おれは
ワンピース着てるんだよね。女装趣味はあるけど、決して女装目的で着てるわけじゃないんだ。ほら着物だってワンピースでしょ。楽なんだ。Tシャツ代もバカにならないからね。ワンピースは自分で作るから安いんだ。着物の切れ端とか買ってね。裏ルートで貰う生地もあるからね。これまた裏ルートで裁縫代はほぼ無料だし。全然裏じゃないけどさ、裏って使いたい気分だったから裏って使ったんだ。多分宇宙の意志である「くるくる」に頭をやられたんだ。宇宙はくるくるしてるからね。くるくる回るっていうことは宇宙の意志なんだ。不可知論で言うところの神様的存在が操る力だよくるくるは。生命も人間の意識もくるくるの賜物なんだ。というかくるくるが見ている夢みたいなもんなんだよ。世の中全てくるくるなんだよ。くるくるが全てを支配してるんだ。結局、とどのつまりはくるくるなんだ。スピンだよね。超電磁スピン。原子も回るしタービンも回るしそりゃ浅田真央も回る。ニヒリズムや唯物論的なものか。だからといって悲観的になってはいけないよ。いつか超人になろうとは考えないけど。せっかく生きて意志があるなら死ぬまで楽しくくるくるするのがいいよ。
まあズボンは履くんだけどね。だっておれは女子高生がスカートの下にジャージ着てるの好きだから。パンティーのラインも気になるしね。正直に言うとボクサーパンツだけど。なんだこれ。
まあズボンは履くんだけどね。だっておれは女子高生がスカートの下にジャージ着てるの好きだから。パンティーのラインも気になるしね。正直に言うとボクサーパンツだけど。なんだこれ。
読んだら損する「運命はテイクアウト」(13)
お客さん、知人、後輩、大学のサークル、ヤバい、何が、まさか小山さんの知り合いとは、僕には関係ないだろ、いや関係あるかな、こんな形で繋がるとは、繋がる?、殺人と小山さんと彼女と僕が?繋がってはいないだろう、僕の演技、大丈夫だったか、問題ない、母親も小山さんも、誰も目の前に犯人がいるとは思わない、小山さんは彼女が好きだったんじゃないか?、綺麗だったからなぁ、いやいやどうでもいい、今はそんなことどうでも、どうする、どうするんだ、逃げ出す?、まさか、そんなことしたら自首したことと同義だ、自首する?、自首するくらいなら殺人なんてやってない…だろ、やり過ごす、やり過ごすんだ、やり過ごすぜベイベー、いつまで、一生?、一生かよ、面倒くさいな、いや強くなるんだ、大丈夫、きっと大丈夫、わかりゃしないんだ、知っているのは僕と彼女だけ、秘密、僕がゲロしなけりゃ、彼女はもう吐きたくても吐けないのだから、安心、安心しろ、そうだ、安心するんだ、僕は安心すればいいのだ、安心……………。
歩き疲れた体、早起き、ベッドに預けた体、自然と眠気に見舞われた僕はそれに任せて寝た。大丈夫、大丈夫、図太く、強く。ぐぅぐぅ。
体が汗でぐしょぐしょだ。夕方五時。まだ陽の残る時間だというのにやけに暗い。ああそうか。暴風雨明けたのか。怖い。この時間帯が一番怖いことを僕は知ってる。小学生の頃聞いた都市伝説。夕方、窓の外に老婆が立っていて目が合うとあの世に連れてかれるというもの。日本中どこにでも似たような話があるはずだ。あれを聞いたから怖いのかも知れない。この話の時刻設定が夕方であることを考えると、どうやら多くの人にとって夕方はなにか含むものがあるらしい。みんな夕方が怖いと感じているはずだ。闇を照らす陽が沈み闇を連れて夜がやってくる、放課後、誰もいない教室、友達と別れたあとの寂しさ、夕方にはそんな体験があるからだろうか。しかし老婆というのはどうだろうか。老婆は未来だ。それがなんだ、若い奴にとって老婆というのは未来ではなく異次元の生き物、いや、生き物ですらない存在になるのだから。まったく。都市伝説だかなんだかしらんが老婆老婆と言ってくれるな!だけどまあうちのばあちゃんも少し怖…。その時、
とんとん、ノックノック。
全身の血が逆流するほどびびる。しぃーと体の奥から音が聞こえる。
きぃ。部屋のドアが開く。
「健一」
老婆だ!うわあぁ!いや違う。おばあちゃんだった。…確かに不意の老婆は怖い。
「本を売りに行きたいのよぉ。でも重くて重くて。健一悪いけどちょっと付き合ってちょうだい」
ばっちり目があったがあの世に連れて行かれることはないらしい。「わかった」断る選択肢など最初から持っていない。ニートだし。
「徳川家康」全26巻山岡荘八。僕がちっちゃい頃死んだじいさまの本、だと思う。
「若い頃は五、六回読んだんだけど、もう読まないから、目が悪くて読めないから売っちゃおうと思って。ほら、駅前に古本屋が出来ただろ?」
知ってる。全国チェーンの新古書店。僕の脳細胞はすぐに、買い取り不可、の文字をでっかく脳内プロジェクターで再生、上映。保存状態が悪すぎる。本の背を手にとってぱらぱらと振れば本文がばっさり落ちてしまうだろう。せめて神保町にあるような古書店ならどうにかなるかもわからない。まあそれでも難しいだろうけど。本の日焼けした帯に一億部突破と書かれているから。もし売れたとしても新古書店なら全部で100円ぐらいではなかろうか。
それでも僕は本をビニール紐で縛り、おばあちゃんと一緒に店に向かった。一度やると決めたらやらずにはいられない性格。この気持ちはよくわかる。僕にも受け継がれたみたいだからだ。そうなるともう、行く行かない、売れる売れない、で議論するより実際行ってしまった方が遥かにスマートなのだ。
そして案の定、売れなかった。
歩き疲れた体、早起き、ベッドに預けた体、自然と眠気に見舞われた僕はそれに任せて寝た。大丈夫、大丈夫、図太く、強く。ぐぅぐぅ。
体が汗でぐしょぐしょだ。夕方五時。まだ陽の残る時間だというのにやけに暗い。ああそうか。暴風雨明けたのか。怖い。この時間帯が一番怖いことを僕は知ってる。小学生の頃聞いた都市伝説。夕方、窓の外に老婆が立っていて目が合うとあの世に連れてかれるというもの。日本中どこにでも似たような話があるはずだ。あれを聞いたから怖いのかも知れない。この話の時刻設定が夕方であることを考えると、どうやら多くの人にとって夕方はなにか含むものがあるらしい。みんな夕方が怖いと感じているはずだ。闇を照らす陽が沈み闇を連れて夜がやってくる、放課後、誰もいない教室、友達と別れたあとの寂しさ、夕方にはそんな体験があるからだろうか。しかし老婆というのはどうだろうか。老婆は未来だ。それがなんだ、若い奴にとって老婆というのは未来ではなく異次元の生き物、いや、生き物ですらない存在になるのだから。まったく。都市伝説だかなんだかしらんが老婆老婆と言ってくれるな!だけどまあうちのばあちゃんも少し怖…。その時、
とんとん、ノックノック。
全身の血が逆流するほどびびる。しぃーと体の奥から音が聞こえる。
きぃ。部屋のドアが開く。
「健一」
老婆だ!うわあぁ!いや違う。おばあちゃんだった。…確かに不意の老婆は怖い。
「本を売りに行きたいのよぉ。でも重くて重くて。健一悪いけどちょっと付き合ってちょうだい」
ばっちり目があったがあの世に連れて行かれることはないらしい。「わかった」断る選択肢など最初から持っていない。ニートだし。
「徳川家康」全26巻山岡荘八。僕がちっちゃい頃死んだじいさまの本、だと思う。
「若い頃は五、六回読んだんだけど、もう読まないから、目が悪くて読めないから売っちゃおうと思って。ほら、駅前に古本屋が出来ただろ?」
知ってる。全国チェーンの新古書店。僕の脳細胞はすぐに、買い取り不可、の文字をでっかく脳内プロジェクターで再生、上映。保存状態が悪すぎる。本の背を手にとってぱらぱらと振れば本文がばっさり落ちてしまうだろう。せめて神保町にあるような古書店ならどうにかなるかもわからない。まあそれでも難しいだろうけど。本の日焼けした帯に一億部突破と書かれているから。もし売れたとしても新古書店なら全部で100円ぐらいではなかろうか。
それでも僕は本をビニール紐で縛り、おばあちゃんと一緒に店に向かった。一度やると決めたらやらずにはいられない性格。この気持ちはよくわかる。僕にも受け継がれたみたいだからだ。そうなるともう、行く行かない、売れる売れない、で議論するより実際行ってしまった方が遥かにスマートなのだ。
そして案の定、売れなかった。
ボツ台本つらつらと
「つらつらと」
「驚いたね、14才の少年がバスジャックだって」
『ジュニアにしては大それたことしたよな』
「14才だからって千原ジュニアみたく呼ぶな!でも以前の西鉄バスジャックの時は犯人が17才でさ、17才が危ないって言われたよね。凶悪犯罪の低年齢化が叫ばれたり」
『まあお兄ちゃんはひどいことしたからね』
「だから千原兄弟から離れろよ」
『14才、まさに盗んだバスで走り出したわけだ』
「バイクな!それに尾崎豊は15の夜だし!走り出したっていっても運転手をナイフで脅して走らせてるわけで」
『やっぱりジャックナイフですか?』
「否定できねえよ!ただお前は千原ジュニアが昔そう呼ばれてただけで言ったろ!」
『運転手も怖がっただろうね。首の横にペニスがあるわけでしょ』
「ナイフな!三文字である以外は一文字もあってねえよ!ペニスってどんな状況だよ!」
『男の武器だろ?』
「そうかもしれないけど!」
『おれのナイフをお前のサヤに納めさせてくれ』
「下ネタにもほどがあるだろ!」
『おれのジャックナイフをお前のサヤに納めさせてくれ』
「またジャックナイフかよ!別にペニス突き出してもバスジャックは出来ないだろ。しかも14才のペニスだし」
『果たしてそうかな?犯人はおとなしそうなガキだったんだろ?』
「そうらしいね」
『そんなガキがナイフ一本手にしただけで誰も押さえつけることが出来なくなった。まあバスが走ってる時は万が一運転手刺されちゃったら事故るってこともあっただろうけどさ、走り出す前や止まった後にも取り押さえることが出来なかった。14才のおとなしそうなガキを!』
「でもナイフは怖いよ。たとえ14才でも10才でも人を刺し殺すことが出来る体力はあるわけだから」
『だったらペニスでも同じでしょ』
「なんでだよ!わかんねえよ!ペニスは大して怖くないだろ!」
『14才でも10才でも勃起するだろ!その気もないのにフェラさせられるかもしれないんだぞ!』
「いやまあそうだけど!」
『イマラチオっていうか』
「そう言うけど!」
『おい!顔をこっちむけろ!いや運転中ですので。バカヤロー!こっちみてくれなきゃ感じないだろ!あわわ、危ない』
「やめろ!つうかどんな体勢でフェラさせてるんだよ、サイドか?いやいやなに言ってんだおれ。そんなんでバスジャック出来るわけないだろ!」
『本質的にはそういうことだよ!ジャックナイフでもおもちゃのピストルでもペニスでも』
「そりゃ本質はバスを乗っ取ることにあるからな。その過程が飛んじゃってるよ」
『乗客の中にアンディ・オロゴンがいたらボコボコにして捕まえてるよ!』
「それはまた別の事件だろ!アンディが山手線で盗撮犯を捕まえたっていう。でも確かにアンディじゃないにしろ強い奴がいたらそうなってたかもな」
『ちなみに以前の17才の事件の時は』
「ボビーは乗ってなかったからな!」
『マナが乗ってたらしいよ。あ、カナかな?』
「どっちも乗ってねえよ!お姉ちゃんになっちゃったし!どっちが姉かわからないなら言うな!」
『わかってるよ!モナだろ!?』
「違うよ!モナってお前よぉ」
『おれむかつくんだよな』
「なにが?」
『山本モナが美人として扱われてることだよ』
「いや美人でいいんじゃないの?」
『そうか?全然美人じゃないだろ。むしろブサイクだね。変な顔してるぜ?騒動に対する意見もさ、モナに言い寄られたらラブホだろうが五反田だろうが行っちゃうよ、って意見が多いけどさ』
「いやそこ分けるなよ。五反田のラブホに行ったんだよ」
『おれだったら絶対に行かない自信があるね。こっちから願い下げだよ!ちんこ勃たないよあんなブスじゃ』
「やめろよ!お前は世間一般で美人と呼ばれている美人が好きなタイプじゃないだけだろ!」
『山田優とかもひどいぜ』
「やめろって!美人なんだよ!お前はちょっとブサイクな娘が好きなだけなんだよ!」
『まあそうかもしれないけどさ。モナはまた公平に見ても』
「いいだろ美人ってことでよ!やめろ!」
『モナよりマナカナの方がいいよ。特にカナの方』
「どっちがどっちだかわかんねえし、内面考えなければ変わんねえだろ!それにお前がそう言うとマナカナはちょっとブサイクってことになるから言うな!」
『二岡もまた二岡だよな』
「まあね」
『またさぁ、ボウズにすりゃいいってもんじゃねえだろ!元からそんな髪が長いわけじゃなし』
「まあ反省の意志をあらわしてるんじゃないの」
『その考えがまたむかつくんだよ!ちょんまげ結ってた時代じゃねえんだ。髪を切るのになんの意味があんの?そりゃ山本モナがボウズにするんだったらわかるよ。でも二岡のなんて完全なポーズだろ?ボウズだけによ。あんなもんで反省されても困るんだよ!』
「いやでも他にすることも思いつかなかったんだろ」
『反省するのに何かアピールするってのが気に食わないんだよ!そんなんやるぐらいだったら家でオナニーでもしてる方がよっぽど反省してるわ!』
「オナニー後の虚無感のことを言いたいの?」
『オナニーじゃなくてモナニーだろうけどな』
「二岡なにやってんだよ!全く反省してねえよ!」
『いや逆に凄い反省するだろ、なにやってんだよおれって』
「まあそうなることうけ合いだよな」
『思い返してのオナニーはやめて、モナが脱いでから抜こう』
「やっぱり全然反省してねえよ!二岡にも反省してもらわなきゃ困るよ」
『そんなもんボウズにするよりいい方法なんていくらでもあるんだよ。例えばヘルメットをスイカ型にするとか』
「モナの復帰の時のかぶりものじゃねえか!あれは反省しきったあとのことだろ!」
『反省してなかったじゃねえか』
「そうだけど!つうか反省をアピールするの駄目だったんじゃないのかよ」
『いや伝わらなきゃ意味ないだろ』
「なんなんだよ!真逆のこと言ってるよ!」
『いや矛盾なんかしてないよ。アピールが嫌いなこととアピールしなきゃ伝わらないってことは全く別の問題だろ?』
「えっまあそうかも」
『ったくバカが』
「悪かったな!」
『スイカじゃいまいち不倫をしましたってことが伝わらないかもな。ということで、今後一年間コンドームで出来た全身タイツで過ごすとかな』
「それは強烈だな。でも猥褻物陳列罪で捕まりそうだ」
『いざという時どっちが二岡だかわからなくなるしな』
「わけわかんねえよ!」
『いや、だからちんこが二岡なのか二岡がちんこなのか』
「どっちも二岡だよ!やめろ!」
『どっちも二岡って、お前よぉ』
「いや確かにおれにもわけわかんないけど」
『二つの岡ってことですか?』
「悪いけど意味がわからない」
『もういっそのこと去勢しちゃうとかな』
「一気に反省のレベル上がったな!」
『そうしたらおれも認めざるを得ないよな。アピール目的で出来ることじゃないし』
「まあなぁ。でもそんなことしたら本業の野球に影響出まくりだろ」
『トンネルしてもしょうがない、ってなるよな』
「今もそう言われてるけどな」
『まあでも不倫ぐらいどうだっていいんだけどね。お前もしてるんだろ?』
「ナベツネみたくなっちゃったよ!」
『まあ命がけでやることではあるけどね。だからこそ燃えるというか、スリルでより興奮するというか。見つかったら大変なことになるからな。夫婦間はめちゃくちゃになるだろうし離婚てなったら慰謝料や財産根こそぎ持ってかれるしさ。実際今回の騒動でも二岡もモナも人生の予定が変わっちゃったんだから。峰竜太なんてみどりに腹刺されてるからね』
「そうらしいよね。まさに命がけだよな」
『峰竜太がバスの運転手だったらそのバスはナイフじゃバスジャック出来ないね。なんせ刺され慣れてるからさ』
「そんなわけないだろ!」
『まあでもみどりに人生ジャックされてるみたいなもんか』
「やめろ!もういいよ!」
終わり なーむー ペルソナタイムだぁ!
「驚いたね、14才の少年がバスジャックだって」
『ジュニアにしては大それたことしたよな』
「14才だからって千原ジュニアみたく呼ぶな!でも以前の西鉄バスジャックの時は犯人が17才でさ、17才が危ないって言われたよね。凶悪犯罪の低年齢化が叫ばれたり」
『まあお兄ちゃんはひどいことしたからね』
「だから千原兄弟から離れろよ」
『14才、まさに盗んだバスで走り出したわけだ』
「バイクな!それに尾崎豊は15の夜だし!走り出したっていっても運転手をナイフで脅して走らせてるわけで」
『やっぱりジャックナイフですか?』
「否定できねえよ!ただお前は千原ジュニアが昔そう呼ばれてただけで言ったろ!」
『運転手も怖がっただろうね。首の横にペニスがあるわけでしょ』
「ナイフな!三文字である以外は一文字もあってねえよ!ペニスってどんな状況だよ!」
『男の武器だろ?』
「そうかもしれないけど!」
『おれのナイフをお前のサヤに納めさせてくれ』
「下ネタにもほどがあるだろ!」
『おれのジャックナイフをお前のサヤに納めさせてくれ』
「またジャックナイフかよ!別にペニス突き出してもバスジャックは出来ないだろ。しかも14才のペニスだし」
『果たしてそうかな?犯人はおとなしそうなガキだったんだろ?』
「そうらしいね」
『そんなガキがナイフ一本手にしただけで誰も押さえつけることが出来なくなった。まあバスが走ってる時は万が一運転手刺されちゃったら事故るってこともあっただろうけどさ、走り出す前や止まった後にも取り押さえることが出来なかった。14才のおとなしそうなガキを!』
「でもナイフは怖いよ。たとえ14才でも10才でも人を刺し殺すことが出来る体力はあるわけだから」
『だったらペニスでも同じでしょ』
「なんでだよ!わかんねえよ!ペニスは大して怖くないだろ!」
『14才でも10才でも勃起するだろ!その気もないのにフェラさせられるかもしれないんだぞ!』
「いやまあそうだけど!」
『イマラチオっていうか』
「そう言うけど!」
『おい!顔をこっちむけろ!いや運転中ですので。バカヤロー!こっちみてくれなきゃ感じないだろ!あわわ、危ない』
「やめろ!つうかどんな体勢でフェラさせてるんだよ、サイドか?いやいやなに言ってんだおれ。そんなんでバスジャック出来るわけないだろ!」
『本質的にはそういうことだよ!ジャックナイフでもおもちゃのピストルでもペニスでも』
「そりゃ本質はバスを乗っ取ることにあるからな。その過程が飛んじゃってるよ」
『乗客の中にアンディ・オロゴンがいたらボコボコにして捕まえてるよ!』
「それはまた別の事件だろ!アンディが山手線で盗撮犯を捕まえたっていう。でも確かにアンディじゃないにしろ強い奴がいたらそうなってたかもな」
『ちなみに以前の17才の事件の時は』
「ボビーは乗ってなかったからな!」
『マナが乗ってたらしいよ。あ、カナかな?』
「どっちも乗ってねえよ!お姉ちゃんになっちゃったし!どっちが姉かわからないなら言うな!」
『わかってるよ!モナだろ!?』
「違うよ!モナってお前よぉ」
『おれむかつくんだよな』
「なにが?」
『山本モナが美人として扱われてることだよ』
「いや美人でいいんじゃないの?」
『そうか?全然美人じゃないだろ。むしろブサイクだね。変な顔してるぜ?騒動に対する意見もさ、モナに言い寄られたらラブホだろうが五反田だろうが行っちゃうよ、って意見が多いけどさ』
「いやそこ分けるなよ。五反田のラブホに行ったんだよ」
『おれだったら絶対に行かない自信があるね。こっちから願い下げだよ!ちんこ勃たないよあんなブスじゃ』
「やめろよ!お前は世間一般で美人と呼ばれている美人が好きなタイプじゃないだけだろ!」
『山田優とかもひどいぜ』
「やめろって!美人なんだよ!お前はちょっとブサイクな娘が好きなだけなんだよ!」
『まあそうかもしれないけどさ。モナはまた公平に見ても』
「いいだろ美人ってことでよ!やめろ!」
『モナよりマナカナの方がいいよ。特にカナの方』
「どっちがどっちだかわかんねえし、内面考えなければ変わんねえだろ!それにお前がそう言うとマナカナはちょっとブサイクってことになるから言うな!」
『二岡もまた二岡だよな』
「まあね」
『またさぁ、ボウズにすりゃいいってもんじゃねえだろ!元からそんな髪が長いわけじゃなし』
「まあ反省の意志をあらわしてるんじゃないの」
『その考えがまたむかつくんだよ!ちょんまげ結ってた時代じゃねえんだ。髪を切るのになんの意味があんの?そりゃ山本モナがボウズにするんだったらわかるよ。でも二岡のなんて完全なポーズだろ?ボウズだけによ。あんなもんで反省されても困るんだよ!』
「いやでも他にすることも思いつかなかったんだろ」
『反省するのに何かアピールするってのが気に食わないんだよ!そんなんやるぐらいだったら家でオナニーでもしてる方がよっぽど反省してるわ!』
「オナニー後の虚無感のことを言いたいの?」
『オナニーじゃなくてモナニーだろうけどな』
「二岡なにやってんだよ!全く反省してねえよ!」
『いや逆に凄い反省するだろ、なにやってんだよおれって』
「まあそうなることうけ合いだよな」
『思い返してのオナニーはやめて、モナが脱いでから抜こう』
「やっぱり全然反省してねえよ!二岡にも反省してもらわなきゃ困るよ」
『そんなもんボウズにするよりいい方法なんていくらでもあるんだよ。例えばヘルメットをスイカ型にするとか』
「モナの復帰の時のかぶりものじゃねえか!あれは反省しきったあとのことだろ!」
『反省してなかったじゃねえか』
「そうだけど!つうか反省をアピールするの駄目だったんじゃないのかよ」
『いや伝わらなきゃ意味ないだろ』
「なんなんだよ!真逆のこと言ってるよ!」
『いや矛盾なんかしてないよ。アピールが嫌いなこととアピールしなきゃ伝わらないってことは全く別の問題だろ?』
「えっまあそうかも」
『ったくバカが』
「悪かったな!」
『スイカじゃいまいち不倫をしましたってことが伝わらないかもな。ということで、今後一年間コンドームで出来た全身タイツで過ごすとかな』
「それは強烈だな。でも猥褻物陳列罪で捕まりそうだ」
『いざという時どっちが二岡だかわからなくなるしな』
「わけわかんねえよ!」
『いや、だからちんこが二岡なのか二岡がちんこなのか』
「どっちも二岡だよ!やめろ!」
『どっちも二岡って、お前よぉ』
「いや確かにおれにもわけわかんないけど」
『二つの岡ってことですか?』
「悪いけど意味がわからない」
『もういっそのこと去勢しちゃうとかな』
「一気に反省のレベル上がったな!」
『そうしたらおれも認めざるを得ないよな。アピール目的で出来ることじゃないし』
「まあなぁ。でもそんなことしたら本業の野球に影響出まくりだろ」
『トンネルしてもしょうがない、ってなるよな』
「今もそう言われてるけどな」
『まあでも不倫ぐらいどうだっていいんだけどね。お前もしてるんだろ?』
「ナベツネみたくなっちゃったよ!」
『まあ命がけでやることではあるけどね。だからこそ燃えるというか、スリルでより興奮するというか。見つかったら大変なことになるからな。夫婦間はめちゃくちゃになるだろうし離婚てなったら慰謝料や財産根こそぎ持ってかれるしさ。実際今回の騒動でも二岡もモナも人生の予定が変わっちゃったんだから。峰竜太なんてみどりに腹刺されてるからね』
「そうらしいよね。まさに命がけだよな」
『峰竜太がバスの運転手だったらそのバスはナイフじゃバスジャック出来ないね。なんせ刺され慣れてるからさ』
「そんなわけないだろ!」
『まあでもみどりに人生ジャックされてるみたいなもんか』
「やめろ!もういいよ!」
終わり なーむー ペルソナタイムだぁ!
読んだら損する「運命はテイクアウト」(12)
「いやぁ、…今月程保険屋をやっていて嫌になったことはありませんよ……」
ちらりと小山さんは僕に目をやる。その目は、しまった、という感情に満ちていた。僕は、どうぞ、と、目で返す。
「あの、たーくん、道助のこともそうなんですが…昨日殺人事件ありましたよね、はい、あの公園の…。あの娘、僕の担当している家の娘なんですよ…」
母の何気ない言葉、「お昼うちで食べてったら?」「どうしたの?元気ないわね」がまさか僕をこんなにどぎまぎさせるとは思わなかった。
何も反応しないのは逆に怪しい、と思って、僕は思いきって驚いた顔をした。そっちの方が自然だろう。
重い空気。小山さんは淡々と、もちろんこちらに気を使って、語り続ける。おそらく誰かに吐き出さなければ自分が駄目になってしまうような気持ちなのだろう。
「その娘は僕の大学の後輩ということもあって」
初め隠していたであろうインフォメーションがちらちら。
「ご家族の方達とも仲良くさせてもらっていたのですが…えぇ、直接の…同じサークルでした。今日伺うつもりなんですが、まあもちろん今日保険の話をするつもりはありませんが、後々のことを考えると…どうにも気が重くなりましてね。それに…」
小山さんはまた僕に目をやった。その目の意味はもう光の速度で理解したが、わざと「えっ!?」という風な目をした。
「彼女が、知美ちゃんが殺された時間に、僕は近くに居たんですよ。近くといってももちろん現場ではありませんし、1、2キロは離れていたかもしれませんが。しかしそれを、さらに…」
僕の理解力は正しい答えを導き出していた。ここで引いてはいけない。
「それって、あの後のことです…よね?」
こう聞くのが自然だと思った。
「ああ、いや、悪いね。うん、そうなんだ。健一君と別れた後のことなんだよ。あの喫茶店の近くで事件が起こった、まあこれも近くっていっても、そうだなぁ、歩いたら十分ぐらいはかかるんじゃないかと思う場所だけどね」
嫌な言い方をする…まるで僕が犯行可能だと言ってるみたいじゃないか。まさか僕を疑っているのか?って推理小説の名探偵じゃあるまいし、ましてやスーパー高校生でもないし、ましてやましてやスーパー高校生の頭脳を持ったまま子供になったわけじゃなし。あり得ない。考え過ぎだ。
「あそこの辺りだったんですかあれは…」
「いやいや気を悪くしたらごめんね」
何故、僕が、気を悪くしなきゃならないのだ?小山よ。
「ああいえ、とんでもない」
僕と小山さんの会話が終わると、母親が小山さんを慰め始めた。母親はワイドショーを砂かぶりで観ているようなもんだ。
「悪いのは犯人よ。あなたが悪いわけじゃないんだから。ちゃんとしていればいいんじゃないかしら。友達としても保険屋さんとしても」
母親の言葉に不意をつかれた僕は、びくっ、と体を動かしてしまった。幸い母親も小山さんも僕のことを見ていなかった。
「いやぁ、なんだか楽になりましたよ。軽くなったというべきか…。いやぁ、今日はご馳走になって、相談にも乗ってもらって、いやぁすいませんでした」
「とんでもない。ご飯ぐらいだったらいつでもいいのよ」
「いやいやありがとうございます。では、失礼しま…っと、大事なことを忘れていました」
小山さんは小さなカバン、小山さんが持てば大体のものが小さくなる、から書類をとりだした。
「これが、今回更新させていただいた商品の説明書です。特約が多いので何かあった時は確認していただくと得をするかもしれません。あと、自動車保険も更新が近いのですが、どうしましょうか」
「ふふ、更新でいいわよ。またいつでもいらっしゃい」
小山さんはいつも通り体を小さく折りたたんで軽自動車に乗り込んでいった。窓越しにぺこりと頭を下げる小山さんに応じて僕も頭を下げる。小山さんが去り、部屋に戻ると、今まで押し殺していた感情が爆発する。
ちらりと小山さんは僕に目をやる。その目は、しまった、という感情に満ちていた。僕は、どうぞ、と、目で返す。
「あの、たーくん、道助のこともそうなんですが…昨日殺人事件ありましたよね、はい、あの公園の…。あの娘、僕の担当している家の娘なんですよ…」
母の何気ない言葉、「お昼うちで食べてったら?」「どうしたの?元気ないわね」がまさか僕をこんなにどぎまぎさせるとは思わなかった。
何も反応しないのは逆に怪しい、と思って、僕は思いきって驚いた顔をした。そっちの方が自然だろう。
重い空気。小山さんは淡々と、もちろんこちらに気を使って、語り続ける。おそらく誰かに吐き出さなければ自分が駄目になってしまうような気持ちなのだろう。
「その娘は僕の大学の後輩ということもあって」
初め隠していたであろうインフォメーションがちらちら。
「ご家族の方達とも仲良くさせてもらっていたのですが…えぇ、直接の…同じサークルでした。今日伺うつもりなんですが、まあもちろん今日保険の話をするつもりはありませんが、後々のことを考えると…どうにも気が重くなりましてね。それに…」
小山さんはまた僕に目をやった。その目の意味はもう光の速度で理解したが、わざと「えっ!?」という風な目をした。
「彼女が、知美ちゃんが殺された時間に、僕は近くに居たんですよ。近くといってももちろん現場ではありませんし、1、2キロは離れていたかもしれませんが。しかしそれを、さらに…」
僕の理解力は正しい答えを導き出していた。ここで引いてはいけない。
「それって、あの後のことです…よね?」
こう聞くのが自然だと思った。
「ああ、いや、悪いね。うん、そうなんだ。健一君と別れた後のことなんだよ。あの喫茶店の近くで事件が起こった、まあこれも近くっていっても、そうだなぁ、歩いたら十分ぐらいはかかるんじゃないかと思う場所だけどね」
嫌な言い方をする…まるで僕が犯行可能だと言ってるみたいじゃないか。まさか僕を疑っているのか?って推理小説の名探偵じゃあるまいし、ましてやスーパー高校生でもないし、ましてやましてやスーパー高校生の頭脳を持ったまま子供になったわけじゃなし。あり得ない。考え過ぎだ。
「あそこの辺りだったんですかあれは…」
「いやいや気を悪くしたらごめんね」
何故、僕が、気を悪くしなきゃならないのだ?小山よ。
「ああいえ、とんでもない」
僕と小山さんの会話が終わると、母親が小山さんを慰め始めた。母親はワイドショーを砂かぶりで観ているようなもんだ。
「悪いのは犯人よ。あなたが悪いわけじゃないんだから。ちゃんとしていればいいんじゃないかしら。友達としても保険屋さんとしても」
母親の言葉に不意をつかれた僕は、びくっ、と体を動かしてしまった。幸い母親も小山さんも僕のことを見ていなかった。
「いやぁ、なんだか楽になりましたよ。軽くなったというべきか…。いやぁ、今日はご馳走になって、相談にも乗ってもらって、いやぁすいませんでした」
「とんでもない。ご飯ぐらいだったらいつでもいいのよ」
「いやいやありがとうございます。では、失礼しま…っと、大事なことを忘れていました」
小山さんは小さなカバン、小山さんが持てば大体のものが小さくなる、から書類をとりだした。
「これが、今回更新させていただいた商品の説明書です。特約が多いので何かあった時は確認していただくと得をするかもしれません。あと、自動車保険も更新が近いのですが、どうしましょうか」
「ふふ、更新でいいわよ。またいつでもいらっしゃい」
小山さんはいつも通り体を小さく折りたたんで軽自動車に乗り込んでいった。窓越しにぺこりと頭を下げる小山さんに応じて僕も頭を下げる。小山さんが去り、部屋に戻ると、今まで押し殺していた感情が爆発する。
読んだら損する「運命はテイクアウト」(11)
「都内の公園で女性の遺体が発見されました。女性は川村知美さん、22歳、大学生。遺体には首を絞められた形跡があり、警察は殺人事件の方向で捜査を進める方針です。現場周辺の住人の声をお伝えします」
画面が切り替わる。住宅街の一画。おばさんと思しき人の胸のアップ。
「怖いわァ、こんな住宅地でねェ。小さな孫がいるんですよォ。よくあの公園でも遊んでいるみたいでェ、うん、ねェ、こんなところでねェ。信じられない。うん、うん、怖いわァ」
また画面は切り替わる。今度はおっさん。
「ここらは物騒だけど、うーん、夜中なんかたまに発砲音が聴こえたりするんだけど、日中でしょ?うーん。大学生でねぇ。まだ若いのに。早く犯人が捕まってほしいよ、へへへ」
画面は切り替わる。若い女性の胸元。テロップで「友人」と出ている。
「知美はぁ…とてもいい娘でぇ…いつも笑っててぇ…ぐす…じゅぴゅるれるる…なんで知美が…みんなととてみゃ…とても仲良かったし…恨まれることなんてなかったし…明るくて…ううううう…ふんがひいん…ぐす…もう会えないなんて信じられないです。はい」
最後に画面は花を手向けている人を映してスタジオに戻った。
「はい。…本日午後六時、総理大臣が犬を食した問題で」
テレビを消す。真っ暗な部屋に戻る。
とても明るくて、いつも笑ってたという彼女。あんなに綺麗だったんだ、当然だろう。
ふと気になったことがある。
ニュースでは首を絞められた形跡がある、としか言っていない。ロープで絞めたとも手で絞めたとも腕で絞めたとも言っていない。これがいわゆる「犯人だけが知っている情報」というやつなのだろうか。とにもかくにも、テレビを観ているたくさんの人達の中で僕だけが彼女の、あの姿、を知っているということに、少し変な気持ちがした。決して嫌な気持ちではない。
真っ暗な部屋。その中で僕の心は太陽みたく黄色く発光している。誰も知らない。僕は知っている。全世界の中で僕だけが知っている。僕と彼女だけの秘密。彼女はもういないから、僕がゲロしなければ永遠の秘密、の共有?共有。目を閉じるとあの時の光景がプラネタリウムみたく再生される。微笑んだ彼女。ダッシュした僕。口に手を突っ込んだ僕。あ、彼女の歯に僕の皮膚組織が残っているかも…これはまずい。まずいぞ。まあでもいいか。もうなるようにしかならん。一気に首をチョークスリーパーで絞める僕。鶴みたいに細い首が、ゴポ、っとなってもまだ離さない。崩れ落ちる彼女。背中側から僕を見る。見る。見る。エンドレスで僕のまぶたの裏で絶賛開催中恐怖のフクロウ美女。見る。見る。見る。彼女はいつも笑っていたと友人は言っていたけれど、あいつは彼女の笑顔以外を見たことあるのかな。部屋の外で野良猫が赤ん坊の泣き声みたく鳴いたのを最後に僕プラネタリウムは閉館した。
ちゅんちゅんと小鳥がうるさい。朝だ。普段低血圧で寝起きが弱い僕だけれど、勢いよく起き上がりテレビをつける。五時。まったく二度寝の気配がない。快眠?
朝一番のニュース番組。天気予報。今日は雨。台風が近付いている。政治のニュースが終わり、あのニュースが手短に伝えられた。内容は昨日と変わらない。
「飽きたな、なんか」
そう思った。思わされたのか?テレビを消し一階へ。新聞を取ってくる。新聞屋の朝は早い。スポーツ新聞。芸能面をめくり社会面へ。あった。思ったより小さい記事。少しほっとする。ここでも事件は簡潔に伝えられていて、そのままどこかに消えてしまえ。どこかに流れて消えてしまえ。
冷蔵庫。何もない。炊飯器。空っぽ。インスタントラーメンをかっこみ、シャワーを浴びた。彼女が残した歯形はもう消えているといっていい。少し皮がささくれ立っている程度。ナイス新陳代謝。
退屈な朝。いつもよりひどく長く感じる。
やることもないので部屋に戻る。いつもはなにをして時間をつぶしていたのだっけ?ゲームを始めてみるもつまらなくてたまらない。すぐにやめる。
………………………………………。
無い。何も無い。でもだからていってあの事を考えては駄目だ。あの事は考えてはいけない。髪の毛が乾くのを待って、外に出た。普段しないことをしては駄目だと思ったけれど、まあたまにふらりと散歩というか意味なくフラフラ歩き回ることはあったし、なにより圧倒的ともいえる暇にじっとしていられなかった。じっとしていると体の内側で退屈の虫が尻からなんか甘い液体を出して、それが血液に混ざると体全体に行き渡り、ああ、心臓だ。脳より実は心臓がヤバい。心臓は第二の脳と呼ばれるように…………………………。こうなってしまうから外に出なければならないのだ。
シェルターから出た世界はいつもと違った。いつもよりスリルに満ちている。静かな暴風雨。一時も油断ならない。ライオンの檻の中に放たれたウサギかカメのような気分だ。あ、ライオンってあまりに獲物が捕れないとカメ食うんだよ。七時過ぎ。通勤通学中の人達が駅に向かってまっしぐら。財布を見てみる。お札が入ってないのは知っている。690円。僕は駅に向かう流れに乗ることにした。切符を買い、まだ満員電車とはいえないが、微満員電車とはいえる車内。下車する。通っていた学校の最寄り駅。学校とは反対側になる出口から駅を出て荒川の土手方向に歩き出す。川を目指せば迷子にならないからね。途中、新古書店で本を買う。105円。「バグの飼い方上級」。なんでこれを買ったのか僕にもよくわからない。歩いて歩いて土手まで来た。ドラマの撮影をしている。ありがたい。暇つぶしの名目が立つ。ああ、あれだ。土手の頂上を学生服を着た役者が歩いている。その様子をタバコをふかして見ている僕。武田鉄矢がいないのが残念だ。
ぽつぽつと雨が降り出してきた。僕はバカだ。天気予報を観たのに傘を持ってきていない。それでも歩いて帰ることにした。タバコがきれかけている。タバコの値段を考えると電車に乗れない。それに雨に濡れて困るものなど何ひとつ持っていない。
ゆっくりとだが確実に雨は強くなっていく。ずぶ濡れも甚だしい。でもテンションが上がってきた。周りの人がずぶ濡れの僕を見る。奇異の目で見られることが心地良かった。
家に着く頃には風も相当強くなっていた。暴風雨。
「あらま、どこに行ってたのこんな雨の中…」
「本屋」
短く応えて部屋に行こうとすると巨大な影が…。
「やぁ、健一君。おはよう」
小山さんはいつもより一回り小さく見えた。まあそれでもでかいのだが。
画面が切り替わる。住宅街の一画。おばさんと思しき人の胸のアップ。
「怖いわァ、こんな住宅地でねェ。小さな孫がいるんですよォ。よくあの公園でも遊んでいるみたいでェ、うん、ねェ、こんなところでねェ。信じられない。うん、うん、怖いわァ」
また画面は切り替わる。今度はおっさん。
「ここらは物騒だけど、うーん、夜中なんかたまに発砲音が聴こえたりするんだけど、日中でしょ?うーん。大学生でねぇ。まだ若いのに。早く犯人が捕まってほしいよ、へへへ」
画面は切り替わる。若い女性の胸元。テロップで「友人」と出ている。
「知美はぁ…とてもいい娘でぇ…いつも笑っててぇ…ぐす…じゅぴゅるれるる…なんで知美が…みんなととてみゃ…とても仲良かったし…恨まれることなんてなかったし…明るくて…ううううう…ふんがひいん…ぐす…もう会えないなんて信じられないです。はい」
最後に画面は花を手向けている人を映してスタジオに戻った。
「はい。…本日午後六時、総理大臣が犬を食した問題で」
テレビを消す。真っ暗な部屋に戻る。
とても明るくて、いつも笑ってたという彼女。あんなに綺麗だったんだ、当然だろう。
ふと気になったことがある。
ニュースでは首を絞められた形跡がある、としか言っていない。ロープで絞めたとも手で絞めたとも腕で絞めたとも言っていない。これがいわゆる「犯人だけが知っている情報」というやつなのだろうか。とにもかくにも、テレビを観ているたくさんの人達の中で僕だけが彼女の、あの姿、を知っているということに、少し変な気持ちがした。決して嫌な気持ちではない。
真っ暗な部屋。その中で僕の心は太陽みたく黄色く発光している。誰も知らない。僕は知っている。全世界の中で僕だけが知っている。僕と彼女だけの秘密。彼女はもういないから、僕がゲロしなければ永遠の秘密、の共有?共有。目を閉じるとあの時の光景がプラネタリウムみたく再生される。微笑んだ彼女。ダッシュした僕。口に手を突っ込んだ僕。あ、彼女の歯に僕の皮膚組織が残っているかも…これはまずい。まずいぞ。まあでもいいか。もうなるようにしかならん。一気に首をチョークスリーパーで絞める僕。鶴みたいに細い首が、ゴポ、っとなってもまだ離さない。崩れ落ちる彼女。背中側から僕を見る。見る。見る。エンドレスで僕のまぶたの裏で絶賛開催中恐怖のフクロウ美女。見る。見る。見る。彼女はいつも笑っていたと友人は言っていたけれど、あいつは彼女の笑顔以外を見たことあるのかな。部屋の外で野良猫が赤ん坊の泣き声みたく鳴いたのを最後に僕プラネタリウムは閉館した。
ちゅんちゅんと小鳥がうるさい。朝だ。普段低血圧で寝起きが弱い僕だけれど、勢いよく起き上がりテレビをつける。五時。まったく二度寝の気配がない。快眠?
朝一番のニュース番組。天気予報。今日は雨。台風が近付いている。政治のニュースが終わり、あのニュースが手短に伝えられた。内容は昨日と変わらない。
「飽きたな、なんか」
そう思った。思わされたのか?テレビを消し一階へ。新聞を取ってくる。新聞屋の朝は早い。スポーツ新聞。芸能面をめくり社会面へ。あった。思ったより小さい記事。少しほっとする。ここでも事件は簡潔に伝えられていて、そのままどこかに消えてしまえ。どこかに流れて消えてしまえ。
冷蔵庫。何もない。炊飯器。空っぽ。インスタントラーメンをかっこみ、シャワーを浴びた。彼女が残した歯形はもう消えているといっていい。少し皮がささくれ立っている程度。ナイス新陳代謝。
退屈な朝。いつもよりひどく長く感じる。
やることもないので部屋に戻る。いつもはなにをして時間をつぶしていたのだっけ?ゲームを始めてみるもつまらなくてたまらない。すぐにやめる。
………………………………………。
無い。何も無い。でもだからていってあの事を考えては駄目だ。あの事は考えてはいけない。髪の毛が乾くのを待って、外に出た。普段しないことをしては駄目だと思ったけれど、まあたまにふらりと散歩というか意味なくフラフラ歩き回ることはあったし、なにより圧倒的ともいえる暇にじっとしていられなかった。じっとしていると体の内側で退屈の虫が尻からなんか甘い液体を出して、それが血液に混ざると体全体に行き渡り、ああ、心臓だ。脳より実は心臓がヤバい。心臓は第二の脳と呼ばれるように…………………………。こうなってしまうから外に出なければならないのだ。
シェルターから出た世界はいつもと違った。いつもよりスリルに満ちている。静かな暴風雨。一時も油断ならない。ライオンの檻の中に放たれたウサギかカメのような気分だ。あ、ライオンってあまりに獲物が捕れないとカメ食うんだよ。七時過ぎ。通勤通学中の人達が駅に向かってまっしぐら。財布を見てみる。お札が入ってないのは知っている。690円。僕は駅に向かう流れに乗ることにした。切符を買い、まだ満員電車とはいえないが、微満員電車とはいえる車内。下車する。通っていた学校の最寄り駅。学校とは反対側になる出口から駅を出て荒川の土手方向に歩き出す。川を目指せば迷子にならないからね。途中、新古書店で本を買う。105円。「バグの飼い方上級」。なんでこれを買ったのか僕にもよくわからない。歩いて歩いて土手まで来た。ドラマの撮影をしている。ありがたい。暇つぶしの名目が立つ。ああ、あれだ。土手の頂上を学生服を着た役者が歩いている。その様子をタバコをふかして見ている僕。武田鉄矢がいないのが残念だ。
ぽつぽつと雨が降り出してきた。僕はバカだ。天気予報を観たのに傘を持ってきていない。それでも歩いて帰ることにした。タバコがきれかけている。タバコの値段を考えると電車に乗れない。それに雨に濡れて困るものなど何ひとつ持っていない。
ゆっくりとだが確実に雨は強くなっていく。ずぶ濡れも甚だしい。でもテンションが上がってきた。周りの人がずぶ濡れの僕を見る。奇異の目で見られることが心地良かった。
家に着く頃には風も相当強くなっていた。暴風雨。
「あらま、どこに行ってたのこんな雨の中…」
「本屋」
短く応えて部屋に行こうとすると巨大な影が…。
「やぁ、健一君。おはよう」
小山さんはいつもより一回り小さく見えた。まあそれでもでかいのだが。