本質を教えろ!
世の中で、僕ぐらい金がない人間も少ないと思う。でもさ、情けないもんで、こちらの生活レベルとか、全くお構いなしに、不具合はやってくるんだよね。Wi-Fiのルーターが壊れちゃったあたりから、いろんなものにガタがきて、最近ではBSチャンネルが全く受信できなくなっちゃった。金があるとかないとか言ったって、相手は畜生以下の機械じゃん。人情もクソもないわけよ。そういう情け知らずだから、こちらの都合も考えないで、バッタバッタと生活必需品が故障するんだもん。だから、仕方ないから不具合を直して行くしかないわけじゃん。そこで非常に安いWi-Fiルーターを買ってきて、インターネットに接続したんだけど、前のWi-Fiルーターが壊れた時点で、設定がおかしくなっちゃったみたいなんだよ。だから、パソコンを立ち上げて、プロバイダーに電話をして、設定のやり方を訊いたんだよ。僕はパソコンどころか、機械関係が大の苦手だし、今後も機械マスターになるつもりはない。なのにさ、僕の相手をしたプロバイダーのカスタマーサービスの兄ちゃんはさ、イチイチインターネットの仕組みや、理屈から説明するわけよ。僕の場合はさ、「それじゃシステム環境設定の○○を出してください。そこんとこなんという値が入力されていますか?」「あ、○○です」「そこを××と入力し直してください」「はい」「それで完了です」みたいな感じでさ、やり方だけ説明してくれればいいのよ。ところがさ、その兄ちゃんはさ、「そこの部分は例えば商店に置き換えると、シャッターが下りて休業している状態ですので、そのシャッターを開けなければ商店は開店しないわけです。しかし、シャッターを開けるには鍵が必要です。その鍵をちゃんと用意しなければならないんですね。その鍵に当たるのが、そこの値なんです」みたいな感じで、インターネットの成り立ちのようなものを、ちゃんと僕に理解させようとするんだよ。まあ知らないより知ってた方が、なんだっていいってのはわかるけど、無知な人間がただただブラウザをクリックして、ネットサーフィンを楽しむだけで、そんな知識はいらんだろう?体の調子が悪くて、病院に診察に行くと、糖尿病と診断されたとするよね。そこで医者から、糖尿病の成り立ちや、メカニズムの説明が長々必要かしら?糖尿病だから、生活習慣を変えることとか、投薬治療を受けるとか、医師の診断に患者は従うわけじゃん。言ってしまえば、その病院を選んだ時点で、その病院の医師のアドバイスに従うという前提があるわけで、それは知識がない人間だからこそ、医者を信じるって意思表示じゃん。知識があるプロフェッショナルに対して、知識のない素人は、妙な知識を求めないで、プロフェッショナルの力によっていい方向に行く道を選ぶのが、プロフェッショナルへのリスペクトでしょう?だから、プロフェッショナルは余計な言い訳をしないで、最短でベストな方法を見つけなければならないはずだよ。ところがさ、件のプロバイダーの兄ちゃんはさ、くどくどくどくどとさ……。普通に考えてさ、字が書けない子供に、『あ』という字を教える時に、まず大人がやることは、『あ』という文字の書き方を教えることじゃん。『あ』と言う字を書けない子供に、「そもそも『あ』と言う文字は漢字の『安』が字源で、それを極端に草書体にしたものなんだよ。そもそもその『安』と言う漢字は、今から3000年ほど前まで遡る中国の古代王朝殷の時代に牛の骨や亀の甲羅に書かれた甲骨文字に字源があり、あ、その前に殷と言う呼び名はその後の中国の歴代王朝が代々蔑んで呼んだ蔑称であり、本来は商と言う名の王朝だったんだ……」なんて『あ』と言う仮名文字の成り立ちなんか説明しないだろう!イライラしながら、すご〜く時間をかけてさ、ようやくインターネット設定が済んで、無事Wi-Fiも機能し始めたんだけど、プロバイダーの兄ちゃんとの電話が終わった後は、ぐったりしちゃってさ、高熱が出ちゃったもんね。これが説明責任っていうのかしら?面倒臭い世の中になりつつあるんじゃないかって、文明社会なんて偉そうにしている日本が、大っ嫌いになる寸前まで追い込まれちゃったもんね。で、なんとか体力が回復してさ、日常の生活を送っていたら、今度はテレビがBSチャンネルを受信しなくなっちゃってね。地上波は問題なく受信できるし、BSアンテナを交換して1年経たないから、多分配線に問題があるんだろうと思って、電気工事屋を呼んだんだよ。なぜ電気工事屋を呼ぶかっていうと、当たり前だけど、僕じゃ電気工事が出来ないからだよね。もし電気工事をキチンとできる人間だったら、僕が電気工事屋になってるつうの!でやってきた電気工事屋の兄ちゃんってえのが、プラスマイナスの岩橋さんとか、がきデカのこまわり君に似た感じで、僕好みの顔をしてたんだよ。(あ、こりゃ話は早そうだな)って僕は、勝手に決めつけてたんだけど、完全なる僕の誤解でさ、この電気工事屋の兄ちゃんがさ、例のプロバイダーの兄ちゃんと一緒でさ、ああだこうだとイチイチ説明するタイプだったの。しかもさ、プロバイダーの兄ちゃんはさ、「これを商店に例えるならば」みたいな感じで、比較的わかりやすく説明しようとするのね。麻原彰晃が説法を、ラーメンの作り方に例えて、バカにでも理解できるようにしたんだけど、それゆえにオウム真理教の教義が軽くなるって方法論をとったのと、すごく似てんだよ。ところが、こまわり君に似た兄ちゃんは、専門用語ばっかり並べて、1から5億ぐらい説明するんだよ。僕にはもう理解不能で、コーランを原語で聞かされているような気分になっちゃってさ。電気工事の知識がない僕がさ、電気工事屋を呼んだ理由は、BSチャンネルを受信できるようにしてほしいってことだけで、もう一つ興味があるのは、その工事にいくらかかるかってことだけじゃん。延々と続く説明を遮っちゃ悪いって思うから、こまわり君に長々と話させたんだけど、それが終わって僕が言った言葉は、「結局ベストな工事法とそれにかかる費用を教えてください」だったんだぜ。これでわかるだろう?こまわり君の説明が、なんにも僕に役立っていなかったってことだよね。説明責任なんて言葉があるけど、それは相手を納得させることが前提でしょう?ところが専門用語を並べて、こちらがさっぱり理解できないってんなら、それは説明責任じゃなくって、時間の無駄って奴だよな。今の世の中は、すご〜くマヌケでさ、やたらと素人にまで、プロフェッショナルの知識を持たせようとするじゃん。さらに、カタカナ英語をやたらと会話に混じらせて、英会話がろくにできないなんて、絶望的なマヌケが、利口ぶって上から目線で何かを語るんだよ。それを説明責任だとかと思っているんだけど、そういう変てこりんな言葉を巷に溢れさせるから、バカが1から5億まで説明して、聞かされてる方を何が何やらわからんようにさせんだよな。賢くない奴らに、もっともな言葉を教えてんじゃねえよ!説明責任の本質は、相手を納得させることだもんね。そういう当たり前のことがわかっていないで、勘違いを助長させるような日本の教育って、果たして先進国のレベルに達してんのかね?おかげで僕は今喉が扁桃腺が腫れ上がって完全にいかれて、高熱を出し、寝込んじゃってんだぜ。くわばらくわばら。BGMはザ・キンクスで『エデュケーション』をどうぞ。