ボツ台本夏バテ
「夏バテ」
『いやぁもう夏だね』
「7月だからね」
『こう暑いとやっぱり食べ物が喉を通らなくなる』
「夏バテってやつだね。確かに脂っこいものとか見てるだけでなんか胃がむかむかしてきて食欲無くなっちゃうよね」
『そう。もうガソリンなんて見てるだけでむかむかしちゃう』
「ならねえよ!油だけど!」
『いやガソリンでも胃がむかむかするよ。この先どう生活していくんだってストレスで』
「ストレス性の胃潰瘍だろそれ!病院行けよ!」
『病院に行く金があるならもっと高くなる前にガソリン入れるだろ!?生活かかってんだから!ちったぁ考えろよバカ!』
「まあそういう状況の人もたくさんいるだろうけど、今は食べ物の話だろ」
『そうなるとバイオエタノールね。もう時代はこれ』
「いや別にバイオエタノールも、あれは原料がトウモロコシだけど食べられないからな」
『おーい、ちょっと、レギュラー満タンね!あいよ、なんつってバイトの兄ちゃんに口からあの給油するやつを突っ込まれる。これ夏の風物詩』
「いやな世の中だなおい」
『えー満タンで3リットルですね、お客さん、大きいタンクですねぇ、ちんこもデカいんですか?』
「なに聞いてんだよそのバイト!」
『まあこのところ大きくなる一方だっつって』
「ガソリンの値段じゃねえんだから」
『いくら?はい、満タン3リットルで3500円です。バカヤロー!ファミレスの方が安いじゃねえか!』
「高けぇなおい、安いんだったらまだわかるけど」
『たいして栄養もねえしな』
「散々だな!」
『土用の丑の日にはうなぎが直接生きたまま出てくる』
「なんだそのサービス!もはや元も子もねえな!バイオ関係ないじゃん!つうか直接ってあの給油するやつから!?口に突っ込まれてる!?」
『うん』
「繋がっちゃうよ!腸と胃と食道とあの給油するやつがうなぎで繋がっちゃうよ!」
『繋がっちゃうよって、別に繋がりはしないだろ。尻から出てくし』
「大地とも繋がっちゃってるだろ!」
『いやだから繋がっちゃうってどういうこと?』
「いやなんとなくだけどさ、気にさわったんならごめん」
『まあ後で説教するとして、尻からでてったうなぎはまたスタンドの下に帰っていくからね』
「使い回しかよ!嫌だようんこまみれのうなぎなんて!」
『エコだよ!もったいないだろ?あの吉兆だってやってるんだから』
「それで船場吉兆潰れただろ!エコにもほどがあるわ!」
『これどこ産のうなぎ?あ、上戸彩から出てきたの?へっへっへ』
「上戸彩そんなことしねえよ!」
『上戸彩のうなぎうまいなぁって思ってたら産地偽装でさ、田中から出てきたうなぎだったりしてね』
「田中って誰だよ!」
『変なおじさんだよ』
「志村じゃねえか!田中だろ!?」
『田中!斜め右前方!』
「志村うしろ~!な。田中気づかな過ぎだよ!」
『よくよく考えてみたら上戸彩産のうなぎが多すぎるんだよ。さすがのアヤパンもあんなに出せないよ』
「アヤパンは違う人だよ!」
『ちょっと前までは松浦亜弥産のうなぎが異常に出回ってた』
「あややは可愛いからね。へへへ」
『気持ち悪ぃよ!でも大半が前田健産のうなぎだった』
「うわっそれは嫌だな。嫌過ぎる」
『前田健は肛門が緩いから大量生産が可能なんだよ』
「なるほど確かに、ってどうでもいいわ!つうか松浦亜弥産を偽装してるのが前田健だったらやっぱりさっきの上戸彩産を偽装した田中って誰だよ!」
『つうかうなぎの名産地って“あや”が多いな』
「知らねえよ!お前が勝手に言ってるだけだろ!」
『そうなるとこれから目をつけておくうなぎの名産地は、そうだな……いないか』
「いやよく考えろよ。いるだろ、それこそ高島彩とか、西川史子とか」
『ああ、綾戸智絵とか』
「まあまあそうだな、嫌だけど」
『ほれ!これでも食って精つけなっせ!なんつってな』
「今の綾戸智絵のマネ!?似てる似てないの前になに弁だよ!あの人は関西弁だろ!」
『うちめっちゃ好きやねん、うなぎ』
「あ、なんか卑猥に聴こえるからやめて」
『ていうか夏の暑い時期にうなぎなんて食いたくねえよな』
「うわ台無しだな」
『夏といえば、素麺とか、あれだあれ、えっとあの始めるやつ』
「ああ、冷やし中華な」
『冷やしっていうか』
「冷やし中華な!他になにが始まるんだよ!なんだよ冷やしっていうかってよ!」
『そりゃ冷やしっていうかめっちゃホリデイ!』
「なんであやや!?関係ないだろ!」
『大槻ケンヂのエアあややって面白いよね』
「大西けんじね!はるな愛の本名は!大槻ケンヂは筋肉少女帯だから!」
『はるな愛に出逢い♪夏にはるな愛し♪秋に愛と別れた♪そして一人の冬が来たよ♪』
「それじゃはるな愛伝説だろ!また微妙な完成度だなおい。元ネタは筋肉少女帯の高木ブー伝説ねって今時誰もわかんねえよ!」
『冷やし中華もいいんだけどさ、夏バテがひどくなるともう固形物は受けつけないんだよね』
「ああ、夏バテしないためにはしっかりたべなきゃ駄目なんだけどね、でもその気持ちわかる」
『お茶なんかいくら飲んでもカロリー取れないからさ、やっぱり甘いもの、ダイエットコーラとか』
「目的達成してないよね!?」
『あとはスープだね。冷たいスープ』
「ああ、スープはいいよね。栄養もあるし」
『だからおれ自販機でコーンポタージュ買うんだよ。冷たいのがあればいいし、温かいで売ってるやつは冷やしてから飲む』
「へー、いいかもね」
『いいですよ。でもコーンポタージュばかり飲んでると尻からうなぎが出てくるんだよね、テテンテンテンテン』
「落語みたいに終わっちゃったよ」
終わり なーむー
『いやぁもう夏だね』
「7月だからね」
『こう暑いとやっぱり食べ物が喉を通らなくなる』
「夏バテってやつだね。確かに脂っこいものとか見てるだけでなんか胃がむかむかしてきて食欲無くなっちゃうよね」
『そう。もうガソリンなんて見てるだけでむかむかしちゃう』
「ならねえよ!油だけど!」
『いやガソリンでも胃がむかむかするよ。この先どう生活していくんだってストレスで』
「ストレス性の胃潰瘍だろそれ!病院行けよ!」
『病院に行く金があるならもっと高くなる前にガソリン入れるだろ!?生活かかってんだから!ちったぁ考えろよバカ!』
「まあそういう状況の人もたくさんいるだろうけど、今は食べ物の話だろ」
『そうなるとバイオエタノールね。もう時代はこれ』
「いや別にバイオエタノールも、あれは原料がトウモロコシだけど食べられないからな」
『おーい、ちょっと、レギュラー満タンね!あいよ、なんつってバイトの兄ちゃんに口からあの給油するやつを突っ込まれる。これ夏の風物詩』
「いやな世の中だなおい」
『えー満タンで3リットルですね、お客さん、大きいタンクですねぇ、ちんこもデカいんですか?』
「なに聞いてんだよそのバイト!」
『まあこのところ大きくなる一方だっつって』
「ガソリンの値段じゃねえんだから」
『いくら?はい、満タン3リットルで3500円です。バカヤロー!ファミレスの方が安いじゃねえか!』
「高けぇなおい、安いんだったらまだわかるけど」
『たいして栄養もねえしな』
「散々だな!」
『土用の丑の日にはうなぎが直接生きたまま出てくる』
「なんだそのサービス!もはや元も子もねえな!バイオ関係ないじゃん!つうか直接ってあの給油するやつから!?口に突っ込まれてる!?」
『うん』
「繋がっちゃうよ!腸と胃と食道とあの給油するやつがうなぎで繋がっちゃうよ!」
『繋がっちゃうよって、別に繋がりはしないだろ。尻から出てくし』
「大地とも繋がっちゃってるだろ!」
『いやだから繋がっちゃうってどういうこと?』
「いやなんとなくだけどさ、気にさわったんならごめん」
『まあ後で説教するとして、尻からでてったうなぎはまたスタンドの下に帰っていくからね』
「使い回しかよ!嫌だようんこまみれのうなぎなんて!」
『エコだよ!もったいないだろ?あの吉兆だってやってるんだから』
「それで船場吉兆潰れただろ!エコにもほどがあるわ!」
『これどこ産のうなぎ?あ、上戸彩から出てきたの?へっへっへ』
「上戸彩そんなことしねえよ!」
『上戸彩のうなぎうまいなぁって思ってたら産地偽装でさ、田中から出てきたうなぎだったりしてね』
「田中って誰だよ!」
『変なおじさんだよ』
「志村じゃねえか!田中だろ!?」
『田中!斜め右前方!』
「志村うしろ~!な。田中気づかな過ぎだよ!」
『よくよく考えてみたら上戸彩産のうなぎが多すぎるんだよ。さすがのアヤパンもあんなに出せないよ』
「アヤパンは違う人だよ!」
『ちょっと前までは松浦亜弥産のうなぎが異常に出回ってた』
「あややは可愛いからね。へへへ」
『気持ち悪ぃよ!でも大半が前田健産のうなぎだった』
「うわっそれは嫌だな。嫌過ぎる」
『前田健は肛門が緩いから大量生産が可能なんだよ』
「なるほど確かに、ってどうでもいいわ!つうか松浦亜弥産を偽装してるのが前田健だったらやっぱりさっきの上戸彩産を偽装した田中って誰だよ!」
『つうかうなぎの名産地って“あや”が多いな』
「知らねえよ!お前が勝手に言ってるだけだろ!」
『そうなるとこれから目をつけておくうなぎの名産地は、そうだな……いないか』
「いやよく考えろよ。いるだろ、それこそ高島彩とか、西川史子とか」
『ああ、綾戸智絵とか』
「まあまあそうだな、嫌だけど」
『ほれ!これでも食って精つけなっせ!なんつってな』
「今の綾戸智絵のマネ!?似てる似てないの前になに弁だよ!あの人は関西弁だろ!」
『うちめっちゃ好きやねん、うなぎ』
「あ、なんか卑猥に聴こえるからやめて」
『ていうか夏の暑い時期にうなぎなんて食いたくねえよな』
「うわ台無しだな」
『夏といえば、素麺とか、あれだあれ、えっとあの始めるやつ』
「ああ、冷やし中華な」
『冷やしっていうか』
「冷やし中華な!他になにが始まるんだよ!なんだよ冷やしっていうかってよ!」
『そりゃ冷やしっていうかめっちゃホリデイ!』
「なんであやや!?関係ないだろ!」
『大槻ケンヂのエアあややって面白いよね』
「大西けんじね!はるな愛の本名は!大槻ケンヂは筋肉少女帯だから!」
『はるな愛に出逢い♪夏にはるな愛し♪秋に愛と別れた♪そして一人の冬が来たよ♪』
「それじゃはるな愛伝説だろ!また微妙な完成度だなおい。元ネタは筋肉少女帯の高木ブー伝説ねって今時誰もわかんねえよ!」
『冷やし中華もいいんだけどさ、夏バテがひどくなるともう固形物は受けつけないんだよね』
「ああ、夏バテしないためにはしっかりたべなきゃ駄目なんだけどね、でもその気持ちわかる」
『お茶なんかいくら飲んでもカロリー取れないからさ、やっぱり甘いもの、ダイエットコーラとか』
「目的達成してないよね!?」
『あとはスープだね。冷たいスープ』
「ああ、スープはいいよね。栄養もあるし」
『だからおれ自販機でコーンポタージュ買うんだよ。冷たいのがあればいいし、温かいで売ってるやつは冷やしてから飲む』
「へー、いいかもね」
『いいですよ。でもコーンポタージュばかり飲んでると尻からうなぎが出てくるんだよね、テテンテンテンテン』
「落語みたいに終わっちゃったよ」
終わり なーむー
読んだら損する「運命はテイクアウト」(8)
「内閣総理大臣、犬を食う」
が、この日のトップニュース。外交上がどうたら、動物愛護団体がこうたら、短髪の女子アナ崩れとデブチン文化人が文句を言ったりしている。バックの画面にはチワワの写真。いやチワワは食うとこ無いだろ。
「犬でも猫でも鯨でも勝手に食え。こっちは人を殺しているんだ」
イライラしながら次のニュースを待つ。リモコンを持つ手が震えているのに気付いてタバコに火をつける。やけに薬臭い。
十五分後、
「え、ニュースが入りました。えー、都内の公園で女性のヘンタイが発見された、えっ、…失礼しました…女性の変死体が発見された模様です。都内…A区の公園で女性のヘンタ変死体が見つかりました。詳細が分かり次第お伝え致します。はい。続いてはスポーツコーナーです」
なにおもしろニュースにしてるんだよ!人の気も知らないでNG大賞行き確実なこと言いやがって。えぇい。台無しだ。緊張感が台無しだ。チャンネルをかえる。
「安い、安い、人気のミックスが安い!安心の専門トップブリーダー制!ペットのことならナガイ!ナガイにおまかせ♪」
ペット屋のCM。美味しそうにしか見えねえよ。
チャンネルをかえるがどこも都内の女性変死体のことはやってなかった。仕方無くチャンネルを戻す。この日、日本人メジャーリーガーは調子が良かったみたいで元力士のアナウンサー?は興奮して伝えている。沈痛な顔してたと思ったらキャピキャピはしゃぐ。カオスだ。
二本目のタバコを吸い終わるとようやくスポーツコーナーは終わった。
「はい、頑張れ日本人メジャーリーガー!この活躍を続けて欲しいですね。…え、先程お伝えしました、都内公園で見つかった女性変死体、首を絞められた形跡がある、とのことです。首を絞められた形跡がある模様です。警察は殺人の方向で捜査を進める方針だということです。えー、はい、え、被害者の女性は、川村知美さん、22歳、大学生。え、もう一度繰り返します。被害者の女性は川村知美さん22歳大学生です。引き続き情報が入り次第お伝えしたいと思います。はい。…木根さん、大学生の死体が公園で見つかったということですが、どうでしょう」
アナウンサーが原稿を読み上げている合間にあの公園が映った。あのドーナツトンネル。警官に野次馬に黄色いテープ。もう確実だ。デブチン文化人の木根は難しそうな顔をしている。さっきまでは喜色満面でスポーツコーナーを聴いてた。まあ別にそれを責める程僕だってガキじゃない。ただ今回に限ってはぶん殴ってやりたいぐらいむかつく。
「うーん、物盗りの犯行か、はたまた、ストーカーのような人間関係からの犯行なのか、無差別な犯行なのか、うーん、今後の捜査に期待したいですね。それにしても最近は物騒になりましたね。外出する時は十分注意していかなければなりませんね」
「はい。続いては“今日の特集”です。今日は」
テレビを消す。
22歳、大学生。
22歳、大学生。
22歳、大学生。
だったんだ。
僕の中で妙な興奮が。高校中退という僕の学歴コンプレックスによるものだろうか。きっと彼女は才色兼備で秀才で22歳なら就職もうまくいっていたに違いない。多分ウンコなんてしない人種だ。22歳、大学生。あんなに綺麗だったのだから彼氏の一人もいただろう。家族仲も良好に違いない。恋も愛も夢も生活も、僕は彼女の全てを奪った。なんも無くなった。無にした。体がわなわなと震える。このまま外に出て、「俺が殺したんだ!」、と叫びたい。石ころを蹴飛ばしたい。誰かを蹴飛ばしたい。蹴飛ばすついでにもう一人…。
部屋を出て階段を駆け下りトイレに飛び込む。便器に顔を突っ込み、吐く。出来るだけ静かに。胃液しかでない。口の中が酸っぱく、粉っぽい。カラカラとトイレットペーパーを巻き取り、水を流す。部屋に戻る。
もう一人?僕はもう一人殺したいのか?自問自答する度に吐き気が僕を襲う。頭痛もしてきた。なんなんだ一体。自分勝手。殺人。殺人狂。
涙が頬を伝う。自分勝手な涙。彼女はもう涙さえ流せないのに。
五月蝿い。僕が五月蝿い。だまれ。もうなにも考えないでくれ。五月蝿い。五月蝿い。五月蝿い。
ダンゴ虫のように体を丸めた。耳を塞いでも意味がないことは知っているからしなかった。
が、この日のトップニュース。外交上がどうたら、動物愛護団体がこうたら、短髪の女子アナ崩れとデブチン文化人が文句を言ったりしている。バックの画面にはチワワの写真。いやチワワは食うとこ無いだろ。
「犬でも猫でも鯨でも勝手に食え。こっちは人を殺しているんだ」
イライラしながら次のニュースを待つ。リモコンを持つ手が震えているのに気付いてタバコに火をつける。やけに薬臭い。
十五分後、
「え、ニュースが入りました。えー、都内の公園で女性のヘンタイが発見された、えっ、…失礼しました…女性の変死体が発見された模様です。都内…A区の公園で女性のヘンタ変死体が見つかりました。詳細が分かり次第お伝え致します。はい。続いてはスポーツコーナーです」
なにおもしろニュースにしてるんだよ!人の気も知らないでNG大賞行き確実なこと言いやがって。えぇい。台無しだ。緊張感が台無しだ。チャンネルをかえる。
「安い、安い、人気のミックスが安い!安心の専門トップブリーダー制!ペットのことならナガイ!ナガイにおまかせ♪」
ペット屋のCM。美味しそうにしか見えねえよ。
チャンネルをかえるがどこも都内の女性変死体のことはやってなかった。仕方無くチャンネルを戻す。この日、日本人メジャーリーガーは調子が良かったみたいで元力士のアナウンサー?は興奮して伝えている。沈痛な顔してたと思ったらキャピキャピはしゃぐ。カオスだ。
二本目のタバコを吸い終わるとようやくスポーツコーナーは終わった。
「はい、頑張れ日本人メジャーリーガー!この活躍を続けて欲しいですね。…え、先程お伝えしました、都内公園で見つかった女性変死体、首を絞められた形跡がある、とのことです。首を絞められた形跡がある模様です。警察は殺人の方向で捜査を進める方針だということです。えー、はい、え、被害者の女性は、川村知美さん、22歳、大学生。え、もう一度繰り返します。被害者の女性は川村知美さん22歳大学生です。引き続き情報が入り次第お伝えしたいと思います。はい。…木根さん、大学生の死体が公園で見つかったということですが、どうでしょう」
アナウンサーが原稿を読み上げている合間にあの公園が映った。あのドーナツトンネル。警官に野次馬に黄色いテープ。もう確実だ。デブチン文化人の木根は難しそうな顔をしている。さっきまでは喜色満面でスポーツコーナーを聴いてた。まあ別にそれを責める程僕だってガキじゃない。ただ今回に限ってはぶん殴ってやりたいぐらいむかつく。
「うーん、物盗りの犯行か、はたまた、ストーカーのような人間関係からの犯行なのか、無差別な犯行なのか、うーん、今後の捜査に期待したいですね。それにしても最近は物騒になりましたね。外出する時は十分注意していかなければなりませんね」
「はい。続いては“今日の特集”です。今日は」
テレビを消す。
22歳、大学生。
22歳、大学生。
22歳、大学生。
だったんだ。
僕の中で妙な興奮が。高校中退という僕の学歴コンプレックスによるものだろうか。きっと彼女は才色兼備で秀才で22歳なら就職もうまくいっていたに違いない。多分ウンコなんてしない人種だ。22歳、大学生。あんなに綺麗だったのだから彼氏の一人もいただろう。家族仲も良好に違いない。恋も愛も夢も生活も、僕は彼女の全てを奪った。なんも無くなった。無にした。体がわなわなと震える。このまま外に出て、「俺が殺したんだ!」、と叫びたい。石ころを蹴飛ばしたい。誰かを蹴飛ばしたい。蹴飛ばすついでにもう一人…。
部屋を出て階段を駆け下りトイレに飛び込む。便器に顔を突っ込み、吐く。出来るだけ静かに。胃液しかでない。口の中が酸っぱく、粉っぽい。カラカラとトイレットペーパーを巻き取り、水を流す。部屋に戻る。
もう一人?僕はもう一人殺したいのか?自問自答する度に吐き気が僕を襲う。頭痛もしてきた。なんなんだ一体。自分勝手。殺人。殺人狂。
涙が頬を伝う。自分勝手な涙。彼女はもう涙さえ流せないのに。
五月蝿い。僕が五月蝿い。だまれ。もうなにも考えないでくれ。五月蝿い。五月蝿い。五月蝿い。
ダンゴ虫のように体を丸めた。耳を塞いでも意味がないことは知っているからしなかった。
読んだら損する「運命はテイクアウト」(7)
交差点。曲がる。四回目。僕はアリバイのことを考え始めた。我が身かわいさにもほどがあると思うけど。捕まりたくない、心の奥からふつふつとそんな感情がわいてくるんだからしようがない。
コンビニに寄ろうか、いや、今から時間を残しても意味がない。意味がないどころかわざわざ捜査の手掛かりを作るようなもんだ。真っ直ぐ家に帰るんだ。あの喫茶店から家までは、幸いにして、そこそこ距離がある。およそ5キロぐらいだろうか。僕はニート生活であまりに暇な時やたらめったらに散歩してる時期があったのでここいらの距離と時間の関係はよく知ってる。ここいらの住人、少なくとも家族は、あまり歩かない。電車や車で移動することがほとんどだ。だから少し離れた場所に徒歩で何分でいけるか、多分かなり多目に見積もっている。例えば今いる場所はうちから5キロ程離れているが、うちから5キロの同心円状の場所に荒川を渡る橋がある。橋で待ち合わせがあり、歩いて行くとなったら、下手したら二時間前、少なくとも一時間半前には家を出るだろう。しかし、所詮は5キロなのだ。実際には僕の足で四十分から五十分ぐらいしかかからない。結構な誤差がある。十分二十分なんて誤差の範囲だ。小山さんと別れた時間からうちに着いた時の時間がいつもより、その「いつも」がうちでは僕しかわからないのだが、少し遅れたところで誰もなにも思わない。なん
なら物思いに、道助のことを考えながら、ふらふらとぼとぼ歩いていたことにすればいい。おそらく、完璧だ。
鳥肌が消えないまま歩く。街は、町は、日常の中にあり、たくさんの車が排ガスを垂れ流して力強く走ってる。僕も普段通り歩いているのだ。交番の前だって歩く。いつもの様に。
彼女にはもう永遠に日常はやってこないのだな、ふとそう思うと、鳥肌が力を増し、某国民的アニメ会社の感情表現みたくすね毛が逆立つ。「毛って本当に逆立つんだな、すね毛だけど」そう思いながら歩く。歩く。
家が見える。うちだ。いつもより大きく小さく見える。言葉が矛盾しているけど、実際なんだかよくわからないけど大きく小さく見えるのだから大きく小さく見えるとしか言えない。
「おかえり、小山君から連絡あったよ」
母親が僕を出迎える。
「そう」
僕はいつも通り応える。
「あら、手から血が出てるわよ」
「えっ」
汗が体の内側からわき上がる。手を見ると、ほんの少しだけ、あなたが噛んだ小指が痛い、もとい彼女が噛んだ指の根元から血が出ている。ほんの少し。僕の体が色白だからかろうじて目立つ程度。ニキビを潰した時より少ない。
「なんでだろ」
とりあえずそう応えた。冷静な判断だと思う。そして無造作にティッシュで血をぬぐう。血をぬぐう程血は出ていないのだが。ゴミ箱へと投げたティッシュは見事ホールインワンしたのだがあまり気分はよくならない。
階段を、気がつけばいつもよりゆっくりと、上がる。まあ歩いてきて疲れているということで辻褄は合う。部屋に入る。万年床のベッド。散らかり放題の様。テレビに集まった埃。いつもの僕の部屋。今日、母親に起こされたままの部屋。僕も同じ恰好。
くたくたになっている枕を殴る。
ぽすぽすぽすぽす。
力一杯殴っているのに枕は情けない音をたてるだけで、
「人間だったら血がでるんだぜ」
そうつぶやくと、無性に怖くなった。枕を布団でくるみ、封印した。
「大丈夫だ。誰も見ていない。誰もいやしなかった。声も聞こえなかった。彼女の声も。目撃者の声も。聴いた声はただひとつ。死んだな………俺は一体…俺は殺人者だ。殺人犯だ。殺人鬼だ。そうだ。そうだよ。俺は殺人者になったんだ。見ず知らずの女を殺した殺人鬼だ」
はっとして僕はテレビを点けた。時計を見る。あれから大体一時間半。時刻は五時。
「さて、本日の商品はこちら!布団圧縮袋DXセットです!なんとあの大変ご好評頂いた布団圧縮袋ハッスルセットに、さらにさらに、さ、ら、に!パワーアップしたこの……………」
確かうちはハッスルセットの一個前のセットを買った。ふざけるな。チャンネルをかえる。ちょうどニュースが始まる時間。なるほど番組は今日のトップニュースを一様に流している。
コンビニに寄ろうか、いや、今から時間を残しても意味がない。意味がないどころかわざわざ捜査の手掛かりを作るようなもんだ。真っ直ぐ家に帰るんだ。あの喫茶店から家までは、幸いにして、そこそこ距離がある。およそ5キロぐらいだろうか。僕はニート生活であまりに暇な時やたらめったらに散歩してる時期があったのでここいらの距離と時間の関係はよく知ってる。ここいらの住人、少なくとも家族は、あまり歩かない。電車や車で移動することがほとんどだ。だから少し離れた場所に徒歩で何分でいけるか、多分かなり多目に見積もっている。例えば今いる場所はうちから5キロ程離れているが、うちから5キロの同心円状の場所に荒川を渡る橋がある。橋で待ち合わせがあり、歩いて行くとなったら、下手したら二時間前、少なくとも一時間半前には家を出るだろう。しかし、所詮は5キロなのだ。実際には僕の足で四十分から五十分ぐらいしかかからない。結構な誤差がある。十分二十分なんて誤差の範囲だ。小山さんと別れた時間からうちに着いた時の時間がいつもより、その「いつも」がうちでは僕しかわからないのだが、少し遅れたところで誰もなにも思わない。なん
なら物思いに、道助のことを考えながら、ふらふらとぼとぼ歩いていたことにすればいい。おそらく、完璧だ。
鳥肌が消えないまま歩く。街は、町は、日常の中にあり、たくさんの車が排ガスを垂れ流して力強く走ってる。僕も普段通り歩いているのだ。交番の前だって歩く。いつもの様に。
彼女にはもう永遠に日常はやってこないのだな、ふとそう思うと、鳥肌が力を増し、某国民的アニメ会社の感情表現みたくすね毛が逆立つ。「毛って本当に逆立つんだな、すね毛だけど」そう思いながら歩く。歩く。
家が見える。うちだ。いつもより大きく小さく見える。言葉が矛盾しているけど、実際なんだかよくわからないけど大きく小さく見えるのだから大きく小さく見えるとしか言えない。
「おかえり、小山君から連絡あったよ」
母親が僕を出迎える。
「そう」
僕はいつも通り応える。
「あら、手から血が出てるわよ」
「えっ」
汗が体の内側からわき上がる。手を見ると、ほんの少しだけ、あなたが噛んだ小指が痛い、もとい彼女が噛んだ指の根元から血が出ている。ほんの少し。僕の体が色白だからかろうじて目立つ程度。ニキビを潰した時より少ない。
「なんでだろ」
とりあえずそう応えた。冷静な判断だと思う。そして無造作にティッシュで血をぬぐう。血をぬぐう程血は出ていないのだが。ゴミ箱へと投げたティッシュは見事ホールインワンしたのだがあまり気分はよくならない。
階段を、気がつけばいつもよりゆっくりと、上がる。まあ歩いてきて疲れているということで辻褄は合う。部屋に入る。万年床のベッド。散らかり放題の様。テレビに集まった埃。いつもの僕の部屋。今日、母親に起こされたままの部屋。僕も同じ恰好。
くたくたになっている枕を殴る。
ぽすぽすぽすぽす。
力一杯殴っているのに枕は情けない音をたてるだけで、
「人間だったら血がでるんだぜ」
そうつぶやくと、無性に怖くなった。枕を布団でくるみ、封印した。
「大丈夫だ。誰も見ていない。誰もいやしなかった。声も聞こえなかった。彼女の声も。目撃者の声も。聴いた声はただひとつ。死んだな………俺は一体…俺は殺人者だ。殺人犯だ。殺人鬼だ。そうだ。そうだよ。俺は殺人者になったんだ。見ず知らずの女を殺した殺人鬼だ」
はっとして僕はテレビを点けた。時計を見る。あれから大体一時間半。時刻は五時。
「さて、本日の商品はこちら!布団圧縮袋DXセットです!なんとあの大変ご好評頂いた布団圧縮袋ハッスルセットに、さらにさらに、さ、ら、に!パワーアップしたこの……………」
確かうちはハッスルセットの一個前のセットを買った。ふざけるな。チャンネルをかえる。ちょうどニュースが始まる時間。なるほど番組は今日のトップニュースを一様に流している。
読んだら損する「運命はテイクアウト」(6)
これで僕は名実ともに立派な殺人犯になった。名実っていっても名の方はないのだけど。とにかく僕は殺人犯だ。もう道助を殺した殺さないと悩む程度のレベルじゃない。すぅーと心に軽やかな風が吹く。すっきり、はした。たけど気持ちは焦りでいっぱいだ。当たり前か…。
人気のない公園の、ドーナツを半分に切ったような山状の滑り台のトンネル部から抜け出ると、それでも目立たないよう細心の注意を払い公園を出る。ちらりと振り返る。全身が糸の切れた操り人形みたいな感じで、思い通りに動かない。完全に動かないのは彼女。の死体?死体。元のまま、彼女はドーナツトンネルの闇の中で倒れている。ここからではかすかに脚が見えるだけだが。駆け出したくなる気持ちを、狂い叫びをあげたくなる気持ちを押し込んで、歩く。歩く。目立つな、と脳内再生、何度も何度もヘヴィローテーション。脳内の壊れたレコード状態に反して全身が耳になっている。またまた反して、自分の足音、鼓動等自分の出している音はあまり聴こえない。小鳥のさえずり、遠くで車が走る音、どこかで誰かが布団を叩いている音、なんだか聴いたことないヒリヒリしている音、なんだこれ、なにこの音、アスファルトに反射している日光の音か?なんなんだよ、とにかく今のところ悲鳴は聴こえない。パトカー?救急車?サイレンも聴こえてこない。誰にも気付かれていない?
三回角を曲がるとようやく少し落ち着いた。
僕は記憶を整理しようと、たった10分前のことを思い出そうとした。
すれ違った彼女、僕がビワを食べるのを見て微小した彼女。天使みたく美人で可愛い彼女。しかもいい匂い。匂いに誘われるがまま僕は尾行を開始した。なんでだろう。彼女が微笑んだから?わからない。ただ言えることは彼女は美しかった。尾行されているとは露知らず彼女はあの公園に入った。おそらくショートカット目的で公園を対角線に進もうとしたのだろう。彼女にとってそうすることが普通であり日常の行動なのだろう。いつもと変わらぬ日常の。…この時、僕は周囲を見渡したのだ。人気が無いのを確認した。偶然というには恐ろしいが人気は無かった。この時には既に彼女を殺す気があった。あれ?僕はいつ彼女を殺す気になったのだろう。わからないわからない。とにかく彼女が通路になってるドーナツトンネルに近づいた時、猛ダッシュで彼女に接近した。彼女は後ろを振り向いて僕を見た。不思議そうな顔した。すぐに怯えた顔した。僕はもう彼女の口を塞いでいた。さらに口の中に手を突っ込んだ。ふと手を見る。確かに手の甲に彼女の歯形が残っている。その後は一瞬だった。一気に首を絞めた。チョークスリーパー。鶴みたく細い首。抵抗する間もなく彼女の体
から力が抜けた。僕は腕を離さなかった。しだれる彼女の首を全力で絞めた。「ゴポ」、音がした。音がしたんだ。思い出して鳥肌がたつ。なんて音だ。…彼女の頸椎が悲鳴をあげてもなお締め続けた。どれくらいの時間であったのだろうか、二十秒?一分?二分?それ以上かもしれないし、以下かもしれない。手を離すと彼女は糸の切れた人形…はさっき出てきたな…糸の切れたヨーヨーのように重力に逆らうことなく崩れ落ちた。横たわる彼女は僕をぎょろりと見ている。体は背中側を向けて。怖くなった。怖くてたまらなかった。だけど僕は彼女が息をしているかどうか確かめた。してなかった。
「死んだな」
そう呟いてドーナツトンネルから出たんだ。僕の声が僕の声じゃないみたいだった。ありきたりだが地獄の底からわいて出てきた悪魔のような声。悪魔の所業をした僕にはお似合いの声。思い出すと鳥肌が止まらない。あ、鳥肌はさっきからずっとたっていたんだった。
人気のない公園の、ドーナツを半分に切ったような山状の滑り台のトンネル部から抜け出ると、それでも目立たないよう細心の注意を払い公園を出る。ちらりと振り返る。全身が糸の切れた操り人形みたいな感じで、思い通りに動かない。完全に動かないのは彼女。の死体?死体。元のまま、彼女はドーナツトンネルの闇の中で倒れている。ここからではかすかに脚が見えるだけだが。駆け出したくなる気持ちを、狂い叫びをあげたくなる気持ちを押し込んで、歩く。歩く。目立つな、と脳内再生、何度も何度もヘヴィローテーション。脳内の壊れたレコード状態に反して全身が耳になっている。またまた反して、自分の足音、鼓動等自分の出している音はあまり聴こえない。小鳥のさえずり、遠くで車が走る音、どこかで誰かが布団を叩いている音、なんだか聴いたことないヒリヒリしている音、なんだこれ、なにこの音、アスファルトに反射している日光の音か?なんなんだよ、とにかく今のところ悲鳴は聴こえない。パトカー?救急車?サイレンも聴こえてこない。誰にも気付かれていない?
三回角を曲がるとようやく少し落ち着いた。
僕は記憶を整理しようと、たった10分前のことを思い出そうとした。
すれ違った彼女、僕がビワを食べるのを見て微小した彼女。天使みたく美人で可愛い彼女。しかもいい匂い。匂いに誘われるがまま僕は尾行を開始した。なんでだろう。彼女が微笑んだから?わからない。ただ言えることは彼女は美しかった。尾行されているとは露知らず彼女はあの公園に入った。おそらくショートカット目的で公園を対角線に進もうとしたのだろう。彼女にとってそうすることが普通であり日常の行動なのだろう。いつもと変わらぬ日常の。…この時、僕は周囲を見渡したのだ。人気が無いのを確認した。偶然というには恐ろしいが人気は無かった。この時には既に彼女を殺す気があった。あれ?僕はいつ彼女を殺す気になったのだろう。わからないわからない。とにかく彼女が通路になってるドーナツトンネルに近づいた時、猛ダッシュで彼女に接近した。彼女は後ろを振り向いて僕を見た。不思議そうな顔した。すぐに怯えた顔した。僕はもう彼女の口を塞いでいた。さらに口の中に手を突っ込んだ。ふと手を見る。確かに手の甲に彼女の歯形が残っている。その後は一瞬だった。一気に首を絞めた。チョークスリーパー。鶴みたく細い首。抵抗する間もなく彼女の体
から力が抜けた。僕は腕を離さなかった。しだれる彼女の首を全力で絞めた。「ゴポ」、音がした。音がしたんだ。思い出して鳥肌がたつ。なんて音だ。…彼女の頸椎が悲鳴をあげてもなお締め続けた。どれくらいの時間であったのだろうか、二十秒?一分?二分?それ以上かもしれないし、以下かもしれない。手を離すと彼女は糸の切れた人形…はさっき出てきたな…糸の切れたヨーヨーのように重力に逆らうことなく崩れ落ちた。横たわる彼女は僕をぎょろりと見ている。体は背中側を向けて。怖くなった。怖くてたまらなかった。だけど僕は彼女が息をしているかどうか確かめた。してなかった。
「死んだな」
そう呟いてドーナツトンネルから出たんだ。僕の声が僕の声じゃないみたいだった。ありきたりだが地獄の底からわいて出てきた悪魔のような声。悪魔の所業をした僕にはお似合いの声。思い出すと鳥肌が止まらない。あ、鳥肌はさっきからずっとたっていたんだった。
