なぜ体重1kgあたり0.8gでは足りないのか?
厚生労働省が示すたんぱく質の推奨量は体重1kgあたり0.8g/日ですが、この量は筋肉量を積極的に維持・増加させるための目安ではありません。
その理由を説明しましょう。
タンパク質推奨量(RDA)の起源
タンパク質の推奨摂取量(RDA:Recommended Dietary Allowance)の考え方は、19世紀末から20世紀初頭にまでさかのぼります。
当時はアミノ酸の存在は知られていましたが、その役割は十分に理解されておらず、研究者は窒素出納(窒素バランス)法を用いて必要量を推定しました。
タンパク質は三大栄養素の中で唯一窒素を含むため、
- 食事から取り込まれる窒素量
- 尿などから排泄される窒素量
が釣り合う状態を維持するために必要な摂取量を「必要量」と考えたのです。
現在採用されている体重1kgあたり0.8g/日という値も、この窒素出納法によって算出された必要量に安全域を加えて設定されたものです。
なぜ0.8gでは筋肉維持に十分ではないのか
近年の研究では、この量では筋肉量の維持や加齢による筋肉減少の予防には十分でない可能性が示されています。
その理由の一つが、食品によって必須アミノ酸のバランスや消化吸収率が異なることです。
タンパク質は20種類のアミノ酸から構成され、そのうち9種類は体内で合成できない必須アミノ酸です。
筋肉を作るには、この9種類すべてが十分に供給される必要があります。
1種類でも不足すると、その不足したアミノ酸が制限因子となり、筋肉タンパク質の合成効率は低下します。
そのため、食品中のタンパク質はアミノ酸スコア(PDCAAS)やDIAASといった指標によって品質が評価されています。
一般に、卵、乳製品、肉、魚などの動物性食品は、必須アミノ酸をバランスよく含む「完全たんぱく質」とされています。
食品によって利用効率は異なる
以下の表は、卵を基準としたアミノ酸品質と、20gの完全たんぱく質を摂取するために必要な食品量を示したものです。
食品別、筋肉維持に使える完全たんぱく質の量
注2:BCAA=分岐鎖アミノ酸
表から分かるように、同じ「20gのたんぱく質」と表示されていても、食品によって必須アミノ酸のバランスや利用効率は異なります。
特「ふりかけご飯だけの朝食」「菓子パンだけの昼食」「コーンバターだけのおやつ」といった食べ方だと、栄養計算で算出されたたんぱく質量の何割かは使えないため、カロリーばかりでたんぱく質不足になってしまいます。
近年の研究では、健康な成人が筋肉量を維持するためには、体重1kgあたり1.6gのたんぱく質摂取が推奨されています。筋力トレーニングを行う人やアスリートでは、体重1kgあたり2.2g程度が目安とされています(参考文献)。
体重50kgなら80g、アスリートの場合110gとなります。
まとめ
筋肉を維持しながら健康的に年齢を重ねるためには、単に「たんぱく質の量」を満たすだけではなく、質の良いタンパク質を毎食バランスよく摂ることが重要です。
前回のブログも参考にしながら、卵、肉、魚、乳製品、大豆製品などアミノ酸バランスに優れた食品を毎日の食事に取り入れ、筋肉をしっかり維持していきましょう。















