サバゲー用自衛隊装備紹介(その8・背嚢編) | ちょんまげインプの部屋

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これであなたも立派な変態。
今後ともどうぞよろしくっす。

(以前、ちょんまげのついたインプレッサに乗っていたのでこんなタイトルです)

サバゲには全く不要なうえにむしろ邪魔になるものの、やはり陸自装備勢としては気になる「背嚢(はいのう)」。
自分としてはサバゲに使わないモノは全く興味がなかったのですが、数々のミリフォトを見てしまうと実に興味深く、いろいろ探求することになりました。
しかし陸自の背嚢は、仕事で使っている(いた)方々にとっては当たり前すぎるのでしょう、そして仕事で使ったことのない我々民間人には全く分からないからでしょう、詳しくまとめているサイトが見当たりません。
というわけで、今さら感が高いのですが、陸自の戦闘背嚢について解説したいと思います。


*73式背のう
OD装備の昭和自衛隊装備に欠かせない、グレーの背嚢。
名称の通り、1973年に採用されたもの。


頑丈なビニロン帆布製で、簡単に言えば長方形の箱の左右と後方に大きなポケットをくっつけたような形状で、横長になっているのが特徴です。


これは、隊員が腰につける水筒や弾入れなどの各種装備に干渉しないためのようです。
正面から見て左側のポケットには、エンピを挿す用の穴が開いています。


なお通常は、座った際に干渉しないためにエンピの柄を上に向けて収納しますが、雨天でポンチョを被る時は、柄を下にして挿せます(座る時どうするんだろう。雨中だから座らないということかな?)。


正面は飯盒を入れます。


右はなんでしょうね、糧食や雨具を入れるのでしょうか。

頑丈なのはいいのですが、横長のせいか背負うとどうもしっくりこず、安定性としてはイマイチ。
また腰で支える部分が皆無で、荷重が全て肩にかかるのも難点。
背負っている写真を見ても、重心が後方に寄って見え、これは相当に重く感じられるだろうなあと思いました。
今は当然新品で購入はできませんし、PX品なども出回っていないので、中古購入しかありません。
とはいえかなり頑丈なので、ボロボロでも十分に使えるため、見つけたら入手することをお勧めします
まあコスプレをするでもなければ全くお勧めはしませんが(笑)



*戦闘背のう(一般用、1形)
90年頃に陸自装備が「2型」装備に様変わりしましたが、背嚢も現代風な縦長のものに変りました。


これが戦闘背のう,一般用(1形)。

一般用の他は空挺用があります。
1形は一般的な徒(かち)隊員が使うもので、2形は車両移動がメインの隊員が使う、ボストンバッグ状のもの。

2形は背のうとは言うものの、基本的には車両への収納を優先した箱状の形なので、果たして背負えるのかどうか。


さてこの戦闘背のうは、それまでの73式から比べて全く別物に進化しました。
重量物を背負いやすい縦長になり、外側にいろいろと装具を取り付けることができるようになっています。
体格に合わせていろいろと調整もできるようにもなり、使い勝手としては格段に改善されました。
容量は40ℓとなかなかのものですが、パンパンに詰めたりあれこれ取り付けると、30kgにもそれ以上にもなるそうです。
さすがに背負いやすくなってもその重さにはシビれますが・・・。
生地はビニロンからポリエステル(難燃・対IR・防水仕様)になったのですが、耐久性としてはビニロン背嚢にはかないません。
なお、2型装備に更新された時の戦闘背のうは、各種のテープが明るいベージュで光沢があるのが特徴。
私にとってもこの色合いが最も馴染みがあります。
同時代の戦闘雑のうも、同じ色合いの部材が使われていますね。
PX品も存在しないので、入手はかなり困難と言えます。

2000年代の後半になると、ポリエステル生地はそのままに、テープがやや黄緑色っぽくなったものに変りました。


 

そして近年のテープ迷彩化の流れに伴い、戦闘背のうもテープが全て迷彩になり、バックルもグレーから黄土色っぽくなったものに変りました。

しかし迷彩テープはなんかこう、キモいです(笑)

基本的な造りは同じですが、バックルが新しくなっています。

従来はニフコのSR-25SというOD色のサイドリリースバックルでした。

SR-25のショートタイプということで「S」だそうで。

それがなぜかYKKの市販されていないものに代わっています。

この二種類のバックルはパッと見ぜんぜん違うように見えますが、

↑のように新旧のバックルは互換性があります。

同じものでいいのに、なんでまたわざわざ新たに専用開発してるのだろうか・・・。

 

内張りの防水コーティングは、見た感じや触った感じは同じもののように思えますが、初期型より中期型のほうが加水分解しにくくなっているとか…。

3世代を並べてみます。

迷彩テープは一見別物のように見えますが、造りは全く同じといって差し支えないでしょう。

 

ちなみに近年、水陸機動団向けの背嚢も登場しています。

(画像はとある方にいただいたもの)

アリスクリップの使用はすっかり排除され、迷彩テープによるMOLLEシステムがメインになっています。各バックルはおそらく一般用の最新版と共通でしょう。

各部にメッシュや水抜き穴が配置されていることから、水陸両用部隊に合わせて排水性を重視していることがうかがえます。

パッド類も現代風のものに進化しているようですね。

 

 

それでは各部の解説をしましょう。
といっても取扱要領に書いてあることだけですが・・・
この背嚢は、中に仕切りがあって上下別で物を詰めることができます(仕切りを外すこともできる)。
で、下の方に軽いもの、上の身体側に重いものを入れると、担いだ時の重量バランスが良くなります。
また、パンパンに詰めて隙間をなくすことで、歩いた時に中身がグラグラしてバランスを悪くすることを防げます。

最下部にはスリーピングバッグ(=寝袋)を入れるようですね。
そして上部には、下着一式、防寒服、戦闘服上下、仮眠用覆い、戦闘雨具、日用品一式、予備糧食、個人用防護セットなどなどを入れるそうですが、この他にもコンクリートブロックなどを入れ(させられ)るとかなんとか・・・。

中身は専用の「背のう入り組み品袋」に小分けして入れたり、あるいはジップロック的なもので防水処置が施されるのは言うまでもありません。
ちなみに、フタの上には戦闘防弾チョッキを載せるという記述がありますが、ワシはそんな写真を見たことがありません。
そして太いテープ(懸ちょう帯)は弾帯2型と同じ幅のため、そこにアリスクリップを使って水筒やエンピケースを付ける(さらにテープで落ちないようにする)こともできます。


よくミリフォトで見かけるのは、腰ベルトに水筒や弾入れなどすぐ使うものをくっつけ、背嚢本体の片側にエンピケースをくっつけ、その反対側に寝袋用のパッドや、あるいはLAMをくくりつけているシーン。

エンピケースをつけてみました。

このように水筒も付けられます。

ただ、水筒は救護の際にもすぐに使う必要があることから、実際には腰ベルトにつけているケースも多いそうです。

 

背中の大きなポケットは上下で分割されていて、下には戦闘飯盒2型を入れ、上には予備糧食または雨具を入れるそうです。

また飯盒入れの部分には貫通穴があいていて、そこにスキーのストック等を挿すことができます。



また機能上の特徴としては、戦闘雑のうと連結できるという点がなかなか面白い。
戦闘雑のうは背のうとバックルが共通化されていて、背のうの上に雑のうを載せる形でくっつけることができるのです。
背嚢のフタについてるこのヒモを(雑のう取付帯)、

雑のうの二重D環にくくりつけ、

あとはこのバックルをくっつけて完成。

こうなりました。


デカイ!重い!

ちなみに体格に合わせて、背負い紐の位置を上下できます。
肩から腰骨までの位置を測り、おおよそ51cm、46cm、41cm(前後)のそれぞれの体格で、「背当て取り付け紐」を「背当て」に取り付ける位置を変えて調整します。


「背当て取り付け紐」は、MOLLEシステムのように「背当て」にくっつけます。

最後はココにホック留め。
そして10kg程度の物を入れて背負い、まずは両下部の「締め帯」で背負い紐の長さを調節し、腰当て(腰バンド)をお腹が苦しくない/振れない程度な締め具合にします。


その後、肩部締め帯を締めます。


「背当て」が体格によって位置が違うので、肩部締め帯はそれに合わせて尾錠の位置を変更できます。

胸の前の「胸バンド」は外せるので、背嚢がぐらぐらしないように締め付けつつ、呼吸を妨げないような位置に変更して調節しましょう。


なお背負い紐の下部には両側ともクイックリリース機構がついていて、「分離金具」を引っ張れば外せます。


当然ながら、腰ベルトと胸ベルトを外しておかないとリリースできません。

というわけで、いろいろな便利機能がついているのでした。

*レプリカ製品(TOP)
2017年、TOP(TARGET)が戦闘背嚢一般用のレプリカをリリースしました。

(TARGETから画像拝借)
陸自装備勢はさぞ歓喜したことと思いますが(ワシもその一人)、実際に購入して手に取ってみるとなんか違う。
生地やテープ、バックルが実物と違うのはまあいいのですが、寸法や形状も異なり、「実物サンプリングした」と言う割にはちょっと残念な感じ。
自分も購入しましたが、背負ったもののなんだか変だなあということで、そのまま使わないままになり売ってしまいました。
このレプリカは100個くらい量産されたようで、評判が芳しくなかった割には品切れになったら価格が高騰といういつもの流れに(笑)
しかし2020年になって、部材や形状の改良された二次ロット品が販売されました。

 

ワシもたまらず購入(笑)


2次ロットは、初期ロットに比べて生地が若干薄くなりました。
それでも実物に比べるとぶ厚くゴワゴワ。
それから飯盒入れの部分が大きくなり、飯盒2型が入るようになったようです(初期ロットは小さくて入らなかった)
ただ、肝心なフレームが入っていません。
そんで実物フレームを入れてみるとシッカリ感がかなり向上するのですが、フレームを入れる部分が数センチ短い(なのでフレームの頭が数センチ飛び出る)。
せっかくレプリカを作ってくれたのに、こういう部分がなあ・・・。
そしてコレばかりは仕方ないのですが、バックルがどこのかよく分からない製品のため、官品はもとよりPX品の雑納とも連結ができません。

というか、フタの部分に余りのヒモがなく、そもそも雑納を連結することを想定していないのです。
クイックリリース機構はもともと省かれていますが、ここはまあレプリカでは必要ないし目立たないのでいいでしょう。
それやこれやと、難点や不満点はいくつもありますが、それでもレプリカを作ってくれるというのは有難いことです。
・・・が。
出荷時の紐の取り回しが違っていて(初期ロット・2次ロットともに)、当時はそれを知らずそのまま使おうとしたので、うまく背負えなかったのでした。
まず「背当て取り付け紐」が、出荷時にはこんなふうに組まれています。


なのでこれは実物の取り扱い要領のように、自分の体格に合わせて付け直します。


といっても官品とサイズも違うので、なんとなく自分の身長から、上のほうに合わせただけ。
そして肩部締め帯の取り回しもなんか変だったので、実物と同様な調整ができるように直してみました。

しかしこのバックル、あと5センチばかり上のほうにつけてくれればなあ。
しかし素人も購入するものなのだから、簡単でもいいので取説とかつけてくれると助かるのにな、と思いました。

 

で、各部を調節して中にタオルとかTシャツとかを詰め込んだのがコレ。

うん、まあそれなりに形にはなりましたし、背負ってもそれほど変ではありません。

フレームを2本入れれば、かなりシャッキリします。

初期ロットを買った時には何も知らなかったので、こういうブログに出会いたかったです(笑)

 

実物と並べてみました。

さすがに質感は違いますけど、悪くはなさそうです。

TOPのはぺしゃんこのまま見るとなんとなく背が低く横幅が広いように見えましたが、パンパンに中身を詰めると意外に官品と同じくらいのサイズに見えますね。

 

※2023.6.14追記

*レプリカ製品(S&Graf)

実は内部情報をいただいていましたが、思ったより早く大御所・エスグラから現行型の戦闘背嚢レプが2023年6月に登場しました。

(エスグラ販売ページから)

事前情報をいただいた時は、初期タイプのものかと思っていたのですが、なんと迷彩テープになった後期型なのです。

これにはちょっとびっくり。

SNSでもけっこう話題になっていました。

とある方が、実物と並べてくれました。

もちろん生地の色味も違うのでアレですが、なかなか再現度は高いと思います。

早速購入し、家じゅうのプチプチをぎゅうぎゅうに詰め込んでみます。

なかなか良い。

話題の迷彩テープは、官…いえなんのことか分かりませんが、持っていたものと比べると暗いものの、単体で見ればそれほど違和感ありません。

(左は何だか分からないもの、右はエスグラ)

ただ重大な難点が、幅広の迷彩テープが迷彩生地を折り込んだだけなこと。

もちろんコストを考えてのことかと思いますし、25mm幅のテープは他のエスグラ製品(防弾チョッキその他)にも使うでしょうからそれなりの長さで特注できたのだと思います。

幅広(50mm幅)のテープはこの戦闘背嚢くらいにしか使わないという判断で特注しなかったんだと思いますが・・・ワシのような個人ですら顎紐のテープは1000mとか1500mとかで特注してるのになあ。

エスグラさんアナタ、個人じゃないでしょうに!(笑)

腰ベルトの他、背嚢に縫い付けられている装備をひっかけるテープが、やはり生地を折ったものだと違和感あります。

それからバックル。

なんで茶色かな~・・・

エスグラ製は、TOPのと違い雑嚢連結帯が再現されているのですが、バックルが違うので結局雑嚢は連結できません。

エスグラが雑嚢を出してくれるのならいいのですが・・・。

もう一つの凄い所は、なんとアルミフレームまで再現したところ。

が、とても薄い・・・。

(↑上からエスグラ、ウチのレプ、何だか分からないもの)

官品は板厚3mmなのですが、エスグラ製は2.5mm。

ウチのアルミフレームレプは、当初3mmで試作したのですが、官品ほどの強度が出せず、それで4mm厚にしたのでした。

またウチのレプは、強度を下げないために官品同様ゆるやかなカーブを描くように曲げているのですが、エスグラ製はカクっと曲げられており、それもあって強度がイマイチ。

まあコスプレならいいのですが、実際に重い荷物を詰めるならウチのレプに入れ替えたほうがいいと思います(偉そうにスンマセン)

 

すごいのが、この調整具とクイックリリース。

長さ調整金具は若干形状は違うものの、比べなければ分かりません。

そしてクイックリリースは、色味やサイズが違うもののちゃんと再現されています。

やるなあ。

ちなみに背負うと、TOPよりしっくりきます。

レプとしての再現度は置いておくとして、重い荷物を背負う入れ物としての完成度は、かなり高いと思います。

 

その他の各部も、例えば肩部締め帯も割とちゃんと再現されていて、ただ「迷彩テープがすごい」だけでない、意外に良い製品だということが分かります。

エスグラというとこれまで「エスグラだしね」という言い方がされがちでしたが(ワシ含む)、思えば防弾チョッキ2型はエスグラの功績のようなものですし、これを機に見直されるべきかもしれません。

どーもスンマセン!

 

 

 

 

 

 

【サバゲー用自衛隊装備紹介記事】
その1・自分的進化編

その2・戦闘防弾チョッキ編

その3・テッパチ編(前編中編後編 )

その4・迷彩服編(前編後編

その5・戦闘靴・半長靴編(前編中編後編

その6・装備品まとめ編

その7・女子にお勧め装備編

その8・背嚢編