみたいなやつ』
「ああ」
『でさ、まずは考えてみたわけ、こういう絵本はどうだろうってさ』
「うん」
『それがさ、
どうしてゾウさんのお鼻は長いの?
』
「ああ、そういう、Q&A方式のあるな」
『そう、でさ、まさか進化論をぶつわけにはいかないだろ、幼児向けの本でさ。だから、本を作るにあたってその禅問答めいた問いかけから考えついちゃったんだけど、どうしてもさ、どうしてもよ、そのおれからの答えがさ、
どうしてゾウさんのお鼻は長いの?
の答えがさ、
それはね、ゾウさんはちんちんも大きいからだよ
になっちゃうんだよ』
「最低だな」
『もう、それ以外思いつかなくてな』
「なんでだよ」
『おれの背負ったカルマ、だな』
「カルマだなんて答えられても」
『それで、絵本作家になるのはあきらめた』
「あきらめれて良かったな」
『おれ思うんだけどさ』
「なに?」
『やっぱり鼻がでかいやつはあそこもでかいのかな?』
「知らねえよ」
『マリエ、とか』
「女じゃねえかよ早速かよ」
『あいつ絶対エグいちんこ持ってるだろ』
「なに言ってんだよお前は。でかいもなにも」
『いやいや、エグいちんこだよ』
「でかいんじゃなくて?」
『大きさは普通ですよ。ただ聞きしに勝るエグさのちんこ』
「もう鼻とか関係ねえのかよ」
『絶対持ってるだろ』
「持ってるわけねえだろ」
『絶対ふところに忍ばせてるだろ』
「携帯してるの意味の持つだったのかよ!、マリエとはいえ、普段からふところにエグいちんこ忍ばせてるわけないだろ」
『ストラップに付けてるでしょ?』
「エグいちんこのストラップなんか付けてるわけないだろ。そもそもエグいちんこってどんなちんこだよ」
『ええ?付けてないの?』
「付けてねえよ」
『3つ付いてるストラップの内2つはエグいちんこでしょ?』
「んなわけあるかって。ていうかじゃあ残りの一個なんだよ」
『残りの?、そりゃエビのストラップだろ』
「は?」
『寿司のエビよ。あれが一貫付いてるでしょ?』
「なんでそんなもんマリエはチョイスしたんだよ。エビって」
『エビ一貫とエグいちんこ二本ぶら下げてるでしょ?』
「だからぶら下げてるわけないだろ」
『ぶら下げてないの?』
「おれに聞くなよ。聞くまでもないだろ」
『二本のエグいちんこしゃぶって、お口直しにエビ食べるでしょ?』
「食べるってそのエビ、プラスチックじゃなくて本物の寿司なのか!?」
『本物の寿司でしょ?』
「おれは知らねえけど」
『二本のエグいちんこしゃぶって、エビ食って、しまいにはマナーモードの携帯電話いれちゃうでしょ?』
「そこはエグいちんこいれればいいんじゃないか?」
『それで収録に臨んでるでしょ?』
「そんなわけあるか」
『ええ?、マリエならやりかねないでしょ?』
「お前の願望の話になってるよな」
『絶対やってるでしょ?』
「やってねえだろ」
『お前はやってるでしょ?』
「おれ!?」
『お前は絶対やって、お前、お前がやったんだろお前!』
「やってねえよ!なんだよ!久しぶりの微笑シリーズだからって話の展開自由過ぎるだろ!」
『某勝間女史は』
「なんなんだよ」
『あいつさ、おれあいつのことまったくと言っていいほど知らないんだけど、おれさ、あいつのこと“デカちん”って呼んでんだ』
「そろそろやめろとけよ。いい加減にしないと大人の制裁が下されるぞ」
『絶対デカいだろあいつ』
「デカくねえよ!、まず、持ってねえもん」
『絶対デカいだろ』
「だから、なんか過密スケジュールで怒られるぞ。朝に三分置きにに怒られるぞ」
『やれやれだぜ』
「どんな言いぐさだよ!」
『えっと、米の話でしたね』
「うわ、あんだけ米の話に執着してたのに投げやりに」
『お前は米を存在感のあるもの、まあ主食イコール米だと捉えてるってことだよな?』
「まあ、まあな」
『わたしは、わたくしは、ああうん、うんうん』
「いちいち長いんだよ。喉なんか整えやがって。お前この情報媒体が文字だけだって知ってるだろうが」
『わたくしは米を野菜だと思っています』
「…は?」
『わたくしは米を野菜だと思っています。野菜だと認識している所存でございます』
「所存でございますってお前」
『わたくし、米を野菜だという認識で日々楽しく生活を送る所存でございます』
「いやまあ、勝手に送れよ」
『わたくし米を野菜という』
「しつこいよ!しつこいな!」
『米は野菜だろ』
「いやいや、主食だろ」
『主食の野菜だろ?』
「いやまあ、野菜っつうか、主食だろ」
『お前が主食と認識している野菜が米だろ?』
「うーん、いや、やっぱり米は主食であって野菜にカテゴライズされないだろ」
『米は野菜だよ』
「米は主食だよ」
『主食って野菜だろ?』
「そもそも、お前が言う野菜って、おれはサラダ的感覚として認識しているわけだけど、それでいいの?」
『うん』
「じゃあやっぱり米は野菜じゃないだろ」
『米は野菜だろ?』
「いやいや、サラダは主食にならないだろ?」
『でも米は肉じゃないだろ?』
「うん、肉ではない」
『じゃあ一体主食って、なに?』
「わかんない。以上、平行線ボケでした。さて」
『うん』
「米は野菜と認識しないだろ」
『米は野菜だろ?』
「米は主食だろって二回目の非建設的議論ボケでした」
『勝手に名称変えるなよ』
「まあ、でも米は主食だよ」
『いや、米は野菜だよってめんどくさい!』
「まさかの、まさかのボケがボケをめんどくさがる事態に!」
『うぜえ』
「…はい」
『あのさ、なんでレストランではライスをフォークで食うか知ってる?』
「知らない」
『あれは、米を主食としていない西洋人は米を野菜のひとつだと認識しているからサラダフォークで食うんだよ』
「お前は西洋かぶれか!」
『かぶれてねえよ!』
「かぶれてんじゃねえかよ!」
『まあ聞けよ』
「うん」
『素直!、っとまあ、おれはそのことをなんかで見聞きして、なるほどって思ったわけ』
「西洋かぶれか!」
『まあ聞けよ』
「うん」
『素直!、でさ、日本人は米に特別な感情抱いてるっつうか、ある意味米の食い方に無頓着だよな。こんな身近にある米なのに、炊いて茶碗についで食うってことしか発展しなかった。主食だからって、ずっとそのままにしてきてよ。かくあるべしってやつよ。日本人ってのはさ、なんつうかなあ、一度なんとかなったものに対して、そのままにしておく癖があるよな。なんとかやっていけてるものはそのままでいいじゃないっつうかさ』
「ああ、保守的というか」
『全然違う。まったく違う』
「あっそう」
『手持ちの箱にあわせて収まるタイプなんだよ日本人は。箱の中のもんでなんとかなってるんならそのままでいいみたいなさ。あれだよ、飛脚だよ』
「飛脚だって!?」
『どんなリアクションだよ。よく言うだろ、情報の伝達を早くするのに日本は必死こいて飛脚を速く走らせようと鍛えたのに対し西洋では自動車が発明されたって話を』
「自動車を!?」
『………あれみたいにさ、日本人こそ米を知らないんだよ。主食として扱われちゃってるから』
「西洋かぶれか!」
『かぶれてねえよ!まあ聞けよ』
「いやだ!」
『反抗!、とまあ何が言いたいかと言うと、米を野菜だと認識すると、おかずの概念が変わってくるんだよ』
「へえ、すごいや博士!」
『適当か!』
「まあ、例えばどういうことよ」
『そうだな、それこそ、サラダをおかずにメシを食うことに抵抗がなくなる』
「気持ち悪いメシ食ってんなお前」
『サラダとサラダを食ってるわけだから気持ち悪くなんかない。だから、おれも今までマヨネーズご飯っつうものに激しく抵抗感があったんだけど、サラダだからマヨネーズつけて食うのも普通になった』
「はあ」
『それにあれだよ。よくいう炭水化物同士の取り合わせね』
「お好み焼き定食とかな」
『あれも米はただの野菜だと認識すれば、まったく違和感がない。お好み焼きとサラダを食ってるわけだからね』
「ほう」
『あと甘いものとの食い合わせな。中に米がごっそり入った変なケーキが西洋にはあんだろ?、ああいうのもまったく違和感がなくなった。ミルクの中に米入れるのも違和感がない。だって米は一野菜だから』
「なるほどねえ」
『要は、おれはなんでもおかずにしてメシを食えるようになったってわけさ』
「ちゃんちゃん、だな」
『ちゃんちゃん、だな』
終わり。ケータイから一度に送れる文字数限界に焦った結末。編集はしない。なぜなら暇なときに書き足していく方式だから。
微笑シリーズ。なつかしのアニメ最終回
『なつかしのアニメ最終回ってのはどうだい?』
「いきなり、どうだい?、ってきかれてもな」
『なつかしのアニメといやおれたちの世代じゃ、まずあれだろ?、それにあれもいいよな。それと忘れちゃいけないのがあれね』
「あれしか言ってねえから何も伝わってこねえよ」
『え!?知らないの?』
「何をだよ」
『アニメの名作、あれシリーズを』
「は!?」
『あれシリーズを!』
「そんな強く言われたって、あれシリーズ?あれ、だけじゃわかんかねえよ、どれだよ」
『いやだから、世界名作あれシリーズだよ?』
「世界名作劇場のこと?」
『ああ、そっちもいいけど、あれだよ』
「もうわかんねえよ。お手上げだ」
『だから、あれシリーズだよ』
「わかんねえよ、めんどくせえな。あれシリーズって、“あれシリーズ”っていうアニメシリーズなのか?」
『さっきからそう言ってるだろ』
「そうだったのかよ。もう、そうですね、としかお前に返せないよ」
『やっぱりあれシリーズっていえば』
「もう思う存分あれシリーズを語ってくれ。ついかやっぱりあれシリーズってなんだよそれ!大体シリーズって言うからにはどんなあれがあんだよ」
『おっ、興味を持ちましたね?』
「持ってねえよ!強いていえば興味より若干の殺意を持ってるよ!」
『ああ、殺意寄りの興味を』
「殺意寄りの興味ってなんのことだよ!」
『警部、犯人の興味は鋭利な刃物と思われます!』
「犯人の興味はってお前、それ興味じゃなくて凶器だろ!殺意寄りの興味じゃなくて、血の付いた凶器だろ!まったく語感が違うし!ていうか殺意寄りの興味ってなんなんだよ!?」
『ま、あらゆる意味で、アイハブア殺意ってわけですか』
「意味わかんない」
『そうだな、あれシリーズには』
「あ、話を戻した」
『あれシリーズには、あれとか、あれとか』
「そんこったろうとは思ったよ!」
『他にもあれとか』
「どうせ全部あれなんだろ!?」
『……あれとかな』
「なんかひねれよ!あれだけじゃなくてよ!」
『そんなこと言われてもな』
「あれだけか!?ほんとにあれだけなのか!?」
『あれ、だけ、だな』
「三段活用みたくいってんじゃねえよ!、なんだよあれ、だけ、だなってお前」
『いっけね、噛んじった』
「どんな噛みかたすりゃあれだけだなが、あれ、だけ、だな、になるんだよ」
『わ、る、い』
「もはや噛んでるんじゃなくてロボットみたいになっちゃったよ!」
『ワレワレハロボットダ』
「宇宙人だろ喉を叩きながら発音するやつは!、噛んでねえし」
『…があ』
「なんだよ!おれに噛みついてんじゃねえよ」
『いやあ、そういや最近お前噛んでないなってさ』
「てさ、じゃねえよ!最近もなにもおれお前に噛みつかれたことないからね」
『ワレワレハ宇宙人ダ。何だと?ならばおれは地球を代表する変態になってやろう』
「意味わかんないこと勝手に始めんなよ!、地球を代表する変態になってやろうって、今現在地球を代表する変態じゃねえし、地球を代表する変態になってどうすんだよせっかく丁寧に自己紹介してくれた宇宙人相手に!」
『悪い子はいねえがって』
「なまはげだろそれ、確かに結構前に女湯に入った変態なまはげいたけど!」
『宇宙なまはげだよ。宇宙空間になまはげ。スペースなまはげだね』
「めんどくせえな」
『その正体は秋田県人である!』
「……うん、だからどうした」
『この世から悪い子がいなくなったら、なまはげは一体どこへ行ってしまうのだろうか』
「知らねえよ」
『この世がいい子だらけになった時、なまはげは一体どうするのだろう?悪い子はいねえがあ、悪い子はいねえがあ、いえいませんよと、いませんよと無碍にされたなまはげの行く末に、果たして光は差すのだろうか』
「悪い子はいなくなんねえから安心しろ」
『…それは真理だねえ』
「ほんとめんどくせえなた」
『では、ちょっとシャレにならないことで警察にパクられた不良中学生の前になまはげが現れたら、手に持ったその包丁で刺すのかね?』
「知らねえって!おれは何も知らねえんだ!」
『うん?、おれは今、なまはげの核をついたのかもしれんぞ』
「いつからなまはげ談義になったんだよ」
『その昔、村でちょっとシャレにならない悪さをした今でいう中学生がいました。彼らは殺意寄りの興味を持っていて』
「でた殺意寄りの興味」
『同年代の子供を殺してしまった。それに怒り狂った被害者の父親は、少年たちが司法の手に回る前に、悪い子だと、包丁で報復にでた。その父親があまりの怒りから、ふさふさだった頭髪が一夜にして生々しく禿げていたためにそれがなまはげの由来となった』
「民明書房か」
『なまはげって、道に迷っても誰にも道を訊けないよね』
「しつこいな。えっと、あれの話だったろ?」
『あれ?』
「ほらあれだよあれ」
『あれ?』
「あれだって」
『あれあれ言われても、わかんねえよ』
「もういいよ、どうもあり」
『よくないよ!あれな、あれシリーズのことな』
「うわ、せっかく久しぶりに体よく終われたと思ったのに、ぶり返してきやがった」
『あれシリーズの内容の話だったっけ?』
「そうだったか?」
『そうだろ』
「…そうか、じゃあ、内容は?」
『内容っつっても、何作目のよ?』
「じゃあ三作目」
『なんでいきなり三作目に飛ぶかな。普通一作目から順番通りにきかない?おれは一応の確認として何作目か訊いたってのに』
「ああもう、じゃあ一作目の」
『ほら、そうやって自分が不利だとみるやいなやすぐにこっちの意見に同調しちゃってさ』
「うるせえな。早く一作目の内容言えよ」
『ったくよ。一作目のあれの内容はあれだったな』
「えっと、それは一作目の内容がひどかったって意味と受け取っていいのかな?」
『うん』
「ああ、正解した」
『二作目のあれの内容』
「きいてないけども?」
『あっそう。ではあらためて、二作目のあれ』
「もう言えばいい」
『もあれだったな』
「だめじゃねえかあれシリーズ」
『三作目も制作にとりかかったんだけど、一作目と二作目の内容があれだったから、結局制作途中であれしちゃってな。日の目を見ることはなかった』
「だから三作目から訊いちゃいけなかったのか」
『そんなあれシリーズ。18禁』
「18禁ってつけちゃったら、あれ、の意味変わってきちゃうけど!?」
『さすがにモザイク無しに挑んじゃったら、駄目』
「駄目だよ!」
『表紙にゃ一切そう書いてないのに内容は強烈なス○トロだしな』
「駄目だあれシリーズ」
『カストロ議長もびっくりだ』
「中学生みたいなこと言ってんじゃねえ」
『ところで、世界名作劇場でさ』
「舵を急にきるよなお前は」
『やっぱりフランダースの犬の最終回は皆さんのご記憶に新しいのではないですか?』
「新しくはないけど、印象には残ってるっつうか、フランダースの犬のストーリーを知らなくてもあの、ネロとパトラッシュがノートルダム大聖堂のルーベンスの絵の前で天に召されるシーンに見覚えがある人は多いだろうな」
『うんちく野郎が』
「…ごめん」
『確かに感動の名場面だよな。なんつうか遺伝子レベルで感動させられるというかさ』
「ああ、そうだな」
『でもおれなんかあのシーンを見るたびに大爆笑だけどな』
「なんでだよ!そこは涙流しとけよ!」
『だってよ、ネロが眠るように死ぬだろ?とても疲れたよ、なんだか眠いんだとか言って』
「まさか」
『あれはさ、視聴者に、ネロは疲れたんなら早く寝ろ!って言わせたいんだろ?』
「…なんて言っていいか言葉が見つからないよ」
『…………』
「…………」
『あ、フランダースの犬が、フランダースのティラノサウルスだったら、おもしろくねえか?』
「お前はフランダースの犬をどうしたいんだよ」
『傍らにいる虫の息のティラノサウルスに向かってネロが、なんだか眠くなっちゃったよ、レックス』
「それネロやなくて安達祐実やないかい!」
『…………』
「…………」
終わり。
ほんとは、フランダースのティラノサウルスを全面に押し出したものになる予定だった。
えっ?、なんで安達祐実がでてきたんだって?
それは自身でお調べになりなさい。ヒントは「家なき子」です。嘘
それにしてもひどいな。これじゃなくて、あれのことな。
「いきなり、どうだい?、ってきかれてもな」
『なつかしのアニメといやおれたちの世代じゃ、まずあれだろ?、それにあれもいいよな。それと忘れちゃいけないのがあれね』
「あれしか言ってねえから何も伝わってこねえよ」
『え!?知らないの?』
「何をだよ」
『アニメの名作、あれシリーズを』
「は!?」
『あれシリーズを!』
「そんな強く言われたって、あれシリーズ?あれ、だけじゃわかんかねえよ、どれだよ」
『いやだから、世界名作あれシリーズだよ?』
「世界名作劇場のこと?」
『ああ、そっちもいいけど、あれだよ』
「もうわかんねえよ。お手上げだ」
『だから、あれシリーズだよ』
「わかんねえよ、めんどくせえな。あれシリーズって、“あれシリーズ”っていうアニメシリーズなのか?」
『さっきからそう言ってるだろ』
「そうだったのかよ。もう、そうですね、としかお前に返せないよ」
『やっぱりあれシリーズっていえば』
「もう思う存分あれシリーズを語ってくれ。ついかやっぱりあれシリーズってなんだよそれ!大体シリーズって言うからにはどんなあれがあんだよ」
『おっ、興味を持ちましたね?』
「持ってねえよ!強いていえば興味より若干の殺意を持ってるよ!」
『ああ、殺意寄りの興味を』
「殺意寄りの興味ってなんのことだよ!」
『警部、犯人の興味は鋭利な刃物と思われます!』
「犯人の興味はってお前、それ興味じゃなくて凶器だろ!殺意寄りの興味じゃなくて、血の付いた凶器だろ!まったく語感が違うし!ていうか殺意寄りの興味ってなんなんだよ!?」
『ま、あらゆる意味で、アイハブア殺意ってわけですか』
「意味わかんない」
『そうだな、あれシリーズには』
「あ、話を戻した」
『あれシリーズには、あれとか、あれとか』
「そんこったろうとは思ったよ!」
『他にもあれとか』
「どうせ全部あれなんだろ!?」
『……あれとかな』
「なんかひねれよ!あれだけじゃなくてよ!」
『そんなこと言われてもな』
「あれだけか!?ほんとにあれだけなのか!?」
『あれ、だけ、だな』
「三段活用みたくいってんじゃねえよ!、なんだよあれ、だけ、だなってお前」
『いっけね、噛んじった』
「どんな噛みかたすりゃあれだけだなが、あれ、だけ、だな、になるんだよ」
『わ、る、い』
「もはや噛んでるんじゃなくてロボットみたいになっちゃったよ!」
『ワレワレハロボットダ』
「宇宙人だろ喉を叩きながら発音するやつは!、噛んでねえし」
『…があ』
「なんだよ!おれに噛みついてんじゃねえよ」
『いやあ、そういや最近お前噛んでないなってさ』
「てさ、じゃねえよ!最近もなにもおれお前に噛みつかれたことないからね」
『ワレワレハ宇宙人ダ。何だと?ならばおれは地球を代表する変態になってやろう』
「意味わかんないこと勝手に始めんなよ!、地球を代表する変態になってやろうって、今現在地球を代表する変態じゃねえし、地球を代表する変態になってどうすんだよせっかく丁寧に自己紹介してくれた宇宙人相手に!」
『悪い子はいねえがって』
「なまはげだろそれ、確かに結構前に女湯に入った変態なまはげいたけど!」
『宇宙なまはげだよ。宇宙空間になまはげ。スペースなまはげだね』
「めんどくせえな」
『その正体は秋田県人である!』
「……うん、だからどうした」
『この世から悪い子がいなくなったら、なまはげは一体どこへ行ってしまうのだろうか』
「知らねえよ」
『この世がいい子だらけになった時、なまはげは一体どうするのだろう?悪い子はいねえがあ、悪い子はいねえがあ、いえいませんよと、いませんよと無碍にされたなまはげの行く末に、果たして光は差すのだろうか』
「悪い子はいなくなんねえから安心しろ」
『…それは真理だねえ』
「ほんとめんどくせえなた」
『では、ちょっとシャレにならないことで警察にパクられた不良中学生の前になまはげが現れたら、手に持ったその包丁で刺すのかね?』
「知らねえって!おれは何も知らねえんだ!」
『うん?、おれは今、なまはげの核をついたのかもしれんぞ』
「いつからなまはげ談義になったんだよ」
『その昔、村でちょっとシャレにならない悪さをした今でいう中学生がいました。彼らは殺意寄りの興味を持っていて』
「でた殺意寄りの興味」
『同年代の子供を殺してしまった。それに怒り狂った被害者の父親は、少年たちが司法の手に回る前に、悪い子だと、包丁で報復にでた。その父親があまりの怒りから、ふさふさだった頭髪が一夜にして生々しく禿げていたためにそれがなまはげの由来となった』
「民明書房か」
『なまはげって、道に迷っても誰にも道を訊けないよね』
「しつこいな。えっと、あれの話だったろ?」
『あれ?』
「ほらあれだよあれ」
『あれ?』
「あれだって」
『あれあれ言われても、わかんねえよ』
「もういいよ、どうもあり」
『よくないよ!あれな、あれシリーズのことな』
「うわ、せっかく久しぶりに体よく終われたと思ったのに、ぶり返してきやがった」
『あれシリーズの内容の話だったっけ?』
「そうだったか?」
『そうだろ』
「…そうか、じゃあ、内容は?」
『内容っつっても、何作目のよ?』
「じゃあ三作目」
『なんでいきなり三作目に飛ぶかな。普通一作目から順番通りにきかない?おれは一応の確認として何作目か訊いたってのに』
「ああもう、じゃあ一作目の」
『ほら、そうやって自分が不利だとみるやいなやすぐにこっちの意見に同調しちゃってさ』
「うるせえな。早く一作目の内容言えよ」
『ったくよ。一作目のあれの内容はあれだったな』
「えっと、それは一作目の内容がひどかったって意味と受け取っていいのかな?」
『うん』
「ああ、正解した」
『二作目のあれの内容』
「きいてないけども?」
『あっそう。ではあらためて、二作目のあれ』
「もう言えばいい」
『もあれだったな』
「だめじゃねえかあれシリーズ」
『三作目も制作にとりかかったんだけど、一作目と二作目の内容があれだったから、結局制作途中であれしちゃってな。日の目を見ることはなかった』
「だから三作目から訊いちゃいけなかったのか」
『そんなあれシリーズ。18禁』
「18禁ってつけちゃったら、あれ、の意味変わってきちゃうけど!?」
『さすがにモザイク無しに挑んじゃったら、駄目』
「駄目だよ!」
『表紙にゃ一切そう書いてないのに内容は強烈なス○トロだしな』
「駄目だあれシリーズ」
『カストロ議長もびっくりだ』
「中学生みたいなこと言ってんじゃねえ」
『ところで、世界名作劇場でさ』
「舵を急にきるよなお前は」
『やっぱりフランダースの犬の最終回は皆さんのご記憶に新しいのではないですか?』
「新しくはないけど、印象には残ってるっつうか、フランダースの犬のストーリーを知らなくてもあの、ネロとパトラッシュがノートルダム大聖堂のルーベンスの絵の前で天に召されるシーンに見覚えがある人は多いだろうな」
『うんちく野郎が』
「…ごめん」
『確かに感動の名場面だよな。なんつうか遺伝子レベルで感動させられるというかさ』
「ああ、そうだな」
『でもおれなんかあのシーンを見るたびに大爆笑だけどな』
「なんでだよ!そこは涙流しとけよ!」
『だってよ、ネロが眠るように死ぬだろ?とても疲れたよ、なんだか眠いんだとか言って』
「まさか」
『あれはさ、視聴者に、ネロは疲れたんなら早く寝ろ!って言わせたいんだろ?』
「…なんて言っていいか言葉が見つからないよ」
『…………』
「…………」
『あ、フランダースの犬が、フランダースのティラノサウルスだったら、おもしろくねえか?』
「お前はフランダースの犬をどうしたいんだよ」
『傍らにいる虫の息のティラノサウルスに向かってネロが、なんだか眠くなっちゃったよ、レックス』
「それネロやなくて安達祐実やないかい!」
『…………』
「…………」
終わり。
ほんとは、フランダースのティラノサウルスを全面に押し出したものになる予定だった。
えっ?、なんで安達祐実がでてきたんだって?
それは自身でお調べになりなさい。ヒントは「家なき子」です。嘘
それにしてもひどいな。これじゃなくて、あれのことな。
宅配屋と喫茶店(21、最終回)
「へえ、あいつらが結婚か」
「なんですかそのさっぱりした言い方は、土居さん、まさか、知ってたんですか?」
早朝、もとの担当地区に戻った祐平と克明は、しみったれたロッカールームで顔を合わせた。
「いや、知らねえ。知らねえが、年末に沖田からかなり年上の、40代の彼女ができたと相談されたことはあった」
「…にぶ過ぎだろあんた」
「そう言うなよ。40代の彼女があのジュディにつながるわけないだろ」
「つながりますよ普通。まず真っ先につながりますよ普通」
「まあおれも色々準備で忙しかったからなあ」
「はあ。しかしそのことを僕にも言ってくれりゃ、あんなに驚きの対面になることはなかったのに」
「受けた相談をおれがお前に?」
「そうですよ」
「はっはっはっ、おれはこう見えて、口は堅いんだ。秘密は墓場まで持ってくタイプなんだよ」
「言う割に今あっさりゲロしましたよね」
「いや、これはもう済んだ話だろ」
「土居さんに秘密を秘密のまま処理する能力があるとは思えないですけどね」
「ははは、まあ、そうかもな」
そう言った克明だが、土居克明は終生、祐平とジュディのキスの件を秘した。なかなかどうして、この土居克明、男だ。
「ところで、準備ってなんの準備ですか?」
「ああ、引っ越しとかのな。おれ今月でこの仕事辞めるんだよ」
「あははウケる。じゃあおれそろそろ行きます」
「おい、そのリアクションおかしいだろ!。随分と、おれ随分と重大なこと言わなかった!?」
克明は本当にロッカールームから出て行こうとした祐平の肩をつかみ、引き留めた。
「痛いなあ。どうせあれでしょ?。プロレスラーになるメドがついたからって話でしょ?」
祐平は克明がこの仕事を辞めると言った刹那、ほんの少し、自身の瞼にたまる液体を感じ、こっぱずかしくなり、それを克明に察せられないようああいう行動をとっていた。
「どうせってお前なあ。まあ、その通りだけど」
「誰か辞めるとは薄々感じてはいましたが、まさか克明さんだとは」
「おいおい、まずおれが辞めると感づけよ。おれはプロレスラーになるって言ってたろ」
「口だけ番長かと思ってましたよ」
「ひでえなおい」
ロッカールームの空気が冬なのにしんみりと湿度を帯びたなら、何か良いことを言わなければならないと、克明は、
「お前はどうするんだ?」
と、言った。
「僕ですか?」
「お前さ、若いじゃん。おれより若いしさ。まだまだこんなとこで落ち着く歳じゃないだろ。やりたいこととかよ、夢のひとつもあるだろ」
克明の生ぬるい問いかけに、祐平は、
「はあ、それがまた、特にないんですよ」
と、答えた。
「そうか。お前はあれだもんな。なんだかんだ、受け身だもんな。人生に対してさ」
克明の言葉に、祐平は子供みたくムッとなった。
「なんですかそれは。僕にだって夢のひとつやふたつありますよ。土居さんみたく言い触らさなだけでね」
「それが受け身だって言うんだよ」
克明は諭すように言った。
「おれのことを口だけ番長ってお前は言ったけどよ、気持ちの上だけ番長ってのはもっと、なんつうかな、人生というたった一度しかないものの進展性がないぜ」
「………」
祐平は黙った。そんなことは言われなくてもわかっているが、わかりたくないことでもあった。
「人の人生なんてよ。神様がくれたおまけみたいなもんじゃねえか。たった一度のさ。こりゃおふざけだぜ。おふざけが許されてんだよ。そんなら楽しくやればいいんだ。おれはいざ死ぬってときに、後悔したくないんだよ。おれの人生つまんなかったなってなりたくないんだ。真にやりたいようにやって生きたいように生きれば、あんときああしてりゃ良かったこんときこうしてりゃ良かっただの、きっと後悔はしないんだ。たとえそれが世間一般でいわれる負け組のような人生だったとしてもだ。おれにとって後悔の種をおれの人生に蒔くかどうかは今なんだ。お前の後悔を生む種がいつ蒔かれるか、もう蒔かれたか知らねえが、少なくともお前はこの仕事を好きでやってるわけじゃないだろ。なあ、お前はどうすんだ?」
「そんなこと急に言われても」
祐平はぐぐもりながらもやっとの思いでそう言った。
「お前さ、やることがねえんなら家に帰れよ。別にお前のことバカにして言ってんじゃねえぜ。意地はってるかなんだか知らねえけど、お前見てるとさ、家から逃げてるとしか思えないんだ。そんなものは自立でもなんでもないよ。結局のところ家に依存してるんだ。まあ、それは言い過ぎかもしらんけど、お前みたいにやることもねえ夢もねえ、でも家業はあるってんならさ。家に帰れよ。のらりくらりてきとーに生きたいってんなら、それが一番楽だろ。別にお前をバカにして言ってるわけじゃないんだ。おれだってプロレスラーになってマットの上に花を咲かせたいなんて思っていなければ、こうして日銭を稼ぐしかないただのダメ人間だよ。今だってただのバカだ。たまたま強烈にやりたいことがあって、それに行動のベクトルが向いてるだけなんだよ。ましてやおれの親は健在だけど」
「土居さん、もう時間ですよ」
祐平はそう言って克明の話を止めた。
「そうか、ま、今の話は新しい生活を目の前にした男の、不安と興奮のはけ口だと思って忘れてくれ。ただ、なんか最近、おれのことも含めて身の回りが賑やかだからな。お前もこの波に乗るのも悪くないぜ」
それから、特に克明とは不仲になるわけでもなくこういった話をするわけでもなく、仲の良いまま、ひと月が過ぎ、克明は世話になった人々に囲まれて宅配屋を辞めていった。
数ヶ月後、祐平は未だ宅配屋をしていた。
指名手配犯と思しき男はやはり指名手配されたその人で、1月初旬に本来のエリア担当者の通報により逮捕された。しばらく動乱が祐平の身の回りにも及んだが、祐平の部屋の冷蔵庫には、彼からもらった缶ビールがまだ入っている。
ジュディと沖田はめでたく結婚式を挙げた。その式に、マスター夫婦は列席した。メディアには、「年の差ビビっと婚」と賑やかに踊ったが、その際、大手新聞社に実年齢をバラされたジュディの怒りによってあっという間に沈静化した。ジュディの怒りは凄まじく、ジュディは段筆を宣言し、その新聞社に連載していたジュディの小説は唐突に最終回をむかえた。その小説はほのぼのとした家族物の作品だったが、最終回にして主人公の若奥さんが突然発狂し、家族を皆殺しにするというなんともはやな終わり方だった。その最後の一文にはこうある。
「空を見ろ、この重く青く透き通りある蒼空を見ろ、不気味に存在するこの蒼空を、君は不安にならないか、この空の青さを、この青さの彼方に、薄皮一枚超えればそこには未だ謎に包まれた宇宙がある、繋がっているのだ謎に満ちた空間とこの場所は、君よ、死を待つ仮装行列に列んでいるだけの君よ、死ね、今死ね、魂が空に還るというのなら今すぐに死ね、人生はマスカラ・コントラ・マスカラ(敗者マスク剥ぎマッチ)だ。他人に化けの皮を剥がされまいとビクビク生きていたってなんだというのだ、己のマスクを死人の血で汚してなにになるというのか、おまえの生命は生きながらにして死んでいる、だから死を携えればこそ、この空を越え青を越え、宇宙へ導かれるのだ、確かにそこに自在に包まれた生命がある、生きるというならさあ死ね今死ね、君の死はやがていたいけな異国の少女の耳に入り、少女に一筋の涙を与えるだろう、その一筋の涙はこれから生きる君の生涯を以て代え難い代償だ、だから死ねさあ今死ぬのだ、死ぬことも満足にできぬやつに生きてる価値などないのだ、死んだことの無い奴に、死後の世界などわかりやしない!。さあ!さあ!死して初めて解き
放たれろ!未知の水泡を越え、謎を謎としない存在となり、自在に描かれた生命の日々を!新しい日々を!想え!さあ!想え!(了)」
それを読んだ祐平は、やはりこいつは好きになれない、と思った。
ジュディの担当編集だった梨田は、都会の空気があわないと、田舎に引っ込んだ。
数年後、土居克明はプロレスラーとしてデビューしたものの、相次ぐ怪我に泣かされ、静かに引退して、今ではデビューした団体の裏方になっている。
祐平は、宅配屋を辞めて、喫茶店での再開以来和解の進んだ実家に戻った。父親は、兄に子供が出来てからというものすっかり、祐平の記憶にある父の顔ではなくなった。
あの喫茶店には、毎年、正月に赴いては、マスター夫婦と父親とともに毎年変わらぬ思い出話に花を咲かす。正月の喫茶店には祐平たちだけではなく、あんな人も、こんな人も。
父が孫と遊ぶ姿を眺めつつ、家業を継ぐことが一番楽だ、と、祐平は思った。
終わり。にゃは
「なんですかそのさっぱりした言い方は、土居さん、まさか、知ってたんですか?」
早朝、もとの担当地区に戻った祐平と克明は、しみったれたロッカールームで顔を合わせた。
「いや、知らねえ。知らねえが、年末に沖田からかなり年上の、40代の彼女ができたと相談されたことはあった」
「…にぶ過ぎだろあんた」
「そう言うなよ。40代の彼女があのジュディにつながるわけないだろ」
「つながりますよ普通。まず真っ先につながりますよ普通」
「まあおれも色々準備で忙しかったからなあ」
「はあ。しかしそのことを僕にも言ってくれりゃ、あんなに驚きの対面になることはなかったのに」
「受けた相談をおれがお前に?」
「そうですよ」
「はっはっはっ、おれはこう見えて、口は堅いんだ。秘密は墓場まで持ってくタイプなんだよ」
「言う割に今あっさりゲロしましたよね」
「いや、これはもう済んだ話だろ」
「土居さんに秘密を秘密のまま処理する能力があるとは思えないですけどね」
「ははは、まあ、そうかもな」
そう言った克明だが、土居克明は終生、祐平とジュディのキスの件を秘した。なかなかどうして、この土居克明、男だ。
「ところで、準備ってなんの準備ですか?」
「ああ、引っ越しとかのな。おれ今月でこの仕事辞めるんだよ」
「あははウケる。じゃあおれそろそろ行きます」
「おい、そのリアクションおかしいだろ!。随分と、おれ随分と重大なこと言わなかった!?」
克明は本当にロッカールームから出て行こうとした祐平の肩をつかみ、引き留めた。
「痛いなあ。どうせあれでしょ?。プロレスラーになるメドがついたからって話でしょ?」
祐平は克明がこの仕事を辞めると言った刹那、ほんの少し、自身の瞼にたまる液体を感じ、こっぱずかしくなり、それを克明に察せられないようああいう行動をとっていた。
「どうせってお前なあ。まあ、その通りだけど」
「誰か辞めるとは薄々感じてはいましたが、まさか克明さんだとは」
「おいおい、まずおれが辞めると感づけよ。おれはプロレスラーになるって言ってたろ」
「口だけ番長かと思ってましたよ」
「ひでえなおい」
ロッカールームの空気が冬なのにしんみりと湿度を帯びたなら、何か良いことを言わなければならないと、克明は、
「お前はどうするんだ?」
と、言った。
「僕ですか?」
「お前さ、若いじゃん。おれより若いしさ。まだまだこんなとこで落ち着く歳じゃないだろ。やりたいこととかよ、夢のひとつもあるだろ」
克明の生ぬるい問いかけに、祐平は、
「はあ、それがまた、特にないんですよ」
と、答えた。
「そうか。お前はあれだもんな。なんだかんだ、受け身だもんな。人生に対してさ」
克明の言葉に、祐平は子供みたくムッとなった。
「なんですかそれは。僕にだって夢のひとつやふたつありますよ。土居さんみたく言い触らさなだけでね」
「それが受け身だって言うんだよ」
克明は諭すように言った。
「おれのことを口だけ番長ってお前は言ったけどよ、気持ちの上だけ番長ってのはもっと、なんつうかな、人生というたった一度しかないものの進展性がないぜ」
「………」
祐平は黙った。そんなことは言われなくてもわかっているが、わかりたくないことでもあった。
「人の人生なんてよ。神様がくれたおまけみたいなもんじゃねえか。たった一度のさ。こりゃおふざけだぜ。おふざけが許されてんだよ。そんなら楽しくやればいいんだ。おれはいざ死ぬってときに、後悔したくないんだよ。おれの人生つまんなかったなってなりたくないんだ。真にやりたいようにやって生きたいように生きれば、あんときああしてりゃ良かったこんときこうしてりゃ良かっただの、きっと後悔はしないんだ。たとえそれが世間一般でいわれる負け組のような人生だったとしてもだ。おれにとって後悔の種をおれの人生に蒔くかどうかは今なんだ。お前の後悔を生む種がいつ蒔かれるか、もう蒔かれたか知らねえが、少なくともお前はこの仕事を好きでやってるわけじゃないだろ。なあ、お前はどうすんだ?」
「そんなこと急に言われても」
祐平はぐぐもりながらもやっとの思いでそう言った。
「お前さ、やることがねえんなら家に帰れよ。別にお前のことバカにして言ってんじゃねえぜ。意地はってるかなんだか知らねえけど、お前見てるとさ、家から逃げてるとしか思えないんだ。そんなものは自立でもなんでもないよ。結局のところ家に依存してるんだ。まあ、それは言い過ぎかもしらんけど、お前みたいにやることもねえ夢もねえ、でも家業はあるってんならさ。家に帰れよ。のらりくらりてきとーに生きたいってんなら、それが一番楽だろ。別にお前をバカにして言ってるわけじゃないんだ。おれだってプロレスラーになってマットの上に花を咲かせたいなんて思っていなければ、こうして日銭を稼ぐしかないただのダメ人間だよ。今だってただのバカだ。たまたま強烈にやりたいことがあって、それに行動のベクトルが向いてるだけなんだよ。ましてやおれの親は健在だけど」
「土居さん、もう時間ですよ」
祐平はそう言って克明の話を止めた。
「そうか、ま、今の話は新しい生活を目の前にした男の、不安と興奮のはけ口だと思って忘れてくれ。ただ、なんか最近、おれのことも含めて身の回りが賑やかだからな。お前もこの波に乗るのも悪くないぜ」
それから、特に克明とは不仲になるわけでもなくこういった話をするわけでもなく、仲の良いまま、ひと月が過ぎ、克明は世話になった人々に囲まれて宅配屋を辞めていった。
数ヶ月後、祐平は未だ宅配屋をしていた。
指名手配犯と思しき男はやはり指名手配されたその人で、1月初旬に本来のエリア担当者の通報により逮捕された。しばらく動乱が祐平の身の回りにも及んだが、祐平の部屋の冷蔵庫には、彼からもらった缶ビールがまだ入っている。
ジュディと沖田はめでたく結婚式を挙げた。その式に、マスター夫婦は列席した。メディアには、「年の差ビビっと婚」と賑やかに踊ったが、その際、大手新聞社に実年齢をバラされたジュディの怒りによってあっという間に沈静化した。ジュディの怒りは凄まじく、ジュディは段筆を宣言し、その新聞社に連載していたジュディの小説は唐突に最終回をむかえた。その小説はほのぼのとした家族物の作品だったが、最終回にして主人公の若奥さんが突然発狂し、家族を皆殺しにするというなんともはやな終わり方だった。その最後の一文にはこうある。
「空を見ろ、この重く青く透き通りある蒼空を見ろ、不気味に存在するこの蒼空を、君は不安にならないか、この空の青さを、この青さの彼方に、薄皮一枚超えればそこには未だ謎に包まれた宇宙がある、繋がっているのだ謎に満ちた空間とこの場所は、君よ、死を待つ仮装行列に列んでいるだけの君よ、死ね、今死ね、魂が空に還るというのなら今すぐに死ね、人生はマスカラ・コントラ・マスカラ(敗者マスク剥ぎマッチ)だ。他人に化けの皮を剥がされまいとビクビク生きていたってなんだというのだ、己のマスクを死人の血で汚してなにになるというのか、おまえの生命は生きながらにして死んでいる、だから死を携えればこそ、この空を越え青を越え、宇宙へ導かれるのだ、確かにそこに自在に包まれた生命がある、生きるというならさあ死ね今死ね、君の死はやがていたいけな異国の少女の耳に入り、少女に一筋の涙を与えるだろう、その一筋の涙はこれから生きる君の生涯を以て代え難い代償だ、だから死ねさあ今死ぬのだ、死ぬことも満足にできぬやつに生きてる価値などないのだ、死んだことの無い奴に、死後の世界などわかりやしない!。さあ!さあ!死して初めて解き
放たれろ!未知の水泡を越え、謎を謎としない存在となり、自在に描かれた生命の日々を!新しい日々を!想え!さあ!想え!(了)」
それを読んだ祐平は、やはりこいつは好きになれない、と思った。
ジュディの担当編集だった梨田は、都会の空気があわないと、田舎に引っ込んだ。
数年後、土居克明はプロレスラーとしてデビューしたものの、相次ぐ怪我に泣かされ、静かに引退して、今ではデビューした団体の裏方になっている。
祐平は、宅配屋を辞めて、喫茶店での再開以来和解の進んだ実家に戻った。父親は、兄に子供が出来てからというものすっかり、祐平の記憶にある父の顔ではなくなった。
あの喫茶店には、毎年、正月に赴いては、マスター夫婦と父親とともに毎年変わらぬ思い出話に花を咲かす。正月の喫茶店には祐平たちだけではなく、あんな人も、こんな人も。
父が孫と遊ぶ姿を眺めつつ、家業を継ぐことが一番楽だ、と、祐平は思った。
終わり。にゃは
宅配屋と喫茶店(20)
……………。
長い昔話ながらもひとり語りで語りきり、マスターは満足げに腕を組んで、なにやら、うんうん、と頷いた。
「…そんで、話ってのはなんだったかな?」
沈黙を破ったマスターのつぶやきに、祐平はずっこけそうになったが、はて何を話していただろうか、祐平にもわからなくなっていた。
「ああ、そうだ。祐平君とあいつが似てるって話だったっけかな」
いつの間にか脱線していた話の筋を思い出したマスターは、同時に、似てる、と言われた祐平が頭に血がのぼったことを思い出して気まずく咳払いをひとつ。
狂ってしまうだなんだとガタガタ体を震わせまでした祐平は、さっきまでの感情が嘘のように冷めきり、しかし、ああまでした手前、なんちゃって、とはいかず、歯がゆく身悶えるのみだ。
「…………僕、そんな乱暴な性格してませんよ」
祐平がようやく吐いた言葉だった。
「そりゃそうだ。ははは」
なぜか照れ笑いをしながらあっさり自説を撤回した発言をしたマスターに、祐平はもうどうしていいかわからなくなった。先程の取り乱した思考とは違い、理性ありきの混乱だ。
「だけどよ、あれだよ。動と静っつうかよ。根っこの部分っつうか背中合わせっつうかよ。これが似てんだ」
ますます祐平はわけがわからなくなり、まるで初めてのデートのときのように混乱をきたし、
「どこが、ですか?」
などと、掘り下げたくないのにしょうがなく口走った。
「そらよ、タバコの呑み方だって」
祐平はギクリとした。
「違うし」
(違うのかよ!。)
「コーヒーの飲み方も」
祐平はギクリとした。
「違うし」
(違うのかよ!。)
「だけどよ。姿形や生き方」
祐平はギクリとした。
「も、まったく違えしなあ」
(違うのかよ!。)
「やっぱり似てねえっちゃ似てねえんだけども」
(結局似てねえんじゃねえかよ!。)
「なんつうかなあ、話のリズムとか、目上の人との、まああいつがおれんとこの親父と話してた姿と今の祐平君とがダブるんだよな。嬉しがり方とか、お世辞のいいようとかよ。それで、あっ、と気がついたんだ」
(あるんじゃねえか。ってあっちゃ駄目なんだよちくしょう。)
「…そうですか。親父と僕が、に、似てますか」
実際そう口に出すと、祐平は自分で自分を全否定している気になり、自己嫌悪の極致に陥りそうになった。やはりまだまだ精神の振り子は、ささいなことで左右の極に振れ動く、不安定な状態であるらしかった。
また、喫茶店の雰囲気が、正月のめでたさを意に介さず、暗くなった。
バツの悪そうなマスターは、なにか思いついたように、
「おっ」
と、言うと、
「似てるといやおめえ、祐平君。君は君の姉ちゃんに」
と、話し出したが、その半ば、
「ちょっとあんた」
と、奥さんが止めた。
止めたはいいが、祐平の耳にはすでに、自分にはいないはずの姉の存在を示唆した言葉が届いていたものだから、
「姉ちゃん?、なんの話ですかそれは」
食いつかずにはいられない。
「ほら」
と、奥さんがため息をついた。
「この際だ」
と、マスターがつぶやいた。
「祐平君はあいつのことを嫌ってるようだが、あいつは、まああれでもお前をかわいがってなあ。あいつはほれ、自分の楽しいこと押し付けることでしかコミュニケーションってやつをやれねえとこあんだろ?」
「はあ、そうですね」
「そんで、ちょっと気に食わねえことあると怒って怒鳴ってよ。まあ、気のいいときはかわいがって、ちょっと気に食わねえことあると怒鳴って、不器用な奴だが、確かにあいつは祐平君を、いや、あいつだけじゃねえ。祐平君とこの両親は、あまり表には出してねえんだろうが、確かに君を人一倍かわいがったんだ。ふたり兄弟とはいえ末っ子ってこともあったんだろうけど」
再び話が長くなりそうなので、祐平は思い切って、
「僕に姉がいたんですか?」
と、マスターの話を遮り、核心を問うた。
「うむ、いた」
と、マスターは短く答えた。やればできるじゃねえか。
「いた、ということは」
「ああ、ピョコピョコ歩き回り始めたと思ったら、あっちの世界に呼ばれちまった」
祐平はそんなことなどまったく知らなかった。祐平の受けた衝撃は如何ばかりか。
「へえ、はじめて知りましたよそんなこと」
呑気な調子で応えた祐平。
祐平は結構平気だった。そんな昔の話をされても、祐平は実感のひとつもわかない。まして、知らなかったのだ。両親や兄、親戚からそのことを聞かされたこともなければ、先祖の墓参りの折、両親から特別な表情、感情を垣間見たこともない。赤の他人の死を聞いた、それが祐平の本音だった。
「あいつはほれ、無神論者だからな。神輿を私闘のダシに使うような奴だからよ。そんでもだいぶまいっちまってたんだが、気丈によ、なくしちまったもんはしょうがねえ、そっちに手を回すより、腹んなかの子にってな」
「腹のなかの子…」
「そう、それが祐平君だよ」
「へえ」
祐平はやはり、我が身のことながら他人の話を聞いているようだった。現実味というものがまるでない。どうしてこうも重い話をしているのにマスターから現実味が微塵も感じられないのか、祐平は少し考え、「ああ、こいつがちょっと酒臭いからだな」と納得することにした。
「あの子は、ユウコちゃんっつったかな」
「なるほど、だから僕の名前が」
「そうなんだよ。あんなことがあってなあ。さすがのあいつもあの子を忘れるなんてできなかったんだろうなあ。おれの前じゃ女房が決めやがったっつってたけど、やっぱり、忘れられねえよなあ」
「だから僕は、その姉の分までかわいがられた、と」
「そういうことになるな」
祐平はマスターの話を整理する係りになってしまった。
「では、その姉と僕が似ているっていうのは?」
司会まで始めた。
「あれはよ。祐平君ちょっと前になんだ、あれはなんだ、山下シャディっつったか」
「山下ジュディのことですか?」
「おう、それよ」
祐平は、マスターが実家の隣に店を持っていた時期とジュディの少女時代が被っているはずだと思い至った。
「ちょっと待ってください、マスターは山下さんちのジュディさんを知っているんですか?」
この質問にはマスターではなく奥さんが、
「あの山下さんちの彼女が山下ジュディだとは知らなかったわ。あなたからあの話を聞くまでは」と、答えた。ついでに、
「あの子昔は学校抜け出してちょくちょくうちに来てたわ」
と、足した。
ミーハー気分全開で、祐平は「そりゃすごいですね」と言ったら、
「今もたまにふらっと来るわよ」
と奥さんが言ったものだから、祐平は、姉がいた、と聞かされたときより衝撃を受けた。
「ほんとですか!?」
「ねえ、世界って思ったより狭いわ。あの子どっかで事務員やってるとか言ってたんだけどねえ。世界が狭いと言えば、あたし達が向こうで店をやるって時も、まさかお隣が高窪さんだなんて思いもしてなかったわ。祐平君と同じ。偶然」
「へえ、そりゃなんというか、で、マスター」
下手くそながら真面目に司会業をこなす祐平。カオスに支配された喫茶店。
「そのジュディがよ」
何事もなかったように平然と語り出すマスター。
「あれだよ、祐平君がさ、彼女におでんぶっかけられたって話したろ」
「ああ、今もやけど痕が残ってるって話ですね」
余計な使命感に燃えてきた祐平だ。
「彼女におでんぶっかけられたの、祐平君じゃなくて、ユウコちゃんなんだよ」
「えっ!?、それは、どういうことですか?。でも僕の右膝には…ていうか、まさか、姉はそのおでんのせいで」
「そんなことはないよ」
「そりゃそうですね。でも、確かに僕の右膝には」
「それはお前さんがな、ある日、同じ位置に、自分でおでんぶっかけたんだよ」
「…偶然、ですか」
さすがにこれには少しくるものがあった。だが、
「偶然、だな。生まれ変わりっつうのも気味がわりいってなもんだ」
「ちょっと、気味がわりいってマスター。不謹慎でしょ」
「いやごめんごめん、なはは」
「ははは」
「ほほほ」
カオスの嵐はそんなことなどお構いなしに吹き荒れた。
どうしようもない不思議な空気が店内を包んだその時、営業中ではないのに、カラランと来客を告げる店の扉の鈴がなった。
「あけましておめでとうございます」
客は明るい声でそう言うと、扉を閉めずにずかずか店内に入ってきた。祐平は、聞き覚えのあるその女性の声に、振り向いて客の顔を確認するのをためらった。
「おう、おめでとう。久しぶりだな。今ちょうどおめえの話してたんだ」
「あたしの話を?。ふうん。そちらは?」
祐平はギクリとした。
「ああ、この人はお前が昔、神社の祭りのおでんぶっかけてやけどさせた子の弟だよ」
「えっ!?、なぜそのことを、ていうかなんですって!?」
ジュディは驚きの声をあげた。ジュディの登場に、祐平はもっと驚いているが。
「ちょっとあんた」
「なはは、いいってことよ」
「いいってこともないでしょうに」
「なはははは」
「ははは、どうも山下さん。その節は」
バカ笑いするマスターに頼りがいはなく、ええいままよ、と、祐平は振り向き、ジュディに向かって会釈をした。
「えっ!?。あ、あんたは」
さすがにこの時のジュディの驚きは祐平のそれを超えた。
「いやどうもすみません。あっ、おでんかけられた姉は、そのあと死んでしまったそうですよ」
「なっ」
祐平は司会として情報を共通させようとしただけだったのだが、如何せん話方が下手くそだった。これではまるでジュディが殺したようだ。それに気づいた祐平は慌てて誤解をといた。
しかししかし、その祐平の慌てっぷりがジュディにうつり、ジュディが慌てふためくなか、喫茶店の開かれっぱなしの扉の外から中の様子を覗き込む人影を、祐平は見た。そいつと目があった。
「あ!」
「は!?」
祐平の目にうつったそいつは、祐平の採用アプローチを華麗に断り、さらなるアプローチをかけようとそいつのプライベートの携帯電話に電話したセンター長が、電話にでんわ、と嘆き、道端で偶然会ったりしたら気まずいことうけあいの沖田その人だった。
「なんだよ、そちらはどちらさん?。みんな顔見知りみたいだなあ」
マスターは呑気に赤提灯をぶら下げている。
「なんでもいいやな。正月だ、めでてえもんよ。すべてひとくくりでよ。めでてえもんだぜ」
そんなマスターの戯言に耳を貸す人間がひとりいた。ジュディだ。
「めでたいことのついでなんですけど」
なすべきことを思い出し、肝の玉が落ち着いたジュディはそう言いながら、一旦外に引っ込んだ沖田を手招きして呼び寄せた。沖田は特に祐平に向けてぺこりと頭を下げ、店に入ってきた。
「マスター、奥さん、あたしさ、この人と結婚することになった」
「はあ!?」
「え!?」
「すみませんどうも」
「なはははは。めでてえもんよ。全部ひっくるめてな」
さらにさらに、このとき、さらなる来訪者が開きっぱなしの喫茶店に我が物顔で入ってきた。
「どうも。よう、チン太、おめでとう」
その男を見た祐平は、…………。
男はしんと静まり返った店内を見回すと、
「なんだよ、たまに寄ってみれば、雁首そろえてまあ、妙な顔ばかりだな」
と、言った。
終わ
…らない。続
長い昔話ながらもひとり語りで語りきり、マスターは満足げに腕を組んで、なにやら、うんうん、と頷いた。
「…そんで、話ってのはなんだったかな?」
沈黙を破ったマスターのつぶやきに、祐平はずっこけそうになったが、はて何を話していただろうか、祐平にもわからなくなっていた。
「ああ、そうだ。祐平君とあいつが似てるって話だったっけかな」
いつの間にか脱線していた話の筋を思い出したマスターは、同時に、似てる、と言われた祐平が頭に血がのぼったことを思い出して気まずく咳払いをひとつ。
狂ってしまうだなんだとガタガタ体を震わせまでした祐平は、さっきまでの感情が嘘のように冷めきり、しかし、ああまでした手前、なんちゃって、とはいかず、歯がゆく身悶えるのみだ。
「…………僕、そんな乱暴な性格してませんよ」
祐平がようやく吐いた言葉だった。
「そりゃそうだ。ははは」
なぜか照れ笑いをしながらあっさり自説を撤回した発言をしたマスターに、祐平はもうどうしていいかわからなくなった。先程の取り乱した思考とは違い、理性ありきの混乱だ。
「だけどよ、あれだよ。動と静っつうかよ。根っこの部分っつうか背中合わせっつうかよ。これが似てんだ」
ますます祐平はわけがわからなくなり、まるで初めてのデートのときのように混乱をきたし、
「どこが、ですか?」
などと、掘り下げたくないのにしょうがなく口走った。
「そらよ、タバコの呑み方だって」
祐平はギクリとした。
「違うし」
(違うのかよ!。)
「コーヒーの飲み方も」
祐平はギクリとした。
「違うし」
(違うのかよ!。)
「だけどよ。姿形や生き方」
祐平はギクリとした。
「も、まったく違えしなあ」
(違うのかよ!。)
「やっぱり似てねえっちゃ似てねえんだけども」
(結局似てねえんじゃねえかよ!。)
「なんつうかなあ、話のリズムとか、目上の人との、まああいつがおれんとこの親父と話してた姿と今の祐平君とがダブるんだよな。嬉しがり方とか、お世辞のいいようとかよ。それで、あっ、と気がついたんだ」
(あるんじゃねえか。ってあっちゃ駄目なんだよちくしょう。)
「…そうですか。親父と僕が、に、似てますか」
実際そう口に出すと、祐平は自分で自分を全否定している気になり、自己嫌悪の極致に陥りそうになった。やはりまだまだ精神の振り子は、ささいなことで左右の極に振れ動く、不安定な状態であるらしかった。
また、喫茶店の雰囲気が、正月のめでたさを意に介さず、暗くなった。
バツの悪そうなマスターは、なにか思いついたように、
「おっ」
と、言うと、
「似てるといやおめえ、祐平君。君は君の姉ちゃんに」
と、話し出したが、その半ば、
「ちょっとあんた」
と、奥さんが止めた。
止めたはいいが、祐平の耳にはすでに、自分にはいないはずの姉の存在を示唆した言葉が届いていたものだから、
「姉ちゃん?、なんの話ですかそれは」
食いつかずにはいられない。
「ほら」
と、奥さんがため息をついた。
「この際だ」
と、マスターがつぶやいた。
「祐平君はあいつのことを嫌ってるようだが、あいつは、まああれでもお前をかわいがってなあ。あいつはほれ、自分の楽しいこと押し付けることでしかコミュニケーションってやつをやれねえとこあんだろ?」
「はあ、そうですね」
「そんで、ちょっと気に食わねえことあると怒って怒鳴ってよ。まあ、気のいいときはかわいがって、ちょっと気に食わねえことあると怒鳴って、不器用な奴だが、確かにあいつは祐平君を、いや、あいつだけじゃねえ。祐平君とこの両親は、あまり表には出してねえんだろうが、確かに君を人一倍かわいがったんだ。ふたり兄弟とはいえ末っ子ってこともあったんだろうけど」
再び話が長くなりそうなので、祐平は思い切って、
「僕に姉がいたんですか?」
と、マスターの話を遮り、核心を問うた。
「うむ、いた」
と、マスターは短く答えた。やればできるじゃねえか。
「いた、ということは」
「ああ、ピョコピョコ歩き回り始めたと思ったら、あっちの世界に呼ばれちまった」
祐平はそんなことなどまったく知らなかった。祐平の受けた衝撃は如何ばかりか。
「へえ、はじめて知りましたよそんなこと」
呑気な調子で応えた祐平。
祐平は結構平気だった。そんな昔の話をされても、祐平は実感のひとつもわかない。まして、知らなかったのだ。両親や兄、親戚からそのことを聞かされたこともなければ、先祖の墓参りの折、両親から特別な表情、感情を垣間見たこともない。赤の他人の死を聞いた、それが祐平の本音だった。
「あいつはほれ、無神論者だからな。神輿を私闘のダシに使うような奴だからよ。そんでもだいぶまいっちまってたんだが、気丈によ、なくしちまったもんはしょうがねえ、そっちに手を回すより、腹んなかの子にってな」
「腹のなかの子…」
「そう、それが祐平君だよ」
「へえ」
祐平はやはり、我が身のことながら他人の話を聞いているようだった。現実味というものがまるでない。どうしてこうも重い話をしているのにマスターから現実味が微塵も感じられないのか、祐平は少し考え、「ああ、こいつがちょっと酒臭いからだな」と納得することにした。
「あの子は、ユウコちゃんっつったかな」
「なるほど、だから僕の名前が」
「そうなんだよ。あんなことがあってなあ。さすがのあいつもあの子を忘れるなんてできなかったんだろうなあ。おれの前じゃ女房が決めやがったっつってたけど、やっぱり、忘れられねえよなあ」
「だから僕は、その姉の分までかわいがられた、と」
「そういうことになるな」
祐平はマスターの話を整理する係りになってしまった。
「では、その姉と僕が似ているっていうのは?」
司会まで始めた。
「あれはよ。祐平君ちょっと前になんだ、あれはなんだ、山下シャディっつったか」
「山下ジュディのことですか?」
「おう、それよ」
祐平は、マスターが実家の隣に店を持っていた時期とジュディの少女時代が被っているはずだと思い至った。
「ちょっと待ってください、マスターは山下さんちのジュディさんを知っているんですか?」
この質問にはマスターではなく奥さんが、
「あの山下さんちの彼女が山下ジュディだとは知らなかったわ。あなたからあの話を聞くまでは」と、答えた。ついでに、
「あの子昔は学校抜け出してちょくちょくうちに来てたわ」
と、足した。
ミーハー気分全開で、祐平は「そりゃすごいですね」と言ったら、
「今もたまにふらっと来るわよ」
と奥さんが言ったものだから、祐平は、姉がいた、と聞かされたときより衝撃を受けた。
「ほんとですか!?」
「ねえ、世界って思ったより狭いわ。あの子どっかで事務員やってるとか言ってたんだけどねえ。世界が狭いと言えば、あたし達が向こうで店をやるって時も、まさかお隣が高窪さんだなんて思いもしてなかったわ。祐平君と同じ。偶然」
「へえ、そりゃなんというか、で、マスター」
下手くそながら真面目に司会業をこなす祐平。カオスに支配された喫茶店。
「そのジュディがよ」
何事もなかったように平然と語り出すマスター。
「あれだよ、祐平君がさ、彼女におでんぶっかけられたって話したろ」
「ああ、今もやけど痕が残ってるって話ですね」
余計な使命感に燃えてきた祐平だ。
「彼女におでんぶっかけられたの、祐平君じゃなくて、ユウコちゃんなんだよ」
「えっ!?、それは、どういうことですか?。でも僕の右膝には…ていうか、まさか、姉はそのおでんのせいで」
「そんなことはないよ」
「そりゃそうですね。でも、確かに僕の右膝には」
「それはお前さんがな、ある日、同じ位置に、自分でおでんぶっかけたんだよ」
「…偶然、ですか」
さすがにこれには少しくるものがあった。だが、
「偶然、だな。生まれ変わりっつうのも気味がわりいってなもんだ」
「ちょっと、気味がわりいってマスター。不謹慎でしょ」
「いやごめんごめん、なはは」
「ははは」
「ほほほ」
カオスの嵐はそんなことなどお構いなしに吹き荒れた。
どうしようもない不思議な空気が店内を包んだその時、営業中ではないのに、カラランと来客を告げる店の扉の鈴がなった。
「あけましておめでとうございます」
客は明るい声でそう言うと、扉を閉めずにずかずか店内に入ってきた。祐平は、聞き覚えのあるその女性の声に、振り向いて客の顔を確認するのをためらった。
「おう、おめでとう。久しぶりだな。今ちょうどおめえの話してたんだ」
「あたしの話を?。ふうん。そちらは?」
祐平はギクリとした。
「ああ、この人はお前が昔、神社の祭りのおでんぶっかけてやけどさせた子の弟だよ」
「えっ!?、なぜそのことを、ていうかなんですって!?」
ジュディは驚きの声をあげた。ジュディの登場に、祐平はもっと驚いているが。
「ちょっとあんた」
「なはは、いいってことよ」
「いいってこともないでしょうに」
「なはははは」
「ははは、どうも山下さん。その節は」
バカ笑いするマスターに頼りがいはなく、ええいままよ、と、祐平は振り向き、ジュディに向かって会釈をした。
「えっ!?。あ、あんたは」
さすがにこの時のジュディの驚きは祐平のそれを超えた。
「いやどうもすみません。あっ、おでんかけられた姉は、そのあと死んでしまったそうですよ」
「なっ」
祐平は司会として情報を共通させようとしただけだったのだが、如何せん話方が下手くそだった。これではまるでジュディが殺したようだ。それに気づいた祐平は慌てて誤解をといた。
しかししかし、その祐平の慌てっぷりがジュディにうつり、ジュディが慌てふためくなか、喫茶店の開かれっぱなしの扉の外から中の様子を覗き込む人影を、祐平は見た。そいつと目があった。
「あ!」
「は!?」
祐平の目にうつったそいつは、祐平の採用アプローチを華麗に断り、さらなるアプローチをかけようとそいつのプライベートの携帯電話に電話したセンター長が、電話にでんわ、と嘆き、道端で偶然会ったりしたら気まずいことうけあいの沖田その人だった。
「なんだよ、そちらはどちらさん?。みんな顔見知りみたいだなあ」
マスターは呑気に赤提灯をぶら下げている。
「なんでもいいやな。正月だ、めでてえもんよ。すべてひとくくりでよ。めでてえもんだぜ」
そんなマスターの戯言に耳を貸す人間がひとりいた。ジュディだ。
「めでたいことのついでなんですけど」
なすべきことを思い出し、肝の玉が落ち着いたジュディはそう言いながら、一旦外に引っ込んだ沖田を手招きして呼び寄せた。沖田は特に祐平に向けてぺこりと頭を下げ、店に入ってきた。
「マスター、奥さん、あたしさ、この人と結婚することになった」
「はあ!?」
「え!?」
「すみませんどうも」
「なはははは。めでてえもんよ。全部ひっくるめてな」
さらにさらに、このとき、さらなる来訪者が開きっぱなしの喫茶店に我が物顔で入ってきた。
「どうも。よう、チン太、おめでとう」
その男を見た祐平は、…………。
男はしんと静まり返った店内を見回すと、
「なんだよ、たまに寄ってみれば、雁首そろえてまあ、妙な顔ばかりだな」
と、言った。
終わ
…らない。続