店に入ると「とりあえずビール」と言ってからメニューを見るって、あるあるではないでしょうか?この何気ない行動が内臓肥満、高血圧の原因かもしれません。

 

ビールはビール酵母という微生物で作られた発酵食品です。ビール酵母は効率的に増殖するためにたくさんの遺伝子を含んでいます。遺伝子は核酸で構成されていて、核酸の別名はプリン体です。

 

酒類の中で、最もプリン体が多いビールには、缶ビール1本(350ml)で、ウイスキー1杯分(40ml)の100倍、120−300mgのプリン体が含まれます。

 

プリン体といえば特に中高年の男性に多い痛風を思い浮かべる方も多いと思います。痛風は増えすぎた尿酸が関節などで結晶化して起こすイターイ炎症です。一般的に尿酸値が7mg/dl以上になると結晶化しやすいと考えられています。

 

例えば体重60kgの男性の場合、血液量は体重の約8%なので、4,800ml程度です。1dlは100mlなので、この男性の場合は、尿酸が(7X48=)336mg以上だと痛風のリスクが高いという計算になります。

 

私たちの血中には一定(2-4mg/dl程度)の尿酸が存在します。この男性の尿酸値が仮に3mg/dlだったとすると尿血中に(3X48=)144mgの尿酸があることになります。

 

そこで缶ビール1本飲んで、含まれるプリン体が全て尿酸になったとしたら血中尿酸値は480mgです。痛風になってもおかしくはありません。

 

実際には食べ物や飲み物で摂取したプリン体が全て尿酸になることはありませんが、「ある条件」が揃うと肝臓内での尿酸生産が促進されるため尿酸値が上がってしまいます。

 

結晶化するほどではなくても尿酸値が上がった状態が続くと、血管や臓器で炎症が多発し、動脈硬化、腎臓炎、高血圧、脂質異常などのリスクが上がります。ですから、「ビールを飲んで痛風になったことがないから平気!」なんて言っていると健康寿命が短くなります。

 

「ある条件」とは、脱水、高い血糖値、(主に飲む砂糖で起こる)高い血清果糖値です。このいずれかが起こるとプリン体を材料として尿酸が作ら、尿酸値が上昇するというわけです。

 

喉が渇いたと感じる時にはすでに脱水が始まっているので、喉がカラカラの状態で店に入り、生ビールを一気飲みすると危険なのです。

 

閉経後の女性も同様の危険があります。更年期前は女性ホルモンの影響で尿酸値が上昇しにくいのですが、閉経すると女性ホルモンが激減するため男性と同じリスクがあるのです。

 

例えば体重50kgの女性の場合、血液量は3,500ml程度です。尿酸値が3mg/dlだったとすると尿血中に(3X35=)105mgの尿酸があることになります。この人が脱水状態で缶ビールを1本飲んで、含まれるプリン体が全て尿酸になったとしたら血中尿酸値は405mg、尿酸値に換算すると12mg/dl、7mg/dlをはるかに超えます。

 

逆に「ある条件」が揃わないとプリン体は尿酸生産に使われずに別のものに再生されたり排泄されたりします。

 

つまり、水分補給が万全、血糖値が低め、甘いものを制限した状態でビールを飲めば尿酸値が上がりにくいため、高血圧や内臓肥満の予防になるのです。

 

ただしビールを何リットルも飲んだり、ビールとともに脱水を加速させる塩辛いものや、血糖値を上昇させる甘いおつまみを食べたりしなければ、ということです。

 

暑い日は特にたっぷりと水を飲んで楽しい夏をお過ごしください。