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心理コンサルタントのしらたきです。
さて、『子育てと親子の対立』の記事の続きを書く前に、
人間の機能において、説明しておきたいことがある。
それは、心理学では非常にお馴染みの話ではあるが、
人は、一般的に、
他人の好意には好意で報いようとし、
他人の嫌悪には嫌悪で応じようとする、ということだ。
これを『好意の返報性・嫌悪の報復性』と言う。
自分を好きな人に対しては好意を抱くようになり、
自分を嫌いな人に対しては自分も嫌うようになる、
とよく言われているやつだ。
そして、
この行動を支えているのが、
脳の中にある『ミラーミューロン』と言われる細胞である。
ミラーニューロンをごくごく簡単に説明すれば、
この細胞は、
自分がある行動をしているときに発火するのだが、
たとえ自分がその行動をしていなくても、
他人が同じ行動をしているのを見ているだけでも発火する、
という不思議な細胞である。
つまり、頭の中で他人の行動を真似しているわけだ。
このように、私たちは、
頭の中で他人の行動を模倣し、シミュレーションすることによって、
他人の行動の意味や意図を理解することができる。
ミラーニューロンはそのための細胞である。
それゆえ、別名を『物まね細胞』とも言われている。
このミラーニューロンの発見によって、
今までジャン・ピアジェ氏が提唱していたことが、
間違いであると考えられるようになった。
彼は、
「赤ちゃんは学習によって模倣することを学ぶ」
と唱えたが、
今では、
「赤ちゃんは、模倣することによってものごとを学習する」
と考えられている。
実際、生後間もない赤ちゃんも、
母親の表情をまねすることができる。
母親が微笑みかけると赤ちゃんも微笑む。
そして、赤ちゃんが笑うと母親も笑う。
こうして、お互いを模倣し合うことによって、
母親と赤ちゃんの間には信頼感や親近感が養われていく。
社会性の生き物である人間にとって、
他人を模倣することは重要な機能なのである。
私たちは、他人を模倣することによって、
共感や協調性を育んでいく。
好意を寄せているカップルが、
お互いを真似し合うのはこのためだ。
また、
好きな芸能人や尊敬する人の行動を真似したくなるのもこのためである。
私たちは、知らず知らずのうちに、
他人の行動を真似ている。
そのために、私たちは、
相手の表情の中に『怒り』や『侮辱』の感情を見たときには、
その表情を頭の中で模倣し、相手の意図を理解した上で、
自分も同じ表情で応じようとする。
また、
相手の笑顔を見たときには、
その笑顔を頭の中で真似しているために、
自然と自分も笑顔になるのである。
それゆえ、
社会性の生き物である人間にとって、
笑顔とは、
人と人とを結び付けるとても重要なアイテムとなるのだ。
【参考文献】
- ミラーニューロンの発見―「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)/早川書房
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