【400文字作文】鷹の目と虎の心を持つ男。
あの男が、また私に喜びを与えようとして
いる。
まだ若かった私の前に現れ、私に喜びや楽
しみや興奮を与え、2年前にそれを奪った男
だ。その男が、また私に小さな喜びを与えよ
うとしている。
上半身が全くブレずに体の重心を低くした
まま、兵士のように走る姿。腰を落とし相手
に体をぶつけ、自分より大きい敵を平然と弾
き飛ばす柔道家のような姿。うまくいったな、
とチームメイトにウィンクする悪ガキのよう
な姿。
あの男が私を楽しませるのは、姿だけでは
ない。独特だが見ている者に違和感を感じさ
せないフォームから蹴り出される、芝生を焦
がしてしまうのではないかと思わせるような
グランダーの強くて速いパス。
あの男がまた、フットボールに携わる者た
ちに小さな喜びと楽しみと、大きな興奮や嫉
妬を与えようとしているのだ…。
いる。
まだ若かった私の前に現れ、私に喜びや楽
しみや興奮を与え、2年前にそれを奪った男
だ。その男が、また私に小さな喜びを与えよ
うとしている。
上半身が全くブレずに体の重心を低くした
まま、兵士のように走る姿。腰を落とし相手
に体をぶつけ、自分より大きい敵を平然と弾
き飛ばす柔道家のような姿。うまくいったな、
とチームメイトにウィンクする悪ガキのよう
な姿。
あの男が私を楽しませるのは、姿だけでは
ない。独特だが見ている者に違和感を感じさ
せないフォームから蹴り出される、芝生を焦
がしてしまうのではないかと思わせるような
グランダーの強くて速いパス。
あの男がまた、フットボールに携わる者た
ちに小さな喜びと楽しみと、大きな興奮や嫉
妬を与えようとしているのだ…。
【400文字作文】足音バイバイごめんなさい。
駅から徒歩10分と言われた今のアパート。
私は14分かかる。私は歩くのが、遅い。
だが、その日の帰り道はそうもいかなかっ
た。後ろから重い足音が聞こえて、私の歩く
ペースを乱したのだ。鮮明なオスの足音だ。
前に友人が言っていたことを思い出す。一
人歩きの時に不安になったら、携帯で誰かと
話してるふりすれば、かなりキクよ。
携帯を取り出し耳に当て、5秒。私は、も
しもし。と言った。そしてその後に、元気だ
った?と続けた。何も聞こえない携帯を相手
に相槌を打つ。
もう足音は気にならない。私は誰に元気?
と聞いたのだろう…そのことが気になった。
うん……うん… と、相槌をうつ私。
なに言ってるんだろう、と思う。けど乾い
た唇からは、ごめんね。うん、ごめん…。
私は、謝っていた。このワタシが。
涙の玉がまつ毛にさされて破けた時、もう
駅を出て16分がたっていた。
私は14分かかる。私は歩くのが、遅い。
だが、その日の帰り道はそうもいかなかっ
た。後ろから重い足音が聞こえて、私の歩く
ペースを乱したのだ。鮮明なオスの足音だ。
前に友人が言っていたことを思い出す。一
人歩きの時に不安になったら、携帯で誰かと
話してるふりすれば、かなりキクよ。
携帯を取り出し耳に当て、5秒。私は、も
しもし。と言った。そしてその後に、元気だ
った?と続けた。何も聞こえない携帯を相手
に相槌を打つ。
もう足音は気にならない。私は誰に元気?
と聞いたのだろう…そのことが気になった。
うん……うん… と、相槌をうつ私。
なに言ってるんだろう、と思う。けど乾い
た唇からは、ごめんね。うん、ごめん…。
私は、謝っていた。このワタシが。
涙の玉がまつ毛にさされて破けた時、もう
駅を出て16分がたっていた。
【400文字作文】母に捧げないよバラード
出世する気も金持ちになる気もないけん、
変な期待すんなよ。と、受話器の中の母親に、
直人は言った。
もし、我が子にそう言われたら…悲しむだ
ろうか、慌てるだろうか、いや。胃液にまみ
れた臭い言葉で諭そうとするかもしれない。
世の中お金が全てじゃない。だけどな、向
上心を忘れちゃあいかん、と。向上心…まる
で進学できない塾の名前みたいだ…。
闘争心は見たことがある。が、向上心は見
たことがない。そんなことを考えていたら、
受話器から直人の母の笑い声だけが聞こえた。
一拍おいて、直人が同じ発声で笑いだし、
じゃっ。と短い挨拶をして電話を切った。な
んて言ってた?と、俺は眉と唇の動きだけで
直人に聞いてみた。
私の子供やけんね、期待はしとらんよ、と
直人は自分の母の声をマネて言った。
その声は全く似てなかったが、少し照れて
視線を外すその笑顔だけは似ていた。
変な期待すんなよ。と、受話器の中の母親に、
直人は言った。
もし、我が子にそう言われたら…悲しむだ
ろうか、慌てるだろうか、いや。胃液にまみ
れた臭い言葉で諭そうとするかもしれない。
世の中お金が全てじゃない。だけどな、向
上心を忘れちゃあいかん、と。向上心…まる
で進学できない塾の名前みたいだ…。
闘争心は見たことがある。が、向上心は見
たことがない。そんなことを考えていたら、
受話器から直人の母の笑い声だけが聞こえた。
一拍おいて、直人が同じ発声で笑いだし、
じゃっ。と短い挨拶をして電話を切った。な
んて言ってた?と、俺は眉と唇の動きだけで
直人に聞いてみた。
私の子供やけんね、期待はしとらんよ、と
直人は自分の母の声をマネて言った。
その声は全く似てなかったが、少し照れて
視線を外すその笑顔だけは似ていた。