【400文字作文】下半身は地球を救う。 -22ページ目

【400文字作文】日傘の女

 アスファルトの熱気を感じて、俺は太陽に
炒められてるんだな。と思いながら太陽を睨
む。が、眩しくて二秒も空を見ていられず、
僕はまたうなだれてアスファルトに視線を落
とし、道路の真新しい白線を睨んだ。
 道路の白線はまるで理髪店に行ったばかり
のオジサンの髪型みたいにきっちりと、まっ
すぐ駅へと繋がっている。たとえアスファル
トが太陽の熱で崩れても、この白線だけは残
っているかもしれないな、と思いながら駅の
方を眺めていたら、一人の女性が日傘をさし
て白線の上を歩いてくるのが見えた。その歩
き方は綱渡りをするように慎重でもなく、ふ
しだらでもなく、何にも甘えてなかった。
 傘がつくる影は薄く、頼りないけど、女が
落とす影はアスファルトより黒く、強い。
 その日傘の女はかすかに、生き物の匂いを
放ちながら、僕の前を通り過ぎていった。そ
の場に留まっている俺の匂いはきっと、生ゴ
ミの臭いがしていただろう。

【動画で読む400文字作文】 SUPERマーヘット

【400文字作文】SUPERマーヘット

 だるそうにドアが開き、私は店に入った。
と同時に「イラッシャイマヘ」と、スピーカ
ーから声が流れる。このスーパーへ来る度に
この電子音に苛立つが、銀行に入った時に用
件を積極的に聞きにくる鬱陶しい笑顔の行員
よりましだ。
 なんとなく青果コーナーを通り、学校の朝
礼のように規則正しく整列している野菜達を
見て、果物が放つ甘い生命の匂いを楽しむ。
 鮮魚コーナーで魚の死んだ目を、真剣な目
で覗き込む主婦を横目で見つつ、精肉コーナ
ーへと向かう。牛、豚、鳥の順序で並べられ、
清潔にパッキングされている肉を人差し指で
軽く突く。
 ロースはここで、ヒレはここです。と、可
愛らしいイラストで書かれている。
 オーストラリア産の牛肉を人差し指で押す
と、電子音で「モー」と鳴きそうな気がした。
 スーパーを出る時「アリガホオゴザイマヒ
タ」と、スピーカーから声が流れた。

【400文字作文】ぎざぎざ太陽 汗と雲

 身体のあらゆるところから汗が湧き出てく
る。太陽は当然のように僕らの肌を焦がし、
体力を奪っていく。僕らから体力や水分を奪
って、太陽は何を得るのだろうか。そう思い
ながら空を見上げたら真っ白な雲があった。
そう思いながら地面を見たら、たくさんの雑
草が、風も無いのに揺れていた。
 蝉の声が僕らを取り囲んでいる。僕は車の
ボンネットみたいに熱くなった腕で額の汗を
拭う。そのままだらりと腕を地面へ垂らすと、
その汗は手の甲を伝い、指先から地面へと落
ちる。
 僕が落とした汗で、色濃くなった土も太陽
に焦がされ、すぐに乾く。
 それを見て興奮したのか、蝉の声はもっと
分厚くなり、雑草は肩を揺らして笑う。
 ギザギザした蝉の鳴き声は、地面や肌を焦
がす太陽の音だ。
 そのままでいることを、夏の太陽は許して
くれない。

【400文字作文】ぶらっく珈琲

 目の前に黒い服を着た女が座っている。そ
の服はまるで、怠惰な夏風に撫でられている
薄いカーテンのように滑らかに、女の肌に吸
いついている。
 機械的な味と香りの珈琲を出すカフェには
珍しくないタイプの女だが、私と同じくらい
視線に落ち着きが無い。そのことに気が付い
て、つい笑ってしまいそうになるが、私は笑
いを微笑に変える技術を10代の時に身につけ
ていたので、いかにも珈琲を飲んでリラック
スしているんです、という微笑みに変えた。
 だが、その女には見透かされているようで
また、笑いそうになる。
 何が欲しいんですか?貴女は。と、黒い服
の女に聞くと、欲しいものなんて無いの。捨
てたいものはたくさんあるんだけど…。捨て
たいってことも欲望だから欲しいものになる
のかしら。と、女が言っている気がした。 
 気が付くと私は、トイレの鏡の前で笑って
いた。焼けた黒い肌の自分を眺めながら。