名古屋市美術館
『リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展』(2015年)
え~、久々に名古屋ネタ。
甘美で物憂げ、気怠いところが、よろしおま~

のラファエル前派(+その周辺の画家たち)展でございます。
英国・
リバプール国立美術館のコレクションで、前々から楽しみにしておりました!

展示構成は、
・ Ⅰ ヴィクトリア朝のロマン主義者たち
・ Ⅱ 古代世界を描いた画家たち
・ Ⅲ 戸外の情景
・ Ⅳ 19世紀後半の象徴主義者たち
(全36作家、展示総数65点)
【注 : Ⅰ章とⅣ章が1階展示室、Ⅱ章とⅢ章が2階展示室に展示されています】
で…… 今回は、あれもイイ!

これもイイ!

でイチ押しを選べなかった


悩みに悩んだ末のお気に入りを、展示順に紹介しまーす。
ジョン・エヴァレット・ミレイ
《ブラック・ブランズウィッカーズの兵士》
キャンバスに油彩 1860年 104×68.5
リバプール国立美術館
「ブラック・ブランズウィッカーズ」は、イギリス・オランダの連合軍と同盟してナポレオン軍と戦った、プロイセン王国の陸軍部隊。
ワーテルローの戦い(1815年6月18日)の前哨戦となるカトル・ブラの戦い(同年6月16日)の前夜、ひとりの兵士とその恋人との別れの情景を描いたものだそう

女性の左腕についている赤いリボンは、この先、黒いリボン(喪章)に換わるかもしれないことを暗示し、
背後の壁にあるジャック=ルイ・ダヴィッド作
《アルプスを越えるナポレオン》の複製版画は、これから男性が対ナポレオンの戦地に赴くことを暗示してます。
(実際には敵方の総大将の肖像画を飾ったりはしないだろうけど、この絵の場面を説明するためなのね)
で、、、画像でもわかるように、女性のドレスの質感がとんでもなくリアル!

見ただけで生地の手触りを感じてしまう技量に脱帽!
(実物はもっとすごいよ!)
ジョン・エヴァレット・ミレイ
《ソルウェーの殉教者》
キャンバスに油彩 1871年頃 70.5×56.5
リバプール国立美術館
1685年、イギリス国教会に抵抗していたスコットランド長老派教会系の運動グループの女性が、溺死による死刑を執行された…という史実をもとにした作品です。
彼女の名はマーガレット・ウィルソン。18歳。
イングランドとスコットランドの境界にあるソルウェー湾の海岸で、杭に身体を縛りつけられ、徐々に満ちてくる潮に飲み込まれたらしい…

そんな場面なのに、美しい表情に見入ってしまったわ。
ダニエル・マクリース
《祈りの後のマデライン》
キャンバスに油彩
1868年発表 128×101.5
リバプール国立美術館
1820年に出版されたジョン・キーツの詩『聖アグネス祭前夜』を主題に描かれたとされる作品。
『聖アグネス祭前夜』は、仇同士でありながら恋に落ちてしまったマデラインとポーフィロの物語で、「聖アグネスの祝日(1月21日)の前夜に食を断ち、祈りを捧げる乙女は、夢の中で未来の夫と出逢う」という言い伝えをもとに書かれた長編詩です。
夕べの祈りのあと、自室に戻って服を脱ぎ、眠る準備をしているマデライン。
が、、、このときクローゼットの中には、決死の覚悟で彼女の部屋までたどり着いた恋人のポーフィロが隠れていたのでした。
やがてポーフィロはクローゼットから現れ、驚くマデラインを部屋から連れ出して一緒に逃げ去る…のだそう。
この絵の場面のすぐあと、彼女の前に夢ではなく本当に、でも、まるで夢のように、愛しいひとが立ち現れるのね

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ
《フラジオレットを吹く天使》
紙に水彩、グワッシュ、金彩
1878年 74.9×61.2
リバプール国立美術館
もう、パッと見で惹かれた一枚

1862年から翌年にかけてバーン=ジョーンズが手がけた教会用ステンドグラスのデザインを、個人の邸宅向けに描き直したもの。
「フラジオレット」はフルートに似た木管楽器とのこと。音色も同じような感じなのかな?
エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ
《スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)》
紙に水彩、グワッシュ
1891年 325.7×158
リバプール国立美術館
バーン=ジョーンズ作、今回最大の作品です!
(しかも、門外不出レベルの大作)
森の中へ続く小径を歩む花嫁。
両側には純潔の象徴である白ユリ、空中には北風と南風の擬人像。
『旧約聖書』の「雅歌」第4章の最後の一節を意識したもののようです。
北風よ、目覚めよ。
南風よ、吹け。
わたしの園を吹き抜けて
香りを振りまいておくれ。
恋しい人がこの園をわがものとして
このみごとな実を食べてくださるように。なかなか意味深な詩ですな~

しかしながら、花嫁の虚ろなまなざし、どこか気怠げな様子には、"愛の体験が男女にもたらす喜びと悲しみが漂って" いる……
バーン=ジョーンズには、そういう傾向の作品が多いそうな。(確かに…)
エレノア・フォーテスク=ブリックデール
《小さな召使い(乙女エレン)》
キャンバスに油彩 1905年発表 90.8×57
リバプール国立美術館
描かれているのは「乙女エレン」と呼ばれる、イギリスの伝統的な民謡のヒロイン。
この民謡で唄われている話が、もうひどい内容で~

「恋人の子を身ごもり、彼に召使いのように仕えるも、蔑みを受けるだけの貞節な乙女エレンの物語」って、何??
モラハラ(+セクハラ?)のDVサイテー男じゃん!

クワッ
この絵は、恋人のチャイルド・ウォーターズに要求されるまま森に隠れたエレンが、彼の言いつけに従い、少年に見られるように男装し、髪を切ろうとする場面らしい。
(恋人の冒険についていくため、小姓の格好をするのだとか)
で、物語の結末はというと、厩でエレンが一人で子を産み、彼女の唄う悲しげな唄にチャイルド・ウォーターズの心が解けて、晴れて二人は結婚。めでたし、めでたし~、なんだそうな。
女性にはそういった従順さが求められているのだろうけど、なーんかね、腑に落ちないのでした

チャールズ・エドワード・ペルジーニ
《シャクヤクの花》
キャンバスに油彩 1887年発表 77.4×59
リバプール国立美術館
「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」
モデル不詳の肖像画で、ワタシが見たところでは今展一の美人です!

シャクヤクの名は「姿がしなやかで優しいさま、たおやかなさま」を意味する「綽約(しゃくやく)」からきていると言われるそうですが、まさに彼女はシャクヤクの花!

アーサー・ハッカー
《ペラジアとフィラモン》
キャンバスに油彩 1887年 113×184.2
リバプール国立美術館
1853年に出版されたチャールズ・キングスレイの歴史小説『ヒパティア』を題材にした作品。
ペラジアは5世紀のアレクサンドリアで堕落した日々を過ごしていたとされる女性で、死の直前、キリスト教の隠者となってその罪を償おうと荒野に向かうのです。
修道院の院長だった兄のフィラモンは、ペラジアを探す旅に出るのですが、見つけたときすでに彼女は瀕死の状態……
フィラモンは横たわる妹のそばで、葬儀を執りおこなおうとするのでした。
(遠くから様子見をしてるハゲタカたちが無気味

)
「聖」と「性」、「事実」と「脚色」の混淆なんだろうけど、ワタシは性的なものを感じなかった。
この女性の姿を見て、ポール・ドラロッシュの《若き殉教者の娘》を思い出してしまいました。
ポール・ドラロッシュ
《若き殉教者の娘》(参考作品)
キャンバスに油彩 1855年 170.5×148
ルーヴル美術館
この先、
ルーヴル美術館へ行く機会があったら、ぜひ観てみたい作品のひとつです

ジェイムズ・ハミルトン・ヘイ
《流れ星》
キャンバスに油彩 1909年 64×76.8
リバプール国立美術館
作者の家の近く(?)の雪景色。
画面右上には、オリオン座の三つ星。
中央やや左に描かれた流れ星の上には、おおいぬ座のシリウス。
もしやこれは12月の風景で、ふたご座流星群の流星では?と勝手に想像してみました

はっきりと星座がわかる夜空の絵って、初めて観たような気が。
個人的に大好き~

……というわけで、あの独特な世界を堪能しました!

ラファエル前派というと、ミレイ、ロセッティ、ハントと、ウォーターハウス、バーン=ジョーンズあたりが有名どころですが、ほかにも、うおっ!?と思う作家や作品がてんこ盛り。
ぜひぜひ実物をご覧ください

『リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展』
◆2015年10月3日(土)-12月13日(日)
名古屋市美術館・Twitter →(
Bunkamura ザ・ミュージアム(東京)、
山口県立美術館に回ります)
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名古屋市美術館 →(名古屋市中区栄2-17-25 白川公園内)
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