(日本総鎮守とも言う 伊豫国一宮 大山祇神社)




■表記

紀 … 大山祗神(オオヤマツミノカミ)

記 … 大山津見神

大山積神とも表記される他、和多志大神(ワタシノオオカミ)、酒解神(サカトケノカミ)などとも



■概要
およそほとんどが山で成り立つ日本国土の、その「山の精霊」として君臨する神。
◎「津」は現代語の助詞「の」に相当、つまりは「大いなる山の神」。一方で和多志大神とも崇められ、「和多志」は「渡し」の意味であり、海神でもあります。
◎記では伊邪那岐命と伊邪那美命による「神生み」で13番目に生まれた神。
大綿津見神(海神)、速秋津比古神・速秋津比売神(水門神)、志那都比古神(風神)、久久能智神の後に生まれ、大山津見神の後には鹿屋野比売神(野の神)が生まれています。
◎紀では伊邪那美命を失う原因となった迦具土神を、伊邪那岐命が斬った際に生まれた神として、正鹿山津見神(頭)・淤縢山津見神(胸)・闇山津見神(陰)・志藝山津見神(左手)・羽山津見神(右手)・原山津見神(左足)・戸山津見神(右足)の八柱が生まれています。「火」と「山」つまり「火山」が連想されます。
◎妻神は鹿屋野比売神。天之狭土神・国之狭土神、天之狭霧神・国之狭霧神、天之闇戸神・国之闇戸神、大戸惑子神・大戸惑女神の八柱が生まれています(記による)。
これら八柱とは別に、オオヤマツミ神の子であると名乗る神が随所で登場します。スサノオ神の大蛇退治で登場する櫛名田比売の父母 足名椎・手名椎(アシナヅチ・テナヅチ)、スサノオの二番目の妻となった神大市比売神、瓊瓊杵神に差し出された磐長姫・木花之佐久夜毘売姉妹(磐長姫は容姿が醜いと追い返される)。
◎また、木花開耶姫が彦火火出見神を生んだことを喜び、天甜酒を造り神々に振る舞ったとされることから酒解神とも呼ばれています。
◎「伊豫國風土記」逸文には、「伊豫国乎知郡御島に坐す大山積神は仁徳天皇の御世、百済より渡来し津国の御島に鎮座していた」(大意)とあります。「伊豫国乎知郡御島」とは瀬戸内「大三島」のこと、大山祇神社が鎮座します(オオヤマツミ神の総本社)。「津国の御島」とは摂津国三島のこと、三島鴨神社が鎮座します。
これを信用するならオオヤマツミ神は古墳時代の渡来系帰化人。或いは事績から鑑みるなら一時期(後裔が)朝鮮半島に渡っていたということかと。
◎日本の農村には古来より「山神信仰」というものがあり、その「山神」にオオヤマツミ神が宛てられることもしばしば見受けられます。その「山神」とは麓に暮らす人々の「祖霊」でもあり、田植えの時期には田に降りてくる「穀霊」ともなります。また林業や採鉱業に携わる人々にとっては「守護神」であったりもします。
これらはあくまでも自然神の山神であり、人格神のオオヤマツミ神と習合していったものと思われます。


■祀られる神社(主要社のみ)
[陸奥国] 湯殿山神社(記事未作成は)
[丹後国熊野郡] 三嶋田神社

[大和国] 大和国の山口社(論社を含め全17社)
[摂津国] 三島鴨神社
[伊豫国] 大山祇神社 … オオヤマツミ神の総本社
*その他全国で多数祀られています。