日本は、海に囲まれた魚介天国であるにもかかわらず、近年「魚離れ」が進行しています。


水産庁の報告によると、『平成9年から19年までの1人1日当たりの魚介類と肉類の摂取量を比較すると、魚介類の摂取量は減少傾向にある一方、肉類の摂取量は横ばいであり、18年にはついに魚介類の摂取量が肉類を下回りました。これを年齢別に比較すると、すべての世代で魚介類の摂取量が減少しており、1~19歳では魚介類の摂取量が2割以上、30~49歳では3割以上も減少して』いるそうです。

 

「魚離れ」の理由には、時間がかかる、下処理ができない、台所が臭くなる、後処理が面倒などの調理したくない理由と、骨があるから、食べるのが面倒、食べるのに時間がかかる、においが嫌、などの食べたくない理由の2局面があります。特に、子供の嫌いな魚の上位にはサバ、サンマ、アジ、 イワシなど鮮度が落ちやすく小骨が多い魚が挙げられています。

 

魚なんか食べなくてもいいじゃないかと思われるかもしれないですが、妊娠時に魚を食べないと胎児の脳の発育が遅れる、幼児期に食べないと、発達障がいのリスクが上がる、成長しても食べないと、血管の炎症が多発して、動脈硬化が悪化、毛細血管の減少が進む、食べずに高齢になると、血管性認知症を含む心臓血管病のリスクが増大する、ことが科学的にわかっています。

 

というのは、DHAとEPAという、魚の脂にしか存在しない高分子オメガ3脂肪酸は、脳の発達、機能維持、毛細血管の機能向上になくてはならないからです。

 

栄養効果はそれだけではありません。

 

魚には、骨形成と脳機能に必須のビタミンDとカルシウムも豊富です。貝類だと、亜鉛、鉄分、マグネシウムなどの体全体が機能する上で重要な役割を果たすミネラル類が格段に豊富です。

 

そこでおすすめするのが缶詰の魚介類です。缶詰だと、下処理いらず、時短で骨もなく、台所も汚れません。工夫次第で、おいしく食べて、必要な栄養素を無理なく摂取できます。

 

Various tinned seafoods

ツナ缶だけじゃない、探せば色々な魚介の缶詰があるぞ(PHOTO: ILIA NESOLENYI / GETTY IMAGES)

 

その一方で、缶詰は体に悪いと思う方が多くいらっしゃいます。その大きな理由は、缶詰の内面塗装に、内分泌かく乱物質(別名;環境ホルモン)の1つ、ビスフェノールA(BPA)が含まれる可能性があることです。

 

プラスチックの原料として使われるBPAは、食器や缶詰・飲料缶の内側のコーティング、ラップなどに使われていましたが、人体への影響があることを受けて、もうすでに多くのメーカーが自主的にBPAの使用をやめていますアメリカで2020年に実施された調査では、95%の缶詰がBPA不使用という結果が出ています。

 

日本の製缶業界も、2008年の段階で既に対策を済ませており、BPA溶出の可能性が高い高温での殺菌を行うものでも溶出量は0.01ppm以下、飲料缶は0.005ppm以下となっています。0.01ppm(約0.01mg/L)は、100gの缶詰に換算すると、約0.001mgです。

 

日本とアメリカでのBPAの「耐容一日摂取量:人が一生の間、毎日摂取してもこれ以下ならば健康に影響しない量」は、体重1kg当たり0.05mg(0.05mg/kg体重/日)なので、体重5kgの幼児なら、0.25mg/日、体重50kgの人なら2.5mg/日が耐容一日摂取量となります。

 

ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)が新たに設定した、厳しい耐容一日摂取量0.004mg/kg体重/日だと、体重5kgの幼児なら、0.02mg/日、体重50kgの人なら0.2mg/日が耐容一日摂取量となります。

 

サバ缶100gに入っているかもしれないBPAの量は0.001mg以下ですから、厳しいヨーロッパの規制をも下回ります。ですから極端な話、幼児からサバ缶100gを、生涯毎日食べても問題がないことを理解していただけると思います。

 

もちろん、できれば新鮮な魚介類を食べていただきたいところですが、それが無理なら、サバ・イワシ・アサリの水煮缶、オイルサーディンなどを活用して、脳の発達に不可欠で血管を守るDHAとEPAを摂取していただきたいと思います。

 

発達障がい食環境支援士取得講座(略:食環境講座)講師さんが受けた難問です。

 

「魚が苦手だけどサプリではなくDHAとEPAを摂取するにはどうしたらいい?」

 

DHAとEPAとは、脳の構成要素であり、脳機能に不可欠な毛細血管を守る必須脂肪酸です。脂の乗った魚介類に多く含まれ、特に多いのは、イワシ、鯖、ニシン、あじ、さんま、太刀魚、ぶり、あん肝、サーモン、マグロのトロ、ハマチ、カンパチ、、鯛、ウニなどです。

 

胎児期に不足すると認知機能障がい、発達障がい、不安症、うつ病のリスクが増え、不足したまま高齢になると、認知症とともに血管心臓病のリスクも高くなることが科学的にわかっています。

 

ところが、DHAとEPAは、魚介類に多い反面、穀類、野菜、肉類には全く含まれません。ナッツやオイルもオメガ3脂肪酸はたくさん含まれますが、これらの脂肪酸は非常に低い効率(0.5-5%)でしかDHAとEPAに変換されません。

 

ですから、魚でもサプリでもなくDHAとEPAを摂取する方法は皆無です

 

魚を食べない人には、サプリを勧めたいのですが、日本には、健康食品やサプリメントには行政的な定義がなく参考資料)、ビタミン剤やカルシウムなどのサプリは、国への届出や審査がなくても販売することができる「加工食品」であることから厄介です。特にフィッシュオイルには、体に害のある重金属や汚染物質の混入の危険性があるので、慎重に選んでいただきたいと思います。

 

正しいサプリを見つける基準は、必要な目安量が含まれていること、IFOS(International Fish Oil Standards :世界で唯一のフィッシュオイルに関する厳格な基準)認定を受けていて、GMP(Good Manufacturing Practice :原料の受入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において、適正な製造管理と品質管理)認定と、理想的には原料の原産地が明確であることです。

 

サプリの目安量は、EPAとDHAを合わせて、乳児(0−1歳)は500 mg、幼児(1−3歳)は800 mg、大人は500−1000mgです。

私の検索では、日本で購入できる製品はドクターズチョイス プレミアムオメガ3だけでしたが、私の住むアメリカからの購入をお考えでしたら、カールソンノルディックナチュラルの2社が年齢や用途に合わせた製品を豊富に販売しています。

 

魚を全く食べなくても即座に病気になることはありません。ただ、妊娠時に魚を食べないと胎児の脳の発育が遅れる、幼児期に食べないと、発達障がいのリスクが上がる、成長しても食べないと、血管の炎症が多発して、動脈硬化が悪化、毛細血管の減少が進む、そのまま高齢になると、血管性認知症を含む心臓血管病のリスクが増大することを知ってください。

 

日本は世界に誇る魚介類の宝庫です。

 

包丁を使わなくても、お刺身、冷凍食品、お惣菜や缶詰など、食べる方法はいくらでもあります。ご質問をくださった受講生さんが、お子さんの脳の発達のために、またご自身の健康寿命のために、1回に100g程度、週に3回、食べられるようになっていただけるように、講師ともども努力していきたいと思っています!


 

 

発達障がい食環境支援士取得講座(略:食環境講座)が始まって4か月目に入りました。受講生さんの中には、食育関連、発達障がい関連の勉強をされていて、そこで学んだ情報と本講座の内容との食い違いに困惑される方がいらっしゃいます。

 

今回は、「赤ちゃんに果汁100%ジュースはいつからがよいのか?」というタイトルのベビーカレンダーのコラムについて、食育コーディネーターの資格を持つ受講生さんからの質問です。

 

ベビーカレンダーのコラムでは、保育士であり、離乳食インストラクターの中田馨さんという方が、「果汁100%ジュースを飲んでもいいのは3歳以降」と書かれています。その理由として、「甘すぎる」、「水分でカロリーをとらない」、「ジュースの味を知らなければ、赤ちゃんが欲しがることはない」などをあげています。

 

ここでみなさんに知ってほしいのは、このコラムは、著者の意見であって、科学的根拠がないことです。

 

現実問題として、3歳までジュースを全く飲ませない環境を維持するのは可能でしょうか?子供が辛い思いをしませんか?おばあちゃんやママ友たちとギクシャクしないでしょうか?

 

また、このコラムを信じて、ジュースだけ制限して、甘い味付けのおかず、菓子パン、甘いお菓子、デザートを与えていたら、なんの意味もありません。

 

ジュースを制限する科学的根拠は、砂糖の摂取量を制限することです。制限する量も年齢も、科学的な検証で明らかになっています(参考文献)。

 

食環境講座では、果汁だけでなく、砂糖の制限も必要であることを教えています。その根拠は、世界保健機関(WHO)やアメリカ小児科学会などの科学的に信用できる有識者が、科学的な検証や学術文献に基づいて決めたことで、決して1個人の私見ではありません。

 

具体的には、「2歳以下の乳児には、砂糖を含む飲料や食品を与えない、2歳以上でも1日に合計で25g以下」、「果汁100%ジュースを飲んでいいのは1歳から、ただし、1日に飲んでいい量は、1−3歳なら100ml以下、4−6歳では180ml以下、7−14歳でも240ml以下」です。

 

この程度なら実現可能だし、お誕生日会やお友達とのおやつタイムも、一人だけ仲間はずれになることはないでしょう。

 

砂糖と果汁の制限に関しては以前のブログに詳しく書きましたが、果汁だけでなく、甘い食べ物や飲み物を制限するようになったのは、多くの学術研究が、砂糖による健康被害を報告したからです。将来の生活習慣病を予防するだけでなく、子供の発達障がい及びうつ病予防という側面も持っています(自閉症スペクトラム障害と脳のインスリン抵抗性に関する参考文献)。

 

ネット情報、健康関連の書籍、食育関連の資格認定講座には、科学的根拠のない、あるいは完全に間違った情報が混じっています。もしあなたが気になる情報に、参考文献が提示されていなければ、あまり信じない方が良いかもしれません。

 

 

近年、発達障がいうつ病などの精神疾患が増え続けています。もちろん、社会的、生活環境的な要因が大きく影響していると考えられますが、意外にも、口腔ケアを怠っていると精神疾患を発症する可能性があるようです(前のブログ参照)。

 

腸内環境が脳の働きに直接影響を与えることは、科学的に明らかになって久しいです(脳腸相関)が、口腔内環境が(神経や血管から)直接、及び(脳腸相関を介して)間接的に関わっていることがわかってきました(参考文献1へのリンク)。

 

歯磨きだけでなく、デンタルフロスや舌みがきをしないと、口の中に普通なら繁殖しない菌が増え、常在菌のバランスが崩れてオーラルディスバイオシス(Oral Dysibiosis)」が起こります(参考文献2へのリンク)。

 

オーラルディスバイオシスとは、直訳すると口腔内毒素症です。良い微生物が作っているコミュニティーが悪玉菌によって侵食されて機能しなくなった状態です。

 

悪化すると脳を含む全身に影響を及ぼすオーラルディスバイオシスですが、まず最初に起こるのが虫歯です。逆に言うと、虫歯ができない習慣があれば、オーラルディスバイオシスは起こりません。

 

そこで今回は、虫歯予防に役立つ食品と、虫歯を作る食品を紹介します。

 

虫歯を予防するベストフード

食物繊維豊富な野菜スティック:大根、セロリ、人参などの野菜スティックは、噛むことで唾液の分泌を促進します。唾液には食後に酸性になりがちな口腔内を中性に保ち、唾液に含まれる酵素は、歯を守る役目があります。唾液がたくさん出ると、初期のむし歯なら、唾液に含まれるカルシウムやリンなどの歯の構成要素を取り込んで、再石灰化という現象で治ることがあります。さらに、豊富な食物繊維で歯と歯茎を掃除するので一石二鳥です。

 

乳製品:チーズ、ミルク、ヨーグルトなどの乳製品は唾液を出すのに役立ちます。しかも乳製品に含まれるカルシウムとリン酸塩が食事によって失われたミネラルを補填し、エナメル質を守るので、食事の最後にチーズを食べる習慣は理にかなっているのです。

 

お茶:緑茶や紅茶に含まれるポリフェノールは、プラークに潜む悪玉菌を攻撃して、歯と歯茎を守る作用があります。食後のお茶にはこんな効果があったのですね。

 

無糖のキシリトールガム:ガムは噛むことで唾液をたくさん出します。キシリトールも唾液分泌効果がある上に、虫歯の原因となるミュータンス菌の繁殖を抑える効果があるそうです。

 

虫歯を作るワーストフード

歯にくっつくお菓子:キャラメル、ヌガー、アメ、ガムなどは、歯にくっつきやすく、たっぷり含まれる砂糖が、歯の表面に住むミュータンス菌などの餌となって酸を作り歯を溶かし、虫歯を作ります。

 

スナック菓子・柔らかいパン:ポテトチップス、フワフワのパンなどは、甘くなくても、でんぷん質が多く、歯にくっつく上に、歯と歯の間に入り込むので、虫歯の大きな原因となります。ミュータンス菌にとって、砂糖もでんぷん質も同じ糖類ですから、甘いものを食べない人でも、おにぎりだけ、麺類だけの食事をしていると、ミュータンス菌が活性化してエナメル質を溶かし、虫歯の原因を作ります。

 

ジュース・炭酸飲料:100%果汁も、加糖した炭酸飲料も同様に虫歯の原因となります。と言うのは、どちらもミュータンス菌の餌となる糖分が多く、口の中を酸性にするからです。仕事や勉強をしながら、ダラダラと飲み続けると虫歯の脅威からは逃れられません

 

柑橘類:残念ながら、みかん類もレモンも、歯にとってはジュースと同様に働きます。しかし柑橘類はビタミン豊富な健康効果の高い食品なので、食後に口をすすぐ、食後にチーズを食べるなどの工夫をして食べてください。

 

まとめ

おやつに食べるスイーツやスナック菓子は、歯の間に入り込んで虫歯の原因になります。ほんの少しでも虫歯を作るワーストフードの後にはデンタルフロスを使い、口をすすぐ、無理なら無糖のガムを噛むなどで唾液を出して、口の中の環境を守りましょう。

 

 

発達障がい食環境支援士取得講座」が始まって約3ヶ月経ちました。遺伝学・栄養学の専門家として、偏食や自閉症スペクトラム障がい(ASD)、発達障がいかもと悩む方たちとの関わりをもとに、実践しやすい「脳のバランスを整える」科学的な手法をまとめた講座で、対面またはオンラインで、どなたにでも受講していただけます。

 今回は、講座の中から抜粋で、「口腔内環境と脳の関係」についてお話しします。

 

ASDの子どもには、しばしば、歯ぎしり、エナメル質の浸食、口内乾燥、食べていなくても噛み続ける行動が見られます(参考文献1へのリンク)。

 

発達障がい児には、特性などにより、偏食気味で、歯磨きが苦手な子どもが多く、口腔内環境が乱れ、虫歯になりやすい傾向にあります。

 

口の中(粘膜、舌、歯、歯茎)の表面にはたくさんの微生物(細菌やウイルスなど)が住んでします。本来なら、これらの微生物が協力して悪い菌を追い出したり殺したりして私たちの健康を守ってくれていますが、口腔ケアがうまくできないと、口の中の微生物のバランスが崩れていわゆる「オーラルディスバイオシス(Oral Dysibiosis)」が起こります(参考文献2へのリンク)。オーラルディスバイオシスとは、直訳すると口腔内毒素症です。良い微生物が作っているコミュニティーが悪玉菌によって侵食されて機能しなくなった状態です。

 

そうなると、虫歯や歯周病だけでなく、脳を含む全身への悪影響が出ます。

 

発達障がい児が虫歯や歯周病になりやすい理由

発達障がい児がオーラルディスバイオシスになりやすい理由には、発達障がい脳が、口腔内ケアをやりたがらない、偏食、免疫機能への遺伝的関与、しょっちゅう手指を口に入れるなど行動が考えられています(下の図を参照)。

 

 

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Olsen I, Hicks SD. Oral microbiota and autism spectrum disorder (ASD). J Oral Microbiol. 2019 Dec 12;12(1):1702806. 

口の汚れが作る発達障がい脳

発達障がい児の口腔内では、定型発達児に比べてある種の菌と菌に寄生するウイルス(バクテリオファージ)が増えることが報告されています(参考文献3へのリンク)。

 

口腔内で悪玉菌が増え、炎症が起こると、炎症物質が血管や臭覚神経系を経て脳に送られると、脳内にも炎症が起こります。

 

増えた悪玉菌が腸管に送られると、腸内微生物が作るコミュニティにも影響を及ぼします。腸内で作られる、脳に送られる代謝物や神経伝達物質の種類と量のバランスが崩れることで、脳の働きに影響を与えると考えられています(下の図参照)。

An external file that holds a picture, illustration, etc.
Object name is ZJOM_A_1702806_F0003_OC.jpg
Olsen I, Hicks SD. Oral microbiota and autism spectrum disorder (ASD). J Oral Microbiol. 2019 Dec 12;12(1):1702806. 

口の中の表面は、歯が25%で、舌や喉などの粘膜が75%を占めているため、歯だけを磨いても口の中を清潔には保てません。食後にデンタルフロスで食べかすを取り除くことも重要です。唾液が十分出ていると唾液の殺菌作用で正常に保てますが 、唾液が少ないと口腔内環境が悪化します。

 

発達障がい児への2つのアプローチ

1つ目は、特性に合わせた口腔ケアです。やる気がないだけなら、電動歯ブラシ、味が嫌なら歯磨き粉なし、ブラシが嫌ならお母さんの指にガーゼを巻いてなど、特性に合わせた対応が必要です。日本障害者歯科学会のサイトから、お近くの専門医を検索して助言をいただくことをお勧めします。

 

2つ目は食品による口腔ケアです。砂糖の制限や、唾液を出すために「よく噛む食品」、食事の最後にチーズをよく噛んで食べるなどたくさんのアプローチがあるので、次回のブログで詳しく紹介しますね。

 

 

小林製薬が「機能性表示食品」として販売した紅麹のサプリメントで、腎疾患などの健康被害が確認され、死亡された方もいらっしゃることが大きく報道されています(写真:時事通信フォト)。

 

なぜこんなことが起こったのでしょうか?このブログでは、紅麹と麹の違い、紅麹の健康効果、機能性表示食品の危うさ、なぜサプリによる健康被害が絶えないか?、を科学的に検証していきます。

 

紅麹と麹の違い

紅麹は、日本食になくてはならない「麹」とは、全く違う生物です。味噌や醤油、塩麹を作るときに使う麹はニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)、焼酎作りにはAspergillus Kawachii、泡盛にはAspergillus Iuchuensisなどが使われますが、どれもAspergillus属の仲間です。一方、小林製薬がこのサプリに使った紅麹はベニコウジカビ(Monascus pilosus)というMonascus属のカビです。

 

どのくらい違うかというと、例えば、あなたと愛犬のプードルはどちらも哺乳類ですが、あなたはヒト属、プードルは犬属。紅麹と麹はそのくらいの違いがあります。

 

紅麹の健康効果

1979年の学術論文で、Monascus属の菌株に、血清コレステロール降下作用を示すモナコリンK (Monacolin K) という物質を生産することが発表されました。モナコリンKは、後に血清コレステロール降下薬として承認されロバスタチンと同一のものです。

 

ロバスタチンは、世界中で最も広く処方されているスタチンの一種で医薬品です。肝臓でコレステロールが合成されるときに必要な酵素(HMG-CoA還元酵素)の働きを妨げる薬です。保険適応薬で、品質が安定した薬です。

 

一方、小林製薬の紅麹サプリは機能性表示食品ですから、医薬品のような規制がないので中身に何が入っているか科学的な検証がされていないまま販売されているのが現状です。では、機能性表示食品とは一体何なんでしょうか?

 

機能性表示食品の危うさ

機能性表示食品とは、消費者庁の管轄で機能性を表示できる「保健機能食品」の一種。食品であって医薬品ではありません。しかも、機能性表示食品には国による製品審査は行われていません。国がガイドラインを示しているものの、企業が自身の責任で機能性表示して販売し、消費者は自己責任で購入摂取するかどうか判断する、という制度です(機能性表示食品に関しての消費者庁のサイト)。

 

なぜサプリによる健康被害が絶えないか?

厚労省によると、健康食品やサプリメントには行政的な定義がないそうです(参考資料)。国(消費者庁)が審査して許可を出した「保健機能食品」や「特別用途食品」には以下のような許可マークがついています。逆にいうと、マークのないは、自己責任で摂取することになります。

 

育児用ミルクに表示されている、消費者庁許可の ...食品のマーク - 食品衛生に関すること|広島市 ...

 

さらに、ビタミン剤やカルシウムなどのサプリは、国への届出や審査がなくても販売することができる「加工食品」であることを知ってください

 

まるで医薬品のような錠剤やカプセルで売られているビタミン剤でも、原料がどこからきてどのような場所で作られたか、果たして表示されている成分が正しく含まれているか、あるいはどんなものが混入しているか、不明のまま自己責任で服用するしかないのです。

 

まとめ

今回の件で、有名企業が販売していても、サプリメントや健康食品には危険性が潜んでいることが明らかになりました。薬事法で規制されていないので、内容物の信憑性・安全性に関しては消費者には全くわからないのです。

 

サプリに頼る前に、ご自身の食生活をふりかえり、ご飯が進むおかずで「ご飯ばかり」、パンのお供で「パンだけ」のように偏った食生活にならないように気をつけ、必要な栄養素が食事で取れるように頑張りましょう。どうしたらわからない方には、私の著作認定講座が役に立つかもしれません。


サプリや健康食品は、ちょっと試した程度では、薬のような効果は期待できません。量を増やしても機能成分が薬事法に触れないほど微量なため効果は上がりません。だからと言って、長期間取り続けると、紅麹サプリのように不明な混入物や、劣化した成分が含まれている可能性が否定できないため、慢性不調の原因になっているかもしれません。

体調に異変を感じた際は、速やかに摂取をやめてください。小さなお子さんや、意思表示が苦手なお子さんの場合は、サプリを始める前と後で行動や食欲、睡眠に変化がないかよく観察してください。

 

サプリは、新鮮な食材の対極にある「超加工品」です。栄養素は、加工すればするほど壊れます。加工過程が長いほど、アレルギー物質などの異物混入も起こります。そのことを心に留めて、口コミや宣伝に惑わされないで、ご自分と家族の健康をお守りください。

 

参考にしたネット記事へのリンク

誰もが怖がるがん。ちまたには「がんと戦う」、「がんを消す」、「がんに負けない」といったタイトルの記事や書籍があふれています。

 

その中には、高名な医師の著作も含まれ、「〇〇先生の言うことだから間違いない!」と、多くの人が思うかもしれません。でも本当にそうでしょうか?

 

京都大学名誉教授の外科医の著書、『がんに負けないからだをつくる 和田屋のごはん』は、読みやすくレシピも豊富で素敵な本ですが、栄養学的には正しくないことが多く書かれています。

 

例えば、「牛乳、バター、チーズなどの乳製品には、がん細胞の活動活性を上げるIGF-1(インスリン様成長因子)が多く含まれるので、乳製品を摂らない」と書かれていまが、これは間違っています。

 

IGF-1とは、インスリンに似た働きのあるタンパク質で、筋肉を作るのに不可欠なホルモンである反面、がん細胞を活性化することが知られています。

 

IGF-1は、動物性のタンパク質だけでなく、大豆タンパクでも過剰摂取すると増えることがわかっています。言い換えると、乳製品も大豆もIGF-1への影響は同じなので、乳製品を摂らない理由にはなりません。

 

おそらくこの先生は、90年代に話題となった、rBGH(遺伝子組み換え牛成長ホルモン)を注射された乳牛のミルクに関する文献をお読みになったのでしょう。rBGHは乳牛のIGF-1を上げることが知られていますが、日本ではrBGHの使用は認められていないので気にする必要さえありません。

 

アメリカでのrBGH使用は、法律的には可能ですが、アメリカの大手乳業、スーパーマーケットでは、rBGHを使用した牛乳および乳製品を全面的に禁止しています。オーガニック製品にも使用できません(参考資料)。

 

さらに、IGF-1はインスリンと同じくタンパク質でできているので、消化管の中で分解されてホルモンとしでの効力を失います。糖尿病患者さんがインスリンを注射するのはそのせいです。


つまり、食品内のIGF-1はがん細胞に影響しないので、がん患者さんが乳製品の摂取をやめても何の得もありません

 

牛乳やヨーグルトは安価でお年寄りにも食べやすい大切なタンパク源です。タンパク質不足は、サルコペニア(加齢とともに筋肉が減る現象)の原因となり、高齢者の生活の質を大きく下げます。

 

がん患者さんには、タンパク質の摂取量を下げる場合ばありますが、その場合は、乳製品、肉類だけでなく大豆、糖質、炭水化物にも制限がかかります

 

この著者は優れた専門医でいらっしゃると思いますが、栄養学の専門家ではありません。乳製品を避けたとしてもがん予防にはならないし、がんの進行を抑えることにもならないことを知っていただけると幸いです。

私が毎日チェックする日本の情報源、「プレジデントオンライン」で、『炭水化物を毎日食べるほうが長生きする…管理栄養士が「100歳まで歩きたいなら糖質制限はやるな」と警告するワケ』という、嘘と思い込みがてんこ盛りの記事を見つけました。

 

この記事は、管理栄養士で家政学部の教授の方の著作の一部だそうですが、どういうわけか生化学の基礎知識から逸脱しています。ざっくりと、タンパク質を気にして糖質制限をすると高齢者がフレイルになるという科学的根拠が全くない説が書かれています(本文)。たとえば「ごはんを食べないで、エネルギー源が不足した状態が続くと、せっかく食べたタンパク質が、本来のタンパク質のはたらきをしない、言わば「おばけタンパク」になってしまう(本文のまま)」という箇所がありますが、科学的知識があれば、こんなことは書けないはずです。順番に説明しましょう。

 

エネルギー源が不足することはあり得ない

人類という種が、原始時代を生き延びることができた最大の理由が「体脂肪」というエネルギー源を持つことです。

 

一般的に日本人の場合、痩せて見える人でも体重の20%以上が脂肪です。例えば体重40kgで体脂肪率が20%なら、体脂肪の重さは8kg。そのうち純粋に使える脂肪を6kgとして、脂肪は1gで9kcalのエネルギーが作れるので、単純計算だと54,000kcal、1日に2,000kcal消費するとして、27日分のエネルギー源がある、現実的にはその半分と考えても、体の中に2週間程度のエネルギー源があることになります。つまり、普通の生活をする高齢者に、エネルギー源が不足することはなく、本文にあるような『体はなにより「エネルギー源の確保」を優先』は嘘です。

 

以前のブログに、60歳の私が3日間水だけ絶食をした時の血糖値の推移などを紹介しているので、参考にしてください。

 

炭水化物は、欠乏症がない唯一の栄養素です。さらに、炭水化物は植物性の食品全てに含まれているのでご飯やパンを食べなくても不足しません。その反面、食べ過ぎたり、ご飯だけ、パンだけの食事だと食後血糖値を急上昇させて老化の原因になります。

 

⒉ 「おばけタンパク」は存在しない

タンパク質は、消化されてアミノ酸となって吸収されます。体にとってアミノ酸、特に9種類の必須アミノ酸はとても貴重なのでエネルギー源となる前に、肝臓から血中へと送り出されてしまいます。つまり、食べたタンパク質がエネルギー源になる可能性はほぼないので、「おばけタンパク」は存在しないのです。

 

また、タンパク質は1gで4kcalしかエネルギーを作れない上に酵素反応にはエネルギーが必要なため、脂肪と比較すると、エネルギー(ATP)として使うには効率が悪い栄養素です。筋肉内で不要になったアミノ酸をリサイクルといった形でエネルギーに変換することはありますが、よほどの飢餓状態にない限り、体全体のエネルギー補給のためには使われません

 

⒊ 必要なタンパク質の量は?

タンパク質の必要量は体重で決まります。一般には体重1kgあたり0.8g、消化吸収率が下がってくる高齢者は体重1kgあたり1〜1.25g 摂取が望ましいと考えられています。例えば、体重40kgなら、タンパク質の必要量は1日に40から50gです。納豆に置き換えると、1パックで8gのタンパク質として5−6パック程度、牛乳だと1.4L(200ml=7g)、たまごなら7個(M1個=7g)、鶏胸肉なら200g(100g=24g)となりますが、運動量や体調でさらに必要になることもあります。

 

卵・牛乳・肉・魚が必要な理由
動物性タンパク質の消化可能な必須アミノ酸スコアDIAAS:Digestible Indispensable Amino Acid Scoreタンパク質のクオリティーを示す数値)は1以上なので、タンパク源としてクオリティーの高い食品といえます。一方、大豆以外の植物性食品のタンパク質クオリティーはガクンと下がります。

 

この先生ならご飯でもタンパク質が摂れると反論してくるかもしれませんが、ご飯のDIAASは0.595、つまり「クオリティーの低いタンパク質」なのです。栄養計算上では一膳のご飯で8gのタンパク質ですが、実際に使えるのはその6割、4.8gだけです。もし高齢者がこの先生を信じてタンパク質を1品に減らしてご飯を食べて満腹になる生活を続けたら、確実にタンパク質が不足して、筋肉だけでなく骨密度も下がり、血管も脆くなる可能性があります

 

筋肉不足で隠れ肥満

筋肉が不足しているのは、高齢者だけではありません。ずいぶん前ですが、女子栄養大学で、標準体重の女子学生209名の筋肉と脂肪量を調べた結果、3割の学生の体脂肪が30%以上であり、平均の脂肪率も28%で筋肉量が少ない、いわゆる隠れ肥満であったという報告がありました。

 

どんなにしっかりとタンパク質を摂取していても、筋肉を使わなければ隠れ肥満におちいります。筋肉は体の中で最も燃費の悪い臓器なので、使ってないとどんどん小さくなります。逆に、負荷をかけて定期的に使えば、筋肉は死ぬまで増やすことができます。全く運動していない人なら、椅子の背もたれを使わない、電車で座らない、荷物を持って歩くなど、普段の生活にちょっと負荷をかけるだけでも効果は出ます。

 

まとめ

もしあなたが、筋肉を使わない生活で、一汁一菜のご飯中心の食事を続けていれば、筋肉は確実に減少します。ちょっと負荷のかかった生活をするように心がけ、肉や魚、あるいは卵、乳製品といった動物性タンパク質の豊富な食品を毎食食べてください。ご飯やパンは毎食食べる必要はなく、ほどほどの量をおいしく食べることが大切だと思います。

 

発達障がい食環境支援士の講師さんから、「さい帯血で発達障がいが治るの?さい帯血保管はしたほうがいい?」という質問を広告へのリンクとともに受けました。ちょっと長いので、時間のない方は太字部分だけでもお読みください。

 

さい帯とはへその緒のこと。さい帯血とは、へその緒に含まれる血液のことで、赤血球、白血球、血漿以外にも、骨髄と同様にステムセル(造血幹細胞)を含んでいます。

 

造血幹細胞は、遺伝性疾患、血液系・免疫系・神経系疾患など、さまざまな病気の治療に役立ちますが。例えば、白血病やリンパ腫などの血液の病気や骨髄移植を必要とする病気の治療に効果が認められています。アメリカでは、1996年に公的な「さい帯血バンク」が設立されて以来、3万件以上の「さい帯血移植」が行われています。

 

ただし、発達障がいや自閉症への効果は、今のところ認められていません

 

皆さんに知っていただきたいことは、 「さい帯血移植」は献血と同様に、妊婦さんから公的バンクに寄付された「献さい帯血」が利用されていることで、お金を使ってプライベートバンクに保存されたさい帯血が使われた事例は、ほぼないことです。

 

私的な保存がその子供に使われる可能性は非常に低いため、アメリカの医療機関では、兄弟姉妹に疾患があり、その治療に使われる可能性が場合にのみ、赤ちゃんのさい帯血をプライベートバンクに保存することを勧めています。というのは、せっかくお金を使っても、ほとんどのプライベートバンクのさい帯血は捨てられるからです

 

私が見たステムセル研究所の広告では、「生まれてくる赤ちゃんのために今しかできないこと」と題して、あたかも将来に向けての保険としてさい帯血保管を勧めていますが、明らかに誇大広告です。

 

プライベートバンクに保管したさい帯血は、保険にも子供へのプレゼントにもなりません。その理由を説明しましょう。

 

理由⒈ 子供が自分のさい帯血を使用できる可能性は非常に低い

その子供が遺伝病や癌の場合、全く同じ遺伝子を持ち、がん細胞が混じっている可能性のあるさい帯血は使い物にならないからです。

 

理由⒉ 量が少ない

1つのさい帯から取れる血液はとても少量なため、移植には、型が適合する複数のさい帯血を合わせて使うことが一般的です。型が適合する他人(ドナー)のさい帯血は、「公的さい帯血バンク」からを見つけます。例えば、効果が期待できると報告する脳性麻痺の臨床試験でも、ドナーのさい帯血を利用しています。

 

理由⒊ 自閉症の改善は確認されていない

広告にある「デューク大学の臨床研究で有効性が確認された」とありますが、The journal of pediatricsに発表されたこの研究グループの論文によると、有効性は認められていません。この臨床試験では、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ2〜7歳180人を使って実施、自分のさい帯血を静脈内に移植した子供(56人)と型が適合するドナーのさい帯血を移植した子供(63人)を、移植なしの61人の子供と、6か月に比較しました。その結果、「1回のさい帯血移植では、社会性も自閉症の症状も改善されなかった」と結論づけています。

 

理由⒋ 初期費用が不明

広告では、保存料のみ提示されていますが、採取にも費用がかかります。公的な「さい帯血バンク」の場合、すべて無料ですが、私的な保存には(アメリカの場合)数千ドルがかかります。

 

理由⒌ 安全性が不明

厚生労働省のサイトには、「さい帯血プライベートバンクは、公的さい帯血バンクとは異なり、厚生労働大臣の許可を得た事業者ではないため、臍帯血の調製・保存などは国が定める基準と同様に行われているとは限りません」と記載されています。そのため、一般診療では安全性が不明なため、使われることがありません

 

理由⒍ 信頼度が不明

厚生労働省のサイトによると、現在2社のプライベートバンクがあり、「これらの事業者からは届出が出ておらず、業務内容等が把握されていないことを踏まえ、ご自身で当該事業者の業務内容、契約内容、契約終了時の臍帯血の取扱い等を十分に確認するように」との記載とともに、プライベートバンクは造血幹細胞移植法の対象外、つまり経営破綻などの理由で、プライベートバンクが保管者に無断でさい帯血を販売する可能性があることも示唆しています。

 

理由⒎ プライベートバンクのメリットが低い

現在全国6カ所にある公的さい帯血バンクには、国の基準を満たした医療機関で適切に採取された約1万本のさい帯血が保管されています。さい帯血移植にはドナーとのHLA(白血球の型)の適合率は6抗原中4抗原以上が一致した方がよいといわれていますが、今のところ90%以上の患者さんが4抗原以上適合するさい帯血を見つけています。

 

さい帯血保管をお考えの方へ

世界的に見て、プライベートバンクに保管されたさい帯血は、(量、安全性、信頼性の理由から)利用される確率が非常に低いです。利用する方法は臨床試験のみです。

 

その一方で、さい帯血は様々な疾患の治療に役立つので、公的さい帯血バンクへの寄付(無料)をお勧めします。あなたのお子さんも必要となれば利用できます。

 

さらに、あなたとあなたのお子さんの造血幹細胞は50%適合しています。万が一の場合、あなたがドナーとなって血管から採集した造血幹細胞を子供に移植することができます。

 

厚生労働省や大学病院のサイトから正しい情報を得てからご判断くさいね。

 

参考にしたサイト

厚生労働省の臍帯血関連情報

デューク大学さい帯血バンクについて

クリーブランドクリニックさい帯血バンクについて

国立がんセンター造血幹細胞移植

 

食物アレルギーは「食べることで発症する」って思っていませんか?

 

実は多くの食物アレルギーは「乾燥肌によって作られる」と、ハーバード大学教授であり、食物アレルギーの専門医であるKari Nadeau は著書、『The End of Food Allergy(食物アレルギーの終焉)』の中で書いています。

 

本来皮膚は、異物から体を守る役目があるのですが、乾燥するとその機能が低下して、アレルギーの原因となる異物の侵入を許してしまいます。

 

正しい保湿で赤ちゃんを守る

特に赤ちゃんの肌は乾燥しがちなので保湿が不可欠なのですが、保湿のためのオイルやローションで、肌荒れが悪化、炎症を引き起こすことがあります

 

いわゆるベビーオイルによく使われる使われるミネラルオイルやパラベン、ワセリンなどの石油(原油)から作られる油脂は皮膚にとっては全くの異物です。これらのローション類を塗った肌には、本来なら皮膚に繁殖するはずのない細菌などの微生物の繁殖で炎症が悪化しやすくなります。そのため、保湿しているにもかかわらず肌のバリア機能が低下してアレルギーの原因となる粉塵の侵入が防げなくなります

 

赤ちゃんを乾燥肌とアレルギーから守るために最も効果的な保湿成分はセラミドです。セラミドとは、皮膚の角質層に存在する自然な潤い成分で、細胞と細胞の間にある水分を抱え込んで逃さないよう保持する働きを持つ、バリア機能の主役です。


大人も顔だけではなく全身の保湿が不可欠です。時に手荒れを放置していると、ある日突然食物アレルギーが発症することもあります。

 

漁師さんや調理師さんのように、長年素手で魚を扱う人が魚を食べて発症するアニキサスアレルギー、長年猫を飼っている人が豚肉を食べて発症する獣肉アレルギーなどがその例です。

 

肌に十分な量のセラミドがある状態だと、肌がふっくらとして乾燥しにくく、バリア機能もしっかり働いた状態になります。さらに、セラミドが十分あると、肌がふっくらとして毛穴が目立ちにくくなるというお得な効果もついてきます。

 

冬は乾燥肌の季節です。乾燥肌だけでなく、アレルギー防止のためにも、ミネラルオイル、パラベン、ワセリン不使用で、セラミドを使ったローションで、保湿に励んでください。