怒りっていうのはさ、

基本当事者が一番激しいわけじゃん。

 

意外と怒っている当事者に付き合わされている人って、

冷静になっててさ、

落語『天災』の紅羅坊奈丸って心学の先生みたいな態度になっちゃうもんだ。

 

 

怒りの当事者からすると、

そんな冷静な紅羅坊奈丸みたいな態度をされると、

 

「なんでアイツはオレの正当な怒りが理解できないんだろう?」

 

って感じで、

冷静な周囲の人間にまで腹が立ってしまうものだ。

 

落語『天災』では、

そんな冷静な人間が、

自分に降りかかってくると穏やかではいられないってことを、

短気者のがらっぱちな主人公の八五郎が、

身をもってインテリの紅羅坊奈丸に矛盾をつくってところが、

僕が一番好きなシーンなんだよ。

 

「あなたに降りかかってくる災いを他人がしたと思うから腹が立つもの。天の災いと思えば腹など立たぬものでしょう!」

 

「なるほどね。そりゃあお前さんの言う通りだ。なるほどね、誰かがしたと思うから腹が立つんで、天がしたと思えば確かに腹なんか立てられねえよな。こりゃあ紅屋のご隠居に話を聞いて勉強になったよ。ありがとうな、いい話聞かせてくれてよ。オレァ帰るからな、あばよ」

 

「おいおい、八五郎さん、玄関の戸を閉めて行きなさい」

 

「何言ってやんでえ。オレが玄関を閉めなかったって思うから腹が立つんじゃねえか。天が閉めなかったと思いやがれ!」

 

「なんて乱暴な人だ」

 

このシーンを最初に聞いた僕は、

すご〜くショックを受けて、

その後の人間観察とか、

創作活動のベースになってしまったぐらいだもん。

 

基本僕も短気な人間だよ。

 

 

貧乏だけどね。

 

色々憤りを覚えることが多い。

 

とはいえ、

怒りって当事者しか理解しえない部分が大きいから、

人に聞いてもらおうなんて、

そう言う図々しい了見は少なくなっているけどね。

 

これ以上怒ったら、

真剣に面白くない人生になりそうなんて不安になると、

僕はアンリ・ルソーの絵をPCの画面に貼り付けて、

怒りの感情を浄化しようと努力する。

 

 

そうでもしないと本当に怒りで前後不覚になりそうなぐらい、

僕は短気なんだよ。

 

だけどさ、

僕の怒りの感情も極個なところで燃え上がったり、

冷めたりするわけで、

僕も他人の憤りには冷静になっちゃうもんだ。

 

前回のブログで紹介した例の盗作問題だけど、

僕も渦中の人間なんだけど、

それを一番に見つけたお世話になっているT編集長が、

やっぱり一番憤りが激しいわけよ。

 

その上、

10年ぐらい前の雑誌の原稿なんて、

正直僕はどう言うお話を書いたのか、

記憶さえしていないし、

 

「おそらく、今より下手くそな文章だっただろうな」

 

ぐらいの認識しかないわけじゃん。

 

憤りのタイミングみたいなのを、

完全に逸しているわけ。

 

そんな状態で前回T編集長と電話で話をしたわけさ。

 

おそらく、

僕が冷静に話をすることに、

T編集長は違和感を覚えたと思う。

 

「井上のバカは盗作されたのに平気でいやがる。アイツはことの重大さをわかっていないんじゃねえか?」

 

おそらく、

それぐらい考えちゃったに違いない。

 

憤った時って、

その怒りが極個であろうと、

パブリックなものであろうと、

共感してくれる人が欲しいわけじゃん。

 

その共感という部分では、

T編集長の子分歴が長い僕が、

一番シンクロするはずだってT編集長は思っていたはずだし、

またそういう立場にいるほど、

僕はT編集長に30年近くお世話になっているわけだよ。

 

その上原稿を無断でまるまる使われている作家の一人だしね、

僕は。

 

怒りの温度差を感じながら僕との電話を終えたT編集長だけど、

昨日、

僕にもことの重大さを理解しろとばかりに、

相手側弁護士からの回答書を添付して、

僕んところにメールしてきたんだよ。

 

 

で、

その回答書を読むとさ、

僕もカーッと頭に血が上っちゃって、

前後不覚に陥る寸前になっちゃった。

 

盗人猛々しいって言う言葉がぴったりな言い分で、

悪びれた部分が一つもねえんだ。

 

人間の関係なんてさ、

ほとんど、

 

「悪かったね〜、迷惑かけてスマンかったです」

 

って謝罪があれば、

 

「済んだことはしょうがないけど、もうしちゃダメだよ」

 

ぐらいなところで落ち着くはずなんだよ。

 

ところが、

その回答書は、

まるでT編集長や、

作家の僕らが言いがかりをつけていると言わんばかりの内容なんだよ。

 

こうなると、

ぶん殴っても腹の虫が収まらないってなるのが人情だよ。

 

僕はすぐにT編集長に電話をかけたよ、

怒りの共感者となってね。

 

「あ、井上、読んだ?」

 

「読みましたよ。あまりにも悪気のない泥棒っぷりに呆れ果てました。盗人猛々しいってのはこのことですよね」

 

「本当に悪気のない泥棒だよね。少し悪びれたところがあれば可愛げもあるけどさ」

 

「しかし、先方の弁護士もこの回答書の書き方はないでしょう?」

 

「こういう訴訟に慣れている典型的な悪徳弁護士だよ、こいつはさ」

 

「いや、Tさん、弁護士はほぼ悪徳ですよ」

 

「そりゃあそうだけどね、ウヒヒ」

 

「マジで僕が東京にいたら、Tさん誘って殴りに行こうって言いますよ」

 

 

「腹立つだろう? オレ、こいつらに会ったら、『この泥棒野郎!』って絶対に言ってやるからね」

 

ここにきて、

僕の冷静スイッチがまた入っちゃった。

 

「Tさん、それダメですよ。それを言っちゃあおしまいの世界ですよ。相手はそう暴言を吐くのを待ってるかもしれませんよ。それを言っちゃあ思う壺で、最初の訴えなんかを棚上げして、名誉毀損だとか、誹謗中傷なんてな話にすり替えちゃうかもしれませんから。OJ・シンプソンの殺人容疑がいつの間にか人種問題にすり替えられちゃうのが裁判ですから」

 

 

「そうかな?」

 

「そういうもんでしょう。どう考えても、この回答書は、そうやって訴えた側を自爆させようって挑発しているとしか思えませんからね。こちらも弁護士に任せておきましょう」

 

「そうだな。まあ、そういうことになってるから、長丁場になるかもしれないけど、井上もよろしくな」

 

そういう感じで電話を終えたんだけど、

不思議なことに僕の冷静ボタンが作動したんだよ。

 

そご〜く憤っているはずなんだけど、

やっぱ、

まだT編集長とは温度差があるのかな?

 

そんなことはないと思うけどね。

 

その証拠に、

昨日はそれから腹の虫が収まらず、

テレビを観ても、

なんか悪意に満ちた言葉が口をつきそうになるんだよ。

 

一番ひどかったのが、

BSジャパンで放送していた『スモーキング』ってドラマを観ていた時だよ。

 

画面に橋本マナミが出てきたんだよ。

 

 

僕はこの橋本マナミが、

どうも好きになれないと言うか、

橋本マナミをいいと思うような、

センスの悪さは持ち合わせていないってのが、

僕の矜持なんだけど、

昨日は独り言で橋本マナミ攻撃が始まっちゃった。

 

「この女、絶対にエロっぽさはビジネスで、家に帰ったら、絶対に裏起毛だとか、遠赤外線下着だとかで生活しているぜ、絶対に! ノリが巣鴨の刺抜き地蔵なんだよ! 乳がちょっとデカイぐらいでいい気になるな! 根性あったら片山萌美と勝負せんかい、このクソババアが!」

 

こう言うのって、

なんの根拠もない誹謗中傷って言うんだろうな。

 

気をつけなきゃ。

 

しかし、

橋本マナミって、

マジで僕の中では、

巣鴨な臭いしかしないんだよなあ。

 

あれ、

今日のブログのテーマは、

橋本マナミ遠赤外線下着説だったっけ?

 

まあいいや。

 

 

BGMはザ・クリケッツで、『アイ・フォウト・ザ・ロウ』をどうぞ。