レジデントたちのモノローグ

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鹿児島民医連の研修医ブログ。
鹿児島・霧島・奄美など県内各地の地域医療を支える初期・後期研修医たちの奮闘記!

こんにちは。後期研修医の◯◯です。

 

今回はHPVワクチンに関して2018年コクランレビューについての話題です。

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD009069.pub3/full

 

HPVワクチンに関する主要な試験はNEJMに掲載されたFUTUREⅡ試験と、Lancetに掲載されたPATRICIA試験が有名です。

 

HPVワクチン接種で高度異形成・前がん病変と言われているCIS3はどう変化するか? TRICIA試験とFUTUREⅡ試験の数を足すと下記のデータになります。

 

HPVワクチン接種前にHPV感染がない群(naïve)でCIN3の人数は

ワクチン接種群:11082人中39人(0.4%)

プラセボ群:10132人中111人(1.1%)

HPVワクチン接種前にHPV感染既往のある群でCIN3の人数は

ワクチン接種群:7174人中290人(4.0%)

プラセボ群:7174人中347人(4.8%)

 

2つの研究でプラセボ群の中でCIN3の発生率は、

感染の有無にかかわらず全体で5.9%、HPV感染(-)で1.1%、HPV感染(+)で4.8%

CIN3の占める比率はHPV感染既往の人たちが約8割と大多数を占める。

 

HPVワクチン接種により、

・HPV感染がない群(naïve)は1.1%→0.4%と、CIN3はある程度減少する。

・HPV感染既往群は4.8%→4.0%と、CIN3はほとんど減少しない。

 

全体の集団で10~20%ぐらいはHPVウイルス感染しており、それらの集団についてはワクチンの効果は乏しく、また大多数の症例ではいったんHCVウイルス感染するも自然消失することもあり、一部の持続感染例から癌が発生すると考えられている。

 

・HPVワクチン接種前にHPV感染ない人たち(naïve)は、以前HPV感染したけれども自然消失したか、ウイルスに暴露したけども感染しなかった人たちでもある。

・HPVワクチン接種前にHPV感染既往の人たちは、少し前にHPV感染したが近い将来自然消失する予定であったか、HPV感染が持続してるかのどちらかといえる。

 

・HPVワクチン接種前にHPVウイルス感染既往の人たちはCIN3発症リスクが非常に高く、かつHPV持続感染の可能性が高い集団である。

・HPVワクチン接種前にHPV感染がない人の中でCIN3を発症した人は少なく、かつワクチンにて6割程度抑制される病変で、持続感染の可能性が低いと考えられる。

 

以上をまとめた個人的な仮説として

1)CIN3病変が癌に進行するのは、確率的にワクチン接種前にすでにHPVウイルス感染がある人から発生したCIN3が大多数であるため、子宮頸癌はこの集団から発生している可能性が非常に高い。

2)ワクチン接種前にHPV感染がないnaïve群の中からCIN3は一定数発生して、それはワクチン接種にて減少するけれども、その集団は持続感染する可能性も低いことが予想されるため、1)のことを考慮するとHPVワクチン接種せずにCIN3が仮に発生しても自然消失する可能性が高いかもしれない。

3)結局のところ子宮頸癌の発生率に関してはHPVワクチン接種はしてもしなくても発症率に影響がないのでは?

 

今回の2つの有名な研究の対象者は、ワクチン接種前の感染の有無がはっきりしているため、この対象者から将来子宮頸癌が発症すると思われるが、「子宮頸癌患者の過去のワクチン接種前のHPV感染を調べて、ほとんどHPV感染既往であった」、ということがわかれば今回の仮説が証明されたことになると考えます。

 

なので個人的には、「HPVワクチンの癌抑制効果はあまり期待できないのでは?」と考えますが、いかがでしょうか。

 

(パート4へ続く)

こんにちは。元・奄美中央病院勤務、元・後期研修医の酒本です。

 

今月から消化器グループで論文抄読会を始めました。

週1回のペースで行っていく予定です。

今回は自分が担当で、テーマは「大腸ポリペクトミーすることで大腸がん発症を減らすことができるのか?」です。

大腸ポリペクトミーが臨床的に施行されるようになったベースになるエビデンスを探してみると、この論文に行きつきました。

 

Prevention of Colorectal Cancer by Colonoscopic PolypectomyNEJM1993

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJM199312303292701?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dwww.ncbi.nlm.nih.gov

 

介入群はTCFを施行してすべてのポリープを切除(clean colon)にした状態で数年後の大腸癌発症率がどうなるのか、を観察しています。

比較群として注腸でポリープがあるも切除を拒否した人たちの集団を経過観察した群や米国平均人口における平均の大腸癌発症率と比べたものです。

結果は「CFで大腸ポリペクトミーを施行してclean colonにした群がもっとも大腸癌の発症リスクが低い」という結果でした。

 

批判的吟味として、介入群は観察スタート時点で大腸癌の人たちを除外しているため、大腸癌のリスクが低い集団を観察していることになり、単純にポリペクトミーによる効果なのかどうかががはっきりしない点です。

 

本来ならRCTでポリペク群と経過観察群に分けて研究すればある程度はっきりするのですが、いまさらそのような研究は倫理的にも組むことが出来ないので、本当にポリペクトミーが有効かどうかのエビデンスに関しては、永遠のテーマといったところでしょうか。

こんにちは。後期研修医の◯◯です。

 

下記がHPVワクチン接種と子宮頸がん罹患率に関するweb記事(フランスの腫瘍医・外科医が記載したもの)です

 

PARADOXICAL EFFECT OF ANTI-HPV VACCINE GARDASIL ON CERVICAL CANCER RATE(子宮頸癌率に対する抗HPVワクチンガルダシルの逆説的効果)

http://docteur.nicoledelepine.fr/paradoxical-effect-of-anti-hpv-vaccine-gardasil-on-cervical-cancer-rate/

 

HPVワクチンの癌抑制効果がはっきりするまでには10~20年ぐらいかかる?と言われていますが、10年ぐらい経過しても統計学上このデータであれば、HPVワクチンそのものがとても子宮頸がんの罹患率を減少させる効果は持ち合わせていないと個人的には考えますが、どうでしょうか?

(パート3に続く)

 

 

こんにちは。後期研修医の◯◯です。

 

以前、「子宮頸がんワクチンって結局どうなの?」のブログ投稿をしました。

個人的にはNEJMなどの有効性の文献や厚労省のホームページに記載してある有害事象のデータからすると「HPVワクチンの有効性は確率的には非常に小さい」と考えていました。

 

最近、「HPVワクチンを打ったほうがよいか、否か?」、の質問を受けたので、あのブログから少し時間経過しているので、あらためて文献検索してみました。

 

HPVワクチンに残された最大の課題は

子宮頸がん前がん病変(これがすべてがんになるわけではない)はワクチン接種で減少させるが、実際の子宮頸がんの減少効果はまだ証明されていない」ことだと思います。

このあたりがはっきりしていれば厚労省も積極的推奨に変化させるのでしょうけど。

 

日本以外でワクチンを積極的に行っている海外ではもう10年ぐらい経過しているし、HPVワクチンに関する有名な研究(NEJMに掲載されたFUTURE試験など)もその後調査を継続すれば子宮頸がん罹患率に差が出てきていると思われる。

 

では10年間ワクチン接種すると、どの程度子宮頸がん罹患率が減少すると予想されるか?

個人的に大雑把に計算してみる。

HPVワクチン接種が生涯にわたり有効であり70%程度の癌抑制効果があるとする(70%は厚労省が試算した数字)。平均寿命が約85歳ぐらいで15歳から毎年全員にワクチン接種すると国全体がワクチン接種対象者になるまで70年かかる。70年後に子宮頸がんが100%→30%へ減少(70%減少)。よって大雑把に計算すると10年後に10%減少(年率1%減少)となる。

 

それを踏まえて、各国の子宮頸がん罹患率をgoogle検索してみました。

イギリスのデータをweb上で見ると、ここ10年間で子宮頸がんはむしろ少し上昇しているだけでなく、ワクチン接種世代の20歳代を中心に罹患率上昇しており、50歳以上のワクチン接種と無関係な人たちの罹患率は逆に減少傾向です。これだけみるとワクチンの癌抑制効果の有用性はなさそうに思えます。

 

他の国のデータはどうなのか、と次々と検索していくうちに、おもしろいweb記事を見つけることが出来ました。

(パート2へ続く・・・)

お疲れさまです。奄美中央病院の酒本です。

ACPジャーナル学習会からです。

 

今回のテーマはインスリンアナログ製剤とヒトインスリンの有効性に関する論文です。

 

超速効型インスリンアナログ製剤は2000年頃に発売され、かれこれ20年近くなります。2005年~2006年に前回奄美に勤務していたときは自分は糖尿病外来を担当していましたが、その頃よりインスリンアナログ製剤の有用性についてはよく語られ、徐々にヒトインスリンから変更になる症例が多くなっていったのを記憶しています。

 

いまではヒトインスリン投与症例を見る機会はほとんどない状態ですが、そこまで大きくインスリン市場が変わった割に、また食後血糖や低血糖の頻度などの効果の点から、学会がアナログ製剤を推奨してきた割には、HbA1cに対する影響、低血糖などの副作用、長期予後に関する死亡率など、アナログ製剤とヒトインスリンの間で有意差はあまりないことが判明しました。

 

糖尿病に関するエビデンスについて振り返ると、合併症減少予防のエビデンスがあるのはメトホルミンぐらいで、インスリンはその効果は実証されておらず、この結果はあたりまえだったかもしれません。

 

となると違いがあまりなければ高価なアナログ製剤の出番は少なくなり、時代に逆行してヒトインスリンが処方されることが多くなる可能性もあります。今後の学会の動きに注目していきたいと考えます。