暗雲と希望
パリ市内で路上ライブ開始して何日か経ったある日のこと。雨が降ってきたので演奏を止めて移動しました。
その後、路上で安いビールを呑んでいたら、演奏を聴いていた方が私の所に来て『さっき演奏を聴きました。雨が止んで晴れると良いですね。これを受け取りなさい。』と言ってチップを渡して立ち去りました。
実は今、経済的にかなり危機的な状況にあります。フランスでの滞在は2ヶ月半でしたが、路上ライブは1週間しか出来ませんでした。すでに口座の残高はかなり減っています。
バスカーという職業は、路上パフォーマンスで偶然居合わせたお客さんに楽しんで貰って、そのお礼にチップを貰います。そして航空チケットを買い次の国に行って、また新しい出会いが生まれます。ウィンウィンな関係。
雨の直後にチップをくれた方から元気を貰ったので、その後は良い演奏ができました。ありがとうございます。
路上で出会った方の中には、私と同じ様に仕事を辞めて試験に合格してヨガのインストラクターになった方が居ます…逆にこっちがびっくりです。近況報告をFBメッセージで送ってくれます。今は逆に元気を貰っています。
パリの歴史ある建築物を観てから村に戻りました
アーティストとして生き残る術
フランス人アーティストからは『アートはアートのためにある。沢山のお金はいらない。』と言われます。長い間お金を必要としない環境で活動してきたからだと思います。
私は逆の立場です。職業はバスカー。ほぼ毎日路上で演奏して、チップを頂いて生計を立てています。音楽でお金を稼ぐことに罪悪感はありません。
むしろ素晴らしい事だと思ってます。私はそうしないと生きて行くことができません。
その為、メンバーには村に長期間滞在するのは不可能だと伝えて1人でパリに向かったのです。
退職して直ぐに海外へ出た頃、色々と事情があり全財産は20万円。今はほぼゼロなので、そんなに変わりはありません。とりあえず次の旅のチケットは購入しました。クレジットカード利用なので引落は来月。だからきっと大丈夫。
結局、今回の旅ではフランス式のスケジュールにうまく自分がフィットせず、航空チケット代を路上ライブで回収する事が出来ませんでした。
そして初めてマイナス…しかもレコーディングをする約束でしたが、テストレコーディングしかしていません。
言葉も文化も違う人々と活動する難しさを学びました。
Moonchazar リハーサル風景
この曲は私達の代表曲です。台湾で出会った時に皆んなで作曲しました。お気に入りの曲です。ちゃんとレコーディングしてPVも作りたいです。
フェステバル開催
現在滞在している村でフェステバルが一週間開催されました。
世界中から招待されたアーティストや地元のパフォーマーによって、昼から朝方まで様々なショーが毎日繰り広げられます。
フェステバルではコラボレーションという形でもショーが開かれます。約1〜2日程度で制作を行い、時にはぶっつけ本番の即興でパフォーマンスが行われます。
私もフランス人の舞踏ダンサーと全く打合せなしの即興でコラボしました。観客のほぼ全員がアーティストなので、アドバイスも的確…とりあえず全てが初めてなので勉強です。
招待アーティストによる即興パフォーマンス。巨大パペット達は約2日間で製作されました。
フランス人アーティストによるクラウンショー
相互扶助の精神
この村に滞在している間は "お金" は必要ありません。食事・宿泊や洗濯・制作に必要な材料や道具など、全てが "無料" です。そして訪れたアーティスト達は、清掃・調理・薪割り等、村の仕事をボランティアで行って運営を手助けしています。
私も含めてここを訪れたアーティストは、「こんな世界があったのか…」と驚いていました。
オープンしてから20年経つので、この村で生まれた子供も居ます。流石に人生観変わりました。
芸術家というとアート活動に専念しているイメージがありますが、此処に住む人々は皆思うがままに自由な時を過ごしています。
以前この村の場所を話してしまった人がいたらしく、口コミでアーティストが集まりすぎて問題となり、村の存在が行政にバレて色々撤去されました。
その後、幸い周辺の地域住民から署名が集まり、存続が認められたそうです。
周辺の村々でパフォーマンスしたり、教会のステンドグラスや修復、住居の建設等の貢献があるからこそです。
芸術家としての存在が認められているからこそ、無料で様々な支援があるんだと思います。
日々の生活を大切にする芸術家
数年前に自身が使っていた楽器を路上で出会った方(物乞してた人)にプレゼントして現在は芸術活動をしていません。
彼女曰く「才能があるから渡した。この楽器で彼は幸せになれる。」だそうです。私は彼女に「2〜3年後に私が使っている楽器を無償&無期限で貸してあげる。」と約束しました。
彼女はアート活動をせず、日々の暮らしを大切にしているそうです。お金は殆ど持たずに自由に生活しています。
今回は自国の政府援助があってフランスに来る事ができたそうです。自力で来ているのは私くらいです…
皆んな本当にお金を持って無いのです。
彼女は皆からはビューティフルパーソンと言われています。多分会えば分かると思います。
天使…彼女からは"every thing is same"(全てはひとつ)という考え方を教えて貰いました。
絵画や舞踏もやってみればよいと勧められもましたが、私は多分やらないと思います。
日本語を学びたいという彼女から、別れ際に日本語で「あたたかい」という言葉を貰い、再会を約束しました。
来年は中国へ
フランスに行く直前に、中国にある芸術家を支援する団体から、わざわざ日本までスカウトの方が会いに来てくれました。
どうやら私は来年のチャイニーズニューイヤーに中国へ行く事になりそうです。
私はMoonchazarのメンバーに一緒に行かないかと誘いましたが、彼らは暫くゆっくり過ごしたいそうなので多分1人で行く事になりそうです。
本当に彼らは超スローライフです。
次の旅はどんな出会いがあるかのか楽しみです。日本では会社に属するのが一般的ですが、自営業(フリーランス)というスタイルこそ自分の人生がより輝くように思います。
継続するのは難しいですが、勇気ある一歩が大切だと信じて私は歩き続けたいと思います。
しばらくの間、彼等はバカンスなので、私はソロ活動に専念しようと思います。また会おうね。
シャルルドゴール空港にて
つづく