朝から機嫌が悪い人間を見ていると、

つくづく反吐が出そうになる。

 

またそういう輩に限って、

 

「低血圧だからよ〜」

 

なんてな言い訳で、

機嫌が悪いテメーの態度を周囲に肯定させようとするんだ。

 

こっちは別段、

 

「低血圧になってください」

 

なんて頼んでもいねえのによ。

 



第一テメーが低血圧って気づいてるんだったら、
人に会う時には、
いつもより2時間ぐらい早起きする努力をしろよなっつうの!

風邪をひいたら、
他人に迷惑をかけないように、
マスクをしたり、
薬を飲んだりして、
努力をするもんじゃん。

低血圧だってそれと同じだよ。

努力もしないで、
当たり前に寝て、
不機嫌そうにしてって、
どこまで自己チューなんだよ!

そんな風に、
馬鹿の低気圧にムカつくことが多い僕は、
なるべく、
朝から不機嫌になるのはやめようと日々努力している。

まあ、
僕の場合は、
目が覚めた瞬間に、
フランキー・レインの『ローハイド』を歌いながら、
ステーキを食べられる低血圧とは縁遠い男だから、
低血圧の人よりは朝は清々しいけどね。

でもさ、
人生いたるところに陥穽ありじゃん。

低血圧じゃなくても、
朝からムカつくことは、
そこいら中に転がっているわけじゃん。

だから、
そういうムカつくことになるべく触れないうようにしたり、
思わず笑顔になるようなことを考えながら、
朝の行動を始めるようにしている。

僕だって不愉快な朝はある。

でも、
僕が不愉快な朝は、
全人類の不愉快な朝じゃないもんね。

そこで、
僕だけ不機嫌そうにしていたら、
周囲の人を不愉快な気分にさせてしまう。

コミュニケーションは相手が決めることだもんね。

僕が朝から犬のウンコを踏んで不機嫌だろうが、
仮に僕が低血圧だろうが、
それは僕の言い分で、
相手にはなんの落ち度もないんだもんね。

だったら、
周囲の人に気を遣う、
それがコミュニケーションの基本中の基本じゃん。

馬鹿の低血圧たちは、
そういう人間の根本的なコミュニケーションがわかっていないんだよな。

で、
最近笑顔になろうとして考えるのが、
鉄道マニアの人たちのこと。

以前から言っているけど、
僕は理解できるものより、
理解できないものの方が面白いと思っている。

僕には鉄道を愛するほどの情熱はない。

だから、
鉄道のことを熱く語ることができないし、
そもそも鉄道を愛するって感覚がチンプンカンプンなのだ。

でも、
鉄道を愛する人たちって、
本当に鉄道への愛を、
包み隠さず話す人が多いじゃん。

そして、
それは別に周囲を気にしたりしないで、
本当に愛しているものに、
忠実に愛を注ごうとするじゃん。

周囲の目を気にしないってところが、
圧倒的に、
人間の良さを感じちゃうんだよ。

僕らみたいに、
音楽が好きとか、
映画が好きなんてアートオタクな世界って、
音楽や映画を、
姉ちゃんをナンパする道具レベルに考えている奴らも、
住人みたいな顔をしてんだよなあ。

そんないいもんじゃないんだけどさ、
どっぷり浸かると。

 

2月にWOWOWで放送された、
WOWOW制作の短編オムニバスドラマ、
『No Movie、No Life』の1編にも、
そういう奴が登場するんだよ。

桜庭ななみ扮するホラー映画マニアのOLに、
会社の先輩が、

「うちで泣ける映画でも観ないか?」

って声をかけるんだけど、
映画マニアにはそれほど映画好きじゃない奴って、
すぐにわかっちゃうから、
桜庭ななみにきついことを言われて、
肘鉄を食らうんだけどね。



音楽や映画って、
本当にエセ知識ってものを、
マニアはすぐに見破っちゃうんだよ。

それぐらい、
エセを生みやすいマニアの世界なんだよ。

どっかかっこいいなんて、
誤解されやすいのかもね。

鉄道が好きという鉄道マニアの世界とは、
そこらへんがすごく違うんだよね。

そして音楽や映画が好きな、
アートオタクって呼ばれる連中はさ、
マジで音楽や映画が好きで、
そんなのばっかり追いかけているから、
桜庭ななみが演じたOLのように、
エセに対してすごく攻撃的になっちゃうんだよ。

だから、
アートオタクの内部は、
割とギスギスしているっていうか、
殺伐としているんだよ。

ところが、
鉄道マニアってアートオタクみたいに、
かっこいいって誤解される要素があんまりないから、
本当に好きな人ばっかり集まっていると思うんだ。

エセがいないマニアだけの世界だから、
一人一人がみんなの鉄道愛に耳を傾けられるだろうし、
殺伐とする要素が少ないんだよね。

以前観た『鉄子の育て方』ってドラマで、
主人公の女子アナが、

「鉄道好きに悪い人はいなさそうだ。でも、ちょっと気持ち悪いけど」

って独白するシーンがあるんだけど、
まさにそこなんだよね。



殺伐としていない上に、
僕にはチンプンカンプンの世界ってことはさ、
僕を笑顔にする要素が、
鉄道マニアには多いんだよなあ。

だから最近では、

僕なりに鉄道マニアのことを考えて、

まあこれは己を鼓舞してと同じ意味だろうけど、

そうして、

穏やかな朝の行動を開始したりするんだよ。

 

 

怒りや苛立ちより、

穏やかな方が、

体力的にしんどくないからね。

 

朝から元気な僕でも、

日々こうして努力しているんだから、

馬鹿な低血圧の連中も、

少しは努力しなさい。

 

そうやって、

鉄道マニアのことを想像したりしながら、

笑顔で行動している僕に、

今朝は水を差すようなことをする奴が現れてね……。

 

水を差されたのは買い物に出かけたスーパーマーケット。

 

イチイチどんなことでムカついたかなんて、

ここで報告はしないけど、

店員の態度にブチ切れそうになっちゃってね。

 

でもさ、

そこのスーパーマーケットは、

我が家ががしょっちゅう利用しているところなんだよ。

 

いくら店員の態度に腹が立っても、

声を張り上げて文句を言うと、

かっこ悪くて、

次から僕がその店に行きづらくなっちゃうじゃん。

 

要するに、

居場所が一つ減っちゃうんだよね。

 

結局正当な理由でも、

大声を出せば、

大声を出した方が切ない結果が多いんだよね。

 

それに、

腹を立てて大声を出すと、

体力も使っちゃうし、

結局スーパーマーケットの店員の態度にムカつきながらも、

グッと我慢をして、

また頭の中に鉄道マニアのことを思い浮かべて、

穏やかさを取り戻そうとしたんだよね。

 

 

てな訳で、

なんとか怒りを爆発させずに、

家まで帰って来たんだけど、

僕は悟った。

 

怒りを我慢するのも、

怒りを爆発させるのも、

同じぐらい体力を消費するってことを。

 

まあ、

居場所を失わないだけ、

我慢をした方がマシだけどね……。

 

 

BGMはトミー・ネルソンで『ホーボー・バップ』をどうぞ。