饒速日神は「十種の神宝(とくさのかむたから)」を携え、多くの随伴神とともに降臨しました。
石上神宮の主祭神三柱のうちの布留御魂大神は、この十種の神宝のことです。
先代旧事本紀では「天璽瑞宝十種(あまつしるしみずのたからとくさ)」と記されます。


【十種の神宝】
■沖津鏡
太陽の分霊であり高い位置に据える。
また沖津鏡と辺津鏡を1枚のものとみて、表側を沖津鏡、裏側を辺津鏡とする考え方もあります。この場合は表側は人の「身」を映し、裏側は人の「心」を映すとします。
唐古鍵遺跡出土の土器に描かれる楼閣の頭頂部に相似しているとの指摘も。

■辺津鏡
自身の顔を映し生気・邪気を量るものであり身辺に据える。

■八握剣 (やつかのつるぎ)
悪霊を祓い国家の安泰を祈る剣

■生玉 (いくたま)
神と人とを繋ぐ役目の光の玉、神の言葉を心で聞くことができる。または長寿のための玉。男根を表したものとも考えられています。
八十嶋祭の生玉神(生國魂神社などに祀られる)は、この玉を神格化したものではないかとする説があります。

■足玉(たるたま)
すべての願いを叶える玉。その形体を具足させるための玉。
八十嶋祭の足玉神(生國魂神社などに祀られる)は、この玉を神格化したものではないかとする説があります。

■死返玉 (まかるかへしのたま)
死者を蘇らせることができる玉。
女陰を表したものとも考えられています。

■道返玉 (ちかへしのたま)
悪霊を封じる玉。
黄泉の国を塞ぐ「道返之大神」は、この玉を神格化したものではないかとする説があります。

■蛇比礼 (おろちのひれ)
魔除けの布。
元々は古代たたら製鉄を行う際に、溶鉱から身体を守るための前掛けであったとも考えられています。
そこから転じたのか、地から出てくる邪霊(蛇も含むのか)から身体を守るものとされたようです。
また大國主神がスサノオ神から与えられた試練にから逃れるために、スセリビメが渡した「比礼」との関連も考えられます。

■蜂比礼
魔除けの布。
蛇比礼に対して天からくる邪霊から身体を守るものとされたようです。
こちらもスセリビメが渡した「比礼」との関連も考えられます。

■品物之比礼 (くさぐさのもののひれ)
さまざまな物を浄化させる布。


国家の隆盛も興亡も思いのままにできるほどの霊力が備わった神器。皇位の正当な継承者であると考えられていたのかもしれません。
あまりに多説出されており、結局のところよく分からないというのが現状。卓見に値する情報が見つかれば、都度加筆修正を行います。


籠神社に伝わる「息津鏡・辺津鏡」を十種の神宝の鏡とする説があります。

◎三種神器の鏡・剣・勾玉は、この十種の神宝のうちの三種のことではないかとする説があります。

◎秋田県の唐松神社には奥津鏡・辺津鏡、十握剣、生玉・足玉を所蔵しているとしています。
また伝説の「物部文書」も所蔵しています。

◎河内国の盾原神社は境内社の神寳十種之宮に、古道具屋でたまたま見つけた十種の神宝を祀るとしています。
これについては石上神宮から変換要求が出されています。

◎伏見稲荷大社には境内社の伏見神宝神社に、十種の神宝を祀るとしています。