お盆休み中に繰り返し聴いたCD
今年のお盆休みは前半は馬鹿みたいに暑かったり、中盤から後半は台風の影響があったりで外出するのも何かと億劫になり・・・今年購入したCD(主にジャズ)を聴き直していました。
まぁジャズだけでザックリ90枚程度なので全部が全部聴き直せた訳ではありませんが、その中でも気に入り何度か繰り返し聴いた作品もありました。
それが以下の作品です。
まずはピアニスト上野香織さんの「BLACK HEART Live at Twilight」。
メンバーはピアノが上野香織さん、アルトサックスがPatrick Bartley Jr.、ベースがNoah Jackson、ドラムが木村紘さん、ゲストドラムが岡部朋幸さん。
軽妙に始まる1曲目の「Sweet Pumpkin」は進行をしていくにつれて熱を帯びていく演奏はライブならではの高揚感。
メンバーとの息もばっちりでソロ前にビシッと決めてくれるところなんかゾワッとするほどの気持ちよさがあります。
2曲目の上野さんのオリジナル「My Little Sundhine」も可愛らしく美しいメロディーで、どこか儚さも感じる素晴らしい曲なのですが、それがどんどんと雄大に展開していくところなんか聴いていて胸が熱くなってきます。
ライブ録音らしく1曲当たりの演奏時間が短いものでも9分、長い曲だと15分ほどあるのですが、どの曲も演奏時間を全く長いと感じない表現力のすばらしさを実感できる1枚です。
また、音も凄い。
芯のあるピアノの音色はしっかりと収録されていながら、ややもすると強調され過ぎなのではないかと思われるようなベースの重低音も、全ての音の軸がピアノにあり、ドラムのスネアやシンバルなどの音の粒立ち、繊細さも余さず収録されているため、ボリュームを上げてもベースの重低音がほかの楽器の邪魔をすることなく、ライブ会場の熱気の一端をじっくりと堪能できます。
次はアメリカ人ピアニストRichie Beirachの「LEAVING」。
本作はRichie Beirachによるピアノソロのライブ盤。
昨年7月、Beirachが75歳の時に録音された作品で、ピアノソロ作品は1981年に日本でのみ発売された「Live in Tokyo」以来らしい。
1曲目のNardisからキャリアと実力を感じる変幻自在なメロディー展開が素晴らしく、ピアノソロ作品を聴いていることを忘れてしまうほど魅力的な音の数に圧倒されてしまいます。
2曲目はWhat Is This Thing Called Love?からAlone Together、Blue In Greenと流れるように展開していき、あまりの自然さに最初から1つの交響曲だったのではないかと錯覚するほど。
他にもRound MidnightやOn Green Dolphin Street、Solarなどの名曲が立て続けに演奏される本作は、ピアノソロ作品にありがちな「オリジナル曲ばかりでとっつきにくい」というジャズファンの方でも楽しめる構成になっていると思います。
展開が目まぐるしいので「これからジャズを聴いてみたい」という人には少し難しいかもしれませんが、でも、ピアノが好きであればどこかのタイミングで聴いてみてもらいたい1枚です。
3枚目はフランス人ピアニストSimon Chivallonの「Esquisses」。
1曲目のオリジナル曲「La Cible」は演奏前の椅子に座る音やスタジオの音全てが繊細に収録されており、耽美的な美しさを持つメロディーと相まって本作のスタートを切るにふさわしい曲でした。「さぁ、これからSimon Chivallonという人の演奏を聴くぞ!」という期待感に満ち溢れてきます。
2曲目の「Les Passantes」も曲の持つ少し不思議なメロディーの世界観に変な小細工なしに引き込んでくれるSimon Chivallonという人の感性と演奏に、ただただ魅せられてしまいます。
ショパンの曲も2曲ほど演奏していますが、曲の展開が見事でショパンの曲でありながらSimon Chivallonの作品として完成していて素晴らしいの一言。
前述のとおり、とにかく椅子に座る音の1音1音も漏らさない美しい録音で、ステージのすぐ近くで、目の前にピアノが現れるような非常に繊細で収録現場の空気を感じることができます。
本作、かなり好きです。
最後はピアニスト豊秀彩華さんの「それから」。
気付けばピアニストの作品ばかり聴いていたんだなぁ・・・。
昨年の11月に蕨のライブハウス「OurDelight」で豊秀さんの師匠、守屋純子さんとのTwin Pianoライブで初めて演奏を聴き、その際に「来年CDを出します」と聞いていたので楽しみにしていました。
ライブの際には師匠に気を使ったのか、守屋さんをサポートするような演奏が目立っていましたが、音のチョイスなど非常にセンスが良かったので、あの子がどんなリーダーアルバムを出すのか・・・楽しみにしていました。
で、7月に発売されるや速攻で購入し、それ以来定期的に聴いているアルバムです。
メンバーはピアノが豊秀彩華さん、サックスは江澤茜さん、ベースは手島甫さん、ドラムは山崎隼さん。
1曲目のオリジナル曲「春の波」冒頭から「そういう入り方するか!?」とただただ感心。ジャズらしくないというか、日本的というか、クラシック的でもあるメロディーをピアノソロで重厚に演奏し、その後この曲がジャズとして展開していく気持ちよさったらありません。江澤茜さんのソプラノサックスの入り方も絶妙で最高です。
そしてそんなオリジナルで気持ちを持っていかれたと思ったら、2曲目はチャーリー・パーカーのDonna Leeでどジャズまっしぐらなビバップの楽しさ全開の演奏で楽しませてくれ、そうかと思えば3曲目は竹内まりやの「駅」です。
竹内まりやの「駅」をDonna Leeの次に持ってこようなんて、だれが考えたんでしょうか。しかもそもそもこの選曲って誰の影響??
ともかく、この「駅」の演奏も素晴らしく、江澤さんのソプラノサックスもそこまで感情的ではない非常にシラフ(?)の演奏でメロディーを吹き始めるのですが、演奏が進むにつれバンド全体が熱を帯び、気づけば江澤さんのサックスの情感的なことと言ったら、惹き込まれないわけがありません。
個人的に、今、イチオシの作品です。
今回はお盆休み期間中の限られた時間の中で特に気になって繰り返し聴いた作品なので、他にもたくさんの素晴らしい作品があります。
なのでそれらはまた別の機会にご紹介できれば・・・・
頭外定位イヤーピース『JIJU JET-2』を買ってみた
2019年にLIZER LABの頭外定位イヤーピース『JIJU』を試してみましたが、そのときは音像の変化などが面白くて何度か使いましたが、やはり装着感に馴染めずに使わなくなっておりました。
そんなJIJUが数度のバージョンアップを経て『JIJU JET-2』として発売されるということで、クラウドファンディングで募集が掛かっていたので申込みをしておりました。
実際のモノは先月届いていたのですが、仕事でバタバタしていたり、JIJUを試した際に使っていたNOBLE Audioのイヤフォン「FALCON」がどっかにいってしまって見つからなかったので試せずに居りました。(NOBLE Audioの「FoKus Pro」はサイズが合わずに取り付けできなかった・・・)
ちなみに、届いたときに旧JIJUと並べて色々比較写真を撮ってましたので、まずはそちらから・・・。
封筒から取り出して中に入っていたヤツはコイツ。
えぇと・・・なんか見覚えがあるなぁ・・・と思いながらビニールから取り出してみたところ、見覚えのあるケースが登場。
あれぇ・・・?
もしかして??
と、以前買ったJIJUを探し出して並べてみたところ・・・
ケース、全く同じ。
シャッフルをした覚えはないのですが、この時点で左右のどちらが新しいJIJU JET-2か分からなくなってます。
多分、右側の方が微妙に新しそうな気がするから・・・右のケースがJIJU JET-2のはず!!
はい、残念。
間違いでした。
左側のイヤーピースが2セット(LサイズとMサイズ)入っている方がJIJU JET-2でした。
いやいや、ケースが同じだからシャッフルしたが最期、開けてみるまで分からんよ、これは。
JIJUとJIJU JET-2を並べてみるとシリコンのイヤーカップ部が黒いのがJIJUで白っぽく透明な方がJIJU JET-2になります。
取り出してみるとイヤーカップの開き方や、中央部の突起(フェーズプラグ)の形状も違うことがよく分かります。
装着していないから耳垢とか付いている訳じゃないのですが、ホコリっぽい床に落としちゃったらホコリがいっぱい付いちゃった・・・。
ちなみに、中央のフェーズプラグの形状はイヤーカップをひっくり返してみるとよりよく分かります。
右側のJIJUのフェーズプラグは先端が丸く頂点に小さな穴があるだけですが、左側のJIJU JET-2ではフェーズプラグの先端が三角錐状になっていて中央の穴以外に側面に大きな穴が空いています。
これだけでも音の出方が随分違うだろうなぁと推測できます。
ここまでが7月3日の夜までのお話。
で、お盆休みに入るし、そろそろいい加減に試してみようかな・・・と、まずはJIJU JET-2を試す環境整備から始めることに。
前述の通り、JIJUを試した際に使っていたFALCONはどこかに飛んでいってしまいました。(マジでどこ行ったんだろ?)
なので、JIJU JET-2を試すためのイヤフォンから調達をしなければならない訳です。
いろいろと探していたのですが、如何せんイヤフォンは移動時に音楽を聴くためだけにしか使わないので、そんなにコストをかけるつもりもありません。
また、ワイヤレスイヤフォンはNOBLE AudioのFoKus Proで満足しちゃっているので、今更他のワイヤレスイヤフォンを買うつもりもありません。
・・・さて、どうする?
困りつつ、たまたま見ていたインプレスのAV Watchを眺めていたらqdcの「Superior」がイイぞという記事を見つけ、ソッコーで購入をしてみました。
尚、今回のブログはあくまで「JIJU JET-2」の使用感に関するネタなので、qdcのSuperiorのレビューに関しては私も購入の参考にしたAV Watchの記事をご覧下さいませ。
私も概ね同意見です。
でも、価格帯が違うから同一視できないけれど、やっぱりNOBLE AudioのFoKus Proって出来が良いんだなぁ・・・と、実感。
さて、Superiorを開封するとqdcのイヤフォンケースが登場します。
そんなに高級感はないものの、約1万4千円のイヤフォンのケースとしては表面の布感などの手触りは結構好感が持てます。
で、中にはSuperior本体とお掃除用のブラシが入っていました。
イヤフォンのシェルはそこそこ高級感があり格好イイです。
黒いバージョンもあったのですが、赤で正解だったかな。
因みにイヤフォンケーブルは汎用性のあるIEM 2pin(4.4mm)なので、様々なケーブルをつなぎ替える楽しみも有りそうです。
私も某社の某ケーブルを買いましたが、今回のレビューに含めちゃうとややこしいのでまたどこかの機会で・・・
イヤフォンケースでは無く、箱の方には交換用のイヤーピースがサイズ別に入っておりました。
今回は使わないけど。
さて、前置きが相当に長くなりましたが、いよいよ本番です。
まずはSuperior標準のイヤーピースで各曲を聴き、まずは初代「JIJU」を装着してSuperior標準の状態との聴き比べです。
やっぱり、こうやって実際に装着するとかなり異様な見た目よね。
3年半以上ぶりに耳の穴にJIJUを入れますが、そう・・・この異様な装着感。
決して心地良い装着感ではなく、通常のイヤーピースよりも耳の中の異物感は相当なモノが有ります。
長時間装着すると耳、痛くなるかも・・・と、不安になるほど。
まずはジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーンフィル交響楽団の「JOHN WILLIAMS IN VIENNA」からスター・ウォーズのテーマを。
出だしのファンファーレから耳にへばりついていた音がほんの少し外に定位してステージが広がりました。
が、低音の量感がかなり減衰し、オーケストラの持つ迫力が無くなってしまいます。
中~高域に関しても僅かに減衰をしていますが、音の粒立ちなどはしっかりとしているのでなんとか聴けます。
でも、せっかくオーケストラ作品を聴いているのにこの迫力の無さは・・・悲しいなぁ。
次にBABY METALのイギリスでのライブ盤「LIVE AT WEMBLEY」から、最終曲のRoad of Resistance。
曲前のアナウンスと会場の歓声が若干耳の外から聞こえてくるのですが、低音が引っ込んでしまっているので歓声や拍手もパラパラとどこか他人事で没入感に欠けてしまいます。
演奏が始まってもメタルならではの重低音がどこかに行ってしまっているので、まったく音楽を聴いている感じがせず、これは相性最悪でした。
次は声楽もので、ソプラノ歌手佐藤美枝子さんの「さくら横ちょう」から1曲目のさくら横ちょう。
この曲はソプラノ歌手のボーカルとピアノによる演奏なので、低音の減衰による作品イメージの崩壊はありませんでした。
元々非常に静かなピアノの伴奏と佐藤さんの透き通ったソプラノボイスで歌い上げる作品で、ステージも広く奥行きを感じる録音なのですが、これはJIJUと相性が良く、耳と頭の中に定位していたステージ感がスーッと耳の外に抜けていく感覚で、美しい音の響きと広がりを楽しむことが出来ました。
次はジャズピアニスト上原ひろみさんのピアノソロ作品「Spectrum」からBlackbird。
この曲はバラードでは無いけれど、上原さんの力強くスリリングな演奏・・・ではなく、美しく温かいメロディーをゆったりと聴かせてくれる演奏なので、重低音成分はほとんど無いのですが・・・
中央に設置されたピアノと、そこから発せられる音がフワッと響き渡るステージ感の広がりが心地良かった・・・のですが、やはり低音がスポイルされるというのはピアノの左手の音に影響が有るモノで、頭の中に定位しているのにどこか遠くで演奏をしている様に感じてしまいます。
総じて音は耳から少し外側に広がりを感じるのですが、低音の減衰はかなり致命的で使うことのデメリットの方に目が行ってしまいます。
では、今度のJIJU JET-2はどこまで進化を果たしたのでしょうか!?
SuperiorからJIJUを取り外してJIJU JET-2を装着します。
やっぱり存在感あるなぁ・・・
耳に入れる際の違和感もあまり変わらないかな。
このイヤーカップ、耳の中ではどんな形状になってるんだろ??
何はともあれ肝心なのは音です。
まずはジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーンフィル交響楽団の「JOHN WILLIAMS IN VIENNA」からスター・ウォーズのテーマ。
おっ!?
出だしからJIJUとは全く違う「迫力」を感じます。
低音の減衰がJIJUに比べると非常に少なく音場の広がりはしっかりと感じるので、オーケストラならではの迫力やホールの広さもしっかりと楽しむことが出来ます。
また、音の解像度も格段に上がっており、各楽器の音が団子にならずに一つ一つが綺麗に聴こえてきます。
頭外定位に関しても、元祖JIJUよりも若干耳の外側に音が広がっていくので、オーケストラのようなホールトーンが重要な作品にはメリットが大きいかもしれません。
次にBABY METALの「LIVE AT WEMBLEY」から、最終曲のRoad of Resistance。
こちらも低音の減衰が少なくなったことで、演奏前のアナウンス、歓声や拍手に厚みが出てグッと実在感が出てきました。
標準のイヤーピースに比べると低音が減衰しているので迫力だけで言えば、標準のイヤーピースを使った方がメタルの重低音を楽しめるのですが、よくよく聴いてみると標準のイヤーピースで聴くよりもJIJU JET-2で聴く方が音の解像度が高い気がします。
こうやって聴くと、標準のイヤーピースはあまり解像度が高くないのかもしれません。
ただ、とにかくメタルならではの熱い、厚い音を楽しみたい!ということであればJIJU JET-2よりも標準のイヤーピースの方がメタルらしい音を楽しめそうです。
次はソプラノ歌手佐藤美枝子さんの「さくら横ちょう」から1曲目のさくら横ちょう。
こちらはJIJUでもかなり相性の良かった作品で頭外定位をじっくりと楽しめましたが、JIJU JET-2になると更に音の解像度が上がって左右へのステージが広がったため、ピアノの位置と佐藤さんの立ち位置がしっかりと定位し、声が響いて左右のホールの端に消えていく様がしっかりと描かれています。
ピアノの左手の音も厚みが出てきたため、この作品を聴くときはJIJU JET-2に替えなきゃダメかな・・・と感じるほどに歌声に浸ることが出来ました。
最後は上原ひろみさんの「Spectrum」からBlackbird。
こちらも「さくら横ちょう」と同じような方向性でJIJU JET-2の魅力を感じることが出来ました。
しかし、この曲の演奏自体、パワフルで情熱的な上原ひろみさんの演奏を堪能する曲では無いため、タイトル曲の「Spectrum」を聴いてみることに。
冒頭から低域鍵の強打から始まる力強い演奏なので、低域の減衰が気になるかな・・・と思いましたが、JIJU JET-2の空間表現力の高さと解像度の高さのおかげでそこまで気にならず、一気に聴いてしまいました。
この作品、オーディオで聴くときにはボリュームを大きめにし、低音鍵の強打で体に振動を感じるくらいにして聴くと上原ひろみさんとピアノが眼前にドン!と現れるのを楽しんでいるのですが、それとは異なる「空間の広がりを家の外に持ち出せる」という楽しみ方を外に持ち出せるというのがこのJIJU JET-2のメリットなのだと改めて実感できました。
ただ、やっぱりこの形状のイヤーカップを耳に入れていると違和感が・・・
ズッと付け続けていると慣れるもんなのかな・・・
ちなみに、椎名林檎さんの「三毒史」から獣ゆく細道を聴いてみましたが・・・これはBABY METAL同様に低音の減衰が目立って音楽の音力が無くなってしまいダメでした・・・。
結構曲や作品との相性があるJIJU JET-2でしたが、相性がバッチリの作品を聴けば「これが頭外定位なのか」と、耳の若干外側に音が広がってい楽しさを味わえる面白いイヤーピースでした。
汎用性が無いのは辛いですが、イヤフォンの場合、曲によってケーブルを変える人もいるそうなので、それと同じように曲や作品に合わせてJIJU JET-2を楽しむのもアリかなと思います。
気になった方は是非、お試し下さいませ。
TALK EVENT 寺島靖国x稲岡邦彌 in diskunion Jazz TOKYO
7月14日(金)18時から、御茶ノ水にあるdiskunion Jazz TOKYOにて寺島靖国さんとECMレーベルの日本の元締め稲岡邦彌さんによるトークイベントがあるということで、仕事を定時きっかりで終えて急いで御茶ノ水へ。
寺島さんと会うのはいつぶりだろう?
去年4月に吉祥寺の「音吉MEG」で開催された山中千尋さんと宗教学者の島田裕巳さんとのトークイベントの時かなぁ。
何せ以前は毎週という感じでお会いしていたから1年以上お会いしないと「久しぶり」という感覚になってしまいます。
大慌てで出てきた甲斐あり17時50分前には御茶ノ水のdiskunion Jazz TOKYOに到着。
入り口にはちゃんと本日のイベントチラシが掲示されておりました。
・・・・寺島さん、いつの写真だよ・・・・。
ちなみに稲岡さんが4月に上梓した本が「新版 ECMの真実」。
寺島さんは寺島レコードからニルス・ラン・ドーキーの作品(ヨーロッパではLPのみでリリース)をCD化した「Yesterday's Future」が発売になるということで(本日のイベントで先行販売)2人でイベントを行うことになった様です。
それにしても、あの寺島さんがECMレーベルについて語る日がこようとは・・・
だって寺島さん、以前はECMレーベルの作品のことをケチョンケチョンに言ってたんだもの。
さて、店内に入ると階段を上ってすぐ左のレジ前にイベント用スペースが用意されておりました。
イベント開始10分ほど前ではありますが・・・・3名ほど席に座られているだけで後は・・・
まぁ、18時スタートだものなぁ・・・普通のサラリーマンはおいそれと来られる時間じゃないよなぁ。
オイラだって勤め先が隣駅の秋葉原だから何とか来られたけど、17時や17時半に仕事を終えて頑張って来ようとしても18時スタートに間に合わないって諦めちゃうよなぁ・・・。
と、思いながらイベント開始まで店内を物色。
でもなかなか新譜を買う勇気が出ない・・・・だって、ネットで注文しているCDとダブりそうで怖いんだもの・・・・
そうこうしているとなんだか見覚えのあるシルエットと頭が・・・おぉ、ジャズタクシーの藤田嘉明さん。
久しぶり!!
挨拶を交わして席に着くと、寺島さんと稲岡さんも登場してイベント開始の準備に入ります。
「なんだかずいぶん(お客さんが)少ないねぇ」
と、寺島さん。
見渡すと・・・私を含めて席に座っていたのは10名ほどでしょうか。
これはジャズ喫茶の経営で集客に苦労していた寺島さんも苦笑いをするしかありません。
とにもかくにも、いよいよイベントのスタートです。
diskunionの店員さんに促されて口火を切る寺島さん。
「私はねぇ稲岡さん、ECMの作品はジャズを小難しいものにして、結果として今のジャズ離れを引き起こしたと思っているんですが、そこのところ、どうお考えですか?」
と、いきなりの寺島節&先制攻撃です。
「するとあれですか、私は戦犯ですか?」
「そう!戦犯!!」
「じゃあ戦犯から言わせてもらえれば、ECMの作品は何も難しくないですよ。」
お二人とも絶好調(?)です。
寺島さんはECM作品の多くが、いわゆるスタンダードの演奏を中心とした作品ではなくミュージシャンのオリジナル作品が多いことにも気に入らないようで、
「私は常々、スタンダード曲の重要性を訴えてきたし、多くのジャズファンもスタンダードを求めていると思うんですが、ミュージシャンはそう思っていないようで、とにかくオリジナル曲の方が上だと言わんばかりにオリジナル曲ばかりやりたがる。これについては稲岡さんはどうお考えですか?」
「オリジナルが上だと思っているとは思わないけれど、自分が表現したい音楽、世界観、実力を表現するためにオリジナルの曲を作って演奏しているんじゃないですか。」
「いきなりそんな正論言われてもねぇ・・・(笑)。でもね、稲岡さん、私はねオリジナルをどう解釈して、どう表現をしていくかというのがジャズミュージシャンの実力だと思うんですよ。」
寺島さんお得意のスタンダードV.S.オリジナル曲論争のスタートです。
「スタンダードというのは繰り返し演奏されてきた、多くの人に愛されてきたからジャズファンはそれをミュージシャンがどう表現してくれるのかというのを聴きたいんですよ!それを、わけのわからないオリジナル曲ばかりやられてもコッチはシラケちゃうんですよ。」
観客側からは「スタンダードだってその当時はオリジナル曲だった」というツッコミも。
それに対して寺島さんは
「最近のミュージシャンのオリジナル曲っていうのはメロディーになっているのかいないのかも分からないような曲ばかりで、10曲聞いて1曲「お!」と思うものが有るか無いか。」
と返すも、稲岡さんからすかさず
「それは寺島さんが(作品を買う)見る目がないっていうだけじゃないの?」
というツッコミ。
そんな寺島さんも、トルド・グスタフセンの作品やキース・ジャレットの「Budapest Concert」で演奏されているIt's A Lonesome Old Townの演奏に魅了され、最近はECMの作品も聴くようになった様です。
会場にいらしていたお客さんからも好きなキース・ジャレットの作品は「ザ・ケルン・コンサート」だという話が出たところで、
「稲岡さん、ケルン・コンサートは売れてますよね。」
「世界レベルでみると35万枚くらいだったかな、すごく売れてます。」
「なんでそんなに売れるんですか?圧倒的ですよ。」
「音楽好きな人たちに、ジャンルを超えて愛されているからじゃないですかね。」
「なんで愛されてる?」
「彼は物心ついた頃からクラシックからフォーク、ブルースを含め様々な音楽の体験がバックグラウンドとしてある。だからそれがすべて頭に、体にしみこんでいるから、彼が生み出すフレーズにはそういった全ての音楽の体験から得たものが詰まってるんですよ。」
「確かにね、あのケルン・コンサートでもどんどんと新しいメロディーを探していっている様な感じがしますよね。あれは最初から頭の中で作り上げて、演奏で繰り広げているんですか?それとも全くそういった用意がない無の状態からその時その時で次の音を、メロディーを探していっているんですか?」
「後者じゃないですかね。」
「そうだよねぇ、そうあって貰いたいよねぇ。でも、ある時からそうじゃなくなっているんじゃないですか?」
「そうですね。彼は精神的にも体力的にもそれができなくなってしまった時期があって」
最終的に「ECMは小難しいものが多い」という寺島さんの意見自体は変わりませんでしたが、それでも以前のような「ECM作品は視界に入るのもイヤ」というわけではなく、トルド・グスタフセンやキース・ジャレットの一部の作品は絶賛するまでに変節?進化?をしているとのことでした。
他にも様々な話が出ましたが、本ブログではここまで。
イベントは大盛況・・・・とはなりませんでしたが、非常に熱く楽しいお話を聞けて非常に楽しい会となりました。
diskunionさん、どうもありがとうございました!!
で、寺島さんのイベントと言ったらここで終わる訳がありません。
稲岡さん、会場にいらしていた関係者(?)の方と2次会に突入です。
総勢7名で神保町のジャズ喫茶『アディロンダックカフェ』に移動して2次会の開始です。
2次会ではここでは書けないジャズ界の大問題についてのやり取りばかりでしたが、齢80歳にして結構ボリューミーなナポリタンを間食した稲岡さんに一同が呆気にとられていたら、
「いや、ナポリタンには思い出がありましてね・・・」
と、昔付き合っていた彼女との話になると、そういう話が大好物の寺島さんは「なんでさっきのイベントでそういう話しないの!」と満面の笑み。
他にも、昔、稲岡さんが某ジャズ雑誌で某評論家の先生からECM作品をケチョンケチョンに書かれた時には「ふざけるな!何もわかってない評論家に適当なこと書かせやがって!!今から行くから待ってろ!!」と、編集長に電話をしてタクシーで出版社に乗り込んだ話も。
すかさず寺島さんに「寺島さんだったら、どんなに悔しがっても絶対にできないですよね。乗り込むとか。」とツッコむと「だよなぁ、俺にはそんなこと、絶対にできないねぇ。」と苦笑い。
「こういうさぁ、稲岡さんの本音の部分、芯の熱い部分をもっとイベントで話してもらいたかったなぁ」
と寺島さんが悔しがると、稲岡さんは飄々と
「だって、そういう話振らなかったじゃない」
と返していました。
「やっぱりアレだな、(イベントの)第2弾をやらないとダメだな。ねぇ、稲岡さん!」
「いいですよ」
こうやって次回イベント開催が決まった(?)のでありました。
「次回はもっと遅い時間に始めてもらわなきゃダメだね」
は、お二人の総意でございました。
気付けば藤田さんをはじめ7人で来たうちの4名が帰られ、イベントには来られなかったものの2次会から参加した稲岡さんのトリオ・ケンウッド時代の後輩の方と、稲岡さんのお知り合いの画家の方の2名がさんかし、22時を回っても熱い議論(?)が繰り広げられておりました。(オイラ以外全員シルバーヘアで平均年齢80超え)
ちなみに、寺島さんがイベントでも2次会でもしきりに「そんな正論は聞きたくないよ!」と言っていたので、稲岡さんのとあるスイッチが入ってしまったらしく、「寺島さんね、いまはセイロンなんて言わないんですよ!・・・えぇと、今は何だっけ・・・えぇと、あそこ・・・えぇと・・・・・・・・・・・・・・・・あ、スリランカ!!」と、寺島さんが「正論」と言うたびに「スリランカ!」と訂正するモードに入ってしまいました。
そのたびに稲岡さんの隣の席に座っていた後輩の方が「こういう人なんですよ・・・」と苦笑い。
「そうだよねぇ、こういう人だよね、部下に鉛筆を投げつけたりね!」「そうそう」
・・・稲岡さん、昔は武闘派だったようです・・・
そんなこんなで楽しい2次会は終わり、解散となりました。
稲岡さんと部下の方は新宿線に乗って帰るということで表通りでお別れ。
私と寺島さんは御茶ノ水駅まで一緒に歩いて帰りましたが、その道すがら「いやぁ、きょうはねぇ、とっても酔っぱらってるなぁ。これがね、嫌な酔い方じゃないんだよ。実に楽しい、気持ちい酔い方だねぇ。」と気持ち良さそうに軽く千鳥足。
たまにヨロヨロっとする寺島さんを支えながらオーディオ話もしつつ、駅まで歩いて帰ったのでありました。
ちなみに、2次会で80歳メンバーが激論(?)を交わしている最中に隣の席に2人連れのお客さんが来たのですが、こちら側の席に置いていてdiskunionの紙袋(稲岡さんの荷物)を見たお客さんが「あ、diskunionの紙袋。もしかして寺島さんのイベントの帰りかな。」と話していたので、「あ、本人たちが2次会やってます」と説明をしたら驚いていたのが面白かった。
そのお客さんも最後までは居なかったらしいのですが、イベント中のJazz TOKYOにいらっしゃってイベントの様子を眺めていたそうです。
それにしても稲岡さんが80歳、寺島さんは85歳・・・・80代ってこんなに若くてエネルギッシュで活動的だったっけ・・・と、圧倒される45歳なのでありました。
寺島さん、次はオーディオイベントでお会いしましょう!!